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BLの丘
再会
2013-04-09-Tue  CATEGORY: 新しい家族
周防の腕に抱かれて、日生は勢いよくドアを蹴る姿を見た。
周防に優しい雰囲気はあるのだけれど、この場では少し違っている。
自分に危害はない・・・分かってはいても恐怖が日生を襲った。
周防も和紀も、過去のような扱いを日生にはしてはこない。

奈義の事務所に乗り込んだ周防は、ドアを持ってくれていた男すら蹴飛ばしそうに足を踏み入れる。
そこに見えた光景は、ソファに座り煙草を吸う奈義と、テーブルの脇にやせ細った男が正座して俯いていた。
男に記憶はある。
日生は思わず恐怖心に周防にしがみついていた。
「見つかったって?」
周防が問うことに奈義は「面倒くせぇことさせやがって」とぼやいていたが。

正座している男は日生の父親だ。
暴力ばかり振るわれて、いい思い出など何一つない。
またこの男のもとに戻されるのかと思うと、日生は泣きたい気持ちになる。
その心が分かるのか、周防は「心配ないよ」というように、ぎゅっと抱きなおしてくれた。

周防は奈義の向かいの椅子に日生を抱いたまま腰を下ろした。
「似てない親子だな。似なくて良かったな、日生」
背を撫で、髪を梳いて、日生に語りかけられる。
どんな内容なのかは分からないが、周防から離れたくない思いは強くなるばかりだ。
「ひ、ひな、せっ」
男から声がかけられると同時に周防の長い脚が、テーブルの上の灰皿を蹴飛ばしていた。
「二度と呼ぶなっ。いいか、おまえがどんなことをしたのかその身を持って知れ。奈義、遠洋漁業の船があっただろう」
「あぁ、あったなぁ。こんなガリガリじゃあ、抱き心地も悪いだろうけれど、アナとして使うにはとりあえず利用価値くらいあるか」

売り飛ばされた日生の身を、やはり『売り飛ばす』ことで分からせること。
逃げ場のないところに追い込むのは周防と奈義ならではだろうか。
「嫌なら、サメのエサにでもなれ」
情けのひとつもかけず、周防は愛しいものを見るように日生をみつめた。
この時日生は、『父親』というのは、この人なのだと深く思った。
ぎゅっと抱きついてもいつだって抱き返してくれる。
こんなことは今までなかった。

涙目で縋るような男の姿も、日生は目を向けることはなかった。
黒服の男ふたりに抱えられて部屋から連れ出されるところも視野には入らない。
二度と会うことはないだろう、再会だった。

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ぼちってしてくれるとうれしいです。(///∇//)

日生のお父さんと出会って日生が「僕のお父さんはあなたではありません」と言う・・・というリクエストをもらって考えました。
でも周防のことだから、そんなにモタモタしていないだろうな、と思って、まだちっちゃい頃の日生です。
実父、今度はお前が売り飛ばされる番だ~っ。
ざまぁみろ(←)

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トラックバック0 コメント8
コメント

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えーと
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-09-Tue 11:36 [編集]
りくえすとあれば 船上での逃げ場のない鬼畜シーンとか書くけど。
しばられたり つるされたり まわされたり。

きえちん、Sじゃないから ソフトでおわるとおもいますが。

昼間は労働、夜はご奉仕。
有意義な人生だね(←)
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-09-Tue 12:35 [編集]
> できればもう二度と、もう二度と日生の前に現れて欲しくない男です。日生の幸せを願って・・。

> 中の下・・、と、のたもう妹殿二姉妹の中の良さがうかがえて笑いました。しかし、マメですね。リュックも写真、ぜひ探し出してくださいっ。とっても素敵なおばちゃま(キァー、ゴメンナチャイ)です。

Kさま まとめれすごめんなさい

もう、二度と出会ってほしくない父ですよね。
脅えた日生を見てももう周防は合わせることはしないでしょう。
完全に切り離しましたね。

中の下、(笑)
えぇ、まあそんな姉妹でした。
言いたいこといいあってね。
甘やかしまくりました。ホント周りから、親からも呆れられるほど。
妹、大事だったの。
寝起き「水」と言われれば運んだしね(笑)
リュックの写真、探したいんですけれど
暇だから、どっか探せばでてくるかなぁ

がんばります。
(*ノдノ)キャ・・(*ノд゚)ノチラッ‥(つ∀<●)゚+.キャァ♪ 周防さまぁーーー!
コメントけいったん | URL | 2013-04-09-Tue 12:41 [編集]
その毅然とした凛々し御姿
なのに 日生を見る目や抱く手は 慈しみと優しさに満ち溢れて
もう 何度見ても 惚れずには いられない~い♪ポッポッo(*´ω`*)oポォ~ 

佐貫好き~♡だった私の心臓を撃ち抜いた あの作品の「冒頭のシーン」は、絶対に忘れないわっ!

あぁーもう こんな男が 父だなんて~~ アッカン(σ-`д・´)ベェェェーダ 
こんな奴 もう登場もして欲しくないので
「船上の鬼畜シーン」は コメ欄の きえちんの言葉で 私は もう十分です。(笑)

それより 「新学期ですね」で 閃いたんだけど
嘉穂と香春の 小学校の入学式の様子を知りたいです!
もちろん 親代わりの筑穂の様子も♪

きえちん、お裁縫が上手で 羨ましいです。
私も嫌いじゃないんだけど、凝り性で 時間を掛け過ぎて パッパと作るのが苦手なの~!
で、いつも 最後は ヾ(:´Д`●)ノアワワワヾ(●´Д`;)ノ で~す(苦笑)


おやおああ
コメントnichika | URL | 2013-04-09-Tue 18:18 [編集]
出たー親父 あれ?この様子に依然さえさんがおっしゃてたような・・・
まぁいっか とっとと沖に出てしまえ。

やっぱり
コメントちー | URL | 2013-04-09-Tue 19:05 [編集]
マグロ漁船に乗っちゃったね、元父。
そっかー、ヤセッポチなのにねー。
大変だねー。ガンバレー。何を?

えー、私も別に親父の何とかは要らないです。
ひなちゃんのパパは、ヒナパパだけだよ。
安心してね。

師匠じゃないけど、ヒナパパ格好良い!
やっぱり、一番だねー。

でも、私の一番は・・・誰だろうか(笑)
コメント此花咲耶 | URL | 2013-04-10-Wed 00:00 [編集]
あれかなぁ……

親権放棄とかさせるために、手を尽くして探させたのかな。
ひなちゃんパパ、かっこいいねぇ。
「二度と呼ぶな」の台詞に、このちん、思わずどきどき……(〃゚∇゚〃)
周防にご声援いただきありがとうございます
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-10-Wed 09:12 [編集]
どーでもいい父親はもう二度と出てこないでしょう。
皆さまからも、日生のパパは『周防』ってことになりましたので。

漁船に乗せられた親父は、日夜労働に励みます。
逃げられるところは海上、まさに「サメのエサ」ですね。
船上では娯楽はかぎられますからねぇ。
その一部になりましょうね。

親権なんて、もうこの男にはありませんね。
きっぱり、はっきりと周防は分からせました。
日生は三隅家に引き取られました。ちゃんちゃん。
周防と奈義のその後
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-10-Wed 13:00 [編集]
暇人のきえちんです

書きすぎだ―とか文句は別枠(←)でうけつけます。
思いついたものから、なんだか書いていく人です。



日生は家に送り届けて、大人の時間。
ジャズが静かに流れるバーで、グラスを傾ける周防の姿はかっこよいったらありゃしない。
この店は騒ぐ客もいないから過ごしやすかった。
周防が気に入っていることも分かるから奈義も連れてくる。
今日は貸し切り状態だ。

奈義「周防よぉ、今回の調査代は払ってくれるんだろうな」
周防「大してかかっていないだろう。あんな父親、探すことくらい」
奈義「まぁ、おまえが払わなきゃ、アイツにかせいでもらうだけだな」
周防「あと、何年働かせられるかな。いつか入院するときのために医療費もためさせておけ」
奈義「おまえだけは敵に回したくないと思った・・・」
周防「将来まで考えてやっているんだ。親切だろう」

潰れるまで働かせること。
その始末まで自分でさせること。

奈義は時々、ヤクザ以上の怖さを感じる。
特に子供を相手にした時。
周防は容赦ない態度で切り込んできた。

あの父親がもう二度と日生にも周防にも会うことはないのだと悟る。
周防はどんな手をつかっても、陸上にはあげないだろう。

別の視点からみれば「怖い男につかまったな」という、ちょっとした同情。
だけどやっぱり、周防は敵にまわしたくないから、奈義も口を閉じるのだった。
『徹底的にこらしめてやるしかない』
奈義の中に浮かんだ気持ちだ。

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