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BLの丘
晴れ時々雨、また土砂降り 4
2012-07-26-Thu  CATEGORY: 晴れ時々
尚治はゲイバーで働いていたとはいっても、男に興味などないのだから、自ら出向くことはない。
噂に聞くところはあっても現状は勤務していた店と今の自分の店しか知らないものだ。
はっきり言えば、初めて来たその手の店になる。
カウンター席に並んで座る。隣の小平大和(こだいら やまと)がやたらと近寄ってくるのを苦笑でかわすしかなかった。
こういった店で雰囲気を壊すような態度には出づらい。
それに大和の魅力的なものは、過去、何人もの男と関係があったことを知るだけに、自分が素っ気なくした場合、他の客に声をかけられることは想像できた。
不要な心配事は最初から作らない方がいい。
それでも、顔を近付けられたり、あからさまに指先を絡められたりするのには抵抗が生まれた。

「大和、ちょっと…。俺、マジで男に興味ないから…」
隙間を作るように小声で意思を伝えればふくれっ面が返ってくる。
「そう?経験してみれば考え、変わるかもよ」
「変わらない」
きっぱりと言い切ってみるのだが、変えられた過去があったことまでは伝えられなかった。
ものは試し…状態で、長流の虜になってしまったのだ。
あの時の衝撃は大きかった。そして現在に至っていること…。
こんな会話も雰囲気も、長流には見せられないな…と内心で冷汗をかく。
連れて来なくて正解だった。
こんなふうに自分が誘われるとは思っていなかった油断もあったのかもしれない。
懐かしさに大和の飲みに行こうという提案を受けてしまったが、店員と客という関係以外で顔を合わせるのは初めてのことだった。
「ほんと、つれない…」
「釣れなくていいよ」
「じゃあさ、今だけ。この店にいる間だけでいいから恋人のフリ、してよ」
大和のいう意味は、尚治が懸念していることと同じだろう。
この店に来てしまった後悔もあったが、「仕方ない…」と諦めの境地で苦笑いを浮かべると、膨れていた顔が笑みで覆われた。
自分がその対象に見られるとは、少なからず長流の影響が表れているのだろうか…。

客として店にいると、見方も変わってくるのかもしれない。
いつもは店全体を見回すことばかりだが、一人を見ることで恋人のような雰囲気を作り上げることができる。
そういった空間を求めてやってくる客の気持ちがなんとなく知れた。

小声での雑談を続けていた時、ふと大和が「あれ?」と尚治の後方に視線を向けた。
なんだろうと咄嗟に尚治も振り返ればテーブル席の一角に見慣れた姿が存在していた。
「はぁ?!長流っ?!」
しかもベンチシートに並んで座っているのが千城だ。
思わず監視か?と声が上がってしまう尚治に気付いているのか、無視されているのか…。
一向にこちらを見ようとはしていなかった。
気を向けてしまう尚治の手のひらの上に、大和の手が重なってくる。
「尚治、いい雰囲気じゃん。邪魔したら悪いよ」
甘ったるい空気を醸し出しているのはあちらも同様のようだ。
何の意図があって、こんな夜中にわざわざ千城まで連れてこんなところにいるのか、尚治には理解ができなかった。
大和の言う『いい雰囲気』も、絶対にあり得ないことだとは尚治のほうが百も承知していたけれど…。
見ていて気分がいいと思えるものでもなかった。
普段なら何も気遣わず、見逃せるふたりの存在なのに…。それはこの場所という空間にいるからだろうか…。
「こっちを見て…」というような大和が、重ねた尚治の指先を自分の唇に触れさせた。
より密着した体。
ストンと流れ込んでくるように、大和の額が尚治の胸の中に収まった。
ここで騒動を起こすことはできないと、すぐに判断出来たのは、経営する側の心理状態を把握できていたからだろうか。
甘えてくる仔猫のような態度は、確かに英人に似ていると思えた。
雰囲気に飲まれているのか、拒絶できない尚治の精神的なものが絡むのか…。
あとは千城と長流を前にしてヤケになるものが湧くのか…。
宥めるように尚治の手が大和の頭部をポンポンと叩いた。
さりげない、ただ、友人を気遣う程度のものだったのだが…。
「尚治…」
耳元で囁かれた声に、今までとは違う”艶”のようなものがあるのに気付いた。

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コメント

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モテモテ
コメントちー | URL | 2012-07-26-Thu 11:54 [編集]
困っちゃうねー。無意識なうちにモテモテてわ(笑)

神戸さん、千城さんと二人じゃ目立つだろうに。
わざとだよね、わかるわかる。

大和くん。諦めた方が良いんだけどねえ。
日野くん、良い人なんだよなあ。
頑張って玉砕してねっ。

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コメント | | 2012-07-26-Thu 14:03 [編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
Re: モテモテ
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-26-Thu 15:27 [編集]
ちー様
こんにちは。

> 困っちゃうねー。無意識なうちにモテモテてわ(笑)

優しさ、親切心、見守ってくれる心は、人を惹きつけてしまうのでしょう。
ある意味、災難だけどね(笑)
日野の性格の良さが、良く表れています。

> 神戸さん、千城さんと二人じゃ目立つだろうに。
> わざとだよね、わかるわかる。

えぇ、わざとです。
そりゃ、目立つためですよ。
だって千城の外見は…。
見せびらかす、気を取らせるためには充分でしょう。

> 大和くん。諦めた方が良いんだけどねえ。
> 日野くん、良い人なんだよなあ。
> 頑張って玉砕してねっ。

はぃ、完全に玉砕なんですけれどね~。
まぁ、そこまでの過程をチロリチロリと書いていきます。
日野の人柄、伝わっていますでしょうか。
あと、モヤモヤ感も…。
コメントありがとうございました。
Re: 妄想が文字になってる~(><)
コメントたつみきえ | URL | 2012-07-26-Thu 15:35 [編集]
り様
こんにちは。

> 脳内妄想がお話で読めて、ほんと感激ですっ。
> なんだかんだ言って、幼馴染な神戸ちゃんに
> 付き合ってしまう千城もなんだかカワイイー(笑)。

伝わっていますか~?
私の勝手な想像だけで書き進めているところがありますが。
このふたりも良く知った仲ですからね。
とはいえ、絶対千城は楽しんでいる方です。
そう、なんだかんだいって、神戸には甘い千城(笑)

> なんで神戸~保育士が気になるのか思い出しました。
> 他のバカ・・・らぶらぶカップルに比べると、
> この2人はエチも大人だしw空気感も出来上がってるんだけど、
> お互いじゃないとダメっ、って必死な感じをあんま表に出さないな~と。
>
> なので、お互いモヤモヤしてるのを
> ニヨニヨしながら読ませていただいてます。
> 続き楽しみです~。

老成している雰囲気もある日野ですからね。
お互い冷静になりすぎちゃうところがあるんでしょう。
そんな中でアヤシイ雰囲気が訪れれば、見た目以上に動揺するところもあったりする…。
そういうのを表現できたらいいのですが…。
コメントありがとうございました。
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