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BLの丘
七色の虹 5
2012-09-16-Sun  CATEGORY: 七色の虹
由良と由利の食事場所はもっぱらリビングテーブルで、ペタンと座っての食事だった。
一応二人掛けの小さなダイニングテーブルがありはするものの、すっかり物置台と化していて、現在使用不可を物語ってくれている。
それに気付いた高畠だったが、何も口にしてはこなかった。
各家庭、色々と事情はあるものだ。
高畠は今更緊張感を覚えるわけでもなく、上着をソファの背に投げ、ネクタイを緩めた姿で由良の斜向かいに胡坐をかいて座っている。
普段着に着替えた由良は、あまり具が多いとは言えないチャーハンと、冷凍してあった春巻き、乾燥タイプのわかめスープを用意する。
…あと、何かあったっけ…と冷蔵庫を覗いて浅漬けのタッパーを出した。
「ビール、飲む?」と聞けば、「いただけるものであれば、何でも」と茶化した口調で答えてきた。

品数は少ないがそれなりに賑わったテーブルの上である。
高畠が感心したように、「由良って手際、いいのな…」と褒めてくれ、由良は謙遜しながら内心では舞い上がっていた。
「でも、作ったの、チャーハンだけじゃん…」
「それでもさ。野菜切ったり、炒めたりって、慣れていなきゃこんなに素早くできないだろ」
「うーん…。ユーリと一緒にやっていると、どうも危なっかしくて…。自分でやったほうが安全って思って回数も増えたからじゃない?」
「あ、ひっでー言い方。あとでユーリにチクってやろ~」
「いいよ~。ユーリも分かっているし~ぃ」
由利の性格を良く知るのは何も由良だけではない。
高畠も同僚となれば、見えてくるものがあるし、だからこそ、そばに付いていた責任感のようなものがある。
開き直った由良の発言にクスクスと笑いながら、ほのぼのとした二人きりの食事を楽しんだ。
「美味い」と言いながらあっという間に平らげてくれれば嬉しくもあるし、また不安にもなる。
高畠には多めによそったのだが、体格からしても物足りなかったのではないだろうか…。

「あ…と…、高畠さん、お腹いっぱいになった?」
由良の皿にはまだ三分の一ほど残っている。
由良はこれを全部あげてもいいとまで思っていた。
高畠は由良の不安を感じ取るのだろう。
「もちろん。俺が早食いなんだって知ってるだろう。由良は由良のペースで食べればいいんだよ」
「うん…」
由良もまた、高畠なりの気遣いなのだと悟ることができた。

それから数口、雑談を繰り広げながら由良はスプーンを口に運んだのだが、一人だけ食べていることに居た堪れなさを感じてしまう。
みんなでご飯を食べている時は、由良と由利は大概同じ時に食事を終えたし、由利がいなくても他の三人で会話をしていてくれているから、由良が後ろめたさを覚えることはなかった。
それが”ふたり”になった途端、どうだろう…。
由良は無意識のようにチャーハンを掬ったスプーンを、高畠の前に差し出していた。
「食べるの、手伝ってよ」
「由良?」
「あーん、して」
高畠は困ったように微笑みながらも大人しく口を開けてくれて、由良はその中にスプーンを入れた。
そのまま次に自分の口へと運ぶ。
モグモグと咀嚼し、高畠が「俺はユーリじゃないんだけどなぁ…」とぼやいていた。
由良と由利は人目憚らず、どこでもこんな光景を見せてくれる。
由良だって、由利以外の人間にこんなことをしたことはない。
そこは酔いの勢いで…と捉えられてしまうのも困るが…。

「いいじゃん」
照れを隠すように、またスプーンを送り届けると、今度はふたりに会話もないまま黙って受け入れた。
その、暗黙の了解とでもいえそうな雰囲気が、由利に近い存在のような気がして、ますます由良は心が跳ねあがる。
由良のしたいことをあえて声にしなくても理解してくれる洞察力は、奥に隠した気持ちまで見透かしているのだろうか…。
だけど単なる親しい仲、の域を越えていない空気が醸し出されているのも確か。
高畠はきっと、由良と由利を別の人物と捉えていながら、扱いは同等のものなのだと教えられるようだ。
膨らんだ風船はあっという間に空気が抜かれてしまった気分になる。

空になった食器をシンクに運んで、この時ばかりは高畠も手伝ってくれた。
このまま帰られてしまうのだろうかと思うと、まだ引き止めたい思いが浮かんでくる。
「高畠さん、まだビール飲む?他のものがいい?」
隣に立つ高畠を見上げると、クスリと笑われて彼の掌がくしゃくしゃと由良の髪をかきまわす。
「素直に言わないところが由良の可愛さだよな」
「?」
一瞬言われた意味が分からなくて目をパチパチと瞬かせた。
由良の仕草に、また笑みが漏れる。
「一人でいたくないんだろ?」
そこまで言われて、誤解されているのだと気付いた。
誤解…というか、半分は当たっているのかもしれないけれど…。
もともと、高畠がここに来てくれたのは、由利がいない状況を気遣ってくれたからだ。
だけど素直に認めるのも悔しくなる。
というか、違うのだと言いたくなる。
そして誤解が生んだことでも、まだ居てくれる意思が伝わってきて、甘えが走った。
唇を尖らせてそっぽを向けば、本気で機嫌を損ねたとは思っていない高畠が「由良姫のご機嫌を取らないと帰れませんので」と、おかわりを要求してきた。
「別に無理しなくていいもん…」
「無理じゃないし。俺がおまえを放っておけないだけだよ」
どこまで本気で言ってくれているのか…。
とんがった唇とは裏腹に、隠せない喜びを浮かべた由良は新しい缶ビールを取りだして、ついでに由利が買い置いておいた野菜チップスの袋を開けた。
今更どちらが買ったものでも、半分残しておけば文句も言われない日々である。
今度は、由良は高畠の隣に腰を下ろした。

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休暇ありがとうございました。
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コメント

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きえ様、オカエリ(Pq・´ω`・)・・・待ッテタヨン…━━☆
コメントけいったん | URL | 2012-09-16-Sun 13:36 [編集]
σ( ̄、 ̄*)ん~~ 高畠から由良への特別な感情が感じられない。
由良も感じている様に 由利と同じ扱いだし...
これは まだ押しが足らない?気付かれてない?(@∇@:)へ?

高畠って 優しいけど 案外 手強い鈍チンさんか~~~Σ(*゚д゚*)!!!

きえ様お留守の間に 勝手に上り込んで ちーさんと いっぱい遊ばせて頂いて楽しかったです。
温泉で ゆっくりした様な しない様な気分なの?
旅行も そうだけど 外出するって 案外 疲れますもんね~
ε~フー\( ̄゜ ̄)/どたぁ.....byebye☆
お帰りを楽しみにしてました
コメントちー | URL | 2012-09-16-Sun 14:16 [編集]
おっかえりー、きえさん!←逃げなくて良くなったから

旅行、楽しかったですか?
私は、けいったんさんと楽しんでました。
けいったんさん、ありがとうごじゃいましたm(__)m

高畠さん、マジで双子ちゃんが同等なの?
ワクワク。
そんで、新庄さんに「由良は、やらないよ?」
みたいな事を言われて欲しい~。
あ、きえさんの中じゃ決まってらっしゃるんだから、ただの妄想ですけどね。

きえさんがいない間にもっと妄想しとけば良かったかなあ?ね、けいったんさん(笑)
Re: きえ様、オカエリ(Pq・´ω`・)・・・待ッテタヨン…━━☆
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-16-Sun 14:56 [編集]
けいったん様
こんにちは~。

> σ( ̄、 ̄*)ん~~ 高畠から由良への特別な感情が感じられない。
> 由良も感じている様に 由利と同じ扱いだし...
> これは まだ押しが足らない?気付かれてない?(@∇@:)へ?
>
> 高畠って 優しいけど 案外 手強い鈍チンさんか~~~Σ(*゚д゚*)!!!

由良にしてみたら、由利と変わらない扱い…と取ってしまうのでしょうね。
二人の仲良さを知る人だけに、ひとりぼっちの切なさを汲み取るのか…。
…いやいや、それ以上のものをね。高畠には感じとっていただきたいんですけれど。
鈍ちん相手だと苦労が…。(そこは由良の押しで…遅い受け?!)

> きえ様お留守の間に 勝手に上り込んで ちーさんと いっぱい遊ばせて頂いて楽しかったです。
> 温泉で ゆっくりした様な しない様な気分なの?
> 旅行も そうだけど 外出するって 案外 疲れますもんね~
> ε~フー\( ̄゜ ̄)/どたぁ.....byebye☆

いえぃぇぇぇ。賑わっていてびっくりしました。
ハイ、もう『丘』はアスレチック牧場(←)なので好き放題遊んでください。
休憩所(((( ・_・)/□ 座布団どうぞ
コメントありがとうございました。

新しい網を用意して次の獲物を狙うとか…Σ (゚Д゚;)
ホント旅行って疲れますよね~。
帰りついて私は洗濯物の洗礼を受けていますよ…。
コメントありがとうございました。

Re: お帰りを楽しみにしてました
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-16-Sun 15:03 [編集]
ちー様
こんにちは。

> おっかえりー、きえさん!←逃げなくて良くなったから

捕まえておいてよかったわ~ヽ(゚∀゚)ノ

> 旅行、楽しかったですか?
> 私は、けいったんさんと楽しんでました。
> けいったんさん、ありがとうごじゃいましたm(__)m

読ませていただいて爆笑してましたよ~。
是非今後もこんなところでよければ井戸端会議を繰り広げてくださいな。

> 高畠さん、マジで双子ちゃんが同等なの?
> ワクワク。
> そんで、新庄さんに「由良は、やらないよ?」
> みたいな事を言われて欲しい~。
> あ、きえさんの中じゃ決まってらっしゃるんだから、ただの妄想ですけどね。
>
> きえさんがいない間にもっと妄想しとけば良かったかなあ?ね、けいったんさん(笑)

ちー様は三角関係がお望みのご様子。
さて…。
だってさぁ。ユーリと雄和が簡単に収まったシリーズだしぃ(←)
あまり長引かせるのもねぇ。
新庄さん、どう踏みこんできますでしょうか。
コメントありがとうございました。
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