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BLの丘
かけがえのない日々の訪れ 10
2010-02-19-Fri  CATEGORY: かけがえのない日々
SSで書いた『被害者同盟の会』とは頭を切り離してください
っていうか、つなげてもいいんですけど、ちょっと時差があるようになっています。(今更言うなよ…って感じですけど…平謝り)



天国か地獄かと問われたらどちらに印をつけるのだろうか…。
これほどまで昂らされて追いつめられての放出は過去に味わったこともなかった。散々待たされたから充分な刺激をもらって最後の一滴まで絞り取られた時の快感は言葉にならない。
呼吸すらまともにできないほど、心臓が激しく動き、身体が弛緩した。
普段であれば、神戸に一声かけてあげられるが、そんな余裕も今はない。
攻めと受けでは全く違うのだと実感した。

知りたくない『現実』があったと日野は漠然と思った。

日野の横にだるそうに身を置きながら、神戸は茶色く染められた日野の髪を梳いてくれた。
いつも「もう一回…」と強請る日野を嫌な顔一つせず受け止めてくれる神戸を凄いと思った。
酷い時には二度や三度ではおさまらなかった時すらある。
もちろんこんなに執拗な攻め方を日野はしないが、身体に受けるダメージがいかに大きいかを知らされる。
そして、まるで暴かれた自分の性癖のような気がした。
終わってみれば『苦』ではなかったのだ…。
「…も、い…」

情けなさをまといながら零した言葉を、神戸は笑って受け止めて、また、これまでしたことのない口付けを落とした。
身体だけのはずだった関係が一枚のベールで覆われたようだった。
気だるさに体を動かせずにいながらも包まれる安堵感があった。



神戸は時折店に訪れた。
ここまでの関係を持ちながらプライベートの番号さえ、お互い知らない。
日野が貰ったのは、社用的な名刺の一枚だったし、神戸が知るのも、この『店』というだけだった。
それ以上の関係に溺れる気もなかったし、深入りする気もなかった。
…はずだ…。

週に一度くらいのペースで神戸は店に顔を出した。大概は一人だったが今日は千城の秘書の野崎と一緒だった。
二人とも仕事帰りと分かるスーツ姿だったが、プランナーという仕事柄か、神戸はピンク色のワイシャツにイエローゴールドのネクタイという組み合わせで華やかさがある。
二人はカウンターで何やら言葉を交わしていた。
今までなら何も気にする必要もなかった二人のはずなのに、日野は聞き耳を立てるのをやめられなかった。
どうしたって神戸が何を話しているのかが気になる。
他の客の注文を受け、それらを用意しながらも、耳はしっかりとカウンターへと向いていた。
そっけなさを浮かべることにこれほどまで苦労したことなどないくらいだった。

「千城はまたニューヨークに行くみたいだね?」
「春には決まって総会があるんです。英人さんの休暇願なら私の方から…」
「もう、いいよ。散々好き勝手に休まれているんだからさ。2、3日も一週間も変わらないよ。予定が分かるだけありがたい」
「すみません」
「野崎さんが謝ることじゃないでしょ?千城はどうにかならないものかね~。英人君を手にしてからあの我が儘ぶりは目に余る。どれだけ可愛がりたいかは分かっても、うちも一応クライアントを抱えているんだよね」
神戸が嫌味ったらしく口にすれば萎縮した野崎の姿があった。
そんな野崎に溜め息を零す神戸がいる。
「神戸さんには本当に御迷惑ばかりおかけして…」
「お互い様。野崎さんも苦労が絶えないよね…」
この店に二人が揃って現れることもあった。大概は愚痴の言い合いのようだ。

神戸が労うように伝えた言葉には優しさがある。確かに神戸は普段から『優しい男』だったが、どこか違うように感じられた。
野崎は一瞬瞳を伏せた。
日野は自分にこれまで感じたことのない『男』という何かの付箋が張り付いたような気がした。

日野だってこの店に勤めて何年にもなる。
それなりの世界を見てきたからある程度は分かっているつもりだったが、客の逢瀬は自分の興味の範囲外だったから上辺ばかりを流れてきたようなものだった。
二人には巧みに隠した『何か』があるように思えて仕方ない。
気の回し過ぎだろうか…。
日野は神戸との繋がりを持ったことで、いらない関係まで見えるようになった自分を知っている…。

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コメント

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新メニュー 野崎×神戸?
コメント甲斐 | URL | 2010-02-19-Fri 20:00 [編集]
いや、いや、それはないでしょうー
野崎×神戸?
遊びでも同情でも冗談でも、どう考えてもそれはないでしょう・・・。
でも、恋する乙女心(?)は何かと想像力旺盛ですからね。

遊びなれた神戸さんが、誰かと関係持ったからといって何もなかったかのように何一つ変わることなくいられるのは分る気がする。何度寝ようとうまくいこうと1回で勘弁してって感じだったとしても。そもそも、神部さんが本気なることってないんじゃないかな。過去に何があったのか知らないけど。
そういう人とまじめに付き合っていくのは大変そうだな。
初心な日野ちゃんはどこまで付いて行けるのやら・・・。
Re: 新メニュー 野崎×神戸?
コメントきえ | URL | 2010-02-19-Fri 23:21 [編集]
甲斐様
こんばんは。

> いや、いや、それはないでしょうー
> 野崎×神戸?

あり得ない的なメニューです。
クリームソーダーの中にオレンジジュースをいれてみるくらいに。

> 遊びなれた神戸さんが、誰かと関係持ったからといって何もなかったかのように何一つ変わることなくいられるのは分る気がする。何度寝ようとうまくいこうと1回で勘弁してって感じだったとしても。そもそも、神部さんが本気なることってないんじゃないかな。過去に何があったのか知らないけど。
> そういう人とまじめに付き合っていくのは大変そうだな。
> 初心な日野ちゃんはどこまで付いて行けるのやら・・・。

神戸の過去、何があったんですかねー。
いっぱいお付き合いした方がいそうなのに、現在独り身。
まじめに付き合っていくのはきっととても大変なことと思います。
日野ちゃん、振り回されていますけど、大丈夫かなぁ。
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-02-19-Fri 23:34 [編集]
MO様
こちらにもありがとうございます。

>日野ったら、今まで気にならなかった事まで気になり出して、どうなっちゃうんでしょう?バーで色々な客を見ていても、まだまだ野崎や神戸には、あらゆる面で人生経験が劣りますからね~。どんどん未知の世界に足を突っ込んじゃって、大丈夫??

はい。これまでに培ったものがあったとしても、まだまだお子ちゃまな日野ですから。
(英人と同い年だし)
今、未知の世界を神戸にいっぱい教えてもらっているところだし。
こっちの世界は英人に説教できないくらい、むしろ教えてほしいくらいのところだし。
一回りも二回りも成長する日野の予定(あくまでも予定)です。
コメントありがとうございました。
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