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BLの丘
乱反射 29
2012-11-04-Sun  CATEGORY: 乱反射
週明け、萩生と由良と、真室との4人での食事となった。
弁当を受け取って、そのまま居座られた…というのが正しい。
まぁ、別に困ることではなかったけれど…。
そこで萩生と由良の同居の話から、真室があどけなく「あつみさんも僕のところに越してくるんです」と語ってくれたことで話題が反れた。
急展開とは、このことを言うのではないか…と改めて感じてしまう。
それなりに付き合い方は分かっていたけれど、堂々と宣言されてはもう逃げようもない…。いや、逃げる気はないが…。
「同棲?お兄さんOKなの?」
一度は顔を合わせた萩生は環境を知っている。
自分は保護者のいない空間に飛び込んだだけに、こちらの心配をされるのも、少なからず分かるところだった。
「オーケー…っていうか、頼まれた方…」
ポツリと呟いた言葉に、真室を始め全員が瞬きを忘れた。
そう…。真室には兄から伝えてもらうことを待って、あつみからの話はしていない。
真実は、まだ誰も知らない状況でもあったのだ。
「『頼まれた』?」
萩生の問いに、これ以上の質問はやめてくれと、それとなく目配せしてしまう。
だが、やはり真室は落ち着かない様子で「お兄ちゃんと何の話をしたんですか?」と不安を滲ませた。
単なる”同居”でないことを、それとなく感じ取ってしまうのは、育ってきた勘なのだろうか…。
あつみは咄嗟に「いや…」と誤魔化した。
「お兄さん、帰りが遅いし、真室一人にするのが心配だからって…」
その言葉をそのまま受け止めてくれたのか、ぷぅと頬を膨らませる愛らしい姿に出会う。
「僕…、ひとりでも平気ですっ」
強がっているのはその場にいた人間、全員が分かることでもあった。
由良も無理をする。
由利がいない日、同じ心境だったとは本人も相手も知れることだ。
だから真室の強気な発言を、誰も咎めはしない。

「まぁ、用心棒ってことでいいんじゃないの?」
真室の不貞腐れ具合も、萩生が一言で治めてしまった。
奥の意味を悟ってくれるところは感謝できることでもある。
何より、受け止めてくれる包容力に返す言葉もない。
全てを丸く収めてしまう人間性は、萩生ならではだと思われた。
それに対して素直に受け入れる真室も、無垢な存在なのだが…。

あつみの引っ越し作業がトントンと進む中、若美が休みの日に、改めて揃う時間ができた。
引っ越しとはいっても、すでに居住空間がある場所に運ぶものなどたいしてない。
もともと、あつみは物を多く置く主義ではなかったから、この移動はあまりにもあっさりとしていた。
その日は、新しい入居者に、両親と姉も揃い、あつみは激しい緊張の中に放り込まれる。
相変わらず若美の料理は繊細で、ただ、一人前ずつ出される…というよりは大皿で、家族の絆を思わせてくれた。
一緒に食せること…。この輪の中に入れたような、そんな温かみがある。
六人掛けのダイニングテーブルに、両親と若美が、向かいにあつみと真室、姉と、斜向かいに姉の旦那だという、細身の七三分けの男がいた。
とても真面目そうな雰囲気で、家族をいたわってくれているのが、その風貌からでも悟れるほど…。
自分もこうならなくては…と思わされるものでもあった。
サバサバとした姉の遊佐は綺麗な顔をしている割に、とげとげしいことも平気で何でも口に出す。それを旦那が嗜める…。
真室も時にそんなことがあったから、やはり姉弟とは似るのか…と内心で思っていたあつみだった。
何より全てを許してきたのは若美だろう。
この頼りがいのある兄がいたからこそ、両親は趣味に没頭できる状況に入れたというわけだ。

一頻り雑談を繰り広げ知らされたもの。
姉の遊佐が住む場所はここからそう遠くもなく、時々帰っては部屋の掃除などしてくれているとのことだ。
若美が新しく構えようとする店も、何かあればすぐに駆けつけられるほどの距離。
若美が独立しようとしていることは、すでに家族の中でも承知されていたことだったらしい。
真室もいつか…と思いながら、このタイミングだとは予想していなかったことで驚きはしていたけれど。
聞いた話に、静かに頷き、「お兄ちゃん、がんばってね」とエールを送っている。
一番離れているのが両親…ということになるが…。
結局はどこかで繋がっている家族関係を羨ましいとすら思った。
あつみは地方の出身だったから、家族に出会うのは年に数回…。ヘタをしたら一年でも出会わない時がある。
新しくその中に加われることを、喜びに思う。

手造りのその味…。
いつまで味わえるのかと、この先の行方を少し不安に思っていた。
さらに、真室に何を食べさせてあげられるのかと…。

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短いかもしれませんが…。週末は書いている暇がないのですよ…。ごめんなさい。
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コメント

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スゲッ
コメントちー | URL | 2012-11-04-Sun 06:58 [編集]
あっちゃん、一気に囲まれたね。
真室一家に会ってしまったら、そりゃもうね?
逃げらんないわよね、ふふふ。

マムちゃんも、みんながいたからか素直に送り出せるみたいだし。
あ、でも、お兄ちゃんが引っ越すときは抱きついて離れないかも(ええ、希望です、希望)

きえさん、忙しいのに更新ありがとうございます。
私は、美琴さんと英祐さんの馴れ初めを読んでました。英祐さん、あちらじゃ乙ばかりですがなかなか素敵な人はですね。ふふふ。そして、双子さんが。
由良由利とは違って、桜の様なお二人でしたけど。
ああ、これでとっておいたのが無くなった。
年末のきえさんのお休みの為のストックが・・・
No title
コメントけいったん | URL | 2012-11-04-Sun 09:09 [編集]
マムの両親や姉夫婦と 御対面~♪
新参者の あつみとしては 緊張するよね!、
でも ここで マム家族に好印象を持って貰わないと。

完璧すぎる兄の後を引き継ぐのは 荷が重いでしょうが、
マムの為=自分の為だからね~

マム姉ちゃんも 時々 掃除に来て 協力してくれるみたいだし!
(; ̄ー ̄)...ン?
不意打ちの掃除訪問って 色々とヤバくない?
そう 色々とね…( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪...byebye☆
Re: スゲッ
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-04-Sun 09:48 [編集]
ちー様
こんにちは。

> あっちゃん、一気に囲まれたね。
> 真室一家に会ってしまったら、そりゃもうね?
> 逃げらんないわよね、ふふふ。
>
> マムちゃんも、みんながいたからか素直に送り出せるみたいだし。
> あ、でも、お兄ちゃんが引っ越すときは抱きついて離れないかも(ええ、希望です、希望)

あつみ、逃げも隠れもしません の気持ちで乗り込んだことでしょう。
真室にとってもあつみの存在は大きいでしょうし。
家族を前に、高らかにお付き合い宣言しちゃってください。
お兄ちゃんが出ていくときねぇ…。
でもそばに住むみたいだし。
お店出したら、おごってもらうのを理由に食べに行けばいつでも会えるさ♪

> きえさん、忙しいのに更新ありがとうございます。
> 私は、美琴さんと英祐さんの馴れ初めを読んでました。英祐さん、あちらじゃ乙ばかりですがなかなか素敵な人はですね。ふふふ。そして、双子さんが。
> 由良由利とは違って、桜の様なお二人でしたけど。
> ああ、これでとっておいたのが無くなった。
> 年末のきえさんのお休みの為のストックが・・・

おー、懐かしい。
そうだ、あそこにも双子がいましたねぇ。
書いた本人、まったくもって忘れていましたけれど。
色々リンクさせてしまって申し訳なかったところがあった作品でした。
まとめてでも書けたらいいんですけれどね。
年末…、あぁ、もうそんな季節…。
分かっていても改めて言われると慌てますね。
確実にお休みすることになるでしょう。
コメントありがとうございました。
Re: No title
コメントたつみきえ | URL | 2012-11-04-Sun 09:53 [編集]
けいったん様
こんにちは。

> マムの両親や姉夫婦と 御対面~♪
> 新参者の あつみとしては 緊張するよね!、
> でも ここで マム家族に好印象を持って貰わないと。
>
> 完璧すぎる兄の後を引き継ぐのは 荷が重いでしょうが、
> マムの為=自分の為だからね~

お兄ちゃんの後は大変だぁ。
でも実家の存在が残ってくれることは家族にとっても嬉しいのではないですかね。
真面目で優しいあつみのことだから、家族もきっと気に入ると思います。
弟をお任せできるって信じてもらえるはずです。

> マム姉ちゃんも 時々 掃除に来て 協力してくれるみたいだし!
> (; ̄ー ̄)...ン?
> 不意打ちの掃除訪問って 色々とヤバくない?
> そう 色々とね…( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ♪...byebye☆

ははは(´∀`;)
こちらのほうが緊張でしょう。
不意打ち訪問は冷汗ものになります。
日々、色々とマメにやっておかないとね。
まぁ、そこは大人。理解してくれていますが。
コメントありがとうございました。
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