2ntブログ
ご訪問いただきありがとうございます。大人の女性向け、オリジナルのBL小説を書いています。興味のない方、18歳未満の方はご遠慮ください。
BLの丘
乱反射 18
2012-10-24-Wed  CATEGORY: 乱反射
あつみの問いかけにコクリと頷かれて、真室を連れて来た道を戻った。
今度こそ、心臓が飛び出しそうなくらい緊張していたあつみだった。
玄関をくぐり、聞こえてくる足音が一人ではないことに気付いたのであろう。若美が顔を向けて待っていた。
「お忘れ物ですか?」
あつみの顔を見ては当然のような質問が飛んでくるが、隣に立つ真室が離れないことで、それとなく雰囲気を感じ取ったようだった。
真室は先程のくちづけのこともあって、頬を紅潮させたままでいる。
「あ、あのね、お兄ちゃん…」
特に責めてくる態度はなかった。
小さく吐息をついて、「座りましょうか」とふたりをリビングに案内した。
ピリピリとした空気を漂わせつつ、真室と若美の間にある培ったものが、ただ和みを生んでいた。

あつみの隣に真室がちょこんと座ってくれる。
改めて顔を合わせた若美が正面から切り込んできた。
人の良い兄は、すでに大事な弟を守る保護者に変貌していた。
「真室がご迷惑をおかけしている…という内容ではなさそうですね」
ゴクッと唾液を飲み込み、乾いた喉を潤して、あつみは頭を下げた。
「はい。真室くんとのお付き合いの許可をいただきたいと思い、伺いました」
「中途半端な付き合いなら、わざわざ許可など必要としないでしょう?」
「そんなふうにはしたくないんです。真室にも後ろめたいような思いは抱かせたくないし、何より自分というものを認めてもらえたらと…」
あつみ自身、アピールできるものなどありはしない。
まだ知らない事だらけで、認めるも何もないだろうと言えるところだが、真室のことは良く見てきた事実だけは知ってもらいたい。
「お兄ちゃん…」
頭を下げたままのあつみを気遣うのか、真室が若美に声をかけた。
胸の前で腕組みをしたのが、視界の隅に映ってくる。
しばらくの沈黙のあと、「とりあえず、顔をあげてください」と、向かいあうことを要求された。
視線を合わせることに少々の脅えも混じらせながら、逃げることなく彼の表情を伺う。
怒っているようでもなく、穏やかに見える姿見には、人を落ち着かせるものがあるような気がした。

「よほどのことがあれば、もちろん真室には忠告をしますよ。しかし、そこは真室の判断に任せる部分があるでしょう。あなたのようにきちんと報告をしてくれる人に、私が反対する理由はないと思います。もし何かあれば、その時は真室の人を見る目の無さということになりますが。…とはいえ、状況によっては黙っていられない展開になる覚悟だけはもっておいてください」
諦観してくれる思いに一瞬声が出なかった。
“たかが弁当”から始まっても、その頃真室に想いがなかったとしても、しっかりと訪問した態度など、全てを見られていた。
この期に及んで、若美から苦言を告げることはないと発言されれば、肩に乗っていた重りが落ちた気がした。
「ありがとうございますっ」
再びあつみは深々と頭を下げる。
降り注がれる温かな視線があるような雰囲気に、この家の居心地の良さをまた感じたと思った。
良い環境で真室が育ってきたこと…。
無垢な部分を残した真室の性格の原点が分かるようでもある。

二度目に玄関を出るときは、真室はついては来なかった。
若美の手前があったのか、やはり二度目の誘惑に脅えたのか…。
だがそこはあつみも安心できることでもあった。
また、あんなことになったら、抑えが利かなくなって連れ去りそうだ。
深くくちづけた、その余韻に浸りながら、マンションを後にする。
来る時よりもはるかに、軽やかな足取りだった。

*****

玄関から戻った真室はソファに座ったままの若美に近付いた。
「お兄ちゃん…」
どこか不安げな落ちつかなさを漂わせながら寄ってくる姿を、苦笑を浮かべながら横に座るよう促した。
「自分で選んだのだろう」
あつみとの付き合い方を特に反対するわけでもない。
会社で共に働いていれば、知れてくるものもあるし、色々な意味で惹かれる要素があってもおかしくない。
最近ではあまりあることではなかったが、幼いころのようにギュッと抱きしめられては、淋しさを埋めてくれる存在が移り変わっていくことを感じる。
「うん…。…湯田川さん、本当にいい人なんだよ…」
鍛えられた胸元に頬を寄せながら、真室はポツポツと口を開いた。
響いてくる声は、胸の奥からと頭上から降り注いでくる。
真室の髪を撫でてくれる大きな手は、昔から変わらない。
「そうだろう。真面目な人だなとは分かるよ」
「僕が痴漢にあった…って聞いたら、それから毎日ここまで送ってくれたんだ…。自分の家、逆方向だっていうのに…」
「え…?」
生活時間が異なる真室と若美に、日常を全て語るような時間は持てていない。
真室は新入社員ということで、人よりも早く会社に着くように朝は動いていたし、若美は客商売なだけに、帰宅は深夜になる。
告げられた事実は若美にとって意外だったようだが、その影にある存在に頬が緩んだ。
それだけで誠実さが伝わったのだろう。
逡巡している空気が流れる。
その後に出された提案には、真室のほうが瞠目した。

「真室、いい人を選んだな。…湯田川さんが迷惑でなかったら、ここに越してきてもらったらどうだ?遊佐(ゆさ:お姉ちゃん)の部屋が空いているだろう。真室を送ってから逆方向に帰るだなんて、そんな無駄はバカバカしくないか?」
褒められて嫌な気はしない。
一人暮らしのあつみを気遣うものでもあったが…。
それが監視下に置く意味が含まれていたかどうかは、誰も知らない…。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ 
ポチってしていただけると嬉しいです(///∇//)

またまた視点が変わってごめんなさい。
こんな裏話…ってことで。

昨日間違ってupしてしまって、気付いてから下ろしたのですが…。
すでに拍手までもらってどうしようかと悩み、でも続きがないので隠しました。
読んでくださった方、ごめんなさい。
あと、左カラムに今年の年末の課題(?)アンケ貼りました。
たぶん地雷になると思うので、興味のある方だけ投票ください。11月末までにします。


関連記事
トラックバック0 コメント4
コメント

管理者にだけ表示を許可する
 
お兄ちゃん
コメントちー | URL | 2012-10-24-Wed 07:36 [編集]
あーあ、お兄ちゃん。
わかってたけど。うん、わかってはいたけど。
物分かり良すぎっ!
弟は、可愛いのはよっくよーくわかる。
まあ、あっちゃん、良い人ですから。
同じオウチに住むのはどうでしょうね?
どこぞの長男みたいに残業と言う名目のイチャイチャタイムが増える・・・
あ、お兄ちゃん帰りが遅かったっけね。

「師匠!今日はちーが撮りためた写真を使ってゲームしましょ♪」
「え、うん」
「神経衰弱みたいなもので裏返してある写真でカップル作るのねー?」
「よっし、負けないわよ?」


「師匠、そのcp はちょっと・・・」
「だって、脇役好きだし」
「知ってるけどさあ。じゃ、こっちは?」
「あのアンケート迷うんだけど」
「ちーもですよ、師匠」
Re: お兄ちゃん
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-24-Wed 08:18 [編集]
ちー様
おはようございます。

> あーあ、お兄ちゃん。
> わかってたけど。うん、わかってはいたけど。
> 物分かり良すぎっ!
> 弟は、可愛いのはよっくよーくわかる。
> まあ、あっちゃん、良い人ですから。
> 同じオウチに住むのはどうでしょうね?
> どこぞの長男みたいに残業と言う名目のイチャイチャタイムが増える・・・
> あ、お兄ちゃん帰りが遅かったっけね。

兄というのは弟に甘いのです。
物分かりも良いのです。
そして策略家なのです(←いや…どうだろう…)
お兄ちゃんの帰りが遅いから"残業"していても分からないでしょう。
どこぞの兄弟宅は押しかけてきましたけれど、こちらは呼びこんでいますからね。
勢いあるあつみの行動はどうなっていくのでしょう。

> 「師匠!今日はちーが撮りためた写真を使ってゲームしましょ♪」
> 「え、うん」
> 「神経衰弱みたいなもので裏返してある写真でカップル作るのねー?」
> 「よっし、負けないわよ?」
>
>
> 「師匠、そのcp はちょっと・・・」
> 「だって、脇役好きだし」
> 「知ってるけどさあ。じゃ、こっちは?」
> 「あのアンケート迷うんだけど」
> 「ちーもですよ、師匠」

そ、そのゲームは…。
つまり、個人的な意見でなんでもありなので"正解"はないのでは…(・・;)
こちらブログ、登場人物が非常に多いので、組み合わせは無数元とあるのではないですか?
どんなCPが生まれるのか、私としても楽しんでいるところがあります。
アンケはあくまでも一部ですので(笑)
コメントありがとうございました。
コメントけいったん | URL | 2012-10-24-Wed 12:39 [編集]
私も ちーさんと同じ予想はしてたんだけど
やっぱり あつみと真室の関係を あっさり了承したのね、若美!
もっと 揉めて欲しかったわ!(*・ε・*)ムー

---以下 またもや 妄想っす( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪---
若美と真室が兄弟喧嘩して揉めて 泣きながら真室は 家出!
そして あつみの家に~~ってね♪

「ちーさん この脇役と この脇役のCPって どう?」
「これって 作品を飛び越えているじゃないですかーー!」
「だって…」

きえ様に 御無体なリクを要求しそうで ちょっと怖い私です
( ̄  ̄)………( ̄ー ̄)ニヤ...byebye☆
Re: タイトルなし
コメントたつみきえ | URL | 2012-10-24-Wed 16:16 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> 私も ちーさんと同じ予想はしてたんだけど
> やっぱり あつみと真室の関係を あっさり了承したのね、若美!
> もっと 揉めて欲しかったわ!(*・ε・*)ムー

揉めたら、終わらない話になっちゃうじゃない…(←なんていう理由…)
お兄ちゃんは弟に対して優しいんです!!(力説)
揉めるのはこの後で…(え?! 実家に帰らせていただき…、この場合、追い出す方か…)

> ---以下 またもや 妄想っす( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪---
> 若美と真室が兄弟喧嘩して揉めて 泣きながら真室は 家出!
> そして あつみの家に~~ってね♪

ここんちの兄弟喧嘩がまず思い浮かばなかったけれど…。
またもや先読みされた気分です.....(;__)/|(ドウシテあつみノオウチニイクコトガバレタノ…)
私の単細胞的な脳内を、どうか誰か交換してください。(必至)

> 「ちーさん この脇役と この脇役のCPって どう?」
> 「これって 作品を飛び越えているじゃないですかーー!」
> 「だって…」
>
> きえ様に 御無体なリクを要求しそうで ちょっと怖い私です
> ( ̄  ̄)………( ̄ー ̄)ニヤ...byebye☆

皆様の脳内はどうなっているの~~~っっっっ?!
えぇ、そんな無茶ぶりにお答えしようとする年末企画です。
キリ番ゲットできなくても、こんなチャンスはあるのよ~♪ってことで。
(単に脳内からっぽ…)
来年のカルタ、組み合わせも自由自在につかんでくださいね。
「浮気相手、この男なら…」「コイツっ!!」
「おてっ」
コメントありがとうございました。
トラックバック
TB*URL
<< 2024/05 >>
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


Copyright © 2024 BLの丘. all rights reserved.