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BLの丘
七色の虹 14
2012-09-26-Wed  CATEGORY: 七色の虹
何か悪いことがあったのだろうか…。
不安になる気持ちを隠しながら、由良は最後の料理、高畠が作ってくれたアラビアータ味のペンネを皿に盛ってテーブルへと運んだ。
冷蔵庫の中からビールと冷えたグラスを取りだす。
慣れたように隣に座った由良に、さりげなく隙間を開けられたことを、気付かないわけではなかった。
だけど知らないふりをした。

「おつかれさま~」
いつもと変わらない会話を喉奥から絞り出した。
ぎこちなさを、高畠が感じていないわけではないだろう。
何も変わらないはずだが、漂う空気は普段とは全く違っていて…。
一応由良に合わせてはくれている。
会話もいつも通りだし、話しかけ、返され、話題を振られて、由良も明るく答えていた。
端に人がいたなら、何も気付きはしないのだろうか…。
昔の由良と由利の関係のようだった。近寄る時はあってもさりげなく避け続ける…。

何が変えてしまったのだろう…。
ただここに高畠が居てくれることだけを期待して由良は続きの時間を強請っていた。
テーブルに並べられた食品は確実に減ってくれていて、口にあっていないわけではないのだとはわかるのだけれど…。
「あ、ビールのおかわり…っ」
由良が咄嗟に立ちあがりかけた時、「いらない」と冷たくもある声が響いた。
「え…?」
「もういいよ。これ、食べ終わったら帰るから…」
冷やりとした言葉が響いた。
ズクン…っと鉛が胸の奥に落ちた。
「『帰る』…?もう…?」
今の時間は何時なのだろう…。
見上げた時計はさほど時間がたっていないことを表していた。
急いて食を進めたのかと思うくらい…。
この前の時だって、もっとゆっくりとしていってくれたはずなのに…。
だけど言われては逆らうとか、留めるとかできなかった。
なにもかも、受け入れるしかない。
高畠には何かやりたいことがあって、時間を必要としたのか。
由良は頷いて見送ろうとした。
それは、過去からの、”諦める”精神が影響したのだろうか…。

陰りを浮かべても頷いてしまった由良の表情に、高畠にはあからさまなほど困惑が伺えた。
そして、激しい舌打ち…。
「…ったくっ…」
どれだけの機嫌を損ねてしまったのだろうかと…。由良は微動だにできなくなった。
そんな由良の反応をどんな風に受け止めたらいいのだろうかという、普段では見られない落ち着きの無さが高畠に浮かぶ。
極力、高畠には負担をかけないように選んだ道筋だったのに…。
この顔を見たなら…。

何もかもの計画が打ち捨てられていく…。
ゆっくり寛いで…と願ったことは、逆に負担を与えてしまったのか…。

由良の落ち込みを感じるのだろうか。
束の間の沈黙の後、ふわりと温かい肌に全身が包まれた。
一瞬どうしたのか状況が掴めなくなる。
自分を包んでいてくれているのは…温かな腕だった。
頭上を撫でてくれる手、それとは違って、全身を抱きしめてくれる温かさが肌を這う。

「言えよ。『帰ってほしくない』とか、なんのためにここに呼んだとか…。このまま送り出されたら、何て言えばいいの?つか、納得いかないし…。俺、自惚れていいのかな…」
咄嗟に判断がつかない台詞が鼓膜を揺らす。
今、抱きしめられていることも、囁かれていることも、それこそが由良にとって『自惚れ』になる。
「高畠…さん…?」
どういう意味なのかと渦巻く心が疑問を投げかけた。
直接言葉にしなくても、由利のように通じてくれる意思の疎通がここにはある。
少しだけ顔を上げた高畠が、苦笑いと動揺を滲ませて呟いた。

「気付けよ、それくらい…。…由良に誘われるたび、ユーリにどう言い訳付けようか、散々考えさせられてた。ユーリに嫌われることも避けたかったし。羽後さんが”お兄ちゃん”の許可を得たかったように、俺は”弟”の承諾が欲しかったのかな…」
由良の見開かれた目が真正面からその姿をとらえる。
フッと笑った顔はいつもと変わらないと思える優しさがあった。
僅かな緊張感が、本音を晒されたことで弾け飛んだようにも思える。
「高畠…さ…」
「おまえのこんな姿、見せられて、マジで戸惑ってるんだけど…。無意識に表現しているのはユーリだと思っていたけれど、やっぱり由良も変わらないよ。ホント…、困ってるの…」
どんな意味で言っているのかと…。
何度も発言を脳内で繰り返した。
もっとはっきりと言ってくれればいいのに…。さりげなくとも誤魔化してしまう口調は高畠ならではなのか…。
それ以上に発展するものがあるのか、確かめたい気持ちがムクムクと湧いた。
「高畠さん…」
高畠は由良の肩口に額を伏せた。
「おまえは『虹』だよ…。濡れても輝いていて手が届きそうで、幾つも色を変えて…。いつの間にか消えていく…。すりぬかれていくようで怖いんだ…。帰らなきゃ…。マジで、襲うぞ…」

感情を押さえたことは由良も高畠も同じだったのだろうか…。
平静を失うこと…。普段と変わってしまうこと…。
限界を訴えた高畠に、『正直になれ』と言ってきた由良に言っていることとは矛盾しているのではないかと思えた。
耐えているのは高畠の方ではないのか…。
高畠の発言には頷けるものがある。
このきっかけを、フイにする気にはなれなかった。
“解放”とは、由良の精神だったのか、高畠の耐えたものだったのか…。

「襲ってくれなかったら、一生恨む…」
由良の呟きに、フッと吐息が漏れたのを、耳朶の奥で聞いた。

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コメント

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き、き、来た!
コメントちー | URL | 2012-09-26-Wed 04:18 [編集]
とうとう、動いたぁ、高畠さん!
あー、ハラハラした。マジで帰るかと思った。
(帰ったらそれはそれで、新庄ラブ度が増すんだけど)

由良が感情を抑えて、帰って良いよと頷いたとこ。
高畠さんじゃないけど、撫でくりまわしたい位可愛いって言うか。お兄ちゃんだなって言うか。

そして、高畠さん!そんな、由良をよく見てるよね?
由利に気を使ってるのは、高畠さんもだったのね。
由利は由良より手強いと思うなあ。だって、ブラコンな上に双子ちゃん(笑)けど、高畠さんなら大丈夫でしょ?


けいったん奥さま、ついに来ましたわよ?高畠さん。
で、隊長いつ帰って来るんですって?←順応早い
そう言えば、ちー、旅行連れてって貰えなかった。
奥さま、酷いと思いません?
え?奥さまと青田買いツアーに?イクイク、行きます!
ついでに旅行会社は、例のトコで♪

「おっ、新庄ちゃんじゃね?」
「・・・(コイツもかよ?)何ですか?湯田川さん」
「今日さあ、みんなに振られちゃって。呑み、行かね?」
「あー、残念だな。これから、デートなんで」
「またまたぁ、行こうぜ、新庄ちゃんてば」
「本当だって。また今度誘ってよ、な?じゃ、お疲れ
さま!」

なんて、会話があったりして。あはは。
Re: き、き、来た!
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-26-Wed 07:14 [編集]
ちー様
おはようございます。

> とうとう、動いたぁ、高畠さん!
> あー、ハラハラした。マジで帰るかと思った。
> (帰ったらそれはそれで、新庄ラブ度が増すんだけど)
>
> 由良が感情を抑えて、帰って良いよと頷いたとこ。
> 高畠さんじゃないけど、撫でくりまわしたい位可愛いって言うか。お兄ちゃんだなって言うか。

なんかね~。
性格が出ますね。
高畠も遠慮(?)したところがあって…。
前回同様帰ろうとしたんでしょうが、あっさりと頷かれちゃうと、それも納得できないというか…。
でもここで動かないと男じゃないよっ!!(←と勝手に思っている)

> そして、高畠さん!そんな、由良をよく見てるよね?
> 由利に気を使ってるのは、高畠さんもだったのね。
> 由利は由良より手強いと思うなあ。だって、ブラコンな上に双子ちゃん(笑)けど、高畠さんなら大丈夫でしょ?

この双子は手強いよね。
まぁ、今は、由利には宥めてくれる人もいるので、由利の心配はないと思いますけれど。
それが分かるから高畠も動きを出すことができたのでしょうか。
由利も、由良の相手が高畠だって分かれば、安心するんじゃないかなぁ。

> けいったん奥さま、ついに来ましたわよ?高畠さん。
> で、隊長いつ帰って来るんですって?←順応早い
> そう言えば、ちー、旅行連れてって貰えなかった。
> 奥さま、酷いと思いません?
> え?奥さまと青田買いツアーに?イクイク、行きます!
> ついでに旅行会社は、例のトコで♪
>
> 「おっ、新庄ちゃんじゃね?」
> 「・・・(コイツもかよ?)何ですか?湯田川さん」
> 「今日さあ、みんなに振られちゃって。呑み、行かね?」
> 「あー、残念だな。これから、デートなんで」
> 「またまたぁ、行こうぜ、新庄ちゃんてば」
> 「本当だって。また今度誘ってよ、な?じゃ、お疲れ
> さま!」
>
> なんて、会話があったりして。あはは。

あつみちゃんとセミちゃんねぇ。(←スピンオフはないよ)
仲良しな同期の人たちです。
きっといつか、ふたりで淋しく(?)飲みあっていることでしょう。
話題はやっぱり双子ちゃんなのかしら。
デート?!
新庄はとっても良い人なので相手がいてもおかしくないしなぁ。
湯田川は我が儘だから、相手はいなさそうだよね。
めいっぱい想像して、あとで出来事をコッソリ教えてくださいね。(その頭脳に期待します)
コメントありがとうございました。
コメントけいったん | URL | 2012-09-26-Wed 09:12 [編集]
これだけグイグイと来られたら そりゃぁ 余程の人じゃない限り 気づくよね!
「襲ってくれなかったら、一生恨む」と、由良に言われたら
「襲わなかったら、一生悔やむ」ってものでしょ、高畠♪( '艸`*)プホホ

空を淡く彩り いつの間にか消えてしまう虹
高畠にとって由良は そんな印象を持っていたんだ。
タイトルは、そういう意味を含んでいたのですね。
きえ様、ロマンティスト~(*・ω・*)ポッ


「えっ、イクメン青田買いツアーって!ちょ!ちー奥さんったら~」
ちー奥さんは ルンルン・ランランな感じでスキップしながら帰って行ったよ(o^-^o) ウヒッ

それより 最近 読者が脇役を褒めると…
「ス・ス・ス・スピンオフかぁ~!?∑(; ̄□ ̄Å アセアセ」と、ビビっている作者を覗き見する方が面白いのでは?(笑)
(  ̄ー)ニヤリッ→→→|窓|TρT:)アゥ…byebye☆ 

Re: 虹
コメントたつみきえ | URL | 2012-09-26-Wed 12:53 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> これだけグイグイと来られたら そりゃぁ 余程の人じゃない限り 気づくよね!
> 「襲ってくれなかったら、一生恨む」と、由良に言われたら
> 「襲わなかったら、一生悔やむ」ってものでしょ、高畠♪( '艸`*)プホホ

「襲え」って由良、自ら、言っていますね~。
もう、そこは男として…実践するでしょう。
恨まれたくないし、悔みたくないしね。

> 空を淡く彩り いつの間にか消えてしまう虹
> 高畠にとって由良は そんな印象を持っていたんだ。
> タイトルは、そういう意味を含んでいたのですね。
> きえ様、ロマンティスト~(*・ω・*)ポッ

強がりだったり、素直じゃなかったり、でもそっと甘えてきたり…。
七変化を繰り返す由良です。
タイトルは、まぁ、いつものごとく、適当につけています…(汗)
ろ、ろまんちすと…(/ー\*) きえちん…。

> 「えっ、イクメン青田買いツアーって!ちょ!ちー奥さんったら~」
> ちー奥さんは ルンルン・ランランな感じでスキップしながら帰って行ったよ(o^-^o) ウヒッ
>
> それより 最近 読者が脇役を褒めると…
> 「ス・ス・ス・スピンオフかぁ~!?∑(; ̄□ ̄Å アセアセ」と、ビビっている作者を覗き見する方が面白いのでは?(笑)
> (  ̄ー)ニヤリッ→→→|窓|TρT:)アゥ…byebye☆ 

脇役が良すぎると、次を求められるのか…。
覗き見しているけいったん様、趣味悪いぞぉ。
「す」とか「ぴん」とか「おふ」っていうものはもう書かないことにしたも―ん。
脅されたら背後を気にしてもしかしたら…もしかするかもしれないけれど…。(・・;)ビクビク
コメントありがとうございました。

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