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BLの丘
ふたり 8
2012-04-17-Tue  CATEGORY: ふたり
現金なほどニコニコ顔で会社に戻り、今まで以上に張り切って仕事をする姿勢に、他の社員からは訝しそうな視線を向けられたが、そこは『可愛い』態度でかわしてしまう。
他の社員も伊吹のことは良く知っていたから、何かの悪知恵でも吹きこまれてきたのではないかと心配される部分もあった。
口が上手いのはどうしたって伊吹であって、この不動産会社の人間もうまく丸めこまれているところがないわけでもない。
伊吹に対しても『可愛さ』で曖昧にされている…とは口に出せないが…。

旭は仕事をこなしながら、次に信楽と出会える日のことを考えた。
サボるわけではないが、勤務時間中に会うのがダメとなれば、当然仕事が終わった後の夜か、休日になる。
信楽の仕事上、いつが一段落つく時間なのか、また休日になるのかはまだ知らない。
その詳細を信楽に聞くのが一番だろうが、先に情報を仕入れるべきだろうかと、伊吹の顔が浮かんだ。
…とはいえ、今更伊吹に信楽のことを尋ねるのは酷なような気がするし、何より伊吹に信楽を振り返らせたくない焦りのようなものも生まれる。
信楽が伊吹に想いを残していると分かったからこそ…。
そこで、ハタっと旭の脳裏を横切るものがあった。
信楽は『伊吹の友達として…』と言った。それはつまり、旭を通じて伊吹と接触を図ろうという魂胆があるのだろうか。
現に旭の目の前で伊吹は信楽から逃げ出したような態度でいた。
直接話をするのが無理だと感じたのなら…。
そう思いかけて旭は頭を横に振る。
いくらなんでも、信楽がそこまで汚い手を使うとは思えない。
単純に知りあえた一環として、旭を受け入れてくれたのだと信じたい。

とはいえ、一度巣食った感情はなかなか消えていかない。
信楽が口にした『別の問題』も気になった。そのことまで、伊吹は知るのだろうか…。
彼を縛るものはなんなのだろう。
過去の失恋があったとしても、『誰も恋愛対象にならない』と言い切った台詞…。
一応、あくまでも今のこの場では、旭を受け入れてくれたような仕草を見せてくれたけれど…。
ただの社交辞令として、この先も断られ続けることはありえる。
そう…。”勤務時間はダメ”と言ったその台詞からも…。

だけど食い下がらない根性は、仕事が終わると同時に、信楽にメールを入れていた。
それこそ、社会人としてのプライドをかけて(?)、精一杯社交辞令的な文面で送った。
変に親しんだ様子を見せるから、引かれてしまうのではないかという不安を宿しながら…。

『高島です。今日は楽しい時間をありがとうございました。次回は是非、コーヒーの一杯かビールの一杯だけでも奢らせてください。お時間が取れる日ってありますか?』

他人に言わせればどこが”社交辞令”だとツッコミを入れられそうだが、旭にしてみたら、”全面的にお任せしますが、そのうちの一杯だけでも”というささやかな願いが込められている。
信楽のことだから、今日のように、”全額”などとは絶対に受け取らないだろう。
あとはそれ以上の時間が持てることを祈って…。

信楽からの返事はしばらくこなかった。
旭の友人の周りでは、比較的すぐに返ってくる連中が多かったから、信楽から待たされる間はヤキモキとするしかなかった。
帰りの道中、訳も分からなく携帯電話を眺め、コンビニで夕食を買い、一人暮らしのワンルームに戻って、今後をどうしようかと悩んでしまう。
いつ鳴るか…という思いが、バスルームすら遠ざからせていた。
「はぁぁぁ…」
盛大な溜め息が零れるが、これ以上しつこいように、重ねたメールも電話もできない。
諦めて飛び込んだバスルームで、浴びるだけのようなシャワーを済ませて出てくる。
まだ夕食に手をつけていない空腹感も煽ってくれた。
床に散らばっていた雑誌と衣類を適当に部屋の隅に寄せて、ローソファーの前にあるテーブルの前に空間を作る。
リモコンでテレビに電源を入れ、「あーっ、もーっ」と、誰に八つ当たりしていいのか分からないモヤモヤを抱えて冷蔵庫に向かった。
缶ビールを取り出してはヤケ酒気分でその場でプルタブを開けた。
今は外せない用事が入っているのかもしれない…。必死でそう思おうとする。
営業で出た自分だって、無視(後に必ず連絡は入れているが)した人間は何人…と思うと、たかが一、二時間で騒ぎ立てる方が失礼だと重々承知していた。
今になって、待つ人間の心理を知ったような気分だ…。

テーブルに座って、味気ない食事をしている真っ最中に、ようやく携帯電話の着信音が響いた。
旭は取るものとりあえず、全てを投げ打って、必死に画面に食いつく。
待ち焦がれた信楽からの返信だったが、表示された文字は無情なほど冷たかった。

『お仕事終わったんだね。お疲れさまでした。今日の打ち合わせで入った仕事で当分忙しくなりそうです。またこちらから連絡します』

労いの言葉はあっても、続く羅列…。
信楽から連絡が入るまで、旭からは何もしてくるなと…。
それが仕事の邪魔になるのだと、暗に伝えられているようだった。

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あっという間に低気圧だね…。
伊吹がすぐにチューとかホテルとか行ってたのに…。こっちは停滞前線ですか…。

そうそう、アンケですが、コメントいただくとすごく想像しやすいです。
今頂いているコメントだけで、『あ~、こんなシチュは?』と一人腐世界に入ってます。
でも書くのは結局一組(←たぶん…きっと…。そう言いながら去年散々書きまくった←アンケ意味なしでしたが)なんですけれどね…。
(ここでネタをもらっている私ってなんなんだろうな…ぁ…。)
省いているんですけれど、選択欄に全CP上げたほうがいいですかね…。
『かずはシロップ漬け』ってだれかにいただいていたなぁ…(←書きたいのはいっぱいあるの。リクもらって)
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-17-Tue 00:20 [編集]
旭、メールを無視されないだけ ましだと思いなよ~(T^T)ヾ(^^*) マァマァ
まぁ 信楽は大人だから 無視はしなだろうけど・・・

最初のメールは、相手の仕事や体調を気遣う文章が いいんじゃないの?
そこから ジワジワと旭の存在を侵食させるって 如何よ!?
( `・∀・´)σ_□_メール~~◇...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-17-Tue 07:25 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> 旭、メールを無視されないだけ ましだと思いなよ~(T^T)ヾ(^^*) マァマァ
> まぁ 信楽は大人だから 無視はしなだろうけど・・・
>
> 最初のメールは、相手の仕事や体調を気遣う文章が いいんじゃないの?
> そこから ジワジワと旭の存在を侵食させるって 如何よ!?
> ( `・∀・´)σ_□_メール~~◇...byebye☆

'`ィ (゚д゚)/ 信楽は無視しません。
旭ね~。慌てているところもあるんでしょうね。
返信が来たんだから良しと思わないと~。
ジワジワ浸食(爆)
そうですね~。
ズカズカ踏み込んで膿でも出してもらいましょうか。
コメントありがとうございました。

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