「やめて、…やめてっ」
携帯電話を取り出した男を視界に入れた時、英人は大きく首を振って必死にその手にすがった。手に持つ物を取り上げようとしたが体格のいい男には歯が立たなかった。
絶対に見られたくない…!!
英人の懇願も虚しく片手であしらわれ、あっけなく淫らな画像を画面に映し出して、男はニヤつく笑みと共に榛名に披露した。
…最悪だ…
「あんた、これ買う?ネットじゃあ、いい値段で買ってくれる奴いるんだけど。…それかコイツ捨ててくれない?俺、忘れられないんだよね。コイツの身体、最高なの。あんただったら他にいくらでも探せるだろ?金額によっては考えてやってもいいぜ」
卑下した薄笑いを浮かべて、男は英人を完全に「物」として扱っていた。自分の身体に値段が付けられる瞬間でもあった。
もっともこの男に値段など存在していない。自由に遊ぶために脅すだけだ。
平気でどこの男にでも抱かれている姿を見せられれば、榛名が呆れて捨てると思ったのだろうか。
榛名はチラリと視線を画像に落としただけで、眉の一つも動かさず表情を変えなかった。
だが瞳の奥で燃えさかる様な青い筋が見えて、英人はひどく震えあがった。この男は榛名の恐ろしさを知らない…。
「これだけか?」
携帯電話を持った男に、他にはないのか?と落ち着き払った声で確認をした。
こんな写真が複数枚もあったらどこまで脅されるか分かったものではない。そんなことを今になって英人も気付いた。
見たこともないほど激しく刺すような冷酷な視線で睨み下ろされたことで、男もようやく榛名のすごみに怯んだようだった。
研ぎ澄まされたかのような鋭さに誰が何を言えるというのか…。
「…あ、あぁ…」
先程までの強気な態度が一瞬よどむ。馬鹿正直に答えてしまったらしい男の返事を聞いた途端に、榛名が勢いよく携帯電話を取り上げ、素早い操作で画像を消してしまった。
「あっ、ちょっとっ!!何すんだよっ!」
榛名に飛びかかろうとした男を、榛名は「止まれ」と言うように掌を掲げただけで制した。全身から溢れる怒りのオーラは人を近付けなかった。
一瞬の隙をついた行動に英人も驚かされた。何よりも榛名から放たれる威圧感に圧倒された。
一応携帯電話に収められている画像を確認した上で、投げつけるように携帯電話を男の手に返す。それから冷やかな声を上げた。
「おまえだって社会的にそれなりの地位があるだろう。身元などすぐに調べられる。今後我々に手を出そうものなら二度と社会復帰ができないくらいに叩き潰してやるから覚悟をしておけ」
冷徹な瞳で男を睨みつけた後、英人を顎で杓った。
「何をしている。帰るぞ」
全く動くことのできなかった英人を視線だけで動かして、英人を先に部屋から出すと榛名が続いて外に出た。
脅迫したはずなのに、人生を潰すと逆に脅され、動けなかったのはたぶんあの男も同じだろう。
英人は俯いたまま、榛名の姿も男も見上げることができなかった。
無言で最上階の部屋まで戻った。震える指先はボタンを留めることもできなくて、両手を胸に置き布地を合わせた。
エレベーターに乗れば榛名がパネルを触る。
寄り道などできないよう監視されているのか(もちろんする気も沸かないが)榛名が常に英人を促し後ろを歩くので、先を歩く英人は榛名の怒り具合を感じて、振り返ることもできなかった。
部屋に入ると後ろ手で榛名がドアを閉めた。
今度は何をされるのかという恐怖だけが渦巻いた。
過去、元樹を部屋に入れたというだけで、厳しく罰せられた経験があるから、自ら男の部屋に飛び込んだような今回はどうなってしまうのだろう…。
自分が知る限りの『拷問』という経験したことのない知識が様々な方角から英人を攻め立てた。
あんな写真を見られたということも英人に暗い影を落としていた。
榛名に幾度か抱かれ、痴態だってそれなりに見せた。卑しい体なのだとすでに知られてはいても、改めて強調されたようで胸が痛かった。
まともな人生を教えてくれた榛名に、過去を振り返られたようで心悲しく、所詮堕落した男なのだと思われることが何よりも辛かった。
榛名は英人を通り過ぎ大きな革張りのソファに腰を下ろした。
「座れ」
入口で立ちつくすだけの英人を呼びつけ、隣に座るよう促される。
足元に視線を落したまま、英人は一瞬だって榛名の顔を見ることなどできない。
命令されれば、今の榛名に逆らえる勇気など微塵もなかった。
にほんブログ村
どうかポチッとしていってくださいナ…m(__)m
携帯電話を取り出した男を視界に入れた時、英人は大きく首を振って必死にその手にすがった。手に持つ物を取り上げようとしたが体格のいい男には歯が立たなかった。
絶対に見られたくない…!!
英人の懇願も虚しく片手であしらわれ、あっけなく淫らな画像を画面に映し出して、男はニヤつく笑みと共に榛名に披露した。
…最悪だ…
「あんた、これ買う?ネットじゃあ、いい値段で買ってくれる奴いるんだけど。…それかコイツ捨ててくれない?俺、忘れられないんだよね。コイツの身体、最高なの。あんただったら他にいくらでも探せるだろ?金額によっては考えてやってもいいぜ」
卑下した薄笑いを浮かべて、男は英人を完全に「物」として扱っていた。自分の身体に値段が付けられる瞬間でもあった。
もっともこの男に値段など存在していない。自由に遊ぶために脅すだけだ。
平気でどこの男にでも抱かれている姿を見せられれば、榛名が呆れて捨てると思ったのだろうか。
榛名はチラリと視線を画像に落としただけで、眉の一つも動かさず表情を変えなかった。
だが瞳の奥で燃えさかる様な青い筋が見えて、英人はひどく震えあがった。この男は榛名の恐ろしさを知らない…。
「これだけか?」
携帯電話を持った男に、他にはないのか?と落ち着き払った声で確認をした。
こんな写真が複数枚もあったらどこまで脅されるか分かったものではない。そんなことを今になって英人も気付いた。
見たこともないほど激しく刺すような冷酷な視線で睨み下ろされたことで、男もようやく榛名のすごみに怯んだようだった。
研ぎ澄まされたかのような鋭さに誰が何を言えるというのか…。
「…あ、あぁ…」
先程までの強気な態度が一瞬よどむ。馬鹿正直に答えてしまったらしい男の返事を聞いた途端に、榛名が勢いよく携帯電話を取り上げ、素早い操作で画像を消してしまった。
「あっ、ちょっとっ!!何すんだよっ!」
榛名に飛びかかろうとした男を、榛名は「止まれ」と言うように掌を掲げただけで制した。全身から溢れる怒りのオーラは人を近付けなかった。
一瞬の隙をついた行動に英人も驚かされた。何よりも榛名から放たれる威圧感に圧倒された。
一応携帯電話に収められている画像を確認した上で、投げつけるように携帯電話を男の手に返す。それから冷やかな声を上げた。
「おまえだって社会的にそれなりの地位があるだろう。身元などすぐに調べられる。今後我々に手を出そうものなら二度と社会復帰ができないくらいに叩き潰してやるから覚悟をしておけ」
冷徹な瞳で男を睨みつけた後、英人を顎で杓った。
「何をしている。帰るぞ」
全く動くことのできなかった英人を視線だけで動かして、英人を先に部屋から出すと榛名が続いて外に出た。
脅迫したはずなのに、人生を潰すと逆に脅され、動けなかったのはたぶんあの男も同じだろう。
英人は俯いたまま、榛名の姿も男も見上げることができなかった。
無言で最上階の部屋まで戻った。震える指先はボタンを留めることもできなくて、両手を胸に置き布地を合わせた。
エレベーターに乗れば榛名がパネルを触る。
寄り道などできないよう監視されているのか(もちろんする気も沸かないが)榛名が常に英人を促し後ろを歩くので、先を歩く英人は榛名の怒り具合を感じて、振り返ることもできなかった。
部屋に入ると後ろ手で榛名がドアを閉めた。
今度は何をされるのかという恐怖だけが渦巻いた。
過去、元樹を部屋に入れたというだけで、厳しく罰せられた経験があるから、自ら男の部屋に飛び込んだような今回はどうなってしまうのだろう…。
自分が知る限りの『拷問』という経験したことのない知識が様々な方角から英人を攻め立てた。
あんな写真を見られたということも英人に暗い影を落としていた。
榛名に幾度か抱かれ、痴態だってそれなりに見せた。卑しい体なのだとすでに知られてはいても、改めて強調されたようで胸が痛かった。
まともな人生を教えてくれた榛名に、過去を振り返られたようで心悲しく、所詮堕落した男なのだと思われることが何よりも辛かった。
榛名は英人を通り過ぎ大きな革張りのソファに腰を下ろした。
「座れ」
入口で立ちつくすだけの英人を呼びつけ、隣に座るよう促される。
足元に視線を落したまま、英人は一瞬だって榛名の顔を見ることなどできない。
命令されれば、今の榛名に逆らえる勇気など微塵もなかった。
にほんブログ村
どうかポチッとしていってくださいナ…m(__)m
0
1
| ホーム |
