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BLの丘
木漏れ日 14
2013-08-13-Tue  CATEGORY: 木漏れ日
そろそろ日は西へと傾きつつあるが、まだ灼熱の空気をまとっていた。
民宿に戻るまでの道、前に森吉と能代が歩き、少しの距離を置いて鳥海と白神が続く。
燻っている気持ちはお互いにあるのが、態度から知れてくる。
耐えきれずに「藤里…」と不安げな声を上げてしまえば、白神も困ったと小さく鳥海を伺ってきた。
「鳥海さ…。森吉くんと…、どうなっちゃうの?」
これまでの行動を振りかえられる。そしてこの後のことを問われる。
「え?」
正面から切り込んでこられるのは、知れた性格で、隠すことがないところが、やはり鳥海の本心も曝け出させてくれた。
「鳥海~っ」
咎めてくる口調も混じっている。それでいながら、鳥海の意思も尊重してくれていて、全てを非難してはいない。
明確にいっては来ないけれど、一時期の感情の流れのことを言われているのだとは知れることだった。
「あ…」
「鳥海、森吉くんと、キスしてたでしょ。なんか、すごいイイ雰囲気だったけど」
「み、見てたのっ?!」
誰にも知られない場所だと思っていたが、考えても考えなくても公の場所だった。
簡単に気を許していた行動にも羞恥が走った。
あの時はふたりきりだと思っていたけれど…。
突然のことに顔を染めて、目を見開けば白神はクスッと首をすくめる。
「能代さんが教えてくれた。『あいつら、うまくやっているなぁ』って」
白神どころか能代にまで見られていたとは、不覚の自体と、背中を冷汗が流れる。
何気なく会話も交わしていたけれど、白神と同様に、内心では何を思われているのだろう…。

「あ、あの…」
それと同時に過ったのは、白神は能代とアヤシイ雰囲気にならなかったのかという疑問。
あのまやかしのような時間に翻弄されることもなかったのかと不思議な気持ち。
なにがあっても水に流せるような軽さ、足元もさだかではない空気に飲み込まれなかった白神の存在が、確実に責めてきている。
思わず縋ってしまったのは一時期の幻の世界で、間違っているのだと告げられているようで…。
唇をとがらせながら俯くと、「どっちのためになるのか分からないけれど、能代さん、証拠写真撮っていたからね」ととんでもない事実をつきつけられた。
「しゃ、写真っ?」
「からかうことが目的なのか、森吉くんの裏付けをとるためなのか…」
『恋人のフリ』は、森吉の手の中で踊っている。
はっきりとした、そんな存在にはなりたくないのに…とは正直な気持ちなのだろう。
キスまで交わしていたのに、不思議と嫌だったのだ。
そう、先程、あれほど赦していた森吉の発言が耳ざわりだったように。

「まぁ、能代さんの性格だから、からかうのが一番の目的だろうけどね」と、ここだけで悟った雰囲気は鳥海と違うものがはっきりとしている。
この冷静さはなんなのだろう。
そこまできて、どうして揺るがなかったのか単刀直入に問いが漏れる。
同じような時を過ごしたのに…。
白神は当たり前のように、当然のように言い切ってくれた。
「だって僕、最初から八竜さん、鳥海のお兄さんが好きって能代さんに言ったもん。ちょっかいしないでねって」
操立てするのとは違うのかもしれないけれど、明確な発言には能代も納得して"フリ"だけに収まっていたのだ。
だからこそ、全てが"上辺"の範囲。
まわりに知らしめるだけの存在。
いたずらに触れるものも、スキンシップのひとつでしかない。
あくまでも周りを牽制する動きでしかなかったことは、能代の人間性を高めていた。
軽い存在ではないこと。
その違いが分かるからこそ、鳥海は軽はずみな動きをとる森吉を嫌ったのかもしれない。

恥ずかしさが鳥海の全身を覆っていく。
尻軽な存在にされたくはないと、せめて白神にだけは分かってほしい焦り。
戸惑う鳥海を分かるのか、白神はあどけなさを見せないいつもと逆の雰囲気で、鳥海を包んでくれた。
「八竜さんにはだまっていてあげるから。能代さんにもこれ以上、イタズラしないでって言っておいてあげるから」
それは、撮られた写真を公開せず、消してほしいという願いだった。
あの能代を掌で操れるような態度にも感心する。

「いっぱい、怖いこと、あるんだって」と、白神は教えられたものを語ってくれた。
「下半身欲求の塊の人間に囲まれて逃げ場がなくなったりとか、それこそ、もう絶対に見られたくない恥ずかしい証拠写真とられて、いつまでも脅されたりとか。能代さん、『連れてきた以上、責任がある』って、無責任にしなかった。イタズラと本気の違い、分かっている人だよ。鳥海が傷つかないって分かっているから、たぶん写真、撮ったんだ」

笑って許される範囲にあること…。
鳥海にも本気さがないと分かって、遊びのひとつに収まっていることも。

変なムシがつかなかったことには感謝するけれど。
やっぱり森吉とは本気になれない現実を突きつけられる。
一時期の気の迷い…とはこのことなのだろう。
白神がはっきりと自分の立場を告げてきたことで、自分も冷静になれた。

「僕、八竜さんに、後ろめたいこと、いやだもん」
潔い発言は、純粋さを教えてくれる。同時に、健気な態度は今まで以上の好感を与えていた。
鳥海は考えさせられていた…。

遊び人のように捉えられるのは嫌だ。

民宿に戻ると、両手両足を投げ出した能代の姿があった。
ありのままの隠さない姿が自然で、ホッとさせられる。
"友達"以上に変わらないこと。
「夜って鍋だしてくれるって言ってたな」
「鍋ぇえ?!この暑いのにっ?!」
能代のつぶやきに目を剥いた森吉が異議をとなえる。
それでもメニューは民宿側に委ねられていた。
なにもかもが、受け入れられる範囲にある。
束の間の心の隙間も、彷徨った戸惑いも肯定してくれる安堵。
赦されないことなのかもしれないけれど、赦してくれるのは、『夏』というものや『海』という、翻弄してくれる波のマジックなのかもしれない。

鳥海はもうこれ以上、森吉の雰囲気には飲まれない、と心に刻んだ。
分かったのか、能代はフッと口角を上げたし、森吉は『ダメかぁ』と残念そうな表情を見せた。
危険な香りが霧散するところも、慣れた森吉たちのようだ。

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暇な時間が終わった…。
しかもまた間違えたΣ(T▽T;)


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コメント

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きえちん…(゚∀゚ ;)タラー
コメントけいったん | URL | 2013-08-13-Tue 17:29 [編集]
更新が増えれば 読めて 嬉しいけど、たくさん読めて 嬉しいけど、
一日3回は、勿体ないよ~(o^^o)ふふっ♪

体を熱くする夏、どこまでも広がる青い空、どこまでも深い碧い海、となれば…
ひとときの 過ちも あり?だよね~(*`艸´)ウシシシ

今回 森吉では 鳥海の相手では無いと言う事で 此処で THE・END♪

鳥海と違って 雰囲気に流されずに 八竜に一途な白神を 見直したよ!!(*・・)"ヾ('▽'*)良い子♪良い子♪
Re: きえちん…(゚∀゚ ;)タラー
コメントたつみきえ | URL | 2013-08-13-Tue 17:44 [編集]
けいったんさま
もうお恥ずかしいとは、このこと…。

> 更新が増えれば 読めて 嬉しいけど、たくさん読めて 嬉しいけど、
> 一日3回は、勿体ないよ~(o^^o)ふふっ♪

精一杯書いて、明日のためが、何故に、こぼれたのっ???
もう、どう仕様もない状態です(ノд-。)クスン

> 体を熱くする夏、どこまでも広がる青い空、どこまでも深い碧い海、となれば…
> ひとときの 過ちも あり?だよね~(*`艸´)ウシシシ
>
> 今回 森吉では 鳥海の相手では無いと言う事で 此処で THE・END♪
>
> 鳥海と違って 雰囲気に流されずに 八竜に一途な白神を 見直したよ!!(*・・)"ヾ('▽'*)良い子♪良い子♪

束の間の夢の時でしたね。
End End♪
白神、何気に強かったです。
鳥海も軌道にもどしてくれました。
もちろん、能代の振る舞いもあったのですけれど。
この人、良いことと悪いことの判断出来ましたね(←)

もうこれで安心して同じ部屋でもねむれる~よぉ

明日はないです…。
コメントありがとうございました。
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