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BLの丘
誘われたその先に 3
2013-03-18-Mon  CATEGORY: 誘われたその先に
こちらこそ申し訳なく思いながら商品代を提示すると、「籠代は?」と聞かれる始末。
どこまで律儀な人なんだ・・・と半ばあきれてもくる。
店長は平身低頭な姿勢で「そんなものは・・・」と、騒動を作る原因を作った迷惑料だとサービスしていた。
全部買い取りというだけで、店は救われているのだ。

一応綺麗に並べ直された"それ"に、ラッピング用のリボンもサービスしてやりたいくらいだった。
籠を両手で持ち上げた高槻は、和泉に視線を合わせてくる。
「君の素早い機転で助かりました。自分で持っても分かるけれど、これが羽衣の上に落ちていたらと思うとゾッとするよ。ありがとうございました」
初めて笑顔を見せた高槻の姿に、一瞬ドキリとした。
大人の色香を纏った、男でも見とれる人だと思った。女性ならこれだけで堕ちていくだろう。
その話し方や仕草にドギマギさせられながらも、「いえいえ・・・」と言葉にならない返事しかできなくなる。
仕事もあるのだろうか。貫録を漂わせる雰囲気を崩さない姿は、"大人の男"で、憧れる人に近い。

自分も就職して、いつかあんなふうになって、女性の目に止まれる存在になれるだろうか。

毅然とした背中を見送った後、店長と一緒に盛大なため息をついた。
どちらも緊張続きだったのだ。
「あの人が良い人で良かったよ・・・」
「すみませんでした、店長」
「茨木くんのせいじゃないさ。むしろ的確な判断だったと言うべきか。・・・しかし、まさか、こんなことになるとは。・・・とりあえず上段の品は下ろそう。ポップに置き換えて、後はまた考えるか・・・」
今日は応急処置で済ませるしかない。
朝の早い時間帯のことで、他の客がほとんどいなかったことも救いだった。
近くに人がいたなら、和泉が投げ飛ばした商品が誰かに当たっていてもおかしくなかったのだから。

トラブルは日常起こるが、こんな惨事は和泉が関わった限り、初めてのことといって良かった。
『客のためを思う』・・・
この接客業について、教えられたことでもあった。


午後から出勤してきた阿倍野東成(あべの とうせい)が、休憩から戻った和泉に声をかけてくる。
東成とは大学は違っていたが、この雑貨店のバイトで知り合った同い年の男だった。
お洒落な格好をすることが多く、整った顔のパーツもあって見た目は良い男である。
和泉より10センチほど身長が高く、180センチほどあって、近寄られれば視線をあげることになった。
人懐っこい性格ではあったが、和泉の外見とは違った意味で、本当の"軽さ"を持っていた。
「和泉~、週末、暇じゃねぇ?」
「週末?なに、また合コン?」
「そう。岬がセッティングしたのが悪いんだか、女ばっか集まってさぁ」
八尾岬(やお みさき)とは東成の友人で、どこぞかの資産家の息子だと聞いている。
和泉も何度か会ったことがあって、薄い友人関係はできあがっていた。
程よい筋肉のついた体格と甘いマスクは、モデルをやっていてもおかしくないと思っていた。
東成の親切心・・・というか、自分も興味アリの場所であるため、行きたいのだろうが、明らかに『おこぼれ』をもらうような状況はいかがなものだろう。

「え~。八尾が来るんじゃ、俺なんか飾り立てる葉っぱじゃん」
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさ。女の子とも会えるんだし。岬なんかどうせ雰囲気を楽しみたいだけで、本気で付き合う気なんかないんだから。その性格を知れば、こっちになびいてくるかもよ」
・・・だからそれが『おこぼれ』なんじゃないか・・・

だけど就職も決まって、気の緩んでいる和泉は、友達としてでも遊べる人ができたら嬉しいものだ。
夏には他のグループとバーベキューをする予定も組まれている。
『特定の彼女』でなかったとしても、異性と付き合うのは嫌いではない。
時々何様だと言うような図々しい態度に、嫌な思いをさせられることもあったけれど、そんな相手とはもう近づかなかったし、人付き合いの方法も身に着けていた自負はある。

「それって八尾のおごり?」
いたずらっぽく和泉が問いかけると、苦笑いを向けられた。
「しっかりしてんな~。いいよ、聞いておいてやるよ。あいつも人数多い方がいいだろうからな」
これは俺たちだけのナイショだぞ、と釘をさされて、それぞれの職場に戻った。
同じように呼ばれた男からたかられるのも大変だ。

裕福な生活ではなかったけれど、良い友人にも囲まれて、それなりに学生生活を楽しんでいた和泉だった。

「いらっしゃいませ~」
今日も明るい声が店内に響き渡る。
客足も増えてきて、笑顔で商品を選ぶ客を見ると、自分までも嬉しくなって、知らずと笑顔になれるのだった。


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ぼちってしてくれるとうれしいです。
リクエストもらったので、一話 早めておきます。また深夜0時にお会いしましょう。
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コメント

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コメントけいったん | URL | 2013-03-18-Mon 17:15 [編集]
和泉は コンパを楽しんだりする 何処にでも居る普通の大学生なのね。
しかも ノンケ!
今の所は 彼には 何ひとつ 暗い所も無い男の子

それが どんな風に BL臭が漂ってくるのか 楽しみだな♪
(・・;)“( ̄ *)クンクン、まだ無臭だ♪

コメントきえ | URL | 2013-03-18-Mon 17:56 [編集]
余談ですが

昔、ノンケなのに手酷く扱われて刑事に助けられたひとがいたねぇ。
そういった意味では、ノンケ書くのは初めてではないのかな。

そう、無臭のうちに、自分の雄の匂いをつける・・・
まさに犬のお○っこみたいに 電信柱とか足跡残して・・・クンクン

無臭に喜びを感じる(雄)誰かさんかも。

健気な男の子があくの世界に染められて(←)フォーレンジャーに巻き込まれてさらにおぼれる。(助ける人はいないのかーっ)
まぁ、そんな展開でしょうね。

和泉のお相手はだれでしょーっ
またね~

たしかに。
コメントnichika | URL | 2013-03-19-Tue 12:10 [編集]
新作 どんどん展開が楽しみです。
地名 ほんと一杯でてきますね。 そのうち河内なんてね(笑)
そうそう「河内のオッサンの唄」ってのもあります。
本編からはとってもかけはなれてますが。
卒業シーズンのせいか 「希望の轍」がフツフツと脳内を流れてまする
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