二人では初めての旅行といっていい。
これまでも社員旅行という名目で同席したことはあったが、部も違うので傍に寄ることもなかった。お互い若い身分とあって、上司に連れ回されることばかりで、鹿沼が故意的に雅臣に近寄ってこなければ話す機会すらなかったようなものだ。
社員旅行で出向くというだけで、旅館や土産物屋などの待遇は、それはそれは良かった。
団体で動いているから余計に目立ったのだろう。それが億劫だったという思いもあったが…。
サラリーマン風情からすっかり離れた私服では、ただの旅行客にしか見えない。
男の二人連れなど奇妙なものに映るだけかと思えば、意外と学生の二人連れや出張とはっきり分かる人間などを見かけて安堵していたりする。
雅臣はこれまで付き合った人間もそれなりにいたが、イベント事を過ごしたことがないように、こうして出掛けることもなかった。
思い出を作ることまで怖がっていたのだと振り返ることができる。
温泉街には当然聞いたことのある宿の名前がたくさんあった。
他の人間と来ていたなら、こうして見て回ることすら嫌がられそうだと思いながらも、相手が鹿沼であれば話題の一つとして取り上げられて会話まで弾む。
楽しかった…。ただ街を歩いているというだけで、こんなに楽しいものかと思うくらいに会話は尽きることがない。
誰かと『付き合う』とは身体を繋げるだけでなく、笑いあって楽しむものなのだと感じる。
『性格の相性は良いんです』と言った鹿沼の言葉の意味がようやく分かったような気がする。
気を使わず自分をさらけ出せる心のゆとり。
途中の店で、自家製だという湯豆腐を味わって身体まで温まって出てきた頃、ちらちらと雪が舞い始めた。
だいぶ歩いてきてしまったから、旅館まで帰るころには自分たちが真っ白になってしまいそうだ。
「ごめん…、僕がこんな方まで来たいって言ったから…」
「何謝っているんですか。雪道を歩くのもなかなかいいものですよ。あとはね…、帰ったら一緒にお風呂に入って俺を暖めて?」
人が真剣に申し訳ないと思っていれば茶化されて返ってくる。
寒い中でも顔を赤らめてしまえば、静かに笑みを湛えた鹿沼が雅臣の身体を引き寄せた。
「もっといっぱい我が儘を聞きたい…」
冗談でもからかうわけでもなく、鹿沼のしっとりとした声が雪に消されることなく雅臣の鼓膜に響いた。
案の定、宿泊先に辿り着いた頃には身体は冷え切っていた。
温まった部屋でしばらく寛ぎたかったのに、鹿沼はそれを許さず強引に二階へと引きずり上げると裸にされて内風呂へと押し込まれた。
暖房の温度とはまたちがう、身体の芯から温まるような温泉にホッと息が漏れる。
「少し温まったら露天に行きましょ。雪見酒も用意してありますからね」
露天風呂とはいえ、屋根があるから吹雪くことでもない限り雪に当たることはない。
夕食時間までまだ2時間近くはある。
離れという立地上、他の宿泊客に出会うこともなく、またここは2階で、外を見渡せる風景も格別のものがある。
しんしんと降り注ぐ雪は色々な音を消して、まさに”二人だけの空間”を作りだしてくれていた。
ヒノキの露天風呂に入れば、雪見酒だと言ってます酒の入った桶まで浮かべられた。雪は一向に止む気配を見せず、雪景色を眺めながらの一杯は風情があったし格別だ。
温泉に温まりながら、内側から冷やすような冷酒はまた違った意味で身体を暖めた。
「…んっ…」
湯の中で繋がった下半身が揺す振られて吐息がもれる。
向かい合わせで座った雅臣の胸元に鹿沼の唇が落ちた。
温まった身体とはいえ、外気は想像以上に冷たく、時間が経てば冷えてきて、温泉の中にもぐりたがった。
次から次へと熱いお湯が流れ込んでくるのに、あっという間にぬるくなってしまうように感じるのはそれだけ空気が冷やされているということなのだろうか。
鹿沼が手で湯をすくって飛び出た肌にかけてくれる。その温かさにぶるっと震えた。
「冷えちゃった?ごめんね。雅臣さんがあまりにも可愛くて…」
抜き差しをされずにどれだけの時間が過ぎたのだろう。
きっと雅臣の秘部はぱっくりとひらいてしまっているに違いない。
時折体内で脈を打つ肉を感じる。耐えているのは自分か鹿沼か…。
まるで幼い子供を湯につけるように、後頭部を抱えた鹿沼の腕が雅臣の上半身を抱えて肩までゆっくりと湯船につけてくれる。
温かさにホッと息を吐き出したが、空気中に触れる鹿沼のほうが寒いのではないかとそっと肩に手を伸ばせば、冷えた肌があった。
「つめたいよ…、温まって…」
自分と密着するように鹿沼の首筋に腕を伸ばして抱き寄せた。
この体勢で二人が共に肩まで湯船に浸かることはもう無理だ…。
「すっげーっあったかいっ。露天風呂って逆上せなくていいと思っていたけど、雅臣さんに逆上せそう」
「何ばかなこと言って…っ!」
真剣に風邪をひかないかと心配してやっているのに、返ってくる言葉はエロ親父に等しい。
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これまでも社員旅行という名目で同席したことはあったが、部も違うので傍に寄ることもなかった。お互い若い身分とあって、上司に連れ回されることばかりで、鹿沼が故意的に雅臣に近寄ってこなければ話す機会すらなかったようなものだ。
社員旅行で出向くというだけで、旅館や土産物屋などの待遇は、それはそれは良かった。
団体で動いているから余計に目立ったのだろう。それが億劫だったという思いもあったが…。
サラリーマン風情からすっかり離れた私服では、ただの旅行客にしか見えない。
男の二人連れなど奇妙なものに映るだけかと思えば、意外と学生の二人連れや出張とはっきり分かる人間などを見かけて安堵していたりする。
雅臣はこれまで付き合った人間もそれなりにいたが、イベント事を過ごしたことがないように、こうして出掛けることもなかった。
思い出を作ることまで怖がっていたのだと振り返ることができる。
温泉街には当然聞いたことのある宿の名前がたくさんあった。
他の人間と来ていたなら、こうして見て回ることすら嫌がられそうだと思いながらも、相手が鹿沼であれば話題の一つとして取り上げられて会話まで弾む。
楽しかった…。ただ街を歩いているというだけで、こんなに楽しいものかと思うくらいに会話は尽きることがない。
誰かと『付き合う』とは身体を繋げるだけでなく、笑いあって楽しむものなのだと感じる。
『性格の相性は良いんです』と言った鹿沼の言葉の意味がようやく分かったような気がする。
気を使わず自分をさらけ出せる心のゆとり。
途中の店で、自家製だという湯豆腐を味わって身体まで温まって出てきた頃、ちらちらと雪が舞い始めた。
だいぶ歩いてきてしまったから、旅館まで帰るころには自分たちが真っ白になってしまいそうだ。
「ごめん…、僕がこんな方まで来たいって言ったから…」
「何謝っているんですか。雪道を歩くのもなかなかいいものですよ。あとはね…、帰ったら一緒にお風呂に入って俺を暖めて?」
人が真剣に申し訳ないと思っていれば茶化されて返ってくる。
寒い中でも顔を赤らめてしまえば、静かに笑みを湛えた鹿沼が雅臣の身体を引き寄せた。
「もっといっぱい我が儘を聞きたい…」
冗談でもからかうわけでもなく、鹿沼のしっとりとした声が雪に消されることなく雅臣の鼓膜に響いた。
案の定、宿泊先に辿り着いた頃には身体は冷え切っていた。
温まった部屋でしばらく寛ぎたかったのに、鹿沼はそれを許さず強引に二階へと引きずり上げると裸にされて内風呂へと押し込まれた。
暖房の温度とはまたちがう、身体の芯から温まるような温泉にホッと息が漏れる。
「少し温まったら露天に行きましょ。雪見酒も用意してありますからね」
露天風呂とはいえ、屋根があるから吹雪くことでもない限り雪に当たることはない。
夕食時間までまだ2時間近くはある。
離れという立地上、他の宿泊客に出会うこともなく、またここは2階で、外を見渡せる風景も格別のものがある。
しんしんと降り注ぐ雪は色々な音を消して、まさに”二人だけの空間”を作りだしてくれていた。
ヒノキの露天風呂に入れば、雪見酒だと言ってます酒の入った桶まで浮かべられた。雪は一向に止む気配を見せず、雪景色を眺めながらの一杯は風情があったし格別だ。
温泉に温まりながら、内側から冷やすような冷酒はまた違った意味で身体を暖めた。
「…んっ…」
湯の中で繋がった下半身が揺す振られて吐息がもれる。
向かい合わせで座った雅臣の胸元に鹿沼の唇が落ちた。
温まった身体とはいえ、外気は想像以上に冷たく、時間が経てば冷えてきて、温泉の中にもぐりたがった。
次から次へと熱いお湯が流れ込んでくるのに、あっという間にぬるくなってしまうように感じるのはそれだけ空気が冷やされているということなのだろうか。
鹿沼が手で湯をすくって飛び出た肌にかけてくれる。その温かさにぶるっと震えた。
「冷えちゃった?ごめんね。雅臣さんがあまりにも可愛くて…」
抜き差しをされずにどれだけの時間が過ぎたのだろう。
きっと雅臣の秘部はぱっくりとひらいてしまっているに違いない。
時折体内で脈を打つ肉を感じる。耐えているのは自分か鹿沼か…。
まるで幼い子供を湯につけるように、後頭部を抱えた鹿沼の腕が雅臣の上半身を抱えて肩までゆっくりと湯船につけてくれる。
温かさにホッと息を吐き出したが、空気中に触れる鹿沼のほうが寒いのではないかとそっと肩に手を伸ばせば、冷えた肌があった。
「つめたいよ…、温まって…」
自分と密着するように鹿沼の首筋に腕を伸ばして抱き寄せた。
この体勢で二人が共に肩まで湯船に浸かることはもう無理だ…。
「すっげーっあったかいっ。露天風呂って逆上せなくていいと思っていたけど、雅臣さんに逆上せそう」
「何ばかなこと言って…っ!」
真剣に風邪をひかないかと心配してやっているのに、返ってくる言葉はエロ親父に等しい。
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きえ | URL | 2010-02-09-Tue 07:01 [編集]
MO様
おはようございます。
>雅臣、冷え切った心も体も温められて、すっかり鹿沼と一緒にいることが、心地良いようですね。本人が認めれば、とってもラブラブな二人なのに、まだ素直になれないのかな?なかなかお似合いの二人ですね♪
雅臣の全部まるごと温められてかなりいい感じになりました。
そして鹿沼を思ってやれるだけの心遣いも身につけて…。
あともうちょっとの二人です。
この温泉旅行でいっぱい考えさせられることとかある雅臣だと思います。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
>雅臣、冷え切った心も体も温められて、すっかり鹿沼と一緒にいることが、心地良いようですね。本人が認めれば、とってもラブラブな二人なのに、まだ素直になれないのかな?なかなかお似合いの二人ですね♪
雅臣の全部まるごと温められてかなりいい感じになりました。
そして鹿沼を思ってやれるだけの心遣いも身につけて…。
あともうちょっとの二人です。
この温泉旅行でいっぱい考えさせられることとかある雅臣だと思います。
コメントありがとうございました。
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