一般の客室を見せてもらうという我が儘を付け加えながら本館の隣に建てられた新館へと向かった。
宴会を一切受け付けないという旅館だけに、どこにいても静けさがある。
支配人自ら案内された旅館内に雅臣は興味津々だったが、鹿沼はどうでも良さそうな雰囲気をにじませていた。
大浴場に着けば、脱衣所には数人の衣類が入った籠が見受けられたが、混んでいる様子でもなかった。
鹿沼は声に出して言いはしないものの、この旅館にはすでに何度か来ているようだ。
100人は入れるだろうと思われる広々とした檜の内風呂は渓流が見渡せるように窓側に配置され、渓流がすぐそばを流れる露天の岩風呂に出れば水音が響く。ジャグジーやサウナまであり風呂の設備は整っていた。
「やっぱり広いお風呂って気持ちいいな~」
「思ったより人が少なくて良かったですよ。しかもこの湯気で何も見えないし」
浴室内はもこもこと上がる湯気で真っ白く覆われていた。
近くに人がいないのをいいことにぱしゃぱしゃと水遊びをするような雅臣の姿がある。
いきなり露天風呂に行く勇気もなく内風呂で温まっていた雅臣だが、「とっとと目的地に行きましょ」と長居をしたくない鹿沼に引っ張られて雪の降る中の露天風呂に連れ出された。
「さむっ!!」
「ほら、早く浸かってください」
屋根もなかった。
降ってくる雪を避けるように笠が用意されていてそれを頭に乗せる。熱い湯は雪によって温度調節されているようなものだ。
さすがにこの寒さに外に出る客もいないのか、露天風呂は人影もなく静かだった。
岩風呂も広く、幾つかの岩影があった。
もっとも今の季節、湯気でもうもうとしていて視界もきかないから、混浴でもできそうなくらいだ。
あまりにも冷えた冷気の為に、雅臣は首までどっぷりと浸かっていた。
すぐそばを流れる清流の音が聞こえてくるが、ライトアップされた川岸は雪とつららで覆われている。
「来て良かったですか?」
「すごい。最高。やっぱり大浴場って来るべきだよ」
「雅臣さんの我が儘を叶えてあげたんだからね…」
雅臣が満足そうに歓喜の声を上げれば、何か御褒美でも欲しいといったような鹿沼の姿があった。
鹿沼の腿の上に乗せられ、少し寝そべるような体勢になって、覆いかぶさってくる鹿沼の顔がある。
岩影にも隠れ、湯気というベールにも覆われて、人目にはつかないだろうという安心感が雅臣の中にもあった。
幾度も角度を変えて差し込まれる舌先に、温泉とはちがった逆上せが雅臣を襲ってくる。
パシャッという突然響いた水音にハッと現実に戻されて雅臣は鹿沼から離れようとした。
誰か、新しい客が入ってきたのだろう。
慌てた雅臣に「大丈夫ですよ。この状況では見えないから」と小さな声で諭される。
確かに親しい仲の人間が傍に寄って浸かっていることは不自然ではない。
それでも先程までの行為は雅臣の中に羞恥心を生み出した。
「雅臣さんが来たいって言ったんですよ」
「でもこんなことするなんて…」
「こういうのもスリルがあっていいでしょ♪」
「あほっ」
気を休めるために温泉に浸かっているのに、緊張してどうするのだ…。
鹿沼は雅臣の身体を隣に下ろして、いかにも自然体を作り上げたが、湯船の中ではわさわさと指が雅臣の肌を撫でている。
「ちょっと…」
「しっ。声を上げたら不審がられますよ」
傍で囁いているような声は渓流の流れによって打ち消されてしまう。
鹿沼の触れ方は絶妙な位置を擦っていて、ビクンと反応するのを雅臣は止められなかった。
「ね…」
…ダメだ…、このままではここで身体が昂ってしまう…。
肌を隠すものがない風呂場で、勃ちあがった性器など見られた時には『変態』扱いされかねない。
全て分かったように鹿沼の手は動きを止めず、それどころか雅臣の身体を抱えなおして頬をくっつけた。
「りゅ…た…」
これ以上の行為をやめてくれと訴えるように上目遣いで見上げれば、「仕方ないですね」と静かに笑った鹿沼がいた。
「部屋に戻ったら覚悟してくださいよ」
この場で晴らせない鬱憤があったように鹿沼は抑え込んだ笑みを浮かべた。
どんな覚悟をしろというのだろうか…。
まだ温まり切っていないはずの身体がすでに火照っている。
有名な露天岩風呂を堪能する気分は、雅臣の中からすでに消えていた。
「部屋に戻る…」
甘えたような雅臣の呟きに鹿沼がニッコリと笑った。
「また雪見酒をしましょうね」
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宴会を一切受け付けないという旅館だけに、どこにいても静けさがある。
支配人自ら案内された旅館内に雅臣は興味津々だったが、鹿沼はどうでも良さそうな雰囲気をにじませていた。
大浴場に着けば、脱衣所には数人の衣類が入った籠が見受けられたが、混んでいる様子でもなかった。
鹿沼は声に出して言いはしないものの、この旅館にはすでに何度か来ているようだ。
100人は入れるだろうと思われる広々とした檜の内風呂は渓流が見渡せるように窓側に配置され、渓流がすぐそばを流れる露天の岩風呂に出れば水音が響く。ジャグジーやサウナまであり風呂の設備は整っていた。
「やっぱり広いお風呂って気持ちいいな~」
「思ったより人が少なくて良かったですよ。しかもこの湯気で何も見えないし」
浴室内はもこもこと上がる湯気で真っ白く覆われていた。
近くに人がいないのをいいことにぱしゃぱしゃと水遊びをするような雅臣の姿がある。
いきなり露天風呂に行く勇気もなく内風呂で温まっていた雅臣だが、「とっとと目的地に行きましょ」と長居をしたくない鹿沼に引っ張られて雪の降る中の露天風呂に連れ出された。
「さむっ!!」
「ほら、早く浸かってください」
屋根もなかった。
降ってくる雪を避けるように笠が用意されていてそれを頭に乗せる。熱い湯は雪によって温度調節されているようなものだ。
さすがにこの寒さに外に出る客もいないのか、露天風呂は人影もなく静かだった。
岩風呂も広く、幾つかの岩影があった。
もっとも今の季節、湯気でもうもうとしていて視界もきかないから、混浴でもできそうなくらいだ。
あまりにも冷えた冷気の為に、雅臣は首までどっぷりと浸かっていた。
すぐそばを流れる清流の音が聞こえてくるが、ライトアップされた川岸は雪とつららで覆われている。
「来て良かったですか?」
「すごい。最高。やっぱり大浴場って来るべきだよ」
「雅臣さんの我が儘を叶えてあげたんだからね…」
雅臣が満足そうに歓喜の声を上げれば、何か御褒美でも欲しいといったような鹿沼の姿があった。
鹿沼の腿の上に乗せられ、少し寝そべるような体勢になって、覆いかぶさってくる鹿沼の顔がある。
岩影にも隠れ、湯気というベールにも覆われて、人目にはつかないだろうという安心感が雅臣の中にもあった。
幾度も角度を変えて差し込まれる舌先に、温泉とはちがった逆上せが雅臣を襲ってくる。
パシャッという突然響いた水音にハッと現実に戻されて雅臣は鹿沼から離れようとした。
誰か、新しい客が入ってきたのだろう。
慌てた雅臣に「大丈夫ですよ。この状況では見えないから」と小さな声で諭される。
確かに親しい仲の人間が傍に寄って浸かっていることは不自然ではない。
それでも先程までの行為は雅臣の中に羞恥心を生み出した。
「雅臣さんが来たいって言ったんですよ」
「でもこんなことするなんて…」
「こういうのもスリルがあっていいでしょ♪」
「あほっ」
気を休めるために温泉に浸かっているのに、緊張してどうするのだ…。
鹿沼は雅臣の身体を隣に下ろして、いかにも自然体を作り上げたが、湯船の中ではわさわさと指が雅臣の肌を撫でている。
「ちょっと…」
「しっ。声を上げたら不審がられますよ」
傍で囁いているような声は渓流の流れによって打ち消されてしまう。
鹿沼の触れ方は絶妙な位置を擦っていて、ビクンと反応するのを雅臣は止められなかった。
「ね…」
…ダメだ…、このままではここで身体が昂ってしまう…。
肌を隠すものがない風呂場で、勃ちあがった性器など見られた時には『変態』扱いされかねない。
全て分かったように鹿沼の手は動きを止めず、それどころか雅臣の身体を抱えなおして頬をくっつけた。
「りゅ…た…」
これ以上の行為をやめてくれと訴えるように上目遣いで見上げれば、「仕方ないですね」と静かに笑った鹿沼がいた。
「部屋に戻ったら覚悟してくださいよ」
この場で晴らせない鬱憤があったように鹿沼は抑え込んだ笑みを浮かべた。
どんな覚悟をしろというのだろうか…。
まだ温まり切っていないはずの身体がすでに火照っている。
有名な露天岩風呂を堪能する気分は、雅臣の中からすでに消えていた。
「部屋に戻る…」
甘えたような雅臣の呟きに鹿沼がニッコリと笑った。
「また雪見酒をしましょうね」
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鹿沼いじわる~
好きな子は苛めたくなるし、泣き顔見たくなるんだよ・・。
雅臣自爆ですね。
好きな子は苛めたくなるし、泣き顔見たくなるんだよ・・。
雅臣自爆ですね。
甲斐様。
こちらにもありがとうございます。
> 鹿沼いじわる~
> 好きな子は苛めたくなるし、泣き顔見たくなるんだよ・・。
雅臣をもてあそんでいます。あ、可愛がっています。
> 雅臣自爆ですね。
『人前で裸になりたい』なんて言っちゃったものだから、黙っていない鹿沼でした…ってことで。
計画高い鹿沼がじっとして温泉に浸かっているわけがありません。
せっかくの大浴場、雅臣には可哀想なことをしちゃったけど…。
コメントありがとうございました。
こちらにもありがとうございます。
> 鹿沼いじわる~
> 好きな子は苛めたくなるし、泣き顔見たくなるんだよ・・。
雅臣をもてあそんでいます。あ、可愛がっています。
> 雅臣自爆ですね。
『人前で裸になりたい』なんて言っちゃったものだから、黙っていない鹿沼でした…ってことで。
計画高い鹿沼がじっとして温泉に浸かっているわけがありません。
せっかくの大浴場、雅臣には可哀想なことをしちゃったけど…。
コメントありがとうございました。
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