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BLの丘
無人島 回答編
2013-10-05-Sat  CATEGORY: 新しい家族
みなさま こんにちは~。

先日、バトンを書いた時に、質問をどうぞ、と受け付けたところ、
『パートナー以外で、無人島にひとつだけ持っていくとしたら何ですか?』
という質問が来ましたので、そちらにお答えしようかと思います。
(すぎもと様 リクエストありがとうございました。)
日生希望だったので、ちょっとした小話として上げさせてもらいますね。

覚えている方がどれくらいいるか分かりませんが、『木漏れ日』で海辺に行った時のお話です。(またこじつけた 汗)


******

四角い部屋に4人が座れるテーブルが4つあった。
日生は和紀に抱かれて、『三隅様』と名前が書かれた席に連れられる。
これから夕ご飯だと言われたが、さっきまで眠っていた日生は状況が良く分からなかった。
一番奥の席で、隣の席には大人の男の人がふたり、すでに到着していた。
日生を奥に座らせて、隣に和紀、前に周防が腰を下ろす。
先にいた客人に、和紀と周防が「こんばんは」と頭を下げた。
穏やかな雰囲気の人はニコリと微笑みながら、はっきりとした口調で同じように返してくる。
ふたりは和紀よりも幾つか年上のようだ。
周防の背中の向こうに、まだ客の座っていないテーブルがふたつ、用意されている。

ある夏の日…。
「今日は海に遊びに行こう」と和紀に言われてやってきた。
普通の民家のような家では、清音に似た女性が出迎えてくれた。
昼間、初めて見る青くて広い海に、日生はビクビクしながら打ち寄せる波と戯れた。
冷たい水が襲いかかってきて、全身が濡れてしまえば、日生は「汚した」と怒られるのではないかと脅えたが、和紀が「大丈夫だよ。海は濡れて遊ぶところなの」と教えてくれる。
そういう和紀は、上半身裸で、パンツ一枚だ。(←海パンです。日生視点なので…)
日生は外に出る前に、和紀に日焼け止めをたっぷり塗られていて、その上に長袖のTシャツをかぶせられていた。
「ひなは色が白いから、きっと火傷したようになっちゃうよ」
和紀が言う『やけど』がどんな状態なのかは分からなかったけれど、「すっごく痛いんだよ」と言われて、痛い思いをするのは嫌な日生は大人しく真っ白に塗られた。
砂浜で3人でビーチボールを投げ合ったり、空気の入ったイルカ型の乗り物に乗って海を泳いだり、日生は滅多にあげることのない甲高い声を響かせた。
海に入る時になると周防はビーチパラソルの下に向かって行き、のんびり昼寝を貪りはじめた。
少し遊んでは周防の元に戻って、ジュースを飲んだりスイカを食べたりした。
「日生に泳ぎでも教えるか?」
「えー、波あるし、泳ぎづらいよ。そんなのはプールでいいし」
「海の方が塩分濃度が高いから浮くだろ」
「だめだめ。目にでも入ったら大変」
「どっかにゴーグルが…」(←周防、おもちゃの周りに手を伸ばす)
「あっ、まだお城も作ってないじゃん」
和紀は日生用のバケツとスコップを視界に入れると近くに引き寄せた。
これで砂をかき集めて何かを作るのだと言われて、正直日生はホッとしていた。
海の水は口に入ると、とってもしょっぱいのだ。できることなら浜辺で遊んでいたい。
「うん。しゅなあしょび、しゅき」
日生が嬉しそうに笑うと、周防も「好きに遊びなさい」と言ってくれる。
何もかも初体験だと知るから止めもしない。
夢中で遊んでから部屋に戻り、あったかいお風呂に入ったら日生はあっという間に睡魔に襲われて瞼を閉じた。

夕ご飯の時間になって、賑やかな大人の人たちが揃う。
テーブルの上には、船の上に乗った魚がいて、大きな目で日生を睨んでいる(ようにしか見えない)。
「ひな、お刺身、どれから食べたい?」
和紀が箸を伸ばそうとして日生に尋ねたが、日生は顔を隠すように和紀に縋りついた。
「やだ、こわい…っ」
「こわい?怖くないよ。お魚だよ」
「活作りなんて見たことがないから怖いんだろ」
周防は忙しく動き回る女性に声をかけて、「申し訳ないが…」と魚の頭をさげてもらっていた。
日生は焼いてもらった伊勢海老が食べたくて、和紀に「これ」と指をさすと、「エビの顔は見ても平気なの?」と不思議がられた。

団体の大人の男の人は、お酒が進むのか、どんどんと大きな声になっていく。
話し声も、嫌でも耳に飛び込んでくる。
「無人島にでも行って、なにもかも忘れてのーんびりしたいねぇ」
「うっわ、飽きそ~う」
「一人は淋しくねぇ?」
「そこはほら、カワイ子ちゃんとか連れてさ」
「無人島じゃねーだろーっ」
「持って行けるとしたら何、持っていきたい?」
どうしても聞こえてくる話に、自然と耳が傾けられるのは、隣の席の人も同じだったようだ。
小声でも、騒いでいない日生たちには届いてしまう。
「無人島かぁ。俺、フライパンだな」(by圭吾)
「はぁ?どこまでも調理道具?」
「フライパンって万能調理器具だぞ。何だって調理できるだろ。物が食えれば死なない」
自慢げに話す男と呆れる男が、そのネタで盛り上がっていった。
それを聞いては周防がクスリと笑う。
「レンジャーだな…。実に逞しい。ハングリー精神は大事だ」
「『むじんとー』ってなぁに?」
日生が首を傾げると和紀が説明してくれる。
「誰もいない島だよ」
「ひとり?ひとり、やだ…」
「ひなには俺がいるじゃん。じゃあさ、俺と一緒に行くとして、ひなだったら何か持っていきたいもの、ある?」
誰もいないところなんて怖くて、置いていかれたと思ってしまうに違いない。
日生はぎゅっと和紀の服を握った。
欲しいもの、なんてどれも決められないけれど…。
考える仕草を見せると、「ひとつだけだよ」と和紀に念を押された。
ひとつだけなんて…。
日生は一生懸命考えた。
「ひとつ?…ひとつ…。じゃあ、きよねさん…」
隣の人が、ご飯って言ってたから、必然的に浮かんでしまったのだが。
清音がいてくれたらご飯に困ることはないと思うから。
日生が答えると目をパチクリさせた周防と和紀で、直後には周防は苦笑いを浮かべて、和紀は困った表情になった。
和紀がまた日生に教えようとする。
「清音さんは物じゃないからダメ…」
「まさか清音さんにとられるとは…。俺は眼中にも入らなかったか」
クククッと笑った周防に、日生は「あっ」と思ったがすでに遅い。
でも、清音と周防はどっちも外せないと焦りながら思った。
それより、無人島なんてところには行きたくない。
日生は「みんなといっしょがいい…」と口にして、和紀に「ひなぁぁぁ」とぎゅーっと抱きしめられた。
このあったかい温もりがあればいい…と、一番に思っていたことだった。

「ちなみに親父だったら何を持っていくの?」
和紀が周防に尋ねると、うーん、としばらく悩んでいた。
「そうだなぁ…。望遠鏡でも持っていくかな」
「望遠鏡?なんで?」
「毎日星を眺められるだろう?きっと空気が綺麗だから、新しい星が見つかるかもしれない。自分の名前が付けられるかもしれないんだ。ロマンチックだろ?」
周防が首を傾けながらウィンクを飛ばすと、和紀が眉間に皺を寄せた。
「ロマンチック~ぅ?親父が言っても気色悪いだけだって」
和紀はフンと真剣に取り合わなかった。
まぁ、所詮妄想の世界なのだが。
日生は「ほしもしゅき」としゃべると周防がニコニコと笑ってくれた。
「日生にも見せてやるからな~」
日生は元気よく「うんっ」と頷いた。

周防は内心で、亡くなった妻の位牌を持っていこうとも思っていた。
長いことひとりにしてしまっているから…。
ふたりきりになるのもいいかもしれない、と。
語り合うのもいいだろう…。
懐かしさに思いを馳せた周防の表情が、フッと和やかな温かさを纏っていた。

―完―


p.s.
バトンを繋いで「鉄線」様が書いてくださいました。
ありがとうございました。

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ぼちってしてくれるとうれしいです。

こんなもので、どうかお許しくださ~い。
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コメント

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きよねさん
コメントちー | URL | 2013-10-05-Sat 04:45 [編集]
私もきよねさんが良いなあ~。
美味しいご飯が食べたい(笑)
きえちんの丘の息子を誰か一人連れていけるとしたら・・・

双子ちゃん。毎日飽きないから。

下僕達「な!そんなとこ行かせないぜ。行くなら俺達も行くし」

えー、じゃあじゃあ。佳史さん。怪我しても病気しても安心安心。

望「佳史は行かせないよ?キラン」

ケチー。

あ!安住さんは?マジ、何でも出来るしー。

一葉「享利さん・・・しくしく」

わかったわかった、わかりましたあ。

きえちんの息子達は、誰を連れていこうとツレがもれなくついてくるので。
仕方ない。レンジャーにするっ。
師匠と、さえさんと、にっかたん(笑)
そうそう、すーさん。隠れてても見つけるからねー。
ひゃっほーい♪
コメントすぎもと | URL | 2013-10-05-Sat 07:54 [編集]
ありがとうございますっ!
バトンのときのような一言の回答を予想していたのですが、
SSになってるーーーーー\(^o^)/
もう、嬉しくって、早朝からテンションMAXですっ!
何回も読み返しちゃいました。
お話の中に、自然に回答がちりばめられていて、すてきっ!さすがですっ!
ほんと、ありがとうございました。

ちーさま、ありがとー♪
遅れをとらぬよう、ついてゆきますー♪♪♪

Re: きよねさん
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-05-Sat 09:11 [編集]
ちーさま おはようございます。

> 私もきよねさんが良いなあ~。
> 美味しいご飯が食べたい(笑)
> きえちんの丘の息子を誰か一人連れていけるとしたら・・・
>
> 双子ちゃん。毎日飽きないから。

双子かぁ。
確かに見ていて飽きないでしょうね。
いる人数も多いし…。

> きえちんの息子達は、誰を連れていこうとツレがもれなくついてくるので。
> 仕方ない。レンジャーにするっ。
> 師匠と、さえさんと、にっかたん(笑)
> そうそう、すーさん。隠れてても見つけるからねー。

早々に諦めた(笑)
もうこの際、無人島に旅行に行かれたらいかが?
イケメンのいない無人島に誰が行きたがるかは謎ですが…。
腐女子会、無人島編。いいかもです。

望「うるさいから島流しにでもしておく?」
佳「離婚弁護士、引き離す術には長けているからな…」
安「空いている島がどこにあるか聞いておいてあげようか?」
美琴「…えーと、それでしたら緯度○○経度△▽…」
瑛佑「だめっ。あそこは俺たちのヒミツの島っ!!」

リゾートアイランドで楽しめる日はいつ…???
コメントありがとうございました。
拍手コメ う様
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-05-Sat 09:18 [編集]
おはようございます。

> ひなちゃん かわいい(^ε^)-☆Chu!!

こちらにも日生親衛隊(←?!)が…っ。
日生を可愛がってくださいまして嬉しいです。
まだ子供だった時代、さらりと流してしまったので、今更振り返っておりますが。
喜んでくださる方がいるのでありがたいです。
また来てくださいね。
コメントありがとうございました。
Re: ひゃっほーい♪
コメントたつみきえ | URL | 2013-10-05-Sat 09:24 [編集]
すぎもとさま おはようございます。

> ありがとうございますっ!
> バトンのときのような一言の回答を予想していたのですが、
> SSになってるーーーーー\(^o^)/

喜んでもらえたようで良かったです。
ただの回答ではちょっとおもしろくないかな、と思って、ない頭をひねってみました。
ちょうどいいところに、撒いておいた種があった…。回収できる…とか思いながらね(汗)

> ちーさま、ありがとー♪
> 遅れをとらぬよう、ついてゆきますー♪♪♪

脅しではないですからね~(←)
好き好きに楽しんでいただけたら嬉しいです。
読者様に一言いただけると、本当励みになるんですよ。
(何もないと 無反応なの…???なーんて沈んでみたりしてね…)
コメントありがとうございました。

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