【明野視点です】
毎回変わって、本当にすみません。
もう、幾度、弟(大月)の尻拭いをさせられただろうかとため息がこぼれた。
どこの男に襲われただとか、喧嘩ごとになって、巨摩を向かわせたことも一度や二度ではない。
そこは明野自身、甘えた結果だ。
相手を治めるためにも巨摩の存在はありがたかったけれど。
見た目だけで封じ込める威嚇がある。
"使った"……。その部分は否定できないだろう。
巨摩も分かっている。分かって、自分についてきてくれた。
だから『自分の力で事業を立ち上げたい』という希望も答えてあげられた。
いつか、いつの日か…。
新しい企画として…。思ったものは叶えてやりたかった。
失敗してもいいだろう。
資金を使い果たしたとしても。
彼のやりたいようにさせたい。
『大月を引き取る』とは、あまりにも意外だったが。
共に暮らすようになって、だけど、週末は出かけていく姿を知っていた。
昔から遊び歩いた人間だ。
今更一人や二人、愛人と言ったら失礼だろうが、そんな存在がいることは分かっていた。
弟だと分かったのはいつだろう。
それすら咎められなかったのは自分の弱さだ。
そして、遊び歩いた巨摩と大月を知る。
共に、単なる遊びでしかないのだとも知った。
自分が口出しすることでもないのだろう。それくらい、"簡単"な出来事。
巨摩から退職願いを出された時、「あぁ」と自然と受け止めていた。
退職とはいえ、同じ系列での仕事をするのだから、全てが離れるわけではない。
随分と前、『面倒になる』といった大月も引き抜いていた。
それは絶対条件だった。
明野の負担にさせないためにもそこに存在させなかった。
事業を立ち上げることは大月を放す、明野への想い。
今の会社で損になることを知っていた。
人を見る目は、やはり韮崎の特権ともいえるだろう。
本当の意味では"損"にならなくても、彼の使い方を見出せない社員ばかりだ。
そこを韮崎は分かっている。
大月は知らぬ間に"経営"を学んだ人であること。
言わずにはいるが、たぶん、その能力は、明野を越えるだろうと韮崎は見ていた。
だからこそ、自分のそばにおきたかった。
恋とや愛と違うものだ。
"能力"
明野はベッドの中でふと、こぼす。
『見守ってあげてよ』
誰のことを言うのかは巨摩もわかるのだろう。
弟を守りたい。どれだけの苦痛を自分が浴びても与えられても、血が繋がった人だ。
もういくつの尻拭いもしたけれど。
それでもやっぱり、"弟"だ。
「言っただろう。明野のために俺はいるんだって」
囁かれて頷いた。
「好き」
そうもつぶやいた。
「すき」
もう一度、年甲斐もなくつぶやいて。
翌日の朝、明野は全ての書類にハンコを押した。
大月を、自分の手から手放した。
間違いはない。信じたからこそ。
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毎回変わって、本当にすみません。
もう、幾度、弟(大月)の尻拭いをさせられただろうかとため息がこぼれた。
どこの男に襲われただとか、喧嘩ごとになって、巨摩を向かわせたことも一度や二度ではない。
そこは明野自身、甘えた結果だ。
相手を治めるためにも巨摩の存在はありがたかったけれど。
見た目だけで封じ込める威嚇がある。
"使った"……。その部分は否定できないだろう。
巨摩も分かっている。分かって、自分についてきてくれた。
だから『自分の力で事業を立ち上げたい』という希望も答えてあげられた。
いつか、いつの日か…。
新しい企画として…。思ったものは叶えてやりたかった。
失敗してもいいだろう。
資金を使い果たしたとしても。
彼のやりたいようにさせたい。
『大月を引き取る』とは、あまりにも意外だったが。
共に暮らすようになって、だけど、週末は出かけていく姿を知っていた。
昔から遊び歩いた人間だ。
今更一人や二人、愛人と言ったら失礼だろうが、そんな存在がいることは分かっていた。
弟だと分かったのはいつだろう。
それすら咎められなかったのは自分の弱さだ。
そして、遊び歩いた巨摩と大月を知る。
共に、単なる遊びでしかないのだとも知った。
自分が口出しすることでもないのだろう。それくらい、"簡単"な出来事。
巨摩から退職願いを出された時、「あぁ」と自然と受け止めていた。
退職とはいえ、同じ系列での仕事をするのだから、全てが離れるわけではない。
随分と前、『面倒になる』といった大月も引き抜いていた。
それは絶対条件だった。
明野の負担にさせないためにもそこに存在させなかった。
事業を立ち上げることは大月を放す、明野への想い。
今の会社で損になることを知っていた。
人を見る目は、やはり韮崎の特権ともいえるだろう。
本当の意味では"損"にならなくても、彼の使い方を見出せない社員ばかりだ。
そこを韮崎は分かっている。
大月は知らぬ間に"経営"を学んだ人であること。
言わずにはいるが、たぶん、その能力は、明野を越えるだろうと韮崎は見ていた。
だからこそ、自分のそばにおきたかった。
恋とや愛と違うものだ。
"能力"
明野はベッドの中でふと、こぼす。
『見守ってあげてよ』
誰のことを言うのかは巨摩もわかるのだろう。
弟を守りたい。どれだけの苦痛を自分が浴びても与えられても、血が繋がった人だ。
もういくつの尻拭いもしたけれど。
それでもやっぱり、"弟"だ。
「言っただろう。明野のために俺はいるんだって」
囁かれて頷いた。
「好き」
そうもつぶやいた。
「すき」
もう一度、年甲斐もなくつぶやいて。
翌日の朝、明野は全ての書類にハンコを押した。
大月を、自分の手から手放した。
間違いはない。信じたからこそ。
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