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BLの丘
陽いづる国 8
2012-09-08-Sat  CATEGORY: 陽いづる国
明け方に目を覚ました。
懐かしい夢を見ていたようだ。
その内容を判りたくて、でも理解したくないと脳が拒絶する。
美琴自身、思い出したくない過去だったような気がした。
紳平が日本を去ってから二年の月日が流れた。
卒業を待たずにこの地を離れてしまったのは、美琴への思い入れがあったからだろうか…。
そんな自惚れは感じたくなかったが…。
少なくとも編入という形で異国の地に収まった彼に、心配することはないだろう。
目指した道へと第一歩を遂げることができる。

美琴に残されたことと言えば、人を信じることの馬鹿馬鹿しさだった。
もちろんそれを悪とはいわないが…。
自分には必要のないことだと骨の髄まで教え込まれたような気がした。
信じてもやがては去ってしまうもの…。
あれだけ信頼し、愛し、全てを委ねた人ですら、考え方が違うと分かった途端に手のひらを返された。
もちろん、答えなかったのは美琴だったのだけれど…。
やがて離れていく人…というものを改めて感じた。
過去はそれが当たり前だった世界。

年に幾度も顔を合わせない兄に、珍しくであった。
祖父母への見舞いのような訪問は定期的に行われていて、たった一泊だけでも喜ぶ人はいたし、それに合わせたように美琴も戻っていた。
単なる団らん…。
その中で何を感づくと言うのだろう。
誰もが寝静まったような夜遅くの時間。
客間から美琴の部屋を訪れた美馬は、「まったく…」と入るなり盛大な溜め息を吐いた。
30歳を過ぎた兄の登場には美琴の方が驚かされる。
その溜め息にも…。

「馬鹿な考えを持つのはやめろと言っておいたはずだろう」
一瞬何のことか分からなかった。
歩んできた美馬はベッドに腰掛け、形ばかりの勉強机に座る美琴を見据えてくる。
咎められる視線に、自分の行動の全てが知られているのだと理解することができた。
強く責められることはなかったが…。

ブルッと震えた態度で、私生活の全てを晒してしまう。

ためいきの奥から諦めにも似た吐息が零れた。
狙ってくる瞳に惹かれたのは、過去からの憧れが混じったせいだろうか。

「どれだけ男が欲しいんだ?」
穢される言葉ですら興奮を纏った。
寄り添ってきてくれる存在を確認しては、何もかもを受け入れたいと体が反応する。
憧れて、欲した存在…。
触れられて体が震えた。
“男が欲しい”わけではない…。
そう言い訳したかった言葉は吐き出されることはなかった。

ただ男を覚えた体は、久しくその力強さを感じていなくて渇望していたところはあったのかもしれない。

触れられただけで顕著な反応を見せる。
幼いころから見られた体だと言うのに、今では抱く気持ちが違いすぎた。
何より、憧れた兄だからこそ…。
ベッドに座る兄に何となしに近付いてしまった。
分かったように美馬がフッと笑う。
「馬鹿だな…」
呆れの中に見守ってくれる優しさがあるとは、独りよがりだろうか。
燻っていた全てを吐き出させてくれた。
絡みついた掌は適度な刺激を与えてくる。
恥ずかしさはあるのに逆らいようがない人の手の快感に浸ってしまった。
“己の道を歩め。その手助けならいくらでもしてやる”…。
そう聞こえた瞬間だった。

吐き出した時、嬉しさと悲しさの反するものに覆われた。
「美琴。一時の感情に左右されて時間を割くな。人に囚われることほど無駄なことはない」
淡白な関係…。それは今のような兄弟間のようなものなのだろうか。
人に思いを寄せる…。
一喜一憂されることを振り返って、最終的に”別れる”ことになるのだと、あらためて教えられたような気分だった。

その出来事が、より一層美琴を、冷酷な感情を持つ人間へと変えるきっかけになったのかと、本人を含めてどれほどの人間が想像できたことだろうか。

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短いけど許してください。
次か、その次で完結の予定です。
そして、なんとまぁぁぁ。いろいろ挟んだところはありますが1500話だってぇぇぇ。
何書いたんだろう。


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トラックバック0 コメント4
コメント

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はあっ
コメントちー | URL | 2012-09-08-Sat 05:31 [編集]
兄ちゃん・・・邪魔だよ、邪魔。

恋愛は余分なもんじゃないのに。
余計な事言うな、するなー。
兄弟でそんなんして良いのは双子ちゃんだけっ!
(ここではねー)

兄ちゃんのせいで、美琴さんがあんなになったとはっきりわかりました。
本当なら、紳平の事だって馬鹿馬鹿しい事なんかじゃないのにさあ。大事な事だったのに。
プンスカプンスカ。

あ、この兄ちゃんもきっと大好きな人にフラレたとか裏切られたとかしたんだっ。
で、美琴さんにあんな事言ったのねっ。
(違っててもそうだと思っておきます)


あ、ケータイ。きっと、出始めた頃じゃないかな?
PHS かケータイかまだ選べて、ポケベルも現役な感じ?まあ、不自由な時代の方が恋愛は燃えるかも。
Re: はあっ
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-08-Sat 07:17 [編集]
ちー様
おはようございます。

> 兄ちゃん・・・邪魔だよ、邪魔。

あら、すっかり邪魔者扱いに(笑)
まぁ、しかたないか…。

> 恋愛は余分なもんじゃないのに。
> 余計な事言うな、するなー。
> 兄弟でそんなんして良いのは双子ちゃんだけっ!
> (ここではねー)

ここんちも兄弟で何しているんだか…。
しっかりと兄の教えを身につけてしまったみこっちゃんでしたね。
いつまでもその考えが抜けていかず、また新しく指導されちゃうのね。
どんなに大きな存在なんだかなぁ…。

> 兄ちゃんのせいで、美琴さんがあんなになったとはっきりわかりました。
> 本当なら、紳平の事だって馬鹿馬鹿しい事なんかじゃないのにさあ。大事な事だったのに。
> プンスカプンスカ。

絶対に紳平と一緒になれなかった背後には兄ちゃんの存在あり…だろうね。
道を外れることをためらったみこっちゃんなのでしょう。
それが別れに繋がりました。
何が大事なのか、この時はまだ若くて気付けなかった…のかなぁ。

> あ、この兄ちゃんもきっと大好きな人にフラレたとか裏切られたとかしたんだっ。
> で、美琴さんにあんな事言ったのねっ。
> (違っててもそうだと思っておきます)

すごい(笑)
逞しいその想像力。
私の代わりに書いていただきたいです。

> あ、ケータイ。きっと、出始めた頃じゃないかな?
> PHS かケータイかまだ選べて、ポケベルも現役な感じ?まあ、不自由な時代の方が恋愛は燃えるかも。

うん。その頃かな…と。
まだ支度金(←?)が必要だった頃ですよね。学生、持てたかな…と考えちゃいました。
ポケベル、懐かしい!!
色々な数字の組み合わせがありましたよね。(思い出せないけど…)
不自由な環境の恋愛ほど燃える…。そうかもしれません。
燃えてほしかったね、みこっちゃんにも…。
コメントありがとうございました。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-08-Sat 09:15 [編集]
紳平とは、束の間の時間を分け合っただけで 終わりを迎えてしまったけれど

兄の美馬が言う様に「人に囚われる事は無駄」とは…(苦笑)

今のみこっちゃんに教えてあげたいな。
いくら切ろうとしても切れない 人の縁、絆があるんだよって!
そして みこっちゃんにも そんな人が現れるんだよってね♪
(*´ェ`d)~~~~~~~~~~(b´ェ`*) 運命の赤い糸...byebye☆
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-08-Sat 10:21 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> 紳平とは、束の間の時間を分け合っただけで 終わりを迎えてしまったけれど
>
> 兄の美馬が言う様に「人に囚われる事は無駄」とは…(苦笑)

なんかね~。
兄の教えに従順なみこっちゃんらしいです。
そこんとこが社長にも付いていける精神に結びつくのかしら。
でも紳平ともいい時間を過ごしたのではないかと…(←思いたい)

> 今のみこっちゃんに教えてあげたいな。
> いくら切ろうとしても切れない 人の縁、絆があるんだよって!
> そして みこっちゃんにも そんな人が現れるんだよってね♪
> (*´ェ`d)~~~~~~~~~~(b´ェ`*) 運命の赤い糸...byebye☆

将来は変わっていくものです。
この時は打算的なことしか考えられなかったかもしれないけれどね。
みこっちゃんの未来に(何年後だ?!)期待しましょう。
頑張って就職活動。
その先に我が儘なシャチョーをかかえて…。
運命の赤い糸ねぇ、この時は信じていなかったんでしょうね。
コメントありがとうございました。
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