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BLの丘
木漏れ日 47
2013-09-09-Mon  CATEGORY: 木漏れ日
鳥海の突っぱねた腕を拒むように、更に強い力で瀬見に引き寄せられる。
「ごめん…。そんな思いをさせてたんだ…」
激しく後悔を含んだ声音だった。
「鳥海にはもっと近くに寄ってきてほしかった。自分のエゴだけど、少しでも特別な存在として刻み込みたかったんだ。そんなことを出来るのは俺だけだと自分の地位を上げたかった…」

浸食するように近づいてきた人を思い返す。
何もかもが故意的に繰り返されてきたのだと、改めて知らされる。
その手管に溺れていった。
どれだけ、瀬見の言う『特別な存在』に収まりたかったことだろう。
優しくされて、たくさん気遣われて、『鳥海には俺がいるだろう』と囁かれたお化け屋敷。
心底安心して自分をさらけ出すことができた。
瀬見は一言も鳥海を罵ったりすることはない。
八竜にけなされてばかりだったから、余計にその優しさが身に沁み込んできた。
藤里が当たり前のように家の中に収まるようになって、孤独を抱えるようになった。
痛い胸が、もっと軋みを立てる。
…信じていいのだろうか…。
瀬見のそばにいたいのだと、身体の奥から求めてしまう。

「瀬見さん…」
「不安にさせてたんだな…。八竜に止められて、俺自身、どうこの先に踏み込んでいけばいいのか模索していた」
鳥海は、え?とその言葉の意味を追う。
瀬見は隠すことをしなかった。
苦々しいと、それも隠さずに思いを吐露した。
「遊園地の帰り、鳥海たちが寝てしまった時に、八竜に釘を刺されたんだ。俺の過去って、八竜は良く知るからね。兄としてそばをうろつかれることが許せなかったんだろう。『鳥海に手を出すことだけはダメだ』って言われた。それからの空白の期間が、鳥海にとっては、…その、彼と同じ態度に捉えられても不思議じゃない。でも、どうしたら八竜に認めさせることができるか、そんなことばかり考えてた。昨日鳥海が『飲みに出た』って聞かされて、八竜なりの"許し"なんだと思うことができた。『土下座しにこい』って。『もう、待たせるな』って…」
「な…っ?!」
鳥海は瞠目してしまう。
八竜と瀬見の間に、そんな会話があったとはとても思えない。
瀬見は苦笑しながら、当然だと自身を戒めていた。
「躊躇っていた期間、鳥海が何を思うのか、八竜は分かっていたんだろうな。それこそ、俺の自惚れでしかないけれど。鳥海自身から拒絶されたなら諦めるか…。でもたぶん、俺は追うと思うよ。今度こそ本気で、鳥海を手に入れたいと思うし、その手段は選ばない。鳥海にしてみたらみっともない俺を見せることになるのかもしれないけれど、それほどまでして欲しいんだ。他の誰にも委ねたくない」

激しいほどの情熱を肌越しに感じる。
森吉とは違う存在なのだと懸命に訴えてくる姿に、涙がこぼれそうになる。
「鳥海が俺を信じてくれるようになるまで、俺は何をすればいい?指一本触れずに待てと言われたら待つ。鳥海を傷つけないと誓うよ。自棄になられて、他の人間に身を任せるようなことだけは避けたい。俺は鳥海のそばにいると、宣誓できる」
「瀬見、さん…」
混み上がってくる思いは、安堵だろう。
今まで以上に安心感に包まれるのは、誰よりも自分がその言葉を信じている証拠でもあった。
居心地の良い腕の中が、自分のものになる…。

そう思うと、鳥海の方から抱きついた。
今度困惑を浮かべたのは瀬見だ。
「鳥海?」
「瀬見さんのこと、考えると胸が苦しい…。森吉に教えられたようで、本当に悲しかったんだ…」
「ごめん。絶対にそんなことはないから。遊びでも同情でもなんでもない。鳥海だけが俺を翻弄する…」
「このまま、大人しくされたら、オレ、もっと不安になるよ…」
「キスしてもいいってこと?」
「キスより、もっとかも…」
恥ずかしながらも鳥海が告げると、瀬見が神妙な面持ちからフッと笑ってきた。
「危険な仔猫ちゃんだ…」

子供扱いをされて、思わず不貞腐れる。
自分は瀬見ほど世渡りは巧くない。
駆け引きだってできない。
感情をそのまま吐き出すだけ。
それを瀬見は、嬉しいという。
そのままでいろと告げられた。

軽く唇が、鳥海のそれを掠めた。
また腕に力が入れられて、背中をシーツに押し付けられた鳥海の上に、瀬見が跨ってくる。
「おしゃべりをもっとしていたいところだけれど…」
それ以上、余計なことを耳にしたくない予防線か。
「鳥海…。好きだ…」
耳朶を食まれた。
いつも以上に掠れている声音のような気がするのは、瀬見から自信が失われているせいなのだろうか。
ゾクッと身体が戦慄く。
強く抱きしめられた腕からそっと力が抜けていく。
まるで腫れ物でも扱うように、舌先が鳥海の精神的な傷を舐めた。
「欲しい…」と瀬見の全身が訴えた。
「欲しい…」と鳥海の体が安堵を求めていた。

啄ばむようなくちづけが繰り返されて。
優しい眼差しが降りおりて鳥海を包んでくれる。
「鳥海…」
静かに名前を呼ばれて、鳥海も声音の気持ち良さに震えた。
守られているのだとまた教えられる。
「あ…、瀬見さん…」
返す鳥海の声も艶に覆われた。
「愛してる…」
何かを確かめるように、瀬見が動き出した。
長いほどのくちづけが続いた。
手のひらが何度も鳥海の髪を梳き、ここにいるのだと確認するように覗きこまれる。
程好いタイミングで唇を離され、そのたびに鳥海は深く息を吸い込んだ。
全身から力が抜けていく。

「鳥海の全てを教えて…」
瀬見が鳥海の衣類に手をかけた。
この先訪れることは、漠然としていたとしても分かっている。
ただ、瀬見に委ねることしかできない。
それが、瀬見を信じた証拠だと伝えるように…。

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コメント

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゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚
コメントけいったん | URL | 2013-09-09-Mon 08:35 [編集]
瀬見の 何も隠さない事実を告げtる言葉には、 これ以上の誤解を生みたくない気持ちからでしょう
それだけ 自分にとっての鳥海は、大事な愛おしい存在と伝えたいんだよね!

言いたい事は 言った!聞きたい事は 聞いた!
だから もう言葉では無く …

「R」 何だか とっても 久し振りな気がするんだけど~~
だからかしら?ハズカシー (*/。\*)
Re: ゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-09-Mon 16:52 [編集]
けいったんさま こんにちは~。

> 瀬見の 何も隠さない事実を告げる言葉には、 これ以上の誤解を生みたくない気持ちからでしょう
> それだけ 自分にとっての鳥海は、大事な愛おしい存在と伝えたいんだよね!

お互い、誤解と謎がいっぱいありましたからね。
瀬見は必死になっているのでしょう。
良いも悪いも全部打ち明けていきます。

> 言いたい事は 言った!聞きたい事は 聞いた!
> だから もう言葉では無く …
>
> 「R」 何だか とっても 久し振りな気がするんだけど~~
> だからかしら?ハズカシー (*/。\*)

ほんと、久し振り~。
脱がせたことはあっても、発展はしなかったからな~。
実に50話近くになってようやく…(前置きが長すぎだよ…って感じです)
書けるかな…という不安を抱えつつ…。

コメントありがとうございました。
やっぱり
コメントちー | URL | 2013-09-09-Mon 21:23 [編集]
なんだよー、もう、次の段階なの?
鳥海、拒め!やっぱり無理~とか言いなさい。
にぃ、呼んでこようか?←藤里くんに叱られる

師匠じゃないけど、恥ずかしい。
なんだ、この気持ちは・・・


「しくしくしくしく」
「あー、もう泣かないのっ!」
「だって・・・」
「鳥海だって、大人になるんだよ?」
「やっぱり、瀬見んとこ行って来るわ」
「行ったらもう一緒に寝ない」

どこも、嫁が強いようです(笑)
Re: やっぱり
コメントたつみきえ | URL | 2013-09-09-Mon 22:00 [編集]
ちーさま こんばんは。

> なんだよー、もう、次の段階なの?
> 鳥海、拒め!やっぱり無理~とか言いなさい。
> にぃ、呼んでこようか?←藤里くんに叱られる

だってそろそろ進めないといつまでたっても最終回がこないじゃないですか~。
どれだけ皆様をお待たせしているのか…。
できればあと数話で終わりにしたいところだけれど、うーん。
60話くらいで切り上げられるかな(←願望)

> 師匠じゃないけど、恥ずかしい。
> なんだ、この気持ちは・・・

穢れを知らない仔猫のままだったからじゃないですかね。
いきなり成長しちゃった、っていうか。

> 「しくしくしくしく」
> 「あー、もう泣かないのっ!」
> 「だって・・・」
> 「鳥海だって、大人になるんだよ?」
> 「やっぱり、瀬見んとこ行って来るわ」
> 「行ったらもう一緒に寝ない」
>
> どこも、嫁が強いようです(笑)

つか、にぃ、グズグズじゃない?
娘を嫁に出した父親かってーの。
相手がどうこうよりも、弟が離れて行っちゃうことが受け入れられないんだ(笑)
散々酷い扱いをしていたくせに。(←好きなこを構うガキ大将だね)

SSでこっちのRも書こうかなと思ったけど、ちーさまが書いてくれるからいっかー。

コメントありがとうございました。
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