一緒に住んでしまえば遊び歩くこともなくなる。
そこは明野も喜んだところだった。
大月は、男に対しての揉め事は絶え間なくあったといっていい。
勝沼の、全てを受け入れてくれる性格には、韮崎と同等に感謝できるものだった。
だからこそ、出来る限りのことはしてあげようと、明野は思っていたのだが。
同じく遊んでいた韮崎と比べては悪いが、うまく処理できなかったのは人間性の違いだろう。
弟と思って、甘やかした点は否めない。
韮崎が別部門として立ち上げた会社は、グループ企業として存在している。
『社長』という役職に明野より先に就かせることになったが、野心がある男に対してはそれもありだろう。
また、大元が潰れたとしても、逃げ場所があるとは、韮崎なりの配慮でもあった。
立場は逆転してしまうが、『受け皿』として、明野の入る余地を設けている。
営業として動く勝沼は、時に休日変更もされた。
「また出張だってぇ」
帰ってくるなり愚痴をこぼす勝沼に、「仕方ないんじゃない?」と世間の厳しさを伝える。
大月は、今現在、『人を使う』立場に変わっていた。
昔のチャランポランな態度はすっかりなりをひそめている。
もちろん、韮崎がそう教えたのだし、明野が注意しまくった結果だ。
"働かせる"ことで、世の中の流れを教えてきた。
もともとある能力も引き出させた。
冷たいくらいの厳しい判断と発言は敵を生むこともあるが、的を射ているだけに、反論させない口話術もあるのかもしれない。
『弟って怖い…』と思った勝沼の心境は隠された。
本人に言えば100倍以上に返されそうだ。
勝沼は長男だ。下に妹が一人いる。7歳離れていることもあったし男女の違いか、ほとんど接触はなかった。
それでも、下の子を可愛がりたい精神は、潜在的にあるのかもしれない。
どれだけの我が儘を言う大月も、認められていた。
同じ意識が明野にもあるのか、どこかで意思が繋がっている気がする。
出張が重なるたびに、勝沼は明野に泣きついていた。
「絶対、あいつ、浮気する。解放された気分で飲み歩いたり、誰かと接触したがるよ~っ」
束縛されることを何より嫌う気持ちは兄も分かっているようだ。
大月は一夜限りの相手になんのためらいもない。
気安く明野と話せるようになったのも、引っ越してからだった。
以前なら近寄りがたい人だったのに、明野の人柄もあるのだろうか。
向こうから寄りそってくれることに、勝沼の気持ちも緩んだ。
「あー、ハイハイ。大月には鎖でも付けておくか」
冗談だとはわかるけれど、出かけさせないための対策は思うのだろう。
それが、どんな高級料亭での『夕食』というエサになったのか。
店名を聞いただけで、勝沼は「俺もっ」と言いたくなった。
完全に敷居が高い店だ。
これが食事の席の『普通』だと分かれば、より一層の、身分の差、のようなものを感じた。
そのことを分かることが今後の活躍に役立つかはともかく…。
知らない恥はないほうがいいと、漠然とでも思うのだ。
大月の隣にいるからこそ。
"家族"の前では、失態があっても許されるだろう。
取引先の前では幻滅される要因になる。
出張は変えられないのだろうか。
勝手な思いに、明野は無言で答えてくれた。
『申請書類』を取り下げたのだ。
上司、一人で行けと。
二人分の費用は出せない、また内容から、部下の必要性がないと、それは『上司』としての能力を試してもいた。
できなければ、格下げになるだけだ。
韮崎の実力は知っていたけれど。
明野の手厳しさも勝沼は感じた。
「一族、か…?すげえよ、おまえたち」
愛情だけで守りぬけるものではない。
実力というものを身に付けないと、ここにはいられない。
寒かった大月の心に、花を咲かせてやることはできるだろうか。
韮崎とはまた違った、本当の心の安らぎとして。
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なるべく早く書ききりたいと焦っています
時間が・・・もうないようなので
そこは明野も喜んだところだった。
大月は、男に対しての揉め事は絶え間なくあったといっていい。
勝沼の、全てを受け入れてくれる性格には、韮崎と同等に感謝できるものだった。
だからこそ、出来る限りのことはしてあげようと、明野は思っていたのだが。
同じく遊んでいた韮崎と比べては悪いが、うまく処理できなかったのは人間性の違いだろう。
弟と思って、甘やかした点は否めない。
韮崎が別部門として立ち上げた会社は、グループ企業として存在している。
『社長』という役職に明野より先に就かせることになったが、野心がある男に対してはそれもありだろう。
また、大元が潰れたとしても、逃げ場所があるとは、韮崎なりの配慮でもあった。
立場は逆転してしまうが、『受け皿』として、明野の入る余地を設けている。
営業として動く勝沼は、時に休日変更もされた。
「また出張だってぇ」
帰ってくるなり愚痴をこぼす勝沼に、「仕方ないんじゃない?」と世間の厳しさを伝える。
大月は、今現在、『人を使う』立場に変わっていた。
昔のチャランポランな態度はすっかりなりをひそめている。
もちろん、韮崎がそう教えたのだし、明野が注意しまくった結果だ。
"働かせる"ことで、世の中の流れを教えてきた。
もともとある能力も引き出させた。
冷たいくらいの厳しい判断と発言は敵を生むこともあるが、的を射ているだけに、反論させない口話術もあるのかもしれない。
『弟って怖い…』と思った勝沼の心境は隠された。
本人に言えば100倍以上に返されそうだ。
勝沼は長男だ。下に妹が一人いる。7歳離れていることもあったし男女の違いか、ほとんど接触はなかった。
それでも、下の子を可愛がりたい精神は、潜在的にあるのかもしれない。
どれだけの我が儘を言う大月も、認められていた。
同じ意識が明野にもあるのか、どこかで意思が繋がっている気がする。
出張が重なるたびに、勝沼は明野に泣きついていた。
「絶対、あいつ、浮気する。解放された気分で飲み歩いたり、誰かと接触したがるよ~っ」
束縛されることを何より嫌う気持ちは兄も分かっているようだ。
大月は一夜限りの相手になんのためらいもない。
気安く明野と話せるようになったのも、引っ越してからだった。
以前なら近寄りがたい人だったのに、明野の人柄もあるのだろうか。
向こうから寄りそってくれることに、勝沼の気持ちも緩んだ。
「あー、ハイハイ。大月には鎖でも付けておくか」
冗談だとはわかるけれど、出かけさせないための対策は思うのだろう。
それが、どんな高級料亭での『夕食』というエサになったのか。
店名を聞いただけで、勝沼は「俺もっ」と言いたくなった。
完全に敷居が高い店だ。
これが食事の席の『普通』だと分かれば、より一層の、身分の差、のようなものを感じた。
そのことを分かることが今後の活躍に役立つかはともかく…。
知らない恥はないほうがいいと、漠然とでも思うのだ。
大月の隣にいるからこそ。
"家族"の前では、失態があっても許されるだろう。
取引先の前では幻滅される要因になる。
出張は変えられないのだろうか。
勝手な思いに、明野は無言で答えてくれた。
『申請書類』を取り下げたのだ。
上司、一人で行けと。
二人分の費用は出せない、また内容から、部下の必要性がないと、それは『上司』としての能力を試してもいた。
できなければ、格下げになるだけだ。
韮崎の実力は知っていたけれど。
明野の手厳しさも勝沼は感じた。
「一族、か…?すげえよ、おまえたち」
愛情だけで守りぬけるものではない。
実力というものを身に付けないと、ここにはいられない。
寒かった大月の心に、花を咲かせてやることはできるだろうか。
韮崎とはまた違った、本当の心の安らぎとして。
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なるべく早く書ききりたいと焦っています
時間が・・・もうないようなので
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明野ってすごいなぁ……
韮崎の行状(?)を許容できるのは、大切なものと信頼とがあるからかな、と思っています。
大切なもの――家族とその家族で守っている会社
一部抜粋させていただきます。
> 信頼――韮崎への信頼、明野の大切なものを一緒に大事にしてくれると固く信じている
その二つが揺るがないから、大月や他の人間を抱いていると知っていても、韮崎を受け入れることができるのかな、と。
> 明野の信頼を勝ち得ている韮崎もすごいけれど、ね。
明野の存在って、たぶん、ものすごいものだと思います。
そこまで信じてくれた兄がいたから、逆に大月も、『兄の立場』みたいなのを考えることができたんでしょうね。
いっぱい迷惑もかけ続けたし、けど、見守ってくれる人なのだと、漠然とかもしれないけれど、分かるから、これ以上の負担はなくしてやろうと。
韮崎がそばにいてくれたことも強いと思います。
韮崎も結構、辛いこと、あったんじゃないかなって、書き進めながら思いますけれど。
明野のために、許したんだろうね。
恋人の弟を抱くことまで正当化するのはどうかとも思うけれど。
全ての人間が認めたなら、必要な行為だったのかしら。
環境の変化などいろいろと大変なところがあるかもしれません。
勝手な意見としては、それこそプチ旅行気分で、どこかに行きたいきえです。
いつも読んでくれてありがとうございます。
また、いつでも何か書きこんでくださいね。
またね(^.^)/~~~
韮崎の行状(?)を許容できるのは、大切なものと信頼とがあるからかな、と思っています。
大切なもの――家族とその家族で守っている会社
一部抜粋させていただきます。
> 信頼――韮崎への信頼、明野の大切なものを一緒に大事にしてくれると固く信じている
その二つが揺るがないから、大月や他の人間を抱いていると知っていても、韮崎を受け入れることができるのかな、と。
> 明野の信頼を勝ち得ている韮崎もすごいけれど、ね。
明野の存在って、たぶん、ものすごいものだと思います。
そこまで信じてくれた兄がいたから、逆に大月も、『兄の立場』みたいなのを考えることができたんでしょうね。
いっぱい迷惑もかけ続けたし、けど、見守ってくれる人なのだと、漠然とかもしれないけれど、分かるから、これ以上の負担はなくしてやろうと。
韮崎がそばにいてくれたことも強いと思います。
韮崎も結構、辛いこと、あったんじゃないかなって、書き進めながら思いますけれど。
明野のために、許したんだろうね。
恋人の弟を抱くことまで正当化するのはどうかとも思うけれど。
全ての人間が認めたなら、必要な行為だったのかしら。
環境の変化などいろいろと大変なところがあるかもしれません。
勝手な意見としては、それこそプチ旅行気分で、どこかに行きたいきえです。
いつも読んでくれてありがとうございます。
また、いつでも何か書きこんでくださいね。
またね(^.^)/~~~
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