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BLの丘
見ていた場所 2
2012-07-22-Sun  CATEGORY: 見下ろせる場所
ダブルルームとツインルームがある間のリビングルームで、征司が慣れたように酒類を用意した。
隣に立つ志木もいるため、皆野は分かっていても手出しすることを躊躇ってしまう。
…よく知った部屋だったけれど…。
見守る側と使用する側では全く異なる意識があることを初めて知った。
整えられた全てをよどみなく使用できる精神状態に…というほうだろうか。
何を使っていくら…とみみっちい計算が頭のなかでされていく皆野は、やはり”庶民”なのであるのだろうか…。
ホテル側にいた感覚は抜けていないらしい。
だが征司も志木も気にせず利用してくれる。
それは、嬉しい面でもあったが…。自分が支払わないと分かっているからこそ…。

「おまたせ~」
志木が明るい声を上げて、リビングのガラステーブルに飲み物とスナックを置いた。
続いて征司が、極力立たなくても良いようにと、氷やアルコールを運んでくる。
そんな準備は自分でもしたのに…と皆野が戸惑うのを、今現在、ここの部屋の主は自分たち、というように、視線だけで制されてしまった。
良く知ってはいても、今現在皆野はゲストであるのだ…。
ラグの上にペタンと座りこむ慎弥を見ては、微笑んだ志木も同じ行動を見せて…。
かしこまったはずの皆野と征司もへたりこむ。
一番ラクなスタイルがどんなものなのか知るのだろう。
四人で囲む小さな席…。

話題は日常生活からビジネス、はたまた慎弥の学生生活のことなど切れない。
慎弥のことを気遣われるのは今までと違わないのだろうが…。
あれこれと指摘されるようなのは皆野にとって嬉しいでできごとでもなかった。
特に征司に言われては、面倒見の違いを言われているようで…。
どこまでも慎弥に手を焼いた過去があるとは知っていても、腑に落ちない何かがひっかかる。
違いを見せつけられるようで不甲斐なさを感じる。
そのことに気付くのか、志木は発言する征司をたしなめていた。
些細な行動で分かってしまう二人も、ある意味、”長けている”と思う。
それより、自分が幼いのか…。

そろそろ寝よう…と口にしたのは誰だったのか…。
以前と変わらない部屋分けだった。
ダブルルームの方へ征司と志木が消え、ツインルームとはいえくっついたベッドのあるほうに皆野と慎弥がこもった。
今更、気にされもしない関係なのかもしれないけれど…。
皆野としては、充分に満足できているのかと客の足跡を追ってしまう。
それに気付くのか、慎弥が「客商売しすぎっ」と苛立った声を上げた。
「別に…客商売…って…」
「してるじゃんっ。放っときゃいいんだよっ。ふたり、仲良くしているんだしっ」
どことなくイラついた態度に、今更でもなく、ブラコン丸出しの感情は、いい意味で皆野を刺激してくれた。
そんなふうにあからさまに嫉妬されても、逆にこちらが嫉妬してしまうというものだ。
「えーと、はいはい…。慎弥だけを気にかけているつもりだったんですけどね」
抱き込めば静かになってくれる。
いつだって見てほしいという甘えたさぶり…。
その純情さも皆野にとっては頼られる嬉しさに変わった。
また、兄とは違うものを持っているのだと…。

「皆野、きらい…」
いつもどおりの、決まった台詞がもれて、本心から現状を嫌がっていないことは計れた。
そのままベッドへと誘い込めば、大人しくついてくる。
いくら離れた寝室…とはいっても、あからさまに声をあげられるような行為は控えられた。
単に抱え込むだけの眠りにつかせる。
再度泊まれるとは思えない部屋は豪華で雰囲気はバッチリなのかもしれないが…。
疾しさも浮かんでくるけれど…。
次こそ、自分たちのためだけに…と狙いを定める皆野は、まだ若造なのだろうか。
慎弥は、こういった場所に泊まることに慣れているだけに、雰囲気などに興味がなく、今後が懸念された。
教え込まれたものは、溜め息すら生んでくる。
同時に、そのレベルまで思考を変えろということなのだろうか…。
皆野の今の収入は、かつてでは想像がつかないくらい変わっていた。
高値の花だったスィートルームも、どうにか手が届く範疇にある。
あとは…、同行してくれる人の感情なのだが…。

ツインルームとはいっても隣り合ったベッドは、流れ込んでくればすぐに抱えられた。
猫のようによりそってきてくれる姿は可愛いものだ。
兄を他人に盗られた淋しさもあるのだろうか。
いつの頃からか、慎弥は”離さないで”と肉体で訴えてきた。
皆野は口にしなかったけれど、悔しさはいつだって抱えていた。
守ってきた存在が変わったことを、慎弥も感じているのだろう。
それを上回る存在にならない限り、慎弥を手に入れることは不可能なのだろうか…。
まだ、追い越せない存在…、それが”兄”…。
見守ってきた年月の違いか。
感じさせられる兄弟の絆に、舌を巻く…。

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コメント

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ここにも
コメントちー | URL | 2012-07-22-Sun 07:29 [編集]
やっとたどり着いた。そして、気づいた。
ここにもブラコンがいた(笑)
ホナと話させたら延々と話し合いそうだなあ。

皆野さんは、お兄ちゃんを気にしすぎだけどねー。
お兄ちゃんには敵わなくて良いんだよ。
慎ちゃんにとって、皆野さんは共に歩く人だから。

まあ、悪魔と小悪魔(このフレーズ好きです)だからね。

兄たちとのアマアマな物語を楽しみにしてます。
Re: ここにも
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-22-Sun 12:24 [編集]
ちー様
こんにちは。
あっちにもこっちにもたくさんのコメント、本当にありがたいです。
なのに、レス一件だけ…ってm(__)mごめめんなさーいっ。

> やっとたどり着いた。そして、気づいた。
> ここにもブラコンがいた(笑)
> ホナと話させたら延々と話し合いそうだなあ。
>
> 皆野さんは、お兄ちゃんを気にしすぎだけどねー。
> お兄ちゃんには敵わなくて良いんだよ。
> 慎ちゃんにとって、皆野さんは共に歩く人だから。
>
> まあ、悪魔と小悪魔(このフレーズ好きです)だからね。
>
> 兄たちとのアマアマな物語を楽しみにしてます。

あっちもこっちもブラコンばっかり…。
狙ったわけじゃないんだけれど、増えちゃいました(´∀`;)
まぁ、ここんちは血が繋がっていないからね。
余計に皆野は嫉妬心が湧くんでしょう。
敵わないかもしれないけれど、一番になりたいのは誰しも同じ。
だって恋人だもんね~。
さぁ、もう一人の恋人さん(兄ちゃんの恋人)はどう思っているんでしょうね。

え?! レストランチームで旅に行け???
無茶です。
ホテルツウの羽生と皆野、贅沢し放題の岩槻兄弟に、食べ物に関してはプロの職人(?)
怖すぎるツアーですよ…。
イメージしてやってください。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-22-Sun 13:24 [編集]
兄弟や姉妹を持つ人は、やはり ブラコンやシスコン気味でしょうね。
私も 兄が居るけど、やっぱり少しね♪

過去 ホテルを舞台にしたドラマ(再放送で見たけど)で 主役を演じられた俳優M・Tさん。
今は、 泥沼離婚劇を演じられ(?)ていらっしゃいますが、
皆野も そうならない様に ドーンと構えないと!

慎弥の中では、皆野に対する感情は 征司とは違う情そして
ちゃんと分けられてるんだから!
ウゥ~(_ _||)ヽ(^ω^ :) キニシナイ、キニシナイ♪...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-22-Sun 14:07 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 兄弟や姉妹を持つ人は、やはり ブラコンやシスコン気味でしょうね。
> 私も 兄が居るけど、やっぱり少しね♪

やっぱり~なんですね。
うちも妹がいますが、超がつくくらいのシスコンでした。
(友人全員あきれまくり…)

> 過去 ホテルを舞台にしたドラマ(再放送で見たけど)で 主役を演じられた俳優M・Tさん。
> 今は、 泥沼離婚劇を演じられ(?)ていらっしゃいますが、
> 皆野も そうならない様に ドーンと構えないと!
>
> 慎弥の中では、皆野に対する感情は 征司とは違う情そして
> ちゃんと分けられてるんだから!
> ウゥ~(_ _||)ヽ(^ω^ :) キニシナイ、キニシナイ♪...byebye☆

『ホテル』といえばM・Tさん。
まぁ、ちょっと(どころか…)騒ぎになってしまっていますけれど。
慎弥はきちんと理解できている、優秀な子ですから。
使い分けてもいるでしょう。
わざと嫉妬心、煽っているんですかね…(←この子も兄に倣って策略家だよね)
皆野サン、気付いて、違いを確かめて、自分のものにできたらいいですね。
まだその余裕は持てないのかなぁ。
コメントありがとうございました。
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