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BLの丘
陽いづる国 9
2012-09-09-Sun  CATEGORY: 陽いづる国
大学院に進学してからはより一層美琴の対人面は希薄になっていったような気がする。
人から言われる噂のようなものは嫌というくらい聞いたが、すまして関わることはなかった。
様々な陰口と尊敬の眼差しが多く向けられてくる。
学力の優秀さに、一種の理想のような、憧れを集める反面で、もちろん妬みもあった。
表面的な付き合いに絞ったせいもあるのか、神秘的な、謎の存在になりつつあった。
近付いてくる人間はたくさんいる。
あえて割り切って、肉体関係に落ちた人もいたが、人の見極め方は美琴自身、感心するくらい深くハマることはなかった。
そして時々会う兄の美馬は、呆れたような表情を浮かべ、しかし、もう咎めることもせず、美琴の生き様を見てくる。
何を言っても聞かない頑なな精神状態を把握されていたのだろうか。
そこは年下という鍛えられた部分があるのか…。
兄はすでに指導する立場から見守る位置に変わっていた。

それでも時にかつての優しさを求めてしまう。
離れていくことはないと思える、唯一の存在。
依存したものが大き過ぎるだけに、美琴はそこから飛び立てなかった。
出会うたびに近付く美琴は、美馬にとって、いつまでも幼いままだったのだろう。
そして出会うまでの間を、他の男で埋めたのだ。
美馬に会えるのは、年に数回…。
若い体は求めるものを持っている。
育つ過程を、美馬はもう口にすることはなかった。
ただ、”隠す”意味は教えられたのだろう。だからこそ、付き合ってくれる肉体の付き合いがあったこと。

「お兄さん…」
一人暮らしのマンションで寄り添う体に、「もう、やめろ」と冷静な声が響いた。
愕然とする瞬間。
…兄にまで見放されたなら…。

「男の世界で生きるのは美琴の意思だろう。こればかりは止めようがない。自分が正しいと思うのであれば、その世界に身を委ねるのも一つの手段だ。ただ…、父や母、俺に負担をかけるな」
心臓の奥に鉛を押し込まれたようだった。
突き放された…。
信じられるものなど、何一つない…。
眦に滴を浮かべた美琴に、差し伸べられる手があったが、叩いて落としていた。
「美琴…」
「もぅ…いい…」
「美琴…っ」
何も信じられない。
力ずくで抱きすくめられる腕の中で、でもそれ以上叩けない葛藤があった。
何もかもを隠して、生きていくこと。
先端を目指すのであれば尚更、自我は足かせになる。
それを、身を持って体験していたのは、兄だったのだろうか…。

「美琴…。愛しているよ…」
その言葉を最後に、家族以外の前で出会うことはなくなった。
会っても誰かを通した会話だけ。
紳平と同じ…。
感情だけを残して、去ってしまう。
相手に、何かを委ねること自体が間違いなのだ…。
二人の人間から去られて、美琴は強くその思いを抱いた。

東の国…。
希望を抱いて跨いだ土地に、裏切られた感情。
紳平に誘われるまま、アメリカに渡った方がよかったのかどうかは、今となっては分かるものではない。
日本の国旗を見た。
紅く燃え上がる陽を。
今から伸びていく、全ての人のようだと奮い立たせる。
この地で生きていくのだと…。

美琴はもう、日本を離れることはなくなった。

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無理矢理書いたのでかなり短いですが。
次回最終話になるでしょう。
宗教的なものとか、国策とか、全く私の頭にはありませんので、そこんとこ、さらぁと流してください。
新しく生きていこうと、その光を見た…感じでしょうか。
みこっちゃん青春時代、こんな感じでした。(爆弾投げられそうだな…)


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コメント

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ウキーっ!
コメントちー | URL | 2012-09-09-Sun 00:47 [編集]
くそ兄貴め・・・

美琴さん、紳平に去られ、バカ兄貴に中途半端な愛情をかけられ。
だから、あんなだったのね。

あ、兄貴は美琴さんを思って・・・
と言うのは却下します。きえさんが言ってもねっ。

兄貴、自分は恋愛は要らないと切り捨てたかもしれないけどさあ。人それぞれだから。
もしかして、紳平と一緒に行っていたら二人でスゴい事が出来ていたかもしれないね。

でも、あの酷い美琴さんがいたからあのお話も良かった訳だしね。
気分は複雑です。
No title
コメントけいったん | URL | 2012-09-09-Sun 08:26 [編集]
美琴は、いつも 人と距離を置いているのに
いったん 委ねれば 全部を預けてしまうんだなぁ~(;´д`)ノはうぅ

覚悟の無い中途半端な人は、そんな美琴を捨て置いて 去ってしまう
裏切られたと、思ってしまうのは仕方ないかな…


この先 慇懃無礼だけど絶対に裏切らない千城に出会い、
穢れた生活を送りながらも 純真で一途な英人を知り、
そんな2人の恋愛事情を 側で見る事になるんだね♪

人は裏切る者だけど、信じられる者でもあると…
いいお手本が、身近に居て良かったよね~
(⌒_⌒)ノ はーい先生...byebye☆



  

Re: ウキーっ!
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-09-Sun 09:44 [編集]
ちー様
こんにちは。

> くそ兄貴め・・・
>
> 美琴さん、紳平に去られ、バカ兄貴に中途半端な愛情をかけられ。
> だから、あんなだったのね。

不貞腐れちゃいました。
お兄ちゃんの影響はものすごく大きかったのでしょうね。
ただでさえ、転々とした幼少期があっただけに、縋れるものを求めて…。
また答えちゃったお兄ちゃんだからこそ…。

> あ、兄貴は美琴さんを思って・・・
> と言うのは却下します。きえさんが言ってもねっ。

そ、そうね…。
どんだけ思っても酷いことをした結果は変わらず…。

> 兄貴、自分は恋愛は要らないと切り捨てたかもしれないけどさあ。人それぞれだから。
> もしかして、紳平と一緒に行っていたら二人でスゴい事が出来ていたかもしれないね。
>
> でも、あの酷い美琴さんがいたからあのお話も良かった訳だしね。
> 気分は複雑です。

色々な過程がありましたね。
こんな育ちだったみこっちゃんなのです。
過去を暴いたら複雑な心境にもなるでしょう。
(つかね。よくもまぁ、ここまでこじつけると言うか、作文を書くと言うか…。自分に拍手を送ってあげるよ)
悲しいお話だったかもしれない背景、少しは書けたかしら。
次、最終回です。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-09-Sun 09:50 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 美琴は、いつも 人と距離を置いているのに
> いったん 委ねれば 全部を預けてしまうんだなぁ~(;´д`)ノはうぅ

そうなんですよ~。
縋るところが見えちゃうと崖を転がり落ちるかのように…。

> 覚悟の無い中途半端な人は、そんな美琴を捨て置いて 去ってしまう
> 裏切られたと、思ってしまうのは仕方ないかな…

そこのところが冷めた感情を生み出してしまいましたね。
信じてはいけない。いつかは裏切られるものなのだと…。
若いころから植えつけられた何もかもは、大人になっても抜けきれなかったのだと思います。

> この先 慇懃無礼だけど絶対に裏切らない千城に出会い、
> 穢れた生活を送りながらも 純真で一途な英人を知り、
> そんな2人の恋愛事情を 側で見る事になるんだね♪
>
> 人は裏切る者だけど、信じられる者でもあると…
> いいお手本が、身近に居て良かったよね~
> (⌒_⌒)ノ はーい先生...byebye☆

ホントだね~。
千城も表面上で成り立っていたような人だったから、形ばかりの世界では付き合いやすかったのでしょう。
それが崩れて(?)いく様は見ていて苦しかったのかしら。
英人との出会いは、美琴の人生も変えていくものになりましたね。
我が儘三昧な社長に振り回されますが…。
愛に溺れた人が身近にいれば、優しさや信じる大切さを肌で感じられたことでしょう。
もう一回、思い出すのだ、美琴ちゃん…。
コメントありがとうございました。
  
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