右と左と・・・とキョロキョロしているうちに信号は青に変わっていた。
しかし誰も動こうとはしない。
とりあえず優先すべきは、高槻のほうだろうと、そちらに向いた。
「そんな大げさなことをしてもらう必要ないです。俺がはじいた品物だったのに、全額支払ってもらっただけでもありがたかったのに・・・」
「物と人間は違うよ。商品は羽衣が手を出したものだったのだから責任を負うのは当然だ。君には、羽衣を救ってもらって本当に感謝しているんだ。人命救助としてのお礼だよ」
「だからそんな大げさなことじゃ・・・」
「では、羽衣の上に落ちていたら、どうなっていたと思う?」
紙一重の瞬間だったことをこの男性は良く分かっているようだった。
和泉が考えていたことよりもずっと重く捉えられている。
それが分かっても、個人的な謝礼を受け取る気にはなれなかった。
「そうですけど・・・。でも本当に俺、お咎めもらったわけじゃないし、あの後、うちの店も安全管理のこと、すごく考えさせられたし・・・」
「言っている意味が伝わらないかな。羽衣を守ってもらったことに対して、私の方からの気持ちなんだ」
「・・・・・・」
どうにも食い下がりそうにない高槻に対してどう接したらいいのだろう。
酔った頭は余計に思考が弱くなっていく。
困り果てたことが分かったのか、東成が口をはさんで来る前に、高槻は思いを変えたようだ。
「突然、話しだして悪かったね。君の気持ちを汲むことにするよ。また改めて伺うから」
強引な割にはすんなりと引き下がっていく。
高槻は和泉の手に名刺を握らせたまま、スッと身をひるがえしていった。
交差点から少し離れたところに、ハザードを出して停められていた車に乗り込んでいる。
助手席に乗ったということは、誰かを待たせていたのか。だからすんなり引き下がったのかもしれないなと漠然と脳裏をかすめた。
嵐のような登場のあと、広がる静けさ。
ふたりして黙ったまま、その後ろ姿を見続けた後で、東成が口を開く。
「何?あの人」
同じ日に勤務したような記憶があったが、その場にいなければ、伝わらない事件になってしまっていたのだろうか。
「うーん、ちょっとさ・・・」
あの時の事件の詳細を、また歩き出しながら話しだすと、やはり、「確かに大げさだな」と同調してくれる。
更に続いたのは、驚くべきセリフだった。
「和泉もあまり無茶するなよ。それこそ一緒に巻き込まれていたら、和泉だって怪我するんだぞ」
たかがアルバイト・・・。そういってしまえばそれまでだが、働く以上、どこかで責任感を背負うものだと思っている。
東成はそれでも和泉の肩に腕をかけて褒めてくれた。
「和泉みたいに真剣に取り組んでくれるやつがいるから、俺も安心して働ける。俺からもお礼、言っとく」
最後はクスクス笑っているのだから、どこまで本気なのだか・・・
ただ、以前よりもずっと展示方法は変わってきているのは確かだった。
働く側も客も、安心して行ける店であってほしいとは、誰もが望むことだろう。
電車に乗り、先に降りる和泉に東成が最後の声をかけてくる。
先ほど一瞬浮かんでしまった、真剣みのなさに人間性を疑ってしまったことも、今では吹っ切れている。
「和泉、おやすみ~。今日は来てくれてありがとうな」
「こちらこそ、おごらせちゃったっていうのに」
「だからそれはナイショだって言っただろう。気を付けて帰れよ」
「東成もね」
深夜でも週末の今日はそれなりに人通りがある。
小学校、中学校、住宅街がある、この地域は比較的安全な場所だとも言われている。
広い範囲で言えば、東成とは『近所』でもあった。
三階建ての単身者用に作られたワンルームのマンションには、エレベーターがない。それもあって家賃も安かったのだが。
普段は何も感じない登りが、こんな日は体が重くなる。
シャワーは明日でいいや・・・なんて思いながら、和泉は狭い部屋の奥にあるベッドにダイブした。
寝転がりながら、邪魔な服を脱ぎ捨ててベッド脇に落としていく。
その時、クシャという聞き慣れない音を聞いた気がしたが、重い瞼は確認しようとはしなかった。
翌日の昼近くになって起きて、散らばった衣類をかき集める。
特に出した覚えのない財布や携帯を確認しているときに、ハラリと一枚の名刺が床に舞い降りていった。
なんだっけ?と、咄嗟に考える。生活上、名刺をもらうような立場にはいない。
拾い上げてから、昨夜の一幕が鮮明に蘇ってきた。
あそこで出会ってしまったのは単なる偶然なのだろうが・・・。
随分と真剣に話してくれてきたっけ・・・。
あの態度も人の良さを醸し出しているものだと思われる。
どこをとっても完璧な大人のようにしか感じられない。
「どうしたらあんな人間になれるのかなぁ・・・」
ボソッとつぶやかれた言葉は、誰もいない空間に消えていった。
どこを思い出しても、和泉には、『理想』とする人間として映っていたのだ。
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ぼちってしてくれるとうれしいです。
しかし誰も動こうとはしない。
とりあえず優先すべきは、高槻のほうだろうと、そちらに向いた。
「そんな大げさなことをしてもらう必要ないです。俺がはじいた品物だったのに、全額支払ってもらっただけでもありがたかったのに・・・」
「物と人間は違うよ。商品は羽衣が手を出したものだったのだから責任を負うのは当然だ。君には、羽衣を救ってもらって本当に感謝しているんだ。人命救助としてのお礼だよ」
「だからそんな大げさなことじゃ・・・」
「では、羽衣の上に落ちていたら、どうなっていたと思う?」
紙一重の瞬間だったことをこの男性は良く分かっているようだった。
和泉が考えていたことよりもずっと重く捉えられている。
それが分かっても、個人的な謝礼を受け取る気にはなれなかった。
「そうですけど・・・。でも本当に俺、お咎めもらったわけじゃないし、あの後、うちの店も安全管理のこと、すごく考えさせられたし・・・」
「言っている意味が伝わらないかな。羽衣を守ってもらったことに対して、私の方からの気持ちなんだ」
「・・・・・・」
どうにも食い下がりそうにない高槻に対してどう接したらいいのだろう。
酔った頭は余計に思考が弱くなっていく。
困り果てたことが分かったのか、東成が口をはさんで来る前に、高槻は思いを変えたようだ。
「突然、話しだして悪かったね。君の気持ちを汲むことにするよ。また改めて伺うから」
強引な割にはすんなりと引き下がっていく。
高槻は和泉の手に名刺を握らせたまま、スッと身をひるがえしていった。
交差点から少し離れたところに、ハザードを出して停められていた車に乗り込んでいる。
助手席に乗ったということは、誰かを待たせていたのか。だからすんなり引き下がったのかもしれないなと漠然と脳裏をかすめた。
嵐のような登場のあと、広がる静けさ。
ふたりして黙ったまま、その後ろ姿を見続けた後で、東成が口を開く。
「何?あの人」
同じ日に勤務したような記憶があったが、その場にいなければ、伝わらない事件になってしまっていたのだろうか。
「うーん、ちょっとさ・・・」
あの時の事件の詳細を、また歩き出しながら話しだすと、やはり、「確かに大げさだな」と同調してくれる。
更に続いたのは、驚くべきセリフだった。
「和泉もあまり無茶するなよ。それこそ一緒に巻き込まれていたら、和泉だって怪我するんだぞ」
たかがアルバイト・・・。そういってしまえばそれまでだが、働く以上、どこかで責任感を背負うものだと思っている。
東成はそれでも和泉の肩に腕をかけて褒めてくれた。
「和泉みたいに真剣に取り組んでくれるやつがいるから、俺も安心して働ける。俺からもお礼、言っとく」
最後はクスクス笑っているのだから、どこまで本気なのだか・・・
ただ、以前よりもずっと展示方法は変わってきているのは確かだった。
働く側も客も、安心して行ける店であってほしいとは、誰もが望むことだろう。
電車に乗り、先に降りる和泉に東成が最後の声をかけてくる。
先ほど一瞬浮かんでしまった、真剣みのなさに人間性を疑ってしまったことも、今では吹っ切れている。
「和泉、おやすみ~。今日は来てくれてありがとうな」
「こちらこそ、おごらせちゃったっていうのに」
「だからそれはナイショだって言っただろう。気を付けて帰れよ」
「東成もね」
深夜でも週末の今日はそれなりに人通りがある。
小学校、中学校、住宅街がある、この地域は比較的安全な場所だとも言われている。
広い範囲で言えば、東成とは『近所』でもあった。
三階建ての単身者用に作られたワンルームのマンションには、エレベーターがない。それもあって家賃も安かったのだが。
普段は何も感じない登りが、こんな日は体が重くなる。
シャワーは明日でいいや・・・なんて思いながら、和泉は狭い部屋の奥にあるベッドにダイブした。
寝転がりながら、邪魔な服を脱ぎ捨ててベッド脇に落としていく。
その時、クシャという聞き慣れない音を聞いた気がしたが、重い瞼は確認しようとはしなかった。
翌日の昼近くになって起きて、散らばった衣類をかき集める。
特に出した覚えのない財布や携帯を確認しているときに、ハラリと一枚の名刺が床に舞い降りていった。
なんだっけ?と、咄嗟に考える。生活上、名刺をもらうような立場にはいない。
拾い上げてから、昨夜の一幕が鮮明に蘇ってきた。
あそこで出会ってしまったのは単なる偶然なのだろうが・・・。
随分と真剣に話してくれてきたっけ・・・。
あの態度も人の良さを醸し出しているものだと思われる。
どこをとっても完璧な大人のようにしか感じられない。
「どうしたらあんな人間になれるのかなぁ・・・」
ボソッとつぶやかれた言葉は、誰もいない空間に消えていった。
どこを思い出しても、和泉には、『理想』とする人間として映っていたのだ。
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和泉にすれば そんな大袈裟な!って事でしょうね。
しかし 妙に説き伏せられそうになるのは、高槻氏の説得力のある話しぶりの なせる業でしょうか?
ただ ちょっと 強引ではありますが(笑)
高槻氏、
この御方 中々のようですから 今度は どういう風に 和泉に接近して来るのかしらね♪
恋愛においての ベタな手段かな?
(ノ_ _)ノ押して~(ノ_ _)ノ押して~・・・引く~ε=ε=(^д^ノ)ノ
しかし 妙に説き伏せられそうになるのは、高槻氏の説得力のある話しぶりの なせる業でしょうか?
ただ ちょっと 強引ではありますが(笑)
高槻氏、
この御方 中々のようですから 今度は どういう風に 和泉に接近して来るのかしらね♪
恋愛においての ベタな手段かな?
(ノ_ _)ノ押して~(ノ_ _)ノ押して~・・・引く~ε=ε=(^д^ノ)ノ
主人公がノンケさん?
お友達は、何か何かだよね?
狙ってる?和泉くん(笑)
ちー、風邪じゃなくて喘息になりかけでした。
今日は、大夫良くなったけど咳で寝れなかったよ。
腹筋が痛くなった。
で、コメントも出来ませんでしたー。
新連載、嬉しい。
毎日、楽しみが出来たよ。
そして、思わぬところできえちん、師匠を発見。
ちょっとビックリー。
きえちん、体調はどう?
少しは良いのかな?
桜が咲き始めたから、みんなでお花見したいね。
お友達は、何か何かだよね?
狙ってる?和泉くん(笑)
ちー、風邪じゃなくて喘息になりかけでした。
今日は、大夫良くなったけど咳で寝れなかったよ。
腹筋が痛くなった。
で、コメントも出来ませんでしたー。
新連載、嬉しい。
毎日、楽しみが出来たよ。
そして、思わぬところできえちん、師匠を発見。
ちょっとビックリー。
きえちん、体調はどう?
少しは良いのかな?
桜が咲き始めたから、みんなでお花見したいね。
こんにちは
あ、ちーさま ごいっしょしたっぽい
お体大丈夫ですか
ご自愛くださいね
珍しくノンケちゃんから始まりました。
周りを固めるのはもちろん(o´艸`o)
つか、読者様、鋭いだけに、コメントレス、どうしようかと・・・
(先見の目?!)
さぁ、高槻市 どう動くでしょうか
まんまと言いくるめられている、そこは人の良い和泉
少しずつでも人間性 伝わればいいなと思います
押して、引いて・・・かしらねぇ。
「おはなみー おはなみーヽ(゚∀゚)ノ」 byひなせ
「ひな、ちらしずしだよ。あーんして」by和紀
お弁当持ってみんなで広場で食べられたらいいね
大宴会場だぁ
そういえば、きえちんちの実家にある河津桜はもう散り始めたと聞きました。
あんな山なのに・・・
ほっそい枝だからかな。
みなさん、黄砂とか花粉とか いろいろ飛んでいます~
ご注意くださいね
またね~
あ、ちーさま ごいっしょしたっぽい
お体大丈夫ですか
ご自愛くださいね
珍しくノンケちゃんから始まりました。
周りを固めるのはもちろん(o´艸`o)
つか、読者様、鋭いだけに、コメントレス、どうしようかと・・・
(先見の目?!)
さぁ、高槻市 どう動くでしょうか
まんまと言いくるめられている、そこは人の良い和泉
少しずつでも人間性 伝わればいいなと思います
押して、引いて・・・かしらねぇ。
「おはなみー おはなみーヽ(゚∀゚)ノ」 byひなせ
「ひな、ちらしずしだよ。あーんして」by和紀
お弁当持ってみんなで広場で食べられたらいいね
大宴会場だぁ
そういえば、きえちんちの実家にある河津桜はもう散り始めたと聞きました。
あんな山なのに・・・
ほっそい枝だからかな。
みなさん、黄砂とか花粉とか いろいろ飛んでいます~
ご注意くださいね
またね~
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