裸で並んでベッドに転がり、余韻を楽しんでいた時、ガタンと物音がして、お父さんが帰ってきたのが分かった。
無断で部屋に入ってくることはないが、万が一にもふたりとも裸でいるのを見られるのはマズイ。
慌てて穂波は床に脱ぎ捨てた衣類を身につけた。
同じように浮羽も身支度を整える。
「遅くなっちゃったかな…」
帰宅時間の心配をされ、いつもと変わらない雰囲気を作り出してくれる。
先程までの交わりの興奮を打ち消してしまうようなもの。
それはお父さんの前でも平然としていられるようにとの配慮なのだと気付いた。
大人らしいはからないなのか…。
部屋を出て居間に行くと、「おぉ、来ていたのか」と明るい声のお父さんが迎えてくれる。
疾しいことをしてしまった気分を浮羽は感じ取るのか、さり気なく玄関まで促してくれる。
「ホナ、お兄さん、待っているんじゃ…」
「あ、うん…」
忙しいのだ、というような様子にお父さんもそれ以上声をかけてくることはなかった。
「お邪魔しました…」
最低限の挨拶だけを交わして、玄関の外に出る。
浮羽も続いてきた。
暗がりの中で、もう一度浮羽に手を伸ばせば、大人しく腕の中に収まってくれる。
「今日は…、本当にありがとう…」
「うん…」
「待ってて…。絶対に浮羽さんに並べるようになるから…」
「うん…」
腕の中にすっぽりと包まれてしまう細さ。それなのに気丈に振舞い、周りの人間に元気をくれる存在。
大事に守って、自分のために居てほしい…と願った。
名残惜しさを胸に抱きながら、「また明日」と額にくちづけを落として離れる。
…明日…。その日が必ず来てくれることを祈って…。
穂波の後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くして見送った。
まだ子供だと分かる人を、体で繋ぎとめようとはズルイ手なのだろうか…。
浮羽は心の内側で渦巻く葛藤を押し留める。
信じたいことはたくさんある。真面目でまっすぐな穂波に、裏切りなんてないだろうけれど…。
まだ人生を決めては早いだろう…とは思っても、その手に溺れたくなったのは自分のほうだった。
だから、不安がる人を支えるふりをして、そばにいたい気持ちを隠しているのかもしれない。
年下とは思えない、大きな背中。
初めて見た筋肉の塊のような肉体に、守られたい甘えが生まれた。
ずっと淋しかった心も身体も埋めてくれる若さと力強さがある。
今のままで、ありのままであってほしい。
体の中に残る穂波の感触を大事に感じながら、浮羽はまた家の中に戻った。
何かを隠すように、「先にお風呂、入っちゃっていい?」と自然に話しかけると、「ああ」と温かい声が返ってくる。
お父さんに穂波とのことを言える日はいつになるだろうか…。
反対されても、だけど離れられない心の絆を今日得た気がしていた。
『待たせるかもしれないけれど…』
何度も言われた言葉を振り返る。
信じてる…。信じているよ、ホナ…。
※けいったん様より詩をお借りいたしました。
浮羽の心情に似合っている気がしたのは私だけでしょうか…。
『君へ』
悩み問う君に
私の言葉は 届いてるだろうか
君の前には たくさんの道があるというのに
君は弱い まだ 見えない不安に
君は 臆病 まだ 掴めない焦りに
でも それが 君...君は、君
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無断で部屋に入ってくることはないが、万が一にもふたりとも裸でいるのを見られるのはマズイ。
慌てて穂波は床に脱ぎ捨てた衣類を身につけた。
同じように浮羽も身支度を整える。
「遅くなっちゃったかな…」
帰宅時間の心配をされ、いつもと変わらない雰囲気を作り出してくれる。
先程までの交わりの興奮を打ち消してしまうようなもの。
それはお父さんの前でも平然としていられるようにとの配慮なのだと気付いた。
大人らしいはからないなのか…。
部屋を出て居間に行くと、「おぉ、来ていたのか」と明るい声のお父さんが迎えてくれる。
疾しいことをしてしまった気分を浮羽は感じ取るのか、さり気なく玄関まで促してくれる。
「ホナ、お兄さん、待っているんじゃ…」
「あ、うん…」
忙しいのだ、というような様子にお父さんもそれ以上声をかけてくることはなかった。
「お邪魔しました…」
最低限の挨拶だけを交わして、玄関の外に出る。
浮羽も続いてきた。
暗がりの中で、もう一度浮羽に手を伸ばせば、大人しく腕の中に収まってくれる。
「今日は…、本当にありがとう…」
「うん…」
「待ってて…。絶対に浮羽さんに並べるようになるから…」
「うん…」
腕の中にすっぽりと包まれてしまう細さ。それなのに気丈に振舞い、周りの人間に元気をくれる存在。
大事に守って、自分のために居てほしい…と願った。
名残惜しさを胸に抱きながら、「また明日」と額にくちづけを落として離れる。
…明日…。その日が必ず来てくれることを祈って…。
穂波の後ろ姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くして見送った。
まだ子供だと分かる人を、体で繋ぎとめようとはズルイ手なのだろうか…。
浮羽は心の内側で渦巻く葛藤を押し留める。
信じたいことはたくさんある。真面目でまっすぐな穂波に、裏切りなんてないだろうけれど…。
まだ人生を決めては早いだろう…とは思っても、その手に溺れたくなったのは自分のほうだった。
だから、不安がる人を支えるふりをして、そばにいたい気持ちを隠しているのかもしれない。
年下とは思えない、大きな背中。
初めて見た筋肉の塊のような肉体に、守られたい甘えが生まれた。
ずっと淋しかった心も身体も埋めてくれる若さと力強さがある。
今のままで、ありのままであってほしい。
体の中に残る穂波の感触を大事に感じながら、浮羽はまた家の中に戻った。
何かを隠すように、「先にお風呂、入っちゃっていい?」と自然に話しかけると、「ああ」と温かい声が返ってくる。
お父さんに穂波とのことを言える日はいつになるだろうか…。
反対されても、だけど離れられない心の絆を今日得た気がしていた。
『待たせるかもしれないけれど…』
何度も言われた言葉を振り返る。
信じてる…。信じているよ、ホナ…。
※けいったん様より詩をお借りいたしました。
浮羽の心情に似合っている気がしたのは私だけでしょうか…。
『君へ』
悩み問う君に
私の言葉は 届いてるだろうか
君の前には たくさんの道があるというのに
君は弱い まだ 見えない不安に
君は 臆病 まだ 掴めない焦りに
でも それが 君...君は、君
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穂波と浮羽
二人は、まだまだ始まったばかり...
これから待っているのは 良い事ばかりでは無いでしょう。
でも 二人なら 支えてくれる周りの人達が居るから 乗り切って行ってくれると信じてます。
その先にある 幸せの為に・・・
きえ様の作品のお目汚しにならないかと、心配!
作者さまの了解を得ずに 勝手に詩を贈るくせして ビビリのへタレな私。
本当に 素敵な作品に添えって下さって有り難う御座います。
ヾ(@^∇^@)ノアリガトー♪...byebye☆
二人は、まだまだ始まったばかり...
これから待っているのは 良い事ばかりでは無いでしょう。
でも 二人なら 支えてくれる周りの人達が居るから 乗り切って行ってくれると信じてます。
その先にある 幸せの為に・・・
きえ様の作品のお目汚しにならないかと、心配!
作者さまの了解を得ずに 勝手に詩を贈るくせして ビビリのへタレな私。
本当に 素敵な作品に添えって下さって有り難う御座います。
ヾ(@^∇^@)ノアリガトー♪...byebye☆
けいったん様
こんにちは。
ちょっとオーバーした番外でした(いつものことながら…)。
> 穂波と浮羽
> 二人は、まだまだ始まったばかり...
> これから待っているのは 良い事ばかりでは無いでしょう。
>
> でも 二人なら 支えてくれる周りの人達が居るから 乗り切って行ってくれると信じてます。
> その先にある 幸せの為に・・・
ふたりして支え合って生きていけると思います。
頑固かもしれないけれど、物分かりのいい人が周りにいっぱいいますからね。
ちょっと本編とは時間差ができてしまった感じがありましたが、理解して読んでくださった方々に本当に御礼申し上げます。
また何かの機会に、ふたりでお店開いているような光景でも書けたらいいなぁ(←)
今はまだ始まりの一歩ってところでしょうか。
> きえ様の作品のお目汚しにならないかと、心配!
> 作者さまの了解を得ずに 勝手に詩を贈るくせして ビビリのへタレな私。
> 本当に 素敵な作品に添えって下さって有り難う御座います。
> ヾ(@^∇^@)ノアリガトー♪...byebye☆
こちらこそ~。
花を添えて頂きました。
勝手に奪ってきたような状態なのに、快く貸し出してくださいましてありがとうございました。
どんなふうに使われるのかの不安もあったのではないでしょうか。
また何か盗みに行きますヽ(゚∀゚)ノニパッ
いっぱい書いて待っていてね♪
コメントありがとうございました。
こんにちは。
ちょっとオーバーした番外でした(いつものことながら…)。
> 穂波と浮羽
> 二人は、まだまだ始まったばかり...
> これから待っているのは 良い事ばかりでは無いでしょう。
>
> でも 二人なら 支えてくれる周りの人達が居るから 乗り切って行ってくれると信じてます。
> その先にある 幸せの為に・・・
ふたりして支え合って生きていけると思います。
頑固かもしれないけれど、物分かりのいい人が周りにいっぱいいますからね。
ちょっと本編とは時間差ができてしまった感じがありましたが、理解して読んでくださった方々に本当に御礼申し上げます。
また何かの機会に、ふたりでお店開いているような光景でも書けたらいいなぁ(←)
今はまだ始まりの一歩ってところでしょうか。
> きえ様の作品のお目汚しにならないかと、心配!
> 作者さまの了解を得ずに 勝手に詩を贈るくせして ビビリのへタレな私。
> 本当に 素敵な作品に添えって下さって有り難う御座います。
> ヾ(@^∇^@)ノアリガトー♪...byebye☆
こちらこそ~。
花を添えて頂きました。
勝手に奪ってきたような状態なのに、快く貸し出してくださいましてありがとうございました。
どんなふうに使われるのかの不安もあったのではないでしょうか。
また何か盗みに行きますヽ(゚∀゚)ノニパッ
いっぱい書いて待っていてね♪
コメントありがとうございました。
終わっちゃった。淋しいけど、良い終わり方だなって思います。余韻を残しつつ二人の未来に思いをはせて。
ウッキーの方が心配だったのですね。
年上の余裕を気取りつつも、内心不安だったかな。
こっちもいろいろありそうだけど、もう少ししたら兄ちゃんも一生の伴侶を得るから我慢だね、ホナ。
けいったんさんの詩も素敵でした。
いいな、短文で思いを現せて。
隊長シリーズとか連載しましょうよ。
(いや、切ないのが上手そうだな)
きえさん、お疲れ様でした。
ウッキーの方が心配だったのですね。
年上の余裕を気取りつつも、内心不安だったかな。
こっちもいろいろありそうだけど、もう少ししたら兄ちゃんも一生の伴侶を得るから我慢だね、ホナ。
けいったんさんの詩も素敵でした。
いいな、短文で思いを現せて。
隊長シリーズとか連載しましょうよ。
(いや、切ないのが上手そうだな)
きえさん、お疲れ様でした。
ちー様
こんにちは。
> 終わっちゃった。淋しいけど、良い終わり方だなって思います。余韻を残しつつ二人の未来に思いをはせて。
> ウッキーの方が心配だったのですね。
> 年上の余裕を気取りつつも、内心不安だったかな。
> こっちもいろいろありそうだけど、もう少ししたら兄ちゃんも一生の伴侶を得るから我慢だね、ホナ。
良い終わり方って行っていただけてとっても嬉しいです。
この二人には、まだ未来がありますものね。
ウッキーもいっぱい考えた結果…というか、思いがつまっているのだと思います。
…そう、もう少ししたら(時差があってすみません)兄ちゃんも…。
> けいったんさんの詩も素敵でした。
> いいな、短文で思いを現せて。
> 隊長シリーズとか連載しましょうよ。
> (いや、切ないのが上手そうだな)
>
> きえさん、お疲れ様でした。
けいったん様の詩はいつも情景を背中で語ってくれる(←)っていう雰囲気があります。
短い中でも的確にとらえてしまう視力は感動です。
私、大好きですよ~。
…え?隊長シリーズ…???
【俳句の会】とか作られたら逃げますけれど…。
(無理~っっっ。日本語知らないもん~っっっΣ(T▽T;)
あ、みんなでコメント欄で水遊びしていてね。
ビニールプール用意しておくから。
スイミング。;:。へ( -_-)_
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 終わっちゃった。淋しいけど、良い終わり方だなって思います。余韻を残しつつ二人の未来に思いをはせて。
> ウッキーの方が心配だったのですね。
> 年上の余裕を気取りつつも、内心不安だったかな。
> こっちもいろいろありそうだけど、もう少ししたら兄ちゃんも一生の伴侶を得るから我慢だね、ホナ。
良い終わり方って行っていただけてとっても嬉しいです。
この二人には、まだ未来がありますものね。
ウッキーもいっぱい考えた結果…というか、思いがつまっているのだと思います。
…そう、もう少ししたら(時差があってすみません)兄ちゃんも…。
> けいったんさんの詩も素敵でした。
> いいな、短文で思いを現せて。
> 隊長シリーズとか連載しましょうよ。
> (いや、切ないのが上手そうだな)
>
> きえさん、お疲れ様でした。
けいったん様の詩はいつも情景を背中で語ってくれる(←)っていう雰囲気があります。
短い中でも的確にとらえてしまう視力は感動です。
私、大好きですよ~。
…え?隊長シリーズ…???
【俳句の会】とか作られたら逃げますけれど…。
(無理~っっっ。日本語知らないもん~っっっΣ(T▽T;)
あ、みんなでコメント欄で水遊びしていてね。
ビニールプール用意しておくから。
スイミング。;:。へ( -_-)_
コメントありがとうございました。
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