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BLの丘
誘われたその先に 4
2013-03-19-Tue  CATEGORY: 誘われたその先に
土曜日の夜、招待(?)された場所は、イタリアンレストランの一角を貸し切ったものだった。
相変わらず八尾の演出はお洒落で派手なものだ・・・と感心する。
女性7名と男性6名がすでにテーブル席についていた。
手前の隅っこが空いているとは、そこに座れということだろう。
隣には東成がいて、手招きで呼ばれる。

「ごめん、遅くなっちゃった?」
時間通りに来たつもりだったがすでに揃っていたとは、心苦しいものが生まれる。
それを東成が笑顔で振り払ってくれた。
「いいって。好き好き集まってただけだし。俺も遅れたクチ」
追加のオーダーを頼むのと一緒に自分用のジントニックもお願いした。
長テーブルの上には大皿に盛られた料理が所狭しと並べられていて、甲斐甲斐しい女の子が取り分けてくれたりする。
そこはアピールポイントにもなっているのだろうが。
背後にはソフトドリンクのサーバーが配置されていて、そちらはセルフサービスで取りにいくようだ。

以前出会ったことがある子もいれば、初対面の子もいる。男性についても同様で、東成と親しく話すことに、「どんな知り合い?」と聞かれたり。
席を移動しながら色々な人間と会話を楽しんで、もちろん連絡先の交換も忘れていない。
二次会のカラオケに行くという話にも乗って、そちらでは益々盛り上がる人たちだった。
この時点になると、誰かのそばにいようとする人と、中立的な立場にたつ人間に分かれてくる。
和泉はいつものごとく、後者だった。

深夜も遅くになって、お開きになる。
「送っていってあげる」なんて声をかけていた男は、きっと合意の上でお持ち帰りだろうと判断できた。
和泉はなかなかそういう機会には巡り合えていなくて、時々羨ましく思うものの、酔いの上での一時的なものとなるのもどうだろうと、慎重になってしまっていた。
即物的に物事を捉えてはいけないのは分かっている。
そこから親睦をはかって、最終的にちゃんとした『恋人』になる人もいるだろうし、ただ、これまで和泉は、心底気が合いそう、という人に出会えていなかったから、踏み込んだ関係を持てないでいたのだ。

東成も今日は一人らしく、一緒に駅まで歩いた。
通り過ぎていく風が火照った体に気持ちいい。
バイト先のこともあったが、東成とは帰る方向が同じだった。
「あそこの店の料理って結構美味かったよな」
話しかけられて頷く。
みんなで食べているから数種類も楽しめたが、個人では一品二品が精一杯だろう。
ある意味、『試食』できたのかもしれない、と頬が緩んだ。
「東成、今度のデートとかで使えるんじゃない?」
「デートってなぁ・・・。俺、今、フリーだって知ってるだろ」
「だから、『今度』だよ、こんど」
フリーと言うよりも、遊び的感覚で付き合っていることを相手の女子も知っているために、本気になどなってこないのだ。
和泉が言いたいのは、『女の子を連れていける場所のひとつ』という意味でしかない。

くだらない話をしながら信号待ちをしていると、突然、「失礼。君は・・・」と、仕事帰りなのか、スーツ姿の男性に声をかけられた。
何事だ?と二人の視線が同時に声の主のほうを向いた。
真正面から顔を合わせたせいか、彼には確信を得たようなホッとした表情が浮かんだ。
眼差しが和泉に向けられているのだから、用があるのは和泉なのだと、二人とも理解できることだった。
和泉は訳が分からずに首を傾げてしまう。
「あのー・・・」
和泉の疑問を感じとったのか、「突然すまない」と、名刺を取り出しながら、「雑貨店の社員さんだよね?この前、うちの姪が迷惑をかけて・・・」と、面識があることを教えてきた。
改めて名刺に視線を落として、『高槻生野』という名前よりも、『副社長』という肩書のほうで記憶がよみがえった。
「あー、あの時の・・・」
「知り合いなの?」
すかさず東成の疑問が和泉に降りかかる。
「知り合いっていうか・・・うちの店のお客さんだった人」
「『だった』はヒドイな」
高槻は和泉の反応に苦笑が生まれる。
一瞬考えてしまった和泉だったが、もう来店しない、というような表現は正しくなかったな、と酔った頭が言葉を振り返った。
「あ、す、すみません。そういう意味じゃなくて・・・」
「いいよ。きっと君の性格だと悪気がないのがわかるから」
苦笑は穏やかな笑みに変わった。
魅惑的な男だな、と改めて思わされる。
以前見た時もそうだが、すべての仕草がサマになっているのだ。
人を惹きつける魅力というものを充分なほど備えている。
ここで、今更なんの用だ、と突っぱねてもいいはずなのに、その雰囲気すら持たせない神々しいものを纏わせていた。
「あの時は本当に助けられたよ。あの後、店の中でトラブルになっていなければいいと思っていたんだ。なかなか行くこともできなくて・・・」
自分はさっさと退散してしまったから、その後のことが気になっていたのだと言われて驚いた。
一連の出来事で全てチャラになっていたと思っていたのに、高槻にとっては違っていたようだ。
だからこそ思い出すこともなかった出来事・・・。

「あの、べつに、そんな・・・。心配していただくようなことは何もありませんので。こちらこそ全部処理してもらって・・・」
「和泉、何の話だよ?」
「もし君さえ良ければきちんとお礼をさせてもらえないかな?」
同時に発される不貞腐れる疑問と穏やかな提案には、すぐに答えることができない和泉だった。

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コメント

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キタ━━━.。゚+. ((ヾ(☆・ω・★)ノ)).。゚+.━━!!
コメントけいったん | URL | 2013-03-19-Tue 10:44 [編集]
何処で どんな再会をするんだろうと、楽しみに待ってました!

副社長さん、副社長さん♪
お仕事の帰りですよね!
でも 普通 その肩書きをお持ちの方なら 社の車での御帰宅では?
(@´゚艸`)ウフウフ、
もしかして 和泉を見て 思わず車から飛び出したのかな~
まぁ そこは 今は深く追求しない事に(○ゝз・)b⌒☆

和泉~お礼だって!
副社長さんがするお礼って 何かしら きっと素敵なものなんだろうなぁ♪
で、如何する和泉!?ヾ(・ω・* ) ネェネェ

みなさま こんにちは
コメントきえ | URL | 2013-03-19-Tue 16:00 [編集]
信号待ちでイチャイチャ(←?!) そんなのでも発見したんですかね
でもほら、まだそんな急展開にはならないでしょう
(そうしたいのは山々なんですけど)
私の場合、前置きがながいからな・・・
けいったんさま ほんとスルドイなぁ。
まぁ、おいおい、いろいろと出てきますので再確認お願いしますm(__)m

地名で作った名前、一体いくつあるのやら・・・
なるべくダラダラせず、展開作って進めていきたいと思います~

またね~
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