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BLの丘
周防と奈義の高校時代
2013-04-16-Tue  CATEGORY: 新しい家族
高校に入学し、月日が経てば少しずつ『大人』に近づいていくような錯覚を覚える。
ただでさえ、周防と奈義は、大人の世界というものを垣間見ていたのかもしれない。

小中高校と一貫教育の私立校だったのに、周防が別の進学校に進路を決めた時、「同じ高校に行きたい」とわがままを言ったのは奈義だ。
友達が出来にくかった奈義に、怯むこともなく近づき、付かず離れずの存在として近くにいてくれた。
周防にとって、決して自慢できる友達ではないとは、さすがの奈義も気付いていたから、ただ『見えるところにいる』、それだけで良かったのだ。
必要な時は周防からさりげなく声をかけてくれる、安心感のようなものが存在していた。

自分一人だけが高校に進んでも、見えてくる世界は想像にたやすい。
このままどんどんと離れて、やがていつか、すれ違っても声もかけてくれない人になっているのではないか・・・
決して口に出してはいけない、また見せてもいけない感情だとは、中学3年生の奈義も分かっている。
そんな弱い人間になってはいけないのだと・・・

しかし、まだ成長しきれていない幼さは、単なるわがままとして、奈義を支配してしまった。

堂々とトップの成績で入学した周防とは対照的に、奈義はれきっとした『裏口入学』である。
そんなことがまかり通ってしまうのも学生生活の裏に隠された、『大人』の見栄だったのだ。

ある日の放課後、奈義は周防を誘って、ゲームセンターにくり出していた。
奈義には常に、数人の護衛がついてまわっている。
たかが遊びにいくのにも、それらをすんなりと受け入れてくれるのは周防くらいしかいない。
遊びたいさかりの高校生にとって、周防という存在は本当に貴重だった。
その頃には、奈義の人柄の悪さが顕著に出始めていた。
"不良"とはまた違ったものだとは誰もが気付き始める。
その"オーラ"に縋りたい同い年の連中は、バカみたいにあがめていたけれど・・・
こいつらとじゃれるのはあくまでも校内の中だけだった。

周防は護衛を見ては、「もう少し遠巻きにうろつかせることはできないのか?俺まで一緒の連中に見られるのは困る」と奈義に訴えた。
「何かあったときに、素早い対応ができない奴らでもないだろう」と発破をかけることも忘れずに。
この『鶴の一声』に、奈義が「近づくな」と命令したのは言うまでもない。
後から考えれば、背後を考えずに、学生らしく遊ばせてやりたかった周防の配慮だったのかと思うほど、自然と。

その日も同じように店の外と、店内にはゲームをするふりの見守りがいた。
奈義が帰ろうと腰を上げれば、大人しくしていた連中も一斉に動き出す。
出口に向かう奈義に、新しく入ってきた、明らかにガラの悪い3人組と肩がぶつかった。
周防は『ただ粋がっているバカ連中』と相手にはしないが、そこは流れる血の違いか。
相手から「どこ見て歩いてんだぁっ?!」と決まり文句が飛んで来れば、「ぁんだとぉっ!!」と売られたケンカは買うのが奈義なのだ。
その途端、控えていた人間が近づこうとするのを、周防は睨みつける視線だけで動きを止めさせていた。
ガキの喧嘩にいちいち関わるな、といつも思っている。
それから奈義の首に腕をかけて引き離す。
「奈義、やめろ。こんな連中相手にしたってしょうがないだろう」
「テメーっ、何様のつもりだよっ」
矛先が周防に向かっても、周防は冷静なままだった。
首を絞められている奈義は声を発することもできなくなっている。
「誰彼かまわずにそんな口きいていると、自分の命を縮めることになるぞ。粋がるのも大概にしとけ」
「テメーッ、言わせておけばっ」
「命が惜しくないなら、殴りたいだけ殴ればいい。ほら、押さえててやるからボコボコにしろよ」
そう言って奈義を差し出す周防の威圧感に、固まったのは連中のほうだった。
驚いたのは奈義だったけど。

「帰るぞ」
その隙に周防は奈義と一緒に店外に出ていた。
二人を追いかけた格の違う人間にあからさまに体当たりをされて、その後ろ姿を追った時、周防が何を言いたかったのか、意味を理解した連中だった。
『相手を間違えたなら・・・』

「ゲホッ、す、周防、なんだよ、あれはっ」
「おまえ、バカかっ?! あんなところで喧嘩騒ぎになってみろ。加勢してくる奴が絶対にいるだろうが。周りに他の客だっているんだ。場所を考えろ。それにすでにおまえの立場を知られたことだったとしても、おまえほどの人間がくだらないガキなんか相手にしている程度の器の奴か、って教えるようなもんだろうが」
周防の腕から解放された奈義が訴えれば、逆に説教される始末だ。
しかし、その中には奈義の人間性を買ってくれている言葉も混じる。
一瞬意味が分からず、口を開きかけた。
容赦なく後頭部をひっぱたかれた。
「情けねぇヤツ・・・」
呆れた・・・という態度でいながら、瞳は奈義に対してまっすぐな視線を向けてくれる。
周防なりの『危険回避』だったと認めたのはどれくらい後だったろう。
喧嘩っ早い奈義に教える意味もこめて、連中に告げていたことも知る。

悔しいが・・・悔しいが、周防はいつだってこうして、奈義を守ってくれていたのだ。
『高校生らしい態度で』

ふたり、時を同じくして、高校を卒業できたのは、勉強を教えることまで付き合ってくれた周防のおかげだとは、決して口にしない。

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コメント

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今日は 周防くんだね♪
コメントけいったん | URL | 2013-04-16-Tue 08:23 [編集]
いつもの周防さまじゃなくて 高校生の周防くんも いいです!(*・・*)ポッ

凛々しく慈愛に満ちて 思慮深いのは 今と同じだぁ~
だから 奈義に懐かれてしまったのでしょう(笑)

人望も厚かっただろうし、きっと 小学校から クラス委員長や 生徒会会長などを やっていたでしょうね。

小中高一貫の学校なら 制服はブレザーかな?
高校は違ったから 詰襟かな?
周防くんは、どちらも似合うだろうけど、硬派な彼には 詰襟の方が似合うだろうなぁ~
ナカミハ ナニ?(o・ω・o)σツンツンッ((〇 o 。(//▽//)~♡
みなさま こんにちは
コメントたつみきえ | URL | 2013-04-16-Tue 15:20 [編集]
ぽかぽか陽気。あったかく(あつく)なりましたね。

いつもたくさんのコメントありがとうございます。
相変わらず、子供日生の人気、高いなぁ、としみじみ思ってしまいました(笑)
子供って、妙な言い間違え、しますよね。
日生の『しゃーちゅー』は、いつ頃なおったのでしょう(笑)

過去編(←)で、えーと、30年くらい前の周防と奈義になるのでしょうかね。
もっといっているか・・・
まぁ、その辺はあいまいなので、軽く流してください。
制服・・・そこまで考えてなかったわ(苦笑)
えぇ、でもけいったんさまのコメントどおりかと思います。
凛々しい詰襟の姿で、式典のたびに壇上に上がっていそうな周防です。
奈義は・・・、まぁ、どっちもまともに着たことなんかないでしょうね。
それは現代も同じ。

また何か思いついたら、ひょっこりと書いていきますね。
いつもありがとうございますm(__)m
ますますファンふえそう
コメントnichika | URL | 2013-04-16-Tue 16:16 [編集]
周防さん 格好すぎます。 どなな家庭で育ったんだろう
フムこの時代、このお二方なら詰襟が似合いそうですね

ゲーセン どんなのかな「インベーダーゲーム」や「パックマン」でしょうか
今は介護にもゲーム機がはいってきてます ボケ予防、リハビリ
niでも十分楽しめます
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