間違いなどなかったと言って信じてくれるのだろうか…。
夜明け前の数時間は英人の記憶も曖昧なのではっきりとしたことは言えなかったが、日野が自分の身体に興味を持つとは思っていない。それに衣服は何一つ乱れずに弄られた形跡さえない。嘘など一つもついていないと榛名に信じてほしいのに、明らかに向けられた疑いの目は英人を更に追い込んでいた。
過去にも信じてもらえなかったことがあった。
まだホテルで生活していた頃、昔の学友であった元樹を部屋に入れただけで、榛名は『男を咥えこんだ』と英人の言い分も聞かなかった。
あの時のような屈辱はもうされないとどこかで思ってはいても、信じてもらえないほうがもっと痛みになる。
「そんなことしない…」
「ならば何故俺を拒もうとする?甘え足りないのであれば何故俺に言わない?何故日野などに頼るんだ?」
英人が起した行動の全てが気に入らないと榛名は容赦なく英人の心を突いた。
毎晩電話で話をした。「淋しくないか?」と問われていつも「大丈夫」と答えた。榛名の負担になるのは嫌だったし我が儘ばかり言っていたら嫌われると思っていた。
だが「大丈夫」と答えた裏側で日野に縋りついていた光景を見られたら、返す言葉もない。
故意的に日野を頼ったつもりはなかったが過ぎてみれば認めざるを得ないし、榛名にしてみれば英人が甘えたと捉えられる状況で納得いかないはずだ。
肌蹴た薄い胸の上を冷たい指先が触れ、スッと撫でて首筋に辿り着く。そのまま顎を指先で上げさせられて、正面に榛名の辛そうな瞳を見た。
戸惑いがちにどことなく視線を合わせることを拒んでいたが、こうしてまともに顔色を伺ってみれば、二人が離れていた間、淋しかったのは英人だけではなかったのだとその瞳が物語っているようだった。
「ごめ…」
「謝るということは少しでも気があったということか?」
「そんな…っ」
「俺を安心させてくれ。どれだけ距離があっても英人の気持ちは俺から離れないと…。自信を持って帰れる場所が欲しい」
薄い唇が英人の唇を塞ぎ、次の言葉を告がせなかった。
ズキンと胸の奥が痛む。
榛名から囁かれた言葉に英人の思考は止まってしまった。
…千城が帰る場所…?
榛名が自信をなくすことなどないと思っていた。いつだって余裕綽々としていて英人を掌で玩ぶような落ち着きがあった。
それなのに今は、日野と共にいたというだけで余裕の欠片もない態度で英人を責め立てている。
榛名の苛立ちは英人だけでなく、自分自身にも向けられているようで、焦る様な口付けに余裕のなさがうかがえた。
窄められた舌先が伸びて英人の歯列を割り舌を絡め取った。これまで抑えていた想いが伝わってくるようだった。
榛名はこの場所で、本気で英人をどうこうしたかったわけではないのだとなんとなく感じた。全ては嫉妬からくるもので、真っ先に榛名を頼らなかったことを怒っているだけなのだと理解できた。
言葉を返そうとしても隙間を作ることすら許されず、少しでも口を開けば空気を吸う前に全てを覆い尽くされ、榛名からの吐息を与えられる。
熱く喉を焦がすような熱風とトロリとした唾液が絡まり合い下流にある英人の口腔に流れ込んで英人を犯した。
すでに露わになった肩から脇、背骨や腰までを撫でられてから小さな胸の突起をつままれた。同時に角度を変えてしまった英人の中心に榛名のモノが擦りつけられた。
榛名はまだ熱は持っていないのに、英人だけが敏感になり布越しにこする刺激に足ががくがくしてくる。
長い口付けを与えられ、ようやく離してもらえた頃には榛名の腕に縋らなければ立っていられないくらいになっていた。
「今日は全て英人から望め。おまえの言うとおりに何でもしてやる」
榛名の動きが止まった。まるで英人がどれだけ榛名を求めているのかを計るかのように、指先の一つも榛名は動かさなかった。
中途半端に与えられた刺激は英人の身体中を熱いもので覆っている。
流れる血液の一滴までもが榛名を欲しているのに、榛名は寸前で手放してしまった。
かつての自分ではきっと言えたであろう言葉も、榛名の前では口は硬くなる一方だった。
何もかもが榛名の手によって作り変えられている。厭らしい言葉を簡単に口にできないように愛され続けてきた。
普段でも榛名は自分からは望まない。わざと英人を煽り、英人から求めさせる。それを考えれば慣れたことのはずなのに、「欲しい」と言うことにとても抵抗が生まれた。まだ昂ぶりきっていないからだろうか…。
どれだけ淫乱な体なのかと思われそうで、今更なのだとは分かっていても改めて言葉にする勇気などない…。
できない…と強く首を振ったが榛名は許してくれなかった。絶対に英人の気持など分かりきっているのにわざとこんなことをする榛名が恨めしくなる。
どれだけの時間を置いても、榛名は熱を与えた英人の身体に触れる気はないようで、そしてこの場から動かないようで、英人は羞恥の中で葛藤し続けた。
英人にとっては、一言発することがまるで拷問だった。
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夜明け前の数時間は英人の記憶も曖昧なのではっきりとしたことは言えなかったが、日野が自分の身体に興味を持つとは思っていない。それに衣服は何一つ乱れずに弄られた形跡さえない。嘘など一つもついていないと榛名に信じてほしいのに、明らかに向けられた疑いの目は英人を更に追い込んでいた。
過去にも信じてもらえなかったことがあった。
まだホテルで生活していた頃、昔の学友であった元樹を部屋に入れただけで、榛名は『男を咥えこんだ』と英人の言い分も聞かなかった。
あの時のような屈辱はもうされないとどこかで思ってはいても、信じてもらえないほうがもっと痛みになる。
「そんなことしない…」
「ならば何故俺を拒もうとする?甘え足りないのであれば何故俺に言わない?何故日野などに頼るんだ?」
英人が起した行動の全てが気に入らないと榛名は容赦なく英人の心を突いた。
毎晩電話で話をした。「淋しくないか?」と問われていつも「大丈夫」と答えた。榛名の負担になるのは嫌だったし我が儘ばかり言っていたら嫌われると思っていた。
だが「大丈夫」と答えた裏側で日野に縋りついていた光景を見られたら、返す言葉もない。
故意的に日野を頼ったつもりはなかったが過ぎてみれば認めざるを得ないし、榛名にしてみれば英人が甘えたと捉えられる状況で納得いかないはずだ。
肌蹴た薄い胸の上を冷たい指先が触れ、スッと撫でて首筋に辿り着く。そのまま顎を指先で上げさせられて、正面に榛名の辛そうな瞳を見た。
戸惑いがちにどことなく視線を合わせることを拒んでいたが、こうしてまともに顔色を伺ってみれば、二人が離れていた間、淋しかったのは英人だけではなかったのだとその瞳が物語っているようだった。
「ごめ…」
「謝るということは少しでも気があったということか?」
「そんな…っ」
「俺を安心させてくれ。どれだけ距離があっても英人の気持ちは俺から離れないと…。自信を持って帰れる場所が欲しい」
薄い唇が英人の唇を塞ぎ、次の言葉を告がせなかった。
ズキンと胸の奥が痛む。
榛名から囁かれた言葉に英人の思考は止まってしまった。
…千城が帰る場所…?
榛名が自信をなくすことなどないと思っていた。いつだって余裕綽々としていて英人を掌で玩ぶような落ち着きがあった。
それなのに今は、日野と共にいたというだけで余裕の欠片もない態度で英人を責め立てている。
榛名の苛立ちは英人だけでなく、自分自身にも向けられているようで、焦る様な口付けに余裕のなさがうかがえた。
窄められた舌先が伸びて英人の歯列を割り舌を絡め取った。これまで抑えていた想いが伝わってくるようだった。
榛名はこの場所で、本気で英人をどうこうしたかったわけではないのだとなんとなく感じた。全ては嫉妬からくるもので、真っ先に榛名を頼らなかったことを怒っているだけなのだと理解できた。
言葉を返そうとしても隙間を作ることすら許されず、少しでも口を開けば空気を吸う前に全てを覆い尽くされ、榛名からの吐息を与えられる。
熱く喉を焦がすような熱風とトロリとした唾液が絡まり合い下流にある英人の口腔に流れ込んで英人を犯した。
すでに露わになった肩から脇、背骨や腰までを撫でられてから小さな胸の突起をつままれた。同時に角度を変えてしまった英人の中心に榛名のモノが擦りつけられた。
榛名はまだ熱は持っていないのに、英人だけが敏感になり布越しにこする刺激に足ががくがくしてくる。
長い口付けを与えられ、ようやく離してもらえた頃には榛名の腕に縋らなければ立っていられないくらいになっていた。
「今日は全て英人から望め。おまえの言うとおりに何でもしてやる」
榛名の動きが止まった。まるで英人がどれだけ榛名を求めているのかを計るかのように、指先の一つも榛名は動かさなかった。
中途半端に与えられた刺激は英人の身体中を熱いもので覆っている。
流れる血液の一滴までもが榛名を欲しているのに、榛名は寸前で手放してしまった。
かつての自分ではきっと言えたであろう言葉も、榛名の前では口は硬くなる一方だった。
何もかもが榛名の手によって作り変えられている。厭らしい言葉を簡単に口にできないように愛され続けてきた。
普段でも榛名は自分からは望まない。わざと英人を煽り、英人から求めさせる。それを考えれば慣れたことのはずなのに、「欲しい」と言うことにとても抵抗が生まれた。まだ昂ぶりきっていないからだろうか…。
どれだけ淫乱な体なのかと思われそうで、今更なのだとは分かっていても改めて言葉にする勇気などない…。
できない…と強く首を振ったが榛名は許してくれなかった。絶対に英人の気持など分かりきっているのにわざとこんなことをする榛名が恨めしくなる。
どれだけの時間を置いても、榛名は熱を与えた英人の身体に触れる気はないようで、そしてこの場から動かないようで、英人は羞恥の中で葛藤し続けた。
英人にとっては、一言発することがまるで拷問だった。
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英人のこれまでの人生の中で、人に愛されて求められたことがなかったのだから、そんな気持ちに無知だったり鈍かったりしてもしかたがないのでしょうけれど、千城さんからして見れれば恋人から頼りにされない淋しくても大丈夫、平気だと言われて他人には縋っている・・・なって状況を知ってしまったらショックですよね。
一番愛して一番傍にいて英人を幸せにできるのは自分だけだなんて思っていたらなおさらに。
負担になりたくないし余計な心配もさせたくない頼りすぎてはいけないと自重している英人くんの心の内。
お互いが相手を想い大切にしたいと考えているのに、難しいですね。
一番愛して一番傍にいて英人を幸せにできるのは自分だけだなんて思っていたらなおさらに。
負担になりたくないし余計な心配もさせたくない頼りすぎてはいけないと自重している英人くんの心の内。
お互いが相手を想い大切にしたいと考えているのに、難しいですね。
甲斐様
こんにちは。
> 英人のこれまでの人生の中で、人に愛されて求められたことがなかったのだから、そんな気持ちに無知だったり鈍かったりしてもしかたがないのでしょうけれど、千城さんからして見れれば恋人から頼りにされない淋しくても大丈夫、平気だと言われて他人には縋っている・・・なって状況を知ってしまったらショックですよね。
英人としてみれば、なにげなーく過ごした一夜だったのですが、千城にしてみれば嘘をつかれたようで、衝撃は大きかったと思います。
なんだかすれ違う二人になっちゃいました。(もっとすんなりと収まるはずだったのに…)
> 負担になりたくないし余計な心配もさせたくない頼りすぎてはいけないと自重している英人くんの心の内。
きっと千城もどことなく理解しているのだと思います。
ただ素直になってくれない英人にイライラってきているのかなぁ。
英人心情で書いているからイマイチ榛名を描けなくて、私ももどかしいところがあるのですが…。
> お互いが相手を想い大切にしたいと考えているのに、難しいですね。
なかなかうまくいかないように思えますけど、どうにかくっつけていきたいです。
早い完結を望みながら、自分で先延ばしにしている…。
あともうちょっとお付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 英人のこれまでの人生の中で、人に愛されて求められたことがなかったのだから、そんな気持ちに無知だったり鈍かったりしてもしかたがないのでしょうけれど、千城さんからして見れれば恋人から頼りにされない淋しくても大丈夫、平気だと言われて他人には縋っている・・・なって状況を知ってしまったらショックですよね。
英人としてみれば、なにげなーく過ごした一夜だったのですが、千城にしてみれば嘘をつかれたようで、衝撃は大きかったと思います。
なんだかすれ違う二人になっちゃいました。(もっとすんなりと収まるはずだったのに…)
> 負担になりたくないし余計な心配もさせたくない頼りすぎてはいけないと自重している英人くんの心の内。
きっと千城もどことなく理解しているのだと思います。
ただ素直になってくれない英人にイライラってきているのかなぁ。
英人心情で書いているからイマイチ榛名を描けなくて、私ももどかしいところがあるのですが…。
> お互いが相手を想い大切にしたいと考えているのに、難しいですね。
なかなかうまくいかないように思えますけど、どうにかくっつけていきたいです。
早い完結を望みながら、自分で先延ばしにしている…。
あともうちょっとお付き合いくださいませ。
コメントありがとうございました。
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