知れば知るほど、人の奥深さというのを感じる。
これは今までの大月では思うところがなかったものだ。
体だけをつなげればいい。解放できる空間があればいい。
その類だったものを勝沼はひっくり返してくれた。
『自分のものとして抱きしめたい』と・・・。
目が覚めた朝、これまでだったら平然と、まさに、颯爽と丸裸で歩けたのに、何故か躊躇する。
見られることの恥ずかしさを覚えた。
胎内からこぼれる体液も感じた。
「おま…っ、ゴム使ってないっ」
「そんなの、使う余裕ないし」
当たり前だと言わんばかりに、勝沼はコトの流れを正当化していた。
大月も、中出しの経験は散々あった。開き直られたら、誘ったのは大月だろうと、言われかねない状況でもある。
全ては確認済みの行為であるのか…。
まぁ、だからといって、韮崎が置いていったコンドームを差し出すのも失礼な話だろう。
もう一度、大月は勝沼に抱きしめられた。
「慌てるなよ。大月の気がその気になるまで待ってやるからさ。今は俺の気持ちを知ってくれればいい」
どこに転がっていけばいいのか分からないでいる、彷徨っている大月を、きっと知っていたのだろう。
促されるままに就職してしまったけれど。
それすら、本望ではなかったと。
だから、『辞める』ことも分かっていたのだ。
韮崎と共に。
勝沼との関係が始まってから、大月の生活も一変した。
週末はほとんど大月の家に居候している。
からかい半分に、明野が『朝食』を持ってくるのは、あまりいただけない話だ。
「どうせなら、住んじゃえばいいのに」
家事一切をしない大月を責める言葉でもある。
そうしたい気持ちは山のように積み上がっているのだろうが、自制していたのは勝沼だった。
たぶん、大月の気持ちを待ってくれているのだろう。
「お兄様、それはちょっと…」
営業職らしいトークを繰り広げられ、冷汗がこぼれる。
トントンと話を進められる会話のうまさには舌を巻いた。
言いくるめる力は韮崎に匹敵するのではないか…。
その強さが大月には魅力的だったのだが。
兄の力に押されたわけではない。
だけど、どこかで憧れていたのかと時々思う。
自分は気の強さで今までを乗り切ってきた。
明野のようにうまく立ちまわれなかった。
強がって、周りを警戒して、『社長の息子』の存在で居続けた。
それを影ながら支えてくれたのが、明野で、韮崎だった。
失敗という言葉を踏ませずに。
次は、勝沼にかわるのだろうか。
彼がどこまで対応できるかは分からない。
何でもそつなくこなしてきた過去があるからこそ比べられることもあるだろう。
だけど勝沼は、違いを受け入れていた。
『韮崎さんと同じにできないけどさ』
むしろ、違いを感じろという方だろうか。
「俺、双葉に出会えてよかったかも…」
さりげなく伝えた言葉に、はにかんだ頬が見えた。
自分という存在を認めてくれる人。
「俺、同居してもいい?」
「それはまた別の話っ」
韮崎と明野が共に住んでいるだけに、"恋人"として同じくありたいのだとは分かった。
でも今の大月には答えられなかった。
韮崎と次のステップがあったから尚更。
もう身体の付き合いはない。
分かっていても不安に思う人はいる。
たった2カ月。
大月と韮崎は同時に、退職届けを出していた。
知っていたのは明野で、呆然としたのは双葉だ。
いつか。いつかは知っていても。
韮崎と共に…?
「なんだよ、それ・・・」
知らなかった。
恋人としても扱ってもらえなかった存在なのだろうか・・・
大月は傷つけたくないから教えたくなかった。
でもその考えは間違いだったのか。
勝沼の落胆ぶりを見て、恋人とはなんなのか考える。
大月はまたひとつ、人とのやりとりを教えられた。
一層のこと、兄から全てを伝えられた方が、伝わりがいいのではないかと。
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これは今までの大月では思うところがなかったものだ。
体だけをつなげればいい。解放できる空間があればいい。
その類だったものを勝沼はひっくり返してくれた。
『自分のものとして抱きしめたい』と・・・。
目が覚めた朝、これまでだったら平然と、まさに、颯爽と丸裸で歩けたのに、何故か躊躇する。
見られることの恥ずかしさを覚えた。
胎内からこぼれる体液も感じた。
「おま…っ、ゴム使ってないっ」
「そんなの、使う余裕ないし」
当たり前だと言わんばかりに、勝沼はコトの流れを正当化していた。
大月も、中出しの経験は散々あった。開き直られたら、誘ったのは大月だろうと、言われかねない状況でもある。
全ては確認済みの行為であるのか…。
まぁ、だからといって、韮崎が置いていったコンドームを差し出すのも失礼な話だろう。
もう一度、大月は勝沼に抱きしめられた。
「慌てるなよ。大月の気がその気になるまで待ってやるからさ。今は俺の気持ちを知ってくれればいい」
どこに転がっていけばいいのか分からないでいる、彷徨っている大月を、きっと知っていたのだろう。
促されるままに就職してしまったけれど。
それすら、本望ではなかったと。
だから、『辞める』ことも分かっていたのだ。
韮崎と共に。
勝沼との関係が始まってから、大月の生活も一変した。
週末はほとんど大月の家に居候している。
からかい半分に、明野が『朝食』を持ってくるのは、あまりいただけない話だ。
「どうせなら、住んじゃえばいいのに」
家事一切をしない大月を責める言葉でもある。
そうしたい気持ちは山のように積み上がっているのだろうが、自制していたのは勝沼だった。
たぶん、大月の気持ちを待ってくれているのだろう。
「お兄様、それはちょっと…」
営業職らしいトークを繰り広げられ、冷汗がこぼれる。
トントンと話を進められる会話のうまさには舌を巻いた。
言いくるめる力は韮崎に匹敵するのではないか…。
その強さが大月には魅力的だったのだが。
兄の力に押されたわけではない。
だけど、どこかで憧れていたのかと時々思う。
自分は気の強さで今までを乗り切ってきた。
明野のようにうまく立ちまわれなかった。
強がって、周りを警戒して、『社長の息子』の存在で居続けた。
それを影ながら支えてくれたのが、明野で、韮崎だった。
失敗という言葉を踏ませずに。
次は、勝沼にかわるのだろうか。
彼がどこまで対応できるかは分からない。
何でもそつなくこなしてきた過去があるからこそ比べられることもあるだろう。
だけど勝沼は、違いを受け入れていた。
『韮崎さんと同じにできないけどさ』
むしろ、違いを感じろという方だろうか。
「俺、双葉に出会えてよかったかも…」
さりげなく伝えた言葉に、はにかんだ頬が見えた。
自分という存在を認めてくれる人。
「俺、同居してもいい?」
「それはまた別の話っ」
韮崎と明野が共に住んでいるだけに、"恋人"として同じくありたいのだとは分かった。
でも今の大月には答えられなかった。
韮崎と次のステップがあったから尚更。
もう身体の付き合いはない。
分かっていても不安に思う人はいる。
たった2カ月。
大月と韮崎は同時に、退職届けを出していた。
知っていたのは明野で、呆然としたのは双葉だ。
いつか。いつかは知っていても。
韮崎と共に…?
「なんだよ、それ・・・」
知らなかった。
恋人としても扱ってもらえなかった存在なのだろうか・・・
大月は傷つけたくないから教えたくなかった。
でもその考えは間違いだったのか。
勝沼の落胆ぶりを見て、恋人とはなんなのか考える。
大月はまたひとつ、人とのやりとりを教えられた。
一層のこと、兄から全てを伝えられた方が、伝わりがいいのではないかと。
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