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BLの丘
木漏れ日 13
2013-08-13-Tue  CATEGORY: 木漏れ日
ドキドキした心臓が喉から飛び出しそうだ…。
どんなふうに動かしたらいいのか分からない舌を森吉の舌で絡められる。
唇が吸い上げられるように蠢いて、「ぁ、ふ…」と口を大きく開けようとひらいてしまうと、一旦顔を離した森吉がフッと口角を上げた。
「鳥海って今、付き合っているヤツ、いないんだっけ?」
「え、あ、…い、いないけど…」
妙に冷静な森吉に戸惑いながら、どんな顔をしたらいいのかと俯くと、体を捻っていた森吉が一度前を向いてから足を上げて横向きに座りなおした。
車体が大きく揺れたことに焦り、「ひゃぁぁぁ」と慌ててしがみつくとフフと笑われる。
「そんな簡単に横転しねぇよ」
海の中に投げ出される心配はないと言いきられても、不安定な状態で浮かんでいることに変わりはない。
うまくバランスをとっている森吉は鳥海の体を片腕でぎゅっと抱きしめる。
不思議な感覚だった…。
遠くに人の気配も物音もするのに、ここだけが切り取られたような感じ。
見えるものが森吉だけに絞られる。
「あ、あの…」
「し。黙って」
親指の腹で唇の上をひと撫でされて、近づいた唇がまた塞いできた。
腰を抱かれて、顎に手をかけられて…、濡れた髪の間に指が潜り込んできて後頭部を押さえられる。
揺れ動く波間に不安もあって、頼れるものが森吉だけだと判断する脳が、自然と森吉に縋るよう寄りそった。
歯列を割って注がれてくる熱さが鳥海の思考を融かしてしまう。
熱に浮かされたような感覚で森吉の全てを受け入れてもいいと思えてくるもの…。
何事もスムーズにこなしてしまう、これまで見てきた動きが脳内に甦って、他の人物とは違う印象を刷り込んでいた。
啄ばむ唇が幾度も角度を変えて鳥海を刺激してくる。
太陽と一緒に、森吉の熱で焦がされそうだ。

うまく酸素が取り入れられなくて、息を乱す鳥海に少しずつ隙間を与えてくれる。
「…ぁ、もり、よ、し…」
「鷹巣だって…」
「たか…?」
波音と吐息だけが耳に届く合間にささやかな声が上がると、すぐに咎められた。
そっと薄目を開けて見た先、眩しそうに目を眇めた森吉が、そう、とチュッと音を立てたキスを落としてくる。
「森吉鷹巣。鳥海、俺の名前、知ってた?」
確認をするような意地悪な質問だ。
それを言うなら、つい数時間前まで森吉も鳥海の名前なんて知らなかったのではないだろうか?と過っていった疑問は棚に上げられる。
一応、頷いておいたけれど…。
「鳥海、可愛いな…」
あまり嬉しい言葉ではないが、褒められていることが分かるのでくすぐったくなる。決して嫌な気分にはならない。
「…バカ…」
なんて答えたらいいのか分からず、悪態をついて視線を伏せれば、もう一度唇を塞がれていた…。

しばしの"恋人気分"を味わって船着き場に戻り、森吉がジェットスキーの返却手続きをとっているのを背後で黙って聞いている。
すぐ横の売店では、先に戻っていた能代と白神が海の色に染められたかき氷をパラソルの下のテーブル席で二人でつついていた。
鳥海の姿を捉えるなり、「よぉ、おかえり」と能代はいつもと変わらない態度で声をかけてきたが、白神はチラリと不躾な視線を送ってくるにとどまっていた。
能代と何か嫌なことでもあったのかと勘繰るが、本人を前にして問うわけにもいかないだろう。
鳥海の背後に寄った森吉もふたりに気付いて、「鳥海も食べる?」と声をかけてくる。
円陣を組むように森吉が能代の隣に座れば、立っているわけにもいかず、白神の隣に腰を下ろした。
どことなくぎこちない雰囲気がなんとも嫌だ…。

森吉が白神と同じものを注文して、目の前に届けられた時、俄かに唇が尖ってしまった。
できればイチゴミルクの上にアイスクリームが乗っているのが良かったのに…との不満は喉奥に飲み込まれていく。
こちらも一つのかき氷をふたりで食べようという動きは丸見えで、だけど好きじゃない味を平らげられる自信もなかった鳥海には都合が良かったのかもしれない。
すぐに森吉と能代はジェットスキーのコンディションの話に夢中になってしまう。
どれくらいのスピードを出したとか、白神がギャーギャーうるさくて楽しめなかったとか、冗談混じりでも遊んでいた光景は充分伝わってくる。
興奮しているぶん、能代だって満更ではなかったのだろう。
鳥海も白神に話しかけた。
「藤里、どっちのほうに行ってたの?最初、競争していたのに、いなくなっちゃったじゃん」
「あっちだよ。能代さんたらヒドイの。負けたのは僕のせいだって言って、いきなり海に突き落とすんだもんっ」
思考と会話は違うのか、思い出話には素直に答えてくれる。
能代との間に問題はなかったような口調だ。
「え?落とす?」
信じがたいセリフだったが、直後にはニコニコと楽しそうに話すのだから、本気で苦言をつきたいわけではなさそうだ。
「一度落っこちちゃえば全身ずぶぬれじゃん。急ターンしてみたり、スリル万歳だったけど。もう何度振り落とされたことか」
クスクスと笑っては、「鼻が痛かった」と経験談を語る。
鳥海はそんな手荒なマネはされなかったと振り返った。
モラルを守るのは当然のことだが、その中でも更なる刺激を求めてしまうこと。
自分たちはそれが、"キス"の方に向いてしまったのか…。

白神と普通に話せたのは良かったが、チラリチラリと鳥海と森吉を交互に伺うような視線は、やはり何か言いたいことがあるのだと悟る。
買ってもらったかき氷もそこそこに、鳥海は「もう帰ろう」とみんなを促していた。
鳥海が声をかけると森吉が鳥海の様子を伺ってくる。
「鳥海、疲れた?」
何故か名前を呼ばれることに、イラッとしている自分を感じた。

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