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BLの丘
ふたり 14
2012-04-23-Mon  CATEGORY: ふたり
一度の情交は旭にも信楽にも安堵を宿すものとなった。
旭にとって、抱いてもらえたことは、恋愛の対象外ではないと思えたし、信楽は『感じさせてやれる』と自信をつけられた。
たった一度抱いてもらっただけで、相手を自分のものだと思ってしまうのは自惚れになるのだろうか。
旭は、明るくなった日差しのある中で、布団から抜け出して恥ずかしさを纏った。
昨夜は真っ先に丸裸になり、ベッドに飛び込んだというのに…。
そんな姿に呆れるのか、信楽から苦笑が漏れる。
感情のまま、勢いのまま突き進んでしまう旭の行動は、信楽にとってどう捉えられるのだろう。
ただ、嫌がられていない雰囲気だけは伝わってくるから、ホッと息もつくし、安らぎも感じられる。
伊吹と比べられているのか…、それでも彼とは違う感触を信楽には残せているのだろう。
朝まで抱きしめてくれた力強い腕に、嫌悪感は見られない。

この家を去るのが惜しい…と思いながら、「簡単だ」と言った信楽の手作りの朝食を消化して、旭はマンションを後にすることになった。
初めて教えてもらえた住居は、旭にとって忘れられない場所になっていた。
「また来てもいい?」
そう問いかけた旭に、信楽は苦笑だけを浮かべた。
抱かれたことは、一時的な”癒し”でしかなかったのだろうか。
体を求められるのなら、それだけでもいい、と、虚しい思いが旭の中に生まれる。
そんな些細なつながりだけでも、持っていたかった…。

過去の苦しみなのか、信楽が抱えているものは大きいのだと、ふと旭も感じた。
全ては伊吹が残していったものなのだろう。
ふたりの過去をとやかく言う気はなかったが、まだ燻った関係にあることは一目瞭然で、抜け出せていない信楽がいるのも悟ることができる。
自分ではダメなのだろうか…。
一度抱いてもらった体をまた再び、求めてもらうことは不可能なのだろうか…。

曖昧にされた返事に、旭は縋りついた。
身長の大きな信楽にしてみたら、旭の小さな体はすっぽりと収まってしまう。
嫌なら…、突っぱねられたなら、次のステップに進む方向は違ってくるのだろう。
だけど信楽の腕は、縋りつく旭を拒絶しなかった。
だからこそ甘えて、もっと…と強請ってしまう。
苦しかった過去があるのなら、忘れてほしい…。

思いのまま進む旭は、その日のうちに伊吹に連絡を入れていた。
旭が信楽に想いを寄せているのはすでに知られた話だ。
信楽が語ってくれない以上、伊吹に聞くしかない。
聞いてどうなる問題だとも思えなかったが、信楽が苦しむならなんとかしてやりたかった。
その原因を知りたかった。
どうしたって信楽は言いはしないし、口を割ってくれそうなのは伊吹のほうだ。
慣れた性格が物事の進みを推し量る。

ランチタイム、多国籍料理を提供してくれる、半個室のレストランで、旭は信楽に抱かれたことを隠さなかった。
もちろん驚いていたのは伊吹の方だったが…。
そこには”安堵”もあったような気がする…。
「抱けたんだ…」
ポツリと呟かれた伊吹の言葉に旭は絶句していた。
“伊吹以外”男は抱けない人だったのだろうか…。
自分に想いを表してくれた人。まだ過去を忘れていない人…。
だけど信楽は抱いてくれたと…。旭は精一杯、彼を感じたと訴えた。
「それ、どういう意味…?」
悲しい笑みを浮かべた伊吹に、過去の苦しさが垣間見えてくるようだった。
同じことを、信楽も感じていたのだろうか…。

「信楽さんには悪いことをした…。本当に謝っても謝り切れないくらい…」
「裏切った…とかそんなことじゃなくて?」
伊吹が新しい男と新しい人生を切り開いたことなどすでに知る。
その影に、会えないほど辛い別れがあったことも…。
伊吹の台詞は、もっと深い事情を滲ませてくれていた。今の旭にしてみたら曖昧にできる内容ではなかった。
どこまでも知りたい、隠されたくないという思いが強く湧いてくる。

「裏切った…。そんな生易しいものじゃないかな…」
ポツリと呟かれた言葉は、伊吹自身、救ってほしいものがあるような気すらしてくる。
苦しんでいるのはどちらもなのか…。
「なに、を…?」
目の前の料理に全く手がつけられない。
乾いた喉を潤そうと手にしたお茶の注がれたグラス…。

「抱かれていても気持ち良くないって傷つけた…」
伊吹の台詞に目を見開いた旭は、何を取ることもなく、手にしたグラスを相手に投げつけていた。
信楽が抱く相手に対して躊躇いをもつ感情を、激しく知る。
信楽が恋に臆病になること。旭が攻撃的に進まなければやってこない、我慢した感情。
その苦しみの中に落とした憎悪…。

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ワッハハッヽ(▽ ̄ )乂(  ̄▽)ノ(どっち向いて良いんだか…←何も言わない…)
出たよ旭、ばらしたよ伊吹。
伊吹も溜めこんでいたんだと思います。
誰かにしかってほしかったのかなぁ…。
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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-04-23-Mon 01:25 [編集]
あの時の伊吹には、素直に気持ちを表した言葉
まぁ 言ってはいけない言葉だったのは 確かですよね。

信楽が好きな旭が伊吹へ憎悪の情を抱く気持ちは理解できるけど...

感じるか 感じないかは、相性と通い合う感情次第ですからね。
何しろ 甲賀とは 相性が抜群の良過ぎですし♪
こればかりは仕方が無いって~ε-( ̄ω ̄)ゞbyebye☆
 
スゲッ
コメントちー | URL | 2012-04-23-Mon 07:06 [編集]
旭、コワッ(笑)
ぐらす、投げつけるか?
ビックリだぁ。

でも、旭に伊吹の気持ちも聞いて貰えたら、伊吹も少しは楽になるかな?
信楽さんの代わりにたくさんたくさん、怒られなさいね。
そうしないと、伊吹も前に進めないからね。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-23-Mon 07:11 [編集]
けいったん様
おはようございます。

> あの時の伊吹には、素直に気持ちを表した言葉
> まぁ 言ってはいけない言葉だったのは 確かですよね。
>
> 信楽が好きな旭が伊吹へ憎悪の情を抱く気持ちは理解できるけど...

伊吹も正直っ子になった時だったんですけどね。
信楽を傷つける言葉でしたからね。
そこのところは隠すべきだったのではないでしょうか。
真実を知っちゃったら、旭も黙っていられないでしょう。
信楽がすんなりと別れてくれれば(?)回避できたのかしら?!

> 感じるか 感じないかは、相性と通い合う感情次第ですからね。
> 何しろ 甲賀とは 相性が抜群の良過ぎですし♪
> こればかりは仕方が無いって~ε-( ̄ω ̄)ゞbyebye☆

体の相性って他人には分かりませんからね。
あの二人はバッチリだったから、それが言葉に出ちゃったのでしょう。
旭もバッチリになって満足できるようになればいいですね。
コメントありがとうございました。

Re: スゲッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-04-23-Mon 07:33 [編集]
ちー様
おはようございます。ご一緒していましたね。

> 旭、コワッ(笑)
> ぐらす、投げつけるか?
> ビックリだぁ。

旭、感情のままに動いております。
信楽がはっきりと旭を選んでくれない苛立ちもあるんでしょう。
そして信楽が傷ついていることも知っちゃったし。
恨んでいますね…。

> でも、旭に伊吹の気持ちも聞いて貰えたら、伊吹も少しは楽になるかな?
> 信楽さんの代わりにたくさんたくさん、怒られなさいね。
> そうしないと、伊吹も前に進めないからね。

信楽が幸せになってくれれば伊吹も救われると思います。
まだ踏み出せない信楽を知っているから伊吹も苦しんでいるんですよね。
旭に努力していただきましょう。
コメントありがとうございました。

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