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BLの丘
【バレンタインコラボ企画】 4
2010-02-11-Thu  CATEGORY: コラボレーション
千城の元に結城から電話が入ったのはそれから数日後のことだった。英人のビルについて依頼した件の話は、とりあえず警備会社の待機所としての利用が決まったという。結城が何やら交渉したらしいが、その点については結城に全面的に任せることにして千城は口を出すのをやめた。警備会社の人間であればそう心配することはないだろう。ビルのセキュリティ対策としても使えそうだ。
英人に事前に報告すればボディガードを付けられたようで気に入らないだろうから、全ての準備が整うまで黙っていればいいと思った。

結城からの連絡で千城が驚かされたのは、英人から聞かされていたバレンタインデーのディナーに結城と薫も同席するということだった。
結城は薫から「せっかくだから一緒にディナーでもどうか、と英人に誘われた」と聞いたという。
「お誘い頂きましてありがとうございます」というお礼の電話だった。
確かに結城とは「いつか4人で食事でも…」と声をかけたが全くの別件だとはすぐに判断がつく。
もちろんこんなことで取り乱すような千城ではなく、結城から知る範囲のことを相槌を入れながら事細かに詳細を聞いた。
結城の語る内容には、榛名と取引もある以上「話を受けてしまった」と薫が何らかの理由を述べたような雰囲気がある。そう捉えるように仕向けたのだろうとは想像できたが、何の疑問も持たずに礼だけを述べる結城の声に、一瞬にして訝しさが浮かんだ。
単に食事をするだけであれば英人が何もこそこそと楯山と何かを話す必要などない。どちらの二人組にも大事な夜だろう。
色々な要素を集めればきっとこれには薫も一枚噛んでいるし、まだ裏があるのだろうとは容易く想像できる。
薫には結城が御礼の言葉を入れたくらいでは千城が何も気付くことはないと危機意識もなかったのか…。
どうせ英人のことだ。薫が結城に話してしまうとも思っていなかっただろうし、まさか結城と千城がこんな話をしているとも予想していないはずだ。
まだ何かある…と踏んだ千城はフッと笑みを浮かべた。

結城は薫が誘われ断れなくなり引き受けてしまった…ただの食事だけ…と解釈しているようなので気付かせるのもどうかと思ったが、どうせなら結城と二人でサプライズを用意した方が結城も楽しめるだろう。
「本当に単に食事だけと思っていますか?」
『え?』
千城の問いかけには驚いたような結城の声が返ってきた。
千城は自分の聞いていたことや感じていることを結城に話してみると感の良い彼も「確かに…」と思いを巡らせているようだった。
結城は千城の提案に乗った。隠れて何かを企画することは結城も嫌いではなさそうだ。
「それでは彼らにはこのまま黙っておいて時を過ごしてもらいましょう。問い詰めるようなことをしない方が彼らのためでしょうし」
『そうですね。あの子たちに何をしてもらえるのか楽しみですよ』
自分たちが内緒の行動を起こしたところで、きっと結城も薫に事前に悟られるようなヘマはしないだろう。
どんなものを用意するか考える時間をもらって千城は受話器を置いた。
当日の夜が楽しみだ…と仕事中ながらも鋭いはずの目尻が下がっていることに本人も気付いていない。

本来の業務以外の仕事を押し付けられることは稀にあれど、ここまで馬鹿馬鹿しいものはなかった…と千城の秘書である野崎は溜め息を零した。
「2月14日の夜に飛行船でのクルーズを予約しておけ」と千城に言われたのは、当日まで1週間と間がない日のことで…。
千城が何か楽しそうに誰かと電話で会話をしているのは数度見かけた。てっきり相手は英人だと思っていたが聞き耳を立てれば取引先の役員だと分かる。
プライベートが似たような状況にあるのだとは話しぶりから想像できたが、一度だけ社に訪れた結城との会話を漏れ聞いた時、業務の話などそっちのけで、隠す意識がないのかお互いに惚気合っている姿には一つの言葉も出なかった。
「英人が喜んでくれればそれでいいんですよ」
「ええ、私も薫君が楽しんでくれれば…」

まさに似た者同士だ…。
先程まで社長室にあったピリピリした空気など蹴散らされ、飲み物を届けに来た女性秘書までが穏やかな笑顔を見せる千城に絶句していた。
バレンタインデーに何かを企てているらしいそれぞれの恋人に、千城たちからも何かを仕掛けてやろうと考えることを悪いこととは思わないが、千城が用意した『飛行船クルーズ』のパンフレットに二つ返事で答える結城もどうなのか…。
しかも千城が話をしたのは”この機体”ということだけで、クルーズ内容は全くのオリジナルだ。当然破格の値段である。
薫という人物はともかく、英人の性格を考えれば絵でも送るか何かを作るかだろうと野崎は予想していた。結局何をどうしたって千城の望むものを手に入れるためには、最終的には千城の金を使うしかない英人にとって物を買うとは思えないし、使用する金額など高が知れるものである。二人で計画中といえば後者だろう。それも程度の限られた作品…(←いいすぎだろ)。
恋人と張り合う規模が違いすぎる。
…馬鹿馬鹿しい…。野崎はもう一度心の中で呟いた。



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ひさしぶりに野崎も出演してみました。野崎にもHappyなバレンタインデーが訪れますように…(他人事)


妄想スパイラル SKY様編


 その週の木曜日、外回りに出ると言って会社を出て、その足で英人から聞いたフランス料理店に向かった。バレンタイン当日は日曜なのでレストランの厨房は使わせてもらえないと聞いて少しがっかりしたけれど、それまでの間は料理長自らが教えてくれると聞いてはやる気も満々だ。料理長は楯山さんという人で、本場のフランスで修業を積んできたすごい人らしい。オープン前の洒落た木製のドアを開けて入ると、英人が既に来て中で待っていた。
「あ、来た来た、待ってたよっ」
 見ると可愛らしい花柄のエプロン姿だ。俺も一応持ってはきたけれど……結城さんが以前買ってきたピンクのひらひらなエプロン(それしか持ってない)だからかなり気恥ずかしいが仕方がない。とりあえずコートとスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの袖をまくってその上からエプロンをした。
「ね……それ、結城さんの趣味?」
「……うっ……」
 英人にズバリと指摘されてしまった。
「とっても似合ってる!」
「……そ、そうかな?」
 褒められてもあんまり嬉しくないんだけど……。
「俺のは千城のお母さんに買ってもらったんだ。百合子さんっていって可愛いものとかが大好きな人でねっ……」
 英人の話を聞いていると、どうも百合子さんとやらは英人が可愛くてしょうがないという感じだ。千城さんにはきっとできなかったこと、例えば着せかえ人形みたいにいろんな服をとっかえひっかえ着せてみたりとか、すんごい可愛い格好だとか……を英人にさせてみたいという感じがありありと窺える。元々可愛い英人だからきっと何を着させても可愛いだろうけど。そんなことを考えていたら……花柄のエプロンをした千城さんが頭に浮かんできて噴きそうになってしまった。

 厨房にはまだ若い料理人たちもたくさんいて、それぞれが持ち場で山のようなじゃがいもを剥いていたり、大きな寸胴鍋の中身を混ぜていたり、魚を下ろしていたりと忙しそうに立ち働いていた。俺たちはその邪魔にならない場所で楯山さんに教わりながらケーキ作りにとりかかった。楯山さんは時々若い人たちに指示を出しながら、ほとんどつきっきりで教えてくれた。実は今回、結城さんがあまり甘いものが好きではないということもあって、全部チョコにするのはやめて、スポンジはコーヒーを混ぜたモカスポンジにすることにした。ラム酒を効かせた、ちょっと大人の味のチョコケーキ(の予定)だ。
 俺と英人はああだのこうだの言いながらもなんとかスポンジを作った。1日置いてからの方がスライスしやすくなるとか、モカスポンジは今のような寒い時期は湯煎でしっかり泡立ててとか、オーブンの種類によって焼き時間が違うから注意して、などなど細かいことを楯山さんに教わりつつ、本番では榛名本邸で作ることになると聞かされた。
 榛名本邸……なんだか敷居が高そうだし俺なんかが行って、ちゃんと中に入れてもらえるんだろうか……。かなり不安を覚えつつもその日のケーキ作りを終えた。

 会社に戻ると、同僚たちが「誰だろ?なんか甘い匂いがする~」と騒いでいたけど……勿論知らん顔で仕事をした。


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コメント

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コメントきえ | URL | 2010-02-11-Thu 12:31 [編集]
MO様
こんにちは、

>英人の秘密の行動なんて、千城は何でもお見通しですね。英人にだったら、どんなにお金を使っても構わない千城でしょうが、破格の値段の「飛行船クルーズ」って?野崎も、そうとうストレスたまってそうですが、日野も神戸も、今 お取り込み中ですからね~(苦笑)

神戸も千城も、全部お見通しの模様です。
年上の余裕か?!
野崎も相当たまっているんでしょうね。
いつかどこかで発散させてあげたいです。
バレンタインは間に合いそうにないからホワイトデーとか?!
コメントありがとうございました。
マル秘作戦
コメント甲斐 | URL | 2010-02-11-Thu 13:52 [編集]
さすが、お子様達の行動なんてお見通し。
その上を行く大人たちのマル秘作戦、静に潜行中ですね。

野崎さん絶対ヤキモチ焼いてる。
自覚ないと思うけど、、、
認めないと思うけど、、、
彼女(カレシ?)いない暦=年齢(きっと、たぶん)のかわいそうな人生を送っている野崎氏に幸あれ。

  野崎さん、恋はいいよ~
   人生変わるよ~
    世界が色づいてくるよ♪

※ 恋を知って変わっていく野崎氏も見てみたい気がする
Re: マル秘作戦
コメントきえ | URL | 2010-02-11-Thu 16:31 [編集]
甲斐様
こんにちは。
連コメ頂いていたようで、気付かずすみません。

> さすが、お子様達の行動なんてお見通し。
> その上を行く大人たちのマル秘作戦、静に潜行中ですね。

お見通しな「大人」です。
隠れて何かをやっているつもりの英人と薫君なんですけどね~。
そんな仕草も可愛いとしか映っていない二人です。
思いっきり鼻の下を伸ばしている「大人」です。

> 野崎さん絶対ヤキモチ焼いてる。
> 自覚ないと思うけど、、、
> 認めないと思うけど、、、
> 彼女(カレシ?)いない暦=年齢(きっと、たぶん)のかわいそうな人生を送っている野崎氏に幸あれ。
>
>   野崎さん、恋はいいよ~
>    人生変わるよ~
>     世界が色づいてくるよ♪
>
> ※ 恋を知って変わっていく野崎氏も見てみたい気がする

なんか、リクエストもらったっぽいっ?!
やがてどこかの番組に登場する野崎です。
(すっごいお怒りを買いそうなシチュなのですが…。)
寒い夜にはあったかいシチューとか食べてほっこり(そのシチュじゃないの…)
野崎、絶対に可哀想な人生を送っていますよね。
ずーっと榛名家につぎ込んじゃってさ…。

>彼女(カレシ?)いない暦=年齢(きっと、たぶん)
野崎「そんな淋しいことを言わないでください。」
…っていうか、その前に名前くらい上げたい野崎。(いまだに名無しなんで…)

コメントありがとうございました。
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