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BLの丘
木漏れ日 11
2013-08-12-Mon  CATEGORY: 木漏れ日
森吉と能代にシュノーケルの備品を用意してもらって浜辺に出た。
何人か釣りの準備をしている人も見受けられた。
他にもゴムボートやビーチボールなどのレンタルもしている。
みんなが集まったらビーチバレーもいいだろうなんて計画を立てている。
最初は足がつく範囲でピチャピチャと水中眼鏡越しに見える光景に感動していた。
「地面が見える~」「魚がいる~」とはしゃいでいたのだが、能代が手漕ぎボートを持ってきて、沖に行くというのでついていくことにした。
隆起した岩場まで行くそうだ。
「ダイビングってするの?」
鳥海が尋ねると、体慣らしするだけだからまだいいという。
マリン用語はさっぱり分からない鳥海と白神は、とりあえず楽しめればいいやと、難しいことは考えない。

とんがり帽の形の岩は大小ふたつあって、小さい方は大人がふたりも登ったらいっぱいになってしまう小ささだ。
もう一つのほうには高さが5メートルほどあって、松の木が何本か生えていた。水中でふたつは繋がっている。
「ビーチがないじゃん…」
「あるかよっ、こんなところにっ」
おかげで誰も来ない。
森吉と能代はTシャツを脱ぐと手早く自分たちの足にフィンを付けマスクを頭上に乗せて準備を終え、呆然とする鳥海たちにスッと手をかけ始めた。
どちらが…という相談もなく、それぞれに取りかかれる連係プレーは時間の無駄をしていない。
「五城目、足出して」
森吉は揺れる船上でも難なくしゃがみこんで、装着してくれた。
「あと、ライジャケも着とけよ」
「ライジャケ?」
答えるより、黒地にオレンジのラインが入ったベストに腕を通されたほうが早い。鳥海たちのTシャツは脱がされることがなかった。
「ほっせー体だなぁ。キッズ用でも良かったんじゃねぇ?」
ベルトをしっかり締めながらつぶやかれ、目の前にある筋肉隆々と改めて比べると、ライフジャケットを巻かれても細いことを目の当たりにされた。
それは白神も変わらない。
だけど森吉たちは裸のままなので、首を傾げると、「俺たちは素潜り」と言うだけで、海に飛び込んでいった。
ボートを押さえて水中で待たれているところをみると、自分たちも行くべきなのだろうとそろりとヘリから足を付ける。
腕の力で水中に落ちたのはいいが、思っていた以上に深いところで、両手両足が同時にバタバタと動き回る。
…お、おぼれる…っ!!
「五城目っ、こっちっ。押さえててやるから足、かけるだろ」
正面から抱き寄せられてパニクりながらも安堵の息をつく。
しがみついて浮かべてもらっている状態だった。
「ふ、深いよ~っ」
「ライジャケ着て溺れたやつって初めて見た」
クスクスと笑われて、すぐ近くに森吉の顔があることに驚いた。
ぎゅっと首にしがみついている自分も何なのだが…。
「あ…」
マジマジと視線を合わせたところで、状況を理解した森吉は困惑に少し体を離す。
「おまえ、ヤバい気にさせてくれるよ…」
「?」
「ヘルプ要請一回ごとにキス一つで請け負ってやるから安心しておぼれろ」

…水に濡れた男は普段の数倍格好良く見える…、って誰かが言っていたか???と脳裏をよぎっていったが、目の前の男はお構いなしに鳥海の髪を梳くと頬に唇を寄せてきた。
呆然とする鳥海を抱えたままで、森吉はポートの中に手を伸ばすと、ロープと浮輪を寄せてくる。
ロープの先の金具を鳥海のライフジャケットの腰の部分にカチャリと取りつけた。
森吉の体の変わりに浮輪を握らせる。
「ロープは50メートルあるから、遭難はないだろ。俺、潜って気分転換してくるから上から見てて」
つまり、船に括りつけられたらしい。浮輪もボートにつながっている。
…"おぼれろ"とは、水に、だろうか。それとも、森吉に…だろうか。
レンズを嵌めた森吉はザブンと水中に消えていった。

「さかなだ~っ、魚がいる~っ」
白神の雄叫びが響いて気が取られる。
同じような格好で放りだされた白神の言うものが、本物の魚ではなく能代を揶揄ったものだとはすぐに判断ができた。
「藤里~」
鳥海の呼びかけに、今更ながらに出会えたことを喜べたように、こちらも抱き合う。
「フィンって思いのほか早く泳げるんだね~」
こちらはすでに、シュノーケルの楽しみ方を教えられていたようだった。
「う、うん…」
鳥海も顔を付けて中を覗き込んだ。
海藻が揺れて小型の魚が泳ぐ合間を、浅黒い肌の二匹の男が優雅に舞っていた。
太陽の光を浴びた身体が上を向いて、ニカッと笑っては手を振ってくる。
鳥海は先程直に触れた筋肉を思い出して、ドキリとした。
いつもでは何も感じない蜜が甘く香りだした瞬間に巡り合ったような錯覚に陥った。

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祝1900話目!! あと100話で2000だねぇ。(途中の雑記も含まれているけど…)
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コメント

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海だもん
コメントnichika | URL | 2013-08-12-Mon 23:23 [編集]
あれ 鳥海くん 心穏やかでないですね~
もう白神くんといい お二人 あぶない・アブナイ じゃぶじゃぶ

ー腐ォレンジャー  ライフガードならむ あちらこちら出没かな
*「砂浜は清掃大事 貝でケガしないようにね~」
*「溺れるる方がいないか 要監視ですゎょ」
*「泳ぐと体力消耗するから 甘いものはだいじですゎ」
*「しっかり 浜辺を警護します!」
ni「たんと のぞきます」
きえ「この稼ぎ時~~フフン 生beerならぬ 生写真 結構(笑)」

ライジャケ着て溺れたやつって いそうですね
自宅のちっちゃい風呂で 小学児のころ なぜかひっくり返り 溺れたことがあります(恥) 
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