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BLの丘
契りをかわして 12
2012-03-17-Sat  CATEGORY: 契り
出会うたびに惹かれていく心がある。甲賀が同じ気持でいるわけではないだろう。伊吹だけが惹かれているのではないか…。
甲賀にとっては単に、抱ける体でしかないのだろう…。
割り切って始めた関係なのに、逢瀬の数が増えれば増えるほど、はまっていくのは伊吹のほうだと思われる。
それでも離れられない、…満ち足りた時間は伊吹の精神の中で大きくなっていくばかりだ。
過去、味わったことのない満足感…。
この半年、逞しい体に溺れてしまった。
信楽が気付いていないわけはない。だけど何も言われないのをいいことに、この状況から抜け出せなかった。
甲賀に呼ばれれば浮かれた心で待ち合わせ場所に向かってしまう。
信楽についた嘘は、一体幾つになるのだろうか…。
どちらに対しても別れを切り出せないのは、伊吹の弱い部分でしかない。
甲賀がどんな思いでいるのか、それも確かめられない。
寄り添っていく、重い存在になりたくなくて、今までと変わらない立場を作ってしまう。
こうやって上辺だけの態度を見せることには、慣れ過ぎている…。

起き上がった伊吹を引き止める声は、今まで聞かれることはなかった。
本当に眠っていたのか、伊吹の立場を気遣って起きることがなかったのかは疑問だ。
「伊吹…」
声が聞こえて伊吹は動きを止める。
気のせいかと確認して見下ろした先、はっきりと瞼を上げた甲賀が伊吹を見つめていた。
彼はまだ横になったままでいるが…。
眼差しにドキリとしてしまう。その下に見える肉体美があるからこそ…。
逃げ出すようにその場を離れていた過去は、もう一度触れられてしまった時に自分がどんな態度に出るか、想像できなかったから…。
「あ…、お、起こしちゃった?」
咄嗟に営業スマイルが漏れる。
いつまでも軽い関係で…。それを願ってしまう自分は、甲賀に嫌われたくないだけだ。
「こんな早く、どこに帰ってるの?」
どこまで知るのだろうか。どんなことを想像しているのだろうか。
十中八九、彼が脳裏に思い描いていることは、外れていないだろう。
信楽の存在を知られたら、…はっきりと伝えてしまったら、もう、”続き”はないだろうか…。
「あ、今日も用事が…。家に帰って準備したいし…」
「『用事、用事』って、伊吹、どんだけ忙しい人間だよ?!」
「甲賀…」
甲賀の、この苛立ちは、何を表しているのだろう。
期待してしまう気持ちに、甘えたくなる自分自身が冷静になれと警鐘を鳴らす。
重荷や負担になる存在にはなりたくない。ずっと続けてきた、軽い関係。
一時的にでも伊吹を包んでくれる逞しい肉体を、まだ感じていたいと思ってしまう。
引きとめてほしいと願いながら、反面で信楽になんと伝えようかと葛藤が起こる。
信楽に対して、してもらったことがあまりにも大きくて、裏切れないのだ。
「伊吹」
伸びてきた腕が、伊吹をつかまえた。
起きた体が再びシーツの海に沈められる。
触れたら、離れられない…。誰よりも伊吹自身が知る。
くちづけられて、肌に指先が這わされて…。溶けていくような気持ちの良いくちづけに、逆らえる術などありはしない。
抑え込まれた体の下で、体が感じるままに”素”の面を引き出されてしまう。
甲賀の舌先が伊吹の上顎を撫で上げて、幾度も味わった快感が再び伊吹を包んだ。
「こぅ…、あっ…」
抓まれた乳首が、まだ昨夜の余韻を残している。

…ごめん…。
胸の中で呟かれた言葉は、信楽に対してなのか甲賀に向けてなのか、伊吹自身も分からなかった。

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