テーブルの上に置いたグラスに、高畠がビールを注いでくれる。同じく自分のグラスにも注ぎ足していた。
「あ、ありがと…」
手酌をさせてしまったことに申し訳なさが浮かぶが、そういったことに頓着する性格ではないこともすでに知る。
気がきくところはたった一つでも違う歳の差なのだろうか。
隣に並んでしまえば、正面から顔を見るとはいかないが、近付けた感じはずっとあった。
由利が買い置いていた野菜チップスには様々な色のものがある。
緑色のものはホウレンソウだろうか。黄色はかぼちゃ?赤いのはニンジン?黒いのは…。
少し硬めのポリッとした食感がつい手を伸ばさせる。
高畠は新しい発見に出会ったかのようにつまんでいた。
「面白いな、これ。塩気もちょうどいい」
「ユーリがさ、ネットで見つけては色々買いこむんだよね」
「ユーリのチョイスなの?」
「どこかの誰かサンに出会ってから、何気に機械に強くなっちゃってさぁ」
「ネットショッピングに、強いも弱いもないだろうが…」
由良の発言に高畠は呆れた口調を混じらせるが本気のものではない。
某社メンテナンス社員という人間が、あらゆる意味で機械物に詳しいのだろうな…とは高畠でも容易に想像がつくところだったが、拗ねたような由良の発言に苦笑を浮かべる。
家の中にいるのに、人間よりも機械に取られたような悔しさが滲み出ていたのだろうか。
今までと同じ生活を送っているつもりでも、少しずつ溝は深まっているのかもしれない。
痛いところを突かれては、また唇を尖らせた由良の目の前に、赤い色のチップスが届けられた。
高畠が無言で「あーん」の意思表示をしてくる。
高畠自身がこんなことをするのは非常に珍しい出来事だったが、由良は動揺を隠してそのまま口を開いた。
いつも苦々しい笑みで由良と由利の行動を見守っていた人だけに、やはりふたりだけの空間は特別の感情を抱かせるのだろうかと期待が高まる。
ほんのちょっとの仕草が、より一層近付けてくれるもののように感じられた。
ニンジンだと思っていたはずのものからトマトの酸味がふわりと鼻腔を漂った。
一瞬驚いたような表情を浮かべた由良の反応に、隣で”やっぱり”と分かった笑みがこぼれる。
そして同じ思いは…。
「俺もさぁ、最初食べたのがニンジンで、次がトマトで。同じ色でも違うんだなぁって気付いたよ。これ、なかなかイケるね。あとでユーリに追加注文、頼もう」
由利が選択したものに評価をもらえるのは嬉しくもあったけれど、今は悔しさの方が半分。
同僚なのだから、親しい話をするのは当然のことで、由良自ら『由利が注文したもの』と公言したのだから頼るところがそちらに向かうのは否めないとしても…。
遠慮もなく手を伸ばしてくれる姿には、由良も気が緩んでいく。
由良も適当に掴んでは高畠の口元に寄せた。
「じゃあ、これは?」
ベージュ色のチップスをつまみ上げる。
「あ、それ、さっき食べた。じゃがいもだろ?」
「高畠さん、食べるの、早すぎっ」
小さな苦情もものともせず、由良の指まで食べてしまいそうな勢いで食いついてくる。
唇に触れた指先…。それだけで緊張を含ませた。
慣れたことなのか、さりげない仕草でかわされてしまうことが、やっぱり悔しい。
自分よりもずっと先を行く”大人”みたいだ。
実際には一つしか歳が違わないのに、すごく離れているような気がするのは、見た目なのか、落ち着きなのか、日々新しいことを生みだそうとする脳の活性化なのか…。
高畠は常に由利の近くにいる。
それと同じ感覚なのだとは百も承知していても、やはり由良を”ひとり”として見てほしい欲望が渦巻く。
いや、見ていてくれているのだろうが、もっと深く、由利と切り離したもの…。
あからさまに由利だけを特別視した羽後のような独占欲が欲しいと思ったのは初めてではないか…。
態度を変えてはいけない…と意識しながら、「じゃあ、これ…」と由良はまた食べさせるために手を伸ばす。
やはり触れた唇の温かさに、ゾクッとするものが背筋を這った。
高畠は何を思うのだろう…。
飲みながらの、いつもと変わらない清々しい態度にこれ以上を望むのは無理なのかと葛藤が襲ってきた。
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思いっきり足踏みしている…(汗)
「あ、ありがと…」
手酌をさせてしまったことに申し訳なさが浮かぶが、そういったことに頓着する性格ではないこともすでに知る。
気がきくところはたった一つでも違う歳の差なのだろうか。
隣に並んでしまえば、正面から顔を見るとはいかないが、近付けた感じはずっとあった。
由利が買い置いていた野菜チップスには様々な色のものがある。
緑色のものはホウレンソウだろうか。黄色はかぼちゃ?赤いのはニンジン?黒いのは…。
少し硬めのポリッとした食感がつい手を伸ばさせる。
高畠は新しい発見に出会ったかのようにつまんでいた。
「面白いな、これ。塩気もちょうどいい」
「ユーリがさ、ネットで見つけては色々買いこむんだよね」
「ユーリのチョイスなの?」
「どこかの誰かサンに出会ってから、何気に機械に強くなっちゃってさぁ」
「ネットショッピングに、強いも弱いもないだろうが…」
由良の発言に高畠は呆れた口調を混じらせるが本気のものではない。
某社メンテナンス社員という人間が、あらゆる意味で機械物に詳しいのだろうな…とは高畠でも容易に想像がつくところだったが、拗ねたような由良の発言に苦笑を浮かべる。
家の中にいるのに、人間よりも機械に取られたような悔しさが滲み出ていたのだろうか。
今までと同じ生活を送っているつもりでも、少しずつ溝は深まっているのかもしれない。
痛いところを突かれては、また唇を尖らせた由良の目の前に、赤い色のチップスが届けられた。
高畠が無言で「あーん」の意思表示をしてくる。
高畠自身がこんなことをするのは非常に珍しい出来事だったが、由良は動揺を隠してそのまま口を開いた。
いつも苦々しい笑みで由良と由利の行動を見守っていた人だけに、やはりふたりだけの空間は特別の感情を抱かせるのだろうかと期待が高まる。
ほんのちょっとの仕草が、より一層近付けてくれるもののように感じられた。
ニンジンだと思っていたはずのものからトマトの酸味がふわりと鼻腔を漂った。
一瞬驚いたような表情を浮かべた由良の反応に、隣で”やっぱり”と分かった笑みがこぼれる。
そして同じ思いは…。
「俺もさぁ、最初食べたのがニンジンで、次がトマトで。同じ色でも違うんだなぁって気付いたよ。これ、なかなかイケるね。あとでユーリに追加注文、頼もう」
由利が選択したものに評価をもらえるのは嬉しくもあったけれど、今は悔しさの方が半分。
同僚なのだから、親しい話をするのは当然のことで、由良自ら『由利が注文したもの』と公言したのだから頼るところがそちらに向かうのは否めないとしても…。
遠慮もなく手を伸ばしてくれる姿には、由良も気が緩んでいく。
由良も適当に掴んでは高畠の口元に寄せた。
「じゃあ、これは?」
ベージュ色のチップスをつまみ上げる。
「あ、それ、さっき食べた。じゃがいもだろ?」
「高畠さん、食べるの、早すぎっ」
小さな苦情もものともせず、由良の指まで食べてしまいそうな勢いで食いついてくる。
唇に触れた指先…。それだけで緊張を含ませた。
慣れたことなのか、さりげない仕草でかわされてしまうことが、やっぱり悔しい。
自分よりもずっと先を行く”大人”みたいだ。
実際には一つしか歳が違わないのに、すごく離れているような気がするのは、見た目なのか、落ち着きなのか、日々新しいことを生みだそうとする脳の活性化なのか…。
高畠は常に由利の近くにいる。
それと同じ感覚なのだとは百も承知していても、やはり由良を”ひとり”として見てほしい欲望が渦巻く。
いや、見ていてくれているのだろうが、もっと深く、由利と切り離したもの…。
あからさまに由利だけを特別視した羽後のような独占欲が欲しいと思ったのは初めてではないか…。
態度を変えてはいけない…と意識しながら、「じゃあ、これ…」と由良はまた食べさせるために手を伸ばす。
やはり触れた唇の温かさに、ゾクッとするものが背筋を這った。
高畠は何を思うのだろう…。
飲みながらの、いつもと変わらない清々しい態度にこれ以上を望むのは無理なのかと葛藤が襲ってきた。
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思いっきり足踏みしている…(汗)
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由良がめちゃくちゃ可愛い。
こんなに可愛い由良が近くにいたら。
私なら嬉しくて、ニヤニヤしちゃうなあ。
高畠さんは、ポーカーフェイスなのかな?
由良が高畠さんとくっつくのはわかるんだけど。
まあ、この焦らしが良いですね。
由良、頑張って~。
でも、新庄さんが出てきた意味は・・・?
やっぱり、三角♪←好きみたい
こんなに可愛い由良が近くにいたら。
私なら嬉しくて、ニヤニヤしちゃうなあ。
高畠さんは、ポーカーフェイスなのかな?
由良が高畠さんとくっつくのはわかるんだけど。
まあ、この焦らしが良いですね。
由良、頑張って~。
でも、新庄さんが出てきた意味は・・・?
やっぱり、三角♪←好きみたい
ちー様
おはようございます。
> 由良がめちゃくちゃ可愛い。
> こんなに可愛い由良が近くにいたら。
> 私なら嬉しくて、ニヤニヤしちゃうなあ。
強がりなところがあるかと思えば、甘えたい度満載な由良です。
改めて高畠と二人きりになったら、高畠の包容力をより感じちゃうんでしょうか。
高畠はニヤニヤしていないのかしら…(←)
> 高畠さんは、ポーカーフェイスなのかな?
> 由良が高畠さんとくっつくのはわかるんだけど。
> まあ、この焦らしが良いですね。
>
> 由良、頑張って~。
もうどのCPか決まっているんですけれどね。
なかなか先に進まないです。
相変わらず焦らしプレイですみませ~ん。
高畠からは動かなさそうだしね。
由良はどんな行動に出るでしょう。
> でも、新庄さんが出てきた意味は・・・?
> やっぱり、三角♪←好きみたい
/(゚×゚)\
し、新庄さんはねぇ……ボソボソ
確かに三角ってドッキリさせてくれるところがありますよね~。
私も好きです。
今回は残念ながら…なのですが。
それでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
> 由良がめちゃくちゃ可愛い。
> こんなに可愛い由良が近くにいたら。
> 私なら嬉しくて、ニヤニヤしちゃうなあ。
強がりなところがあるかと思えば、甘えたい度満載な由良です。
改めて高畠と二人きりになったら、高畠の包容力をより感じちゃうんでしょうか。
高畠はニヤニヤしていないのかしら…(←)
> 高畠さんは、ポーカーフェイスなのかな?
> 由良が高畠さんとくっつくのはわかるんだけど。
> まあ、この焦らしが良いですね。
>
> 由良、頑張って~。
もうどのCPか決まっているんですけれどね。
なかなか先に進まないです。
相変わらず焦らしプレイですみませ~ん。
高畠からは動かなさそうだしね。
由良はどんな行動に出るでしょう。
> でも、新庄さんが出てきた意味は・・・?
> やっぱり、三角♪←好きみたい
/(゚×゚)\
し、新庄さんはねぇ……ボソボソ
確かに三角ってドッキリさせてくれるところがありますよね~。
私も好きです。
今回は残念ながら…なのですが。
それでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
コメントありがとうございました。
高畠にとって 由良は 由利の双子の兄として接していただけでしょうね。
由利の事もあって親しみは持っていたようだけど、
恋愛感情は?と、聞かれれば ねぇ…
焦らずに 由利の兄としてだけじゃなく
由良という一人の人として 認めて貰わないとね♪(*^-')b
園児&保護者の旅行に きえ様を始め読者(荷物庫だけど)も参加してもいいの?
園児たちは 手放しで喜んでくれると思うけど 保護者数名に 冷視線を浴びそう!
千城と みこっちゃんは慣れてるけど あの優しい安住からだと 堪えるものがぁ~(T▽T)
同行(?)してるシークレット部隊は、そんな私たちを守ってくれるのでしょうか!?
「隊長!読者のけいったんが 何かグチャグチャ言ってますが!」
『けいったん?誰だソレは? 面倒だから 放っておけ!』
「「ラジャ!( ̄- ̄)ゞ」」by隊員A・B
「旅行か…(嬉)」by隊員C
無視かよ!!(ーωー♯)オイッ!...byebye☆
由利の事もあって親しみは持っていたようだけど、
恋愛感情は?と、聞かれれば ねぇ…
焦らずに 由利の兄としてだけじゃなく
由良という一人の人として 認めて貰わないとね♪(*^-')b
園児&保護者の旅行に きえ様を始め読者(荷物庫だけど)も参加してもいいの?
園児たちは 手放しで喜んでくれると思うけど 保護者数名に 冷視線を浴びそう!
千城と みこっちゃんは慣れてるけど あの優しい安住からだと 堪えるものがぁ~(T▽T)
同行(?)してるシークレット部隊は、そんな私たちを守ってくれるのでしょうか!?
「隊長!読者のけいったんが 何かグチャグチャ言ってますが!」
『けいったん?誰だソレは? 面倒だから 放っておけ!』
「「ラジャ!( ̄- ̄)ゞ」」by隊員A・B
「旅行か…(嬉)」by隊員C
無視かよ!!(ーωー♯)オイッ!...byebye☆
けいったん様
こんにちは~。
長くないですよ~。いっぱい書きこんでください♪
> 高畠にとって 由良は 由利の双子の兄として接していただけでしょうね。
> 由利の事もあって親しみは持っていたようだけど、
> 恋愛感情は?と、聞かれれば ねぇ…
>
> 焦らずに 由利の兄としてだけじゃなく
> 由良という一人の人として 認めて貰わないとね♪(*^-')b
そうなんですよ~。
高畠にとっては由利の延長のようなもの。
まぁ、ここまで双子に対して親密になるような行動は今までなかったのですが、そこは由良と由利の仲を散々見てきたからこそ、自然と行動に移せる高畠…といった程度でしょうか。
由良の淋しさを感じちゃえるところはエライと言えますけれどね。
もう一歩が…。
> 園児&保護者の旅行に きえ様を始め読者(荷物庫だけど)も参加してもいいの?
>
> 園児たちは 手放しで喜んでくれると思うけど 保護者数名に 冷視線を浴びそう!
> 千城と みこっちゃんは慣れてるけど あの優しい安住からだと 堪えるものがぁ~(T▽T)
> 同行(?)してるシークレット部隊は、そんな私たちを守ってくれるのでしょうか!?
>
> 「隊長!読者のけいったんが 何かグチャグチャ言ってますが!」
> 『けいったん?誰だソレは? 面倒だから 放っておけ!』
> 「「ラジャ!( ̄- ̄)ゞ」」by隊員A・B
> 「旅行か…(嬉)」by隊員C
>
> 無視かよ!!(ーωー♯)オイッ!...byebye☆
遠足はきっと誰もが参加可能のはずです。
シークレット部隊が読者様を守ってくれるかどうかは疑問ですが…。
たぶんそれぞれの目的に一生懸命になってて、読者様は無視かと…。
保護者は自分たちのことに夢中になっているんじゃないですかねぇ。
だから安心して参加できると思いますよ~。
---v(* ̄▽ ̄*)〃▽〃)---お風呂
きえツアー「ささ、こちらへ♪ρ(^^ )/◇ ご案内ぃーー♪」
[壁|_-)チラッ
隊員A「Σ (゚Д゚;)」
隊員B「た、隊長…、あちらにも『のぞき隊』がおりますが…」
隊長『【~~~(´▽`A)~~~】 イイユダナ~♪』
隊員「い、いつのまに…」
コメントありがとうございました。
こんにちは~。
長くないですよ~。いっぱい書きこんでください♪
> 高畠にとって 由良は 由利の双子の兄として接していただけでしょうね。
> 由利の事もあって親しみは持っていたようだけど、
> 恋愛感情は?と、聞かれれば ねぇ…
>
> 焦らずに 由利の兄としてだけじゃなく
> 由良という一人の人として 認めて貰わないとね♪(*^-')b
そうなんですよ~。
高畠にとっては由利の延長のようなもの。
まぁ、ここまで双子に対して親密になるような行動は今までなかったのですが、そこは由良と由利の仲を散々見てきたからこそ、自然と行動に移せる高畠…といった程度でしょうか。
由良の淋しさを感じちゃえるところはエライと言えますけれどね。
もう一歩が…。
> 園児&保護者の旅行に きえ様を始め読者(荷物庫だけど)も参加してもいいの?
>
> 園児たちは 手放しで喜んでくれると思うけど 保護者数名に 冷視線を浴びそう!
> 千城と みこっちゃんは慣れてるけど あの優しい安住からだと 堪えるものがぁ~(T▽T)
> 同行(?)してるシークレット部隊は、そんな私たちを守ってくれるのでしょうか!?
>
> 「隊長!読者のけいったんが 何かグチャグチャ言ってますが!」
> 『けいったん?誰だソレは? 面倒だから 放っておけ!』
> 「「ラジャ!( ̄- ̄)ゞ」」by隊員A・B
> 「旅行か…(嬉)」by隊員C
>
> 無視かよ!!(ーωー♯)オイッ!...byebye☆
遠足はきっと誰もが参加可能のはずです。
シークレット部隊が読者様を守ってくれるかどうかは疑問ですが…。
たぶんそれぞれの目的に一生懸命になってて、読者様は無視かと…。
保護者は自分たちのことに夢中になっているんじゃないですかねぇ。
だから安心して参加できると思いますよ~。
---v(* ̄▽ ̄*)〃▽〃)---お風呂
きえツアー「ささ、こちらへ♪ρ(^^ )/◇ ご案内ぃーー♪」
[壁|_-)チラッ
隊員A「Σ (゚Д゚;)」
隊員B「た、隊長…、あちらにも『のぞき隊』がおりますが…」
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隊員「い、いつのまに…」
コメントありがとうございました。
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