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BLの丘
晴れ時々雨、また土砂降り 6
2012-07-28-Sat  CATEGORY: 晴れ時々
甘ったれた声を上げた大和を尚治は押し返した。
今まで気付くことのなかった”変化”というものをはっきりと感じる。
「大和、マジでそういうの、勘弁…」
これ以上付き合いきれないと区切りをつける尚治だったが、大和のほうは諦めきれないといった表情を明らかに浮かべてきた。
「でも尚治、『男に興味ない』って言ったって、今付き合っている人、男でしょ?」
確信をつかれた質問にも毅然と答えられる覚悟はできている。
表立って紹介したわけではないが、店の中にいた雰囲気などを見れば、察するのは容易いものだろう。
「男は男でも、相手が長流だからってだけ。他はまったく、論外」
「どうして?なんでその人と、ってことになったの?きっかけがあったわけでしょ?」
食い下がる大和に半ば呆れの溜め息を零した。
「そりゃ、いろいろあったさ。俺だって何が何だかって思って悩みもしたし…。でも違うんだよ。ホントあの人だけなんだ。男とか女とかの括りじゃない。俺も今まで散々遊んできたけれど、誰にも抱いたことのない感情があるんだ」
絶対に長流以外には靡かない強い思いを大和は理解してくれるだろうか。
何人もの人間の間を渡ってきた大和には、突然現れた一人に絞った感覚が掴めないのだろうか。
「けど…」
「『男がダメ』っていうのは本当だから。それを大和が分かってて、今だって単に話をするだけだと思って来たけれど。そういう対象に見られているのなら、今後の付き合いはできない。長流のことを思っても…、うちの店にももう来ないでほしい」
きっぱりと告げた内容にはさすがの大和も黙るしかなかったようだ。
将来、長流と別れることがあったとしても、尚治の目は男には向かないだろう。
「俺、そっちのほうは疎かったから、大和には悪いことしたな…」
尚治が最後通告をした時、背後で長流と千城が立ち上がったのが分かった。

こちらで話をしていたことはいくらなんでも聞こえていないだろう。
だがあまりにもタイミングの良さに、問題解決と理解して帰るのかと思った。
しかし、本物の恋人同士のように寄り添って歩く姿は人目を惹く。特に千城の眉目秀麗な出で立ちとスマートな振る舞いは、誰しも見惚れるといったところではないか。
そして行き先が出入り口とは反対の、奥へと続く通路のほうだった。
それだけで大和はピンときたようだった。
「あの二人…、ヤりにいったのかもね」
一瞬唇を噛んだ大和が、その光景を見てあっという間に喜々とした声を上げた。
「は?」
「だってあの先、トイレだもん。二人して一緒に行くってさぁ、ソレ目的でしょ」
『トイレ』という場所で何が行われるかくらいは尚治も多少の知識はあったけれど。
あからさまな大和の発言は気になるものだった。
尚治が想像していたものに、濃密になるまでの時間は含まれていない。だいたい、他の客だって利用する場所で…。
黙ってしまった尚治に、大和が更に畳みかけてくる。
「ここの店のトイレって、ちょっと特殊な形に造られているの。ま、合意した者同士、その場の勢いで…、っ、ちょっ、尚治?!」
大和が言い終わる前に、尚治は席を立って、ふたりの後を追った。

長流と千城の関係がどんなものなのか、嫌というほど承知している。
昔のことを聞いた時にも、長流はあっさりと否定してくれたけれど、思えば『ハイ、そうです』と答える人間がどこにいるだろうか。
今の、大和との馴れ合いは絶対に見られていたはずだ。
そのことを機にあの二人に物騒な感情が湧いてもおかしくないのではないだろうか…。
“割り切る”という意味では、尚治なんかよりずっと大人でいる。

『トイレ』まで二つの扉を越えなければならなかった。薄暗い廊下を過ぎ、その廊下ですら密着するように寄り添っているカップルが抱擁やくちづけを交わしていた。
自分の店でこんなことをされたら、速攻で出禁だ、と胸糞悪いものがこみ上がってくる。
いざトイレに入ると確かに妙な造りだった。縦に長く、手前に手洗いと小便器が三つ並んでいるだけだ。そして誰もいない。
個室がないのか?と訝った時、最奥にあったグレーの壁が横に開いた。
その壁こそが、奥の個室に繋がる自動ドアだったのだ。
中から二人連れが出てきて、尚治と視線が合うと少し気まずそうに、だけど開き直った様子で通り過ぎようとした。
開いた壁が閉まる前、隙間から見えた先には、確かに扉らしいものが幾つか並んでいるのが確認できた。
「クソッ」
思わず悪態が漏れる。
閉まらないうちに、と慌てて飛び込んだ向こう側。天井までしっかり囲まれた場所は、ドアの横幅が広く、両側に二つずつ、計四室があり、完全に使用目的が違っている。
大人の男が二人で入っても充分な余裕があるはずだ。
どこかからくぐもった声が聞こえたが、大声を上げないようにとする配慮なのか…。
こんな店が世の中にあったのか、とそちらにも感心したのは一瞬のこと。
今更背に腹は代えられぬ状態で、尚治は「長流っ?!」と大声を出した。
束の間、全ての音が消えた。
「長流っ、いるんだろっ。千城さんもっ!!」
「ウルセーっ。痴話喧嘩なら他でやれっ」
逆に怒鳴ってきたのは、まさに真っ最中の客らしい。同時に腰を打ちつける肌の音と「あんっ」といううめき声が響いた。
悪いが、人の行為を見聞きして喜べる性格ではない。

「長流っ」
構わずにもう一度叫ぶと、奥の一室から、長流と千城が姿を現し、長流は咄嗟に人差し指を自分の唇に当てて「シー」という態度を見せる。
後から続いた千城も黙って手の甲を見せて振り、「出ろ」と行動を示してくる。
長流の着ているシャツの胸元が肌蹴ていることに気付いて、尚治は声を失った。

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コメント

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No title
コメントけいったん | URL | 2012-07-28-Sat 10:43 [編集]
揺るがないなぁ~尚治は!
大和の秋波を 気持ちいい程に スパッ!バサッ!と、斬り捨ててくれたわ♪才≡⊃"├!(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ

これでもう 大和とは、永遠にByeヾ(* ̄▽ ̄*)Byeだな!

長流と千城の関係を分かっていても 追いかけてしまうのも 気になるのも 長流の事が好きだから当然ですよね。
あぁ~だけど、 
分かっていても ”特別な”個室、長流の肌蹴たシャツ、と、疑うよな所がテンコ盛り状況!
いい年の大人が、何をヤッテんだかぁー
ヤレヤレ ┐( ´-ェ-`:)┌ マイッタネ...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-28-Sat 12:50 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 揺るがないなぁ~尚治は!
> 大和の秋波を 気持ちいい程に スパッ!バサッ!と、斬り捨ててくれたわ♪才≡⊃"├!(*゚▽゚ノノ゙☆パチパチ
>
> これでもう 大和とは、永遠にByeヾ(* ̄▽ ̄*)Byeだな!

千城も言っていたけれど、そんな尻軽じゃないんですよ。(←人を見極める鉄人)
真面目な性格はよーく分かっているのでしょう。
大和を傷つけてしまうかもしれないけれど、一番分かりやすい言葉で説得をする、これも尚治の優しさなのかもしれませんね。
何より引きずらせず、ズバッと。

> 長流と千城の関係を分かっていても 追いかけてしまうのも 気になるのも 長流の事が好きだから当然ですよね。
> あぁ~だけど、 
> 分かっていても ”特別な”個室、長流の肌蹴たシャツ、と、疑うよな所がテンコ盛り状況!
> いい年の大人が、何をヤッテんだかぁー
> ヤレヤレ ┐( ´-ェ-`:)┌ マイッタネ...byebye☆

いい年の大人が影でコソコソしてたらねぇ。
揺るがないはずの尚治だって動揺しますよ。
今までのふたりの付き合い方、関係、いっぱい知っちゃってるしね。
これまでだって疑ってしまうことは盛りだくさんな二人だったんですから。
ショウちゃん、こっち系のお店のこと、あまり情報ツウじゃなかったのね…。
コメントありがとうございました。
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