片親を失った苦しさは持っているのだろう。残った一人が少しでも具合が悪いとなれば当然心を痛める。
穂波はいっぺんに失いすぎて、現実が見えなかった。
そして歳の離れた兄が、何よりそばにいようと、努力を重ねてくれたから…今がある。
支えられてここまでこられた。これが自分と嘉穂だけだったら…と思うことは何度もある。
歳が離れすぎていて、どこか疎遠だったのかもしれない。
改めて感じた彼なりの思ってくれる気持ち。
まともな生活なんてできなかった。きっと親戚にも、ふたりいっぺんに引き取れないと離されて暮らすことになっていたはずだ。
学校も生活も変わる。
気心知れた人がそばにいてくれる力強さは、何にも変えられないと、学んできた。
それは浮羽の父も同じことだったと思う。
残された”家族”のために…。
「ホナ…」
腕に抱いた小さな体が、少し震えて、やっぱり考えて、引き離そうとする。
年上として、まだ未成年だという立場を考慮しても、穂波の気持ちをすんなりと受け入れられるはずがなかった。
「父さんは大丈夫だよ」
「そうじゃなくて…っ」
誤魔化されそうになる空気を遮って、腕の強さで浮羽を押さえこんでいた。
「浮羽さん、お父さんのために…って努力していること、すごく多くない?そうやって頑張ってる浮羽さんを見るのもいいよ。いいけどっ。甘えてほしいよ…。まだまだなこんな俺でも、愚痴とか言うくらいでもいいよ。少しでも頼ってほしいんだ。俺、浮羽さんのためになること、したい…」
「ホナ…、憧れているだけだよ。働くっていう姿に…。生活のこともあるでしょ。焦っているだけだよ。もっと良く考えて…」
「それって断られているってことだよね?」
仕事のみの面ではない。穂波の抱える想いを気付いているから、答えられないと告げられているのと一緒。
穂波自身、いつの間にこんなに心に広がる思いが強くなったのかと振り返った。
だけど、考えたって、詳しい理由を箇条書きにして恋に発展する人なんていないだろう。
親しく付き合ってくれたのは、これまでの態度で充分感じられること。
それは、”付け入る隙”なのだろうか…。
はっきりと身を引く穂波の意思も台詞から感じられたのか。
誤魔化し続けてきたことは浮羽も心に湧いているのだろうか。
ほんの僅か、腕の中でビクンと震えた体は、突っぱねられない戸惑いを抱えている。
人の良さ…と言えばそれまでだが、それ以上に特別に寄せてくれるものがあること。
だから激しく嫌がられることなく、親身になって穂波の話を聞いてくれた…のではないか…。自惚れだろうか…。
兄に対しても”頼ってほしい”と願った。本人のプライドを傷つけることになるかと思って口に出せなかった。
それと同じように過ごす人に、これまでできなかった、何かの償いのようなもの…。
憧れを期待として混同するのは間違えているのかもしれないけれど、浮羽の動揺が見られれば、一度知ってしまえば離れることはできなくなる。
「ホナ…、将来を考えるのはいいことだよ。でも俺のことはそこに含めちゃいけない。ホナはホナの…」
「何で?どうしてダメなの?浮羽さんの力になれること、ないのかな。今だって、精一杯気を張っているじゃない。そういうとき、頼ってもらえないの?見てて辛いよ…」
胸の内を晒す穂波に、ズズッと鼻水をすする音が聞こえた。
ほんのわずかな時間でも、父親のことを考え、耐えていた気持ちが、的確に当てられて張り詰めていたものが途切れたのだろうか。
「ホナ…。本当に、…高校生には思えないね…」
「浮羽さんが若いからだよ…」
「情けないやつみたい…」
「余計、しっかりできるかもだよ」
「減らず口…」
クスッと少し笑ってくれたことに、穂波の気持ちも和らぐ。
全く嫌われていないこと。今のこの時間、自分に気を許してくれたこと。
「この店、一緒にやっていきたい…。そのために進学先、変えたいんだ。少しでも早く、もっとたくさん知りたいこと、ありすぎるの…」
認めてくれたと思った。
だけど浮羽はあからさまに動揺を見せた。
「ホナ…?!本気でっ?!…そんな簡単に決めちゃ…っ」
「きっかけ、作ってくれたのが浮羽さんなのに…。それにやっぱり、こんなふうに一人で頑張る姿見せられたら、そばにいたいよ」
「ホナ…」
一番気が弱っている時につけ込んでいるのだろうか。
ひと震えした体は、奥底に秘めた不安を、顕著に表していた。
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穂波はいっぺんに失いすぎて、現実が見えなかった。
そして歳の離れた兄が、何よりそばにいようと、努力を重ねてくれたから…今がある。
支えられてここまでこられた。これが自分と嘉穂だけだったら…と思うことは何度もある。
歳が離れすぎていて、どこか疎遠だったのかもしれない。
改めて感じた彼なりの思ってくれる気持ち。
まともな生活なんてできなかった。きっと親戚にも、ふたりいっぺんに引き取れないと離されて暮らすことになっていたはずだ。
学校も生活も変わる。
気心知れた人がそばにいてくれる力強さは、何にも変えられないと、学んできた。
それは浮羽の父も同じことだったと思う。
残された”家族”のために…。
「ホナ…」
腕に抱いた小さな体が、少し震えて、やっぱり考えて、引き離そうとする。
年上として、まだ未成年だという立場を考慮しても、穂波の気持ちをすんなりと受け入れられるはずがなかった。
「父さんは大丈夫だよ」
「そうじゃなくて…っ」
誤魔化されそうになる空気を遮って、腕の強さで浮羽を押さえこんでいた。
「浮羽さん、お父さんのために…って努力していること、すごく多くない?そうやって頑張ってる浮羽さんを見るのもいいよ。いいけどっ。甘えてほしいよ…。まだまだなこんな俺でも、愚痴とか言うくらいでもいいよ。少しでも頼ってほしいんだ。俺、浮羽さんのためになること、したい…」
「ホナ…、憧れているだけだよ。働くっていう姿に…。生活のこともあるでしょ。焦っているだけだよ。もっと良く考えて…」
「それって断られているってことだよね?」
仕事のみの面ではない。穂波の抱える想いを気付いているから、答えられないと告げられているのと一緒。
穂波自身、いつの間にこんなに心に広がる思いが強くなったのかと振り返った。
だけど、考えたって、詳しい理由を箇条書きにして恋に発展する人なんていないだろう。
親しく付き合ってくれたのは、これまでの態度で充分感じられること。
それは、”付け入る隙”なのだろうか…。
はっきりと身を引く穂波の意思も台詞から感じられたのか。
誤魔化し続けてきたことは浮羽も心に湧いているのだろうか。
ほんの僅か、腕の中でビクンと震えた体は、突っぱねられない戸惑いを抱えている。
人の良さ…と言えばそれまでだが、それ以上に特別に寄せてくれるものがあること。
だから激しく嫌がられることなく、親身になって穂波の話を聞いてくれた…のではないか…。自惚れだろうか…。
兄に対しても”頼ってほしい”と願った。本人のプライドを傷つけることになるかと思って口に出せなかった。
それと同じように過ごす人に、これまでできなかった、何かの償いのようなもの…。
憧れを期待として混同するのは間違えているのかもしれないけれど、浮羽の動揺が見られれば、一度知ってしまえば離れることはできなくなる。
「ホナ…、将来を考えるのはいいことだよ。でも俺のことはそこに含めちゃいけない。ホナはホナの…」
「何で?どうしてダメなの?浮羽さんの力になれること、ないのかな。今だって、精一杯気を張っているじゃない。そういうとき、頼ってもらえないの?見てて辛いよ…」
胸の内を晒す穂波に、ズズッと鼻水をすする音が聞こえた。
ほんのわずかな時間でも、父親のことを考え、耐えていた気持ちが、的確に当てられて張り詰めていたものが途切れたのだろうか。
「ホナ…。本当に、…高校生には思えないね…」
「浮羽さんが若いからだよ…」
「情けないやつみたい…」
「余計、しっかりできるかもだよ」
「減らず口…」
クスッと少し笑ってくれたことに、穂波の気持ちも和らぐ。
全く嫌われていないこと。今のこの時間、自分に気を許してくれたこと。
「この店、一緒にやっていきたい…。そのために進学先、変えたいんだ。少しでも早く、もっとたくさん知りたいこと、ありすぎるの…」
認めてくれたと思った。
だけど浮羽はあからさまに動揺を見せた。
「ホナ…?!本気でっ?!…そんな簡単に決めちゃ…っ」
「きっかけ、作ってくれたのが浮羽さんなのに…。それにやっぱり、こんなふうに一人で頑張る姿見せられたら、そばにいたいよ」
「ホナ…」
一番気が弱っている時につけ込んでいるのだろうか。
ひと震えした体は、奥底に秘めた不安を、顕著に表していた。
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こんにちは♪
私、何でこの回読んでないんだろう?
毎日、楽しみにしてたのに・・・
話が繋がった♪
良かった良かった。
ホナは、兄ちゃんに頼って欲しかったんだね。でも、兄ちゃんのプライドがって思ってたんだ。イイコだ、ホナ。
パン屋さんの心の隙間にも入り込めたし、兄ちゃんもきっとわかってくれると思うよ。
パン屋さん、やっぱり好き~。
あ、私もホナに似てる。
ライバル?←対象外だからっ(笑)
「もしもし?隊長?若い隊員がレコード知らないって・・・
え?湯沸し器も、ダイヤル式電話も知らない!くそ~。ゆとり教育の弊害がここにも!夏合宿しましょう!」
良いの、どうせアラフォーだもん。
私、何でこの回読んでないんだろう?
毎日、楽しみにしてたのに・・・
話が繋がった♪
良かった良かった。
ホナは、兄ちゃんに頼って欲しかったんだね。でも、兄ちゃんのプライドがって思ってたんだ。イイコだ、ホナ。
パン屋さんの心の隙間にも入り込めたし、兄ちゃんもきっとわかってくれると思うよ。
パン屋さん、やっぱり好き~。
あ、私もホナに似てる。
ライバル?←対象外だからっ(笑)
「もしもし?隊長?若い隊員がレコード知らないって・・・
え?湯沸し器も、ダイヤル式電話も知らない!くそ~。ゆとり教育の弊害がここにも!夏合宿しましょう!」
良いの、どうせアラフォーだもん。
ちーたま
こんにちは。
> こんにちは♪
> 私、何でこの回読んでないんだろう?
> 毎日、楽しみにしてたのに・・・
途中にまぎれるから気付かなかったのかしら~。
でも読んでくれたのね(*^_^*)
> 話が繋がった♪
> 良かった良かった。
>
> ホナは、兄ちゃんに頼って欲しかったんだね。でも、兄ちゃんのプライドがって思ってたんだ。イイコだ、ホナ。
>
> パン屋さんの心の隙間にも入り込めたし、兄ちゃんもきっとわかってくれると思うよ。
> パン屋さん、やっぱり好き~。
>
> あ、私もホナに似てる。
> ライバル?←対象外だからっ(笑)
兄ちゃんのプライドがあったから、浮羽のことにも気づけたのでしょう。
穂波もいっぱい気を使える、とっても純粋でいいこです。
こうやって話をこじつけていく私です(←)
> 「もしもし?隊長?若い隊員がレコード知らないって・・・
> え?湯沸し器も、ダイヤル式電話も知らない!くそ~。ゆとり教育の弊害がここにも!夏合宿しましょう!」
>
>
> 良いの、どうせアラフォーだもん。
隊員、若いんですね~(←)
ダイヤル式の電話は、数字の上を押して使うんですよ~(大ウソ)
隊員A「湯沸かし器…って?」
隊員B「やかんのことだろ」
隊員A「あ、なるほどね」
隊員C「あっというまにすぐお湯が沸く♪てぃふ○ーる♪ あれかぁ」
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> こんにちは♪
> 私、何でこの回読んでないんだろう?
> 毎日、楽しみにしてたのに・・・
途中にまぎれるから気付かなかったのかしら~。
でも読んでくれたのね(*^_^*)
> 話が繋がった♪
> 良かった良かった。
>
> ホナは、兄ちゃんに頼って欲しかったんだね。でも、兄ちゃんのプライドがって思ってたんだ。イイコだ、ホナ。
>
> パン屋さんの心の隙間にも入り込めたし、兄ちゃんもきっとわかってくれると思うよ。
> パン屋さん、やっぱり好き~。
>
> あ、私もホナに似てる。
> ライバル?←対象外だからっ(笑)
兄ちゃんのプライドがあったから、浮羽のことにも気づけたのでしょう。
穂波もいっぱい気を使える、とっても純粋でいいこです。
こうやって話をこじつけていく私です(←)
> 「もしもし?隊長?若い隊員がレコード知らないって・・・
> え?湯沸し器も、ダイヤル式電話も知らない!くそ~。ゆとり教育の弊害がここにも!夏合宿しましょう!」
>
>
> 良いの、どうせアラフォーだもん。
隊員、若いんですね~(←)
ダイヤル式の電話は、数字の上を押して使うんですよ~(大ウソ)
隊員A「湯沸かし器…って?」
隊員B「やかんのことだろ」
隊員A「あ、なるほどね」
隊員C「あっというまにすぐお湯が沸く♪てぃふ○ーる♪ あれかぁ」
コメントありがとうございました。
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