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BLの丘
見ていた場所 5
2012-07-25-Wed  CATEGORY: 見下ろせる場所
二つの寝室があるスィートルームには、やはりそれぞれバスルームが存在する。
ダブルベッドのあるほうへと入った征司と志木は、ふたり一緒にシャワーを浴びてしまった。
見慣れた体だ。恥ずかしい気持ちが湧かないのは歳を取ってしまった証拠だろうか。
それなのにベッドに入りバスローブを剥がされれば羞恥心がこみ上がってくるのだから不思議だ。
「征司…」
横にされた体に覆いかぶさってくる紳士がいる。
事業に追われていても、優秀な社員に囲まれているせいだろうか。疲労感は伺えない。
「何?我慢しろって?」
フッと笑った顔に返す表情には、少しばかりの呆れも混じる。
「そうじゃないけれど…。慎弥くんたち、いるじゃない…」
「あっちはあっちで励んでいるんじゃないかな」
「そんなことないと思うけど…」
志木の反論を塞ぐように唇を重ねられては、続く文句も飲み込まれた。
別々の部屋を取っても良かったのに、「どうせあるベッドルーム」を有効活用されたのは、自分たちを知った皆野に対しての抵抗のなさなのか、久し振りの”弟”との交流をギリギリまで味わいたかったからなのか…。

手が離れた…とはいえ、まだ慎弥に多くの心配事や気遣いを残しているのを志木は良く知っている。
一企業の経理課に努める志木は、スィートルームなんて無縁の世界で暮らしている一般市民だ。
時々こうして征司が連れ出してくれることはあっても、一番落ち着ける意味では、滞在するのは一人暮らしをする志木の自宅が多かった。
以前からこのホテルの評判は聞いていたから、志木も憧れるものがあって、偶然にも征司が利用するのだと聞いた時に、さりげなく我が儘を言った。
その結果、うまく事を運んで一緒に泊まれる…と目論んでいたのだが、幸か不幸か、皆野と慎弥の偶然の出会いから、急遽取りやめとなってしまった。
あの頃、まだまだ弟に気を使いまくっていた”お兄ちゃん”は、慎弥が連泊するこの部屋に志木を連れてくることなどできなかった。
実際には慎弥は戻らなかった…と聞いては、振りまわされたことにガックリとしたものであるが…。

とはいえ、それをきっかけに征司が弟離れを始めたのは、志木にとっても驚きの連続だった。
突然、「一緒に住もう」と言われた時は、何が起こったのか理解できなかったくらいで、皆野に寄せた信頼と自分に対するケジメを痛感させられた。
同時に志木に向けられる真剣な感情に、改めて感動したものだったが…。
「待たせた…」と呟かれた時、志木の気持ちを充分に汲み取りながら、放っておけなかった”弟”の存在があったこと。
ようやく、自分のものになったのだと、年甲斐もなく瞼が熱くなったのを、よく覚えている。

今日、揃ったのは、征司なりの感謝が含まれていた。
慎弥と実家を皆野に押し付けてしまったこと。志木に何もできずにいたこと。
この部屋に案内することで、自分のレベルを皆野に知らしめ、発破をかけたい魂胆もあったのかもしれないけれど…。
全ては慎弥を、より良い生活に導くための、陰ながらの努力なのだから…。その計画性の高さには改めて感心するというより、呆れるほうだ。
ある意味、皆野が気の毒に思えてくる。
こんな”兄”と張り合うハメになったのだから…。

一緒に住むことはあっても、一緒に働くことはない。
征司が新しく事業を起こした時に、抜擢の話はあっても、双方で拒絶しあっていた。
絶対にプライベートを持ち込むことが分かっていたからだ。
経営側としての態度と、雇われる側のような差別的な立場になりたくなかったのもある。
皆野の能力を聞かされた時、自分にそれだけの実力がないと、はっきり判断され、比べられるのも嫌だった。

重ねられた唇の隙間から吐息が漏れる。
いくら扉で隔てられているからといって…、皆野も慎弥もドアの外で聞き耳を立てるようなことはしないと分かっていても…。
いつものように振舞えない所作は、『万一にも…』と思ってしまうからだろう。
皆野の配慮の良さは、一緒にいれば充分に感じられることだったけれど、奔放に行動を起こす慎弥のことまでは拭いきれなかった。
その『万一』が余計な興奮を生み、昂らせていく。
普段では感じることのない、刺激…。
差し込まれた舌が上顎を撫で、歯列をなぞった。
熱い息と濡れた音が注ぎ込まれ、より一層”特別な夜”へと変えていく。

「せ…じ…」
密着した肌の下で、声を上げたくないと囁くように抗えば、口角を上げられた。
この状況を、やはり楽しんでいる征司なのだから、なんとタチが悪いことか…。
それこそが、普段見られない”恥じらい”なのだろう。
長いこと共に居過ぎて、どこか羞恥心が欠落した自分たちだった。
そこまで読んだのか、この男は…!!
思考の回りの良さには閉口するしかない。

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お兄ちゃん、相変わらず策略家だねぇ。
学生時代…あれから20年なんですよね~。
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コメント

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そうかあ
コメントちー | URL | 2012-07-25-Wed 04:21 [編集]
志木さんも諦めながらも我慢してたのか。
そして、今も心のどこかで慎弥をきにしてるんだ。
皆野さんとは少し違うけど、岩槻兄弟に振り回されて?お疲れ様ですね~。

しかし、岩槻兄。どこまで計画してるわけ?
羞恥心プレーがしたいが為に弟達まで利用したとか?
あはは~。まさかねー。まさかですよね?
Re: そうかあ
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-25-Wed 07:20 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 志木さんも諦めながらも我慢してたのか。
> そして、今も心のどこかで慎弥をきにしてるんだ。
> 皆野さんとは少し違うけど、岩槻兄弟に振り回されて?お疲れ様ですね~。

志木も複雑な心境で育ってきたんですよね。
でも征司のことを一番理解している人でもあるわけです。
そこに甘えちゃっている征司だから、時にこうして癒してあげようと何か計画をたてるのか…。

> しかし、岩槻兄。どこまで計画してるわけ?
> 羞恥心プレーがしたいが為に弟達まで利用したとか?
> あはは~。まさかねー。まさかですよね?

まさかね~♪
お兄ちゃんの考えることは私には分かりません(←)
弟たちは大人しく寝たはずなんだけど…。
だから共鳴はしないですね。
声が響かないことを祈りましょう。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-25-Wed 10:19 [編集]
少し慣れ過ぎた?熟れ過ぎた?征司と志木
慎弥と皆野が近くに居る この状況は 適度に良い刺激になるのかも!
d(*≧ω≦*)ネッネッ、征司♪

声を殺して‥ですか
だけどね~志木がどれだけ声を殺そうと努力してもね~
アノ時の気配と言うか 空気と言うか‥その諸々なものは 何故か伝わって来るのよね~

扉の隙間から漏れるのかな?
「何がって?」...「そう何がよ!!」
ニオウゾッ !"( ̄* )(* ̄^^ ̄*)( * ̄)"クンクン・・・byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-25-Wed 12:03 [編集]
けいったん様
こんにちは。
さりげなく表示してしまいましたが、かなり歳のいったCPだったりします。

> 少し慣れ過ぎた?熟れ過ぎた?征司と志木
> 慎弥と皆野が近くに居る この状況は 適度に良い刺激になるのかも!
> d(*≧ω≦*)ネッネッ、征司♪

歳をとると開き直れちゃうところ、多いですよね~。
そんな二人だったりします。
だから刺激は大事。
弟も使うんだね、征司♪

> 声を殺して‥ですか
> だけどね~志木がどれだけ声を殺そうと努力してもね~
> アノ時の気配と言うか 空気と言うか‥その諸々なものは 何故か伝わって来るのよね~
>
> 扉の隙間から漏れるのかな?
> 「何がって?」...「そう何がよ!!」
> ニオウゾッ !"( ̄* )(* ̄^^ ̄*)( * ̄)"クンクン・・・byebye☆

雰囲気は伝わっちゃうよね~。
分かっている皆野のほうがモンモンとしているかも。
だって、こんな立派(?)な場所に、意味もなく征司お兄ちゃん、来ないよね~。
漏れてる…、漏れてるよ~隙間から。
あぁ、においがぁ~。
コメントありがとうございました。

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