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BLの丘
七色の虹 3
2012-09-13-Thu  CATEGORY: 七色の虹
由利の酔い潰れた原因が痴漢行為にあったからだと聞いては、由良も憤りを感じる。
その美貌故か、狙われることは由良も一緒だったが、抵抗力が低いのはどうしても由利で、心配は増えていく一方だ。
そして後日、その相手に由利と間違われる出会いにあってしまっては、憎たらしさしか浮かばなかった。
由利がもう一度会えば絶対に嫌うと思ったのに…。
結果は、由利の中で最初のイメージと違いすぎたことか…。
惹かれて堕ちていくことに時間はかからなかった。
頼れる何かを感じたのだろう。…由良とは違うものを…。
そのことに納得ができなくても、流れていく気持ちにセーブはかけられない。
何よりも感心できたことが、咄嗟に由良と由利の違いを感じ取ってしまったことだった。
二人の違いを知る…。きっと由良と由利の中で重要なキーワードだったような気がする。
由良が高畠に気を取られたように…。

真剣に由利だけを追い掛けていく姿に、軽薄さがないことは由良でも悟ることができる。
諦めにも似たものか…。それともこれを良い機会だと由良自身が思ったことか…。
どうしたって由利は、一番近くにいた由良を頼りにしすぎていて、またその由利を甘やかして、由良は離れられなかった。
淋しさと同時に訪れるものは…、自分の時間。

普段であれば一緒になることのない食堂で、呑気にティラミスなんか頬張っている由利を見てしまえば、不機嫌も露わに隣に腰をおろして、そのフォークを取り上げていた。
周りからの視線が、どうでもよいものに感じられた瞬間だったのかもしれない。
後ろめたさがあるような由利に気付いて、由良は預かってきた『羽後雄和』と表記された名刺を渡した。
この先は由利が判断すべきことである。
こんな時、やはり気遣ってくれる高畠が、目の前の席から「由良、メシ、なんか買ってきてやるぞ」と声をかけてくる。
食欲なんかもうなくて…。つい強い口調で「いらない」と突っぱねてしまった。
そんなふうに振舞う態度ですら、高畠は肩をすくめてクスリと笑いながら見守ってくれている。
嫌がるような態度には出ない。分かっているからこそ、ここで由良の甘えが出るのかもしれない。
由利と同様に可愛がられているのか、それとも個人的に見てくれているのか、まだ由良には判断ができなかった。
いつ嫌われてもおかしくない、その危険を探りながら…。
自分の正直さを知ってほしい感情は隠せなかったし、きっと、高畠が理解できていたのだろう。
居心地の良さは深まっていくばかりだ。
それすらも認めてくれているのだと、自惚れにも似た感情が湧く。

由利を羽後雄和という人物に託すことができたなら…。

動揺と期待、恐怖、心配や安堵…。様々な思いが錯綜した。
結局、由利の思うままに任せるしかない。
次に羽後に出会った時、由良は、辛辣なほど冷たい言葉で釘を刺した。
『ユーリを泣かせたら、ぶっ殺してやる』…。

迎えでた態度は、「二度と悲しませないし、嫌なことはしない」という宣誓のようなもの。
その時だけでも、由良と由利の思いあう感情を悟って身を固めたことを由良は知った。
それこそが、『覚悟を決めた』結果なのだろう。

由利が他の人間を頼りにするという現実を知っては、無理に隠そうと言う意識が薄れた。
これまでは故意的に避けられてきた社内での接触も自然体で行われるようになる。
もちろんまだ甘えを感じるところはあったけれど、少しずつ距離が生まれているのも確かな出来事だった。
何より、由良には、企画室の人間と食事を共にできるという嬉しさがあったのかもしれない。
それはいつしか、由利がいなくても違和感を持たせない近付き方に変わった。
新庄がついて来てくれるのは、高畠や湯田川と同期ということで、話題が膨らむせいか、由利と由良の違いを皆に植え付けるためか…。

食事が終われば、由良はカフェに出向こうとする。
高畠が「俺も行こうかな」と追ってきてくれるのが単純に嬉しくて、その後に続いた新庄の「あ、じゃあ俺も」という言葉を咄嗟に振り切っていた。
「新庄さんのぶん、買ってきてあげる」
「(高畠)萩生クーン。是非俺のぶんも」
「あつみ~っ。おまえは動きたくないだけだろーっ」
なんやかんやと会話を交わしながら、ついてきてくれる存在に心が躍った。
由利ではないが、束の間のデートを楽しむ雰囲気に陥らせてくれたのだ。
二人で動いては、さりげない仕草の中で、しっかりと見守ってくれている姿に安心する。
並んでいる列の中、「由良の分だけおごってやるよ」とそっと囁かれること。
「え?どうして?」
過去、なかったわけではないが、意味もない対応には戸惑いも浮かぶ。
ふわっと笑みを浮かべた表情を見上げれば、ポンポンと頭上を叩かれた。
「ユーリがいなくて淋しかったんじゃないの?甘い時間、過ごしとけよ」
いつも一緒にいる存在…。
もう割り切っていたつもりなのに、心の奥底にはびこるものを、こんな形で感じ取られてしまっているのか…。
でもそのことを他の人間の前で言うことがない気配りに鼻の奥がツンとする。
だけどそれは飲み込んだ。
「ありがたくおごられとく…」
強がった口調に、またクスリと笑った高畠は、それ以上由利のことを口にすることはなかった。

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コメント

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チラッ(゚ー|コッチカラモッ|ー゚)チラッ
コメントけいったん | URL | 2012-09-13-Thu 12:54 [編集]
きえ様が居ない間に暴れようかと思いましたが、真面目にコメを!

何時でも何処でも感じていた半身の由利が離れ 少し淋しいのと安堵したのと ちょっと複雑な由良
そんな事をも分かっているよ♪と、自然に寄り添ってくる高畠の優しさに もう胸キュンキュンだね~v(`ゝω・´)キャピィ☆

気構え無くて自然体のままでいい相手って 私もお薦めしま~す(≧∇≦)ノ ハーイ♪

所で ちーさんは、まだ逃亡中なの?
それとも 密かにき様の温泉旅行を尾行中~~か!?
[風呂]ヾ(〃∇〃ヾ),,,,,,,,キャハッ♪⌒∞⌒▽|岩陰|┬|ω・`*))チラッ...byebye☆ 
いますよー
コメントちー | URL | 2012-09-13-Thu 14:32 [編集]
チラッ。だ、大丈夫かしら?

高畠さん、良いんじゃないの?
お勧めですよ。
由利とも仲良しだしね。
私、もう付き合ってるんだと思ってました。
由利が先なのね、お兄ちゃん。


私も温泉行きたいな。
きえさんを尾行?
尾行して早く続きを書けと(笑)
ついでに、安住さんとー、成パパとー、津和野センセとー。(゜ロ゜)
ダメダメ、本当に捕まっちゃうー。
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