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BLの丘
かけがえのない日々の訪れ 13
2010-02-22-Mon  CATEGORY: かけがえのない日々
『君だったらいい…』
予想していない言葉だったのか、期待した言葉だったのか…。

「相変わらず、人をからかうのが上手ですね」
日野は動揺を悟られないようにと、神戸の注文を作るために視線を手元に落した。
二人きりの時は崩れた口調でも店では他の客の手前もあって一線を保った状況を作った。
お互い囁くような小さな声での会話だったから、聞かれてはいないとは思っても、変に噂されても困る。
店内に流れるクラシックが妙に耳触りに聞こえる。これでもボリュームはかなり落とされているほうだった。

「からかっているんじゃなくて本気で口説いているつもりなんだけど?」
カウンターの上に肘をついて、指を組んだ上に顎を乗せた神戸の表情は、柔らかな笑みを湛えている。
魔性の男がどこまで本気で言葉を口に乗せているのか、日野でも判断がつかない。
一度神戸に視線を戻した日野だったが、困ったようにまた手元へと戻った。
「…野崎さんにもそんなことを言っているんですか?」
聞くつもりではなかったことがポロリと零れてしまえば、神戸の眉間が寄った。
「野崎さん?なんで野崎さんの名前が出てくるの?」
神戸は本気で不思議がっているようだった。

この反応は自分の思いこみだったということなのだろうか。
それともうまく誤魔化されているのか…。
日野は口にしてもいいものかと躊躇い、思わず黙ってしまう。
路地裏に二人が佇んでいたことを見てしまったと伝えたら神戸はどんな反応をするのだろう。

少し考えを巡らせたように、神戸は最後にこの店に訪れた時、野崎と一緒だったことを思い出したようだった。
「野崎さんとはたまに呑んで愚痴を言い合うくらいの付き合いだよ。千城たちのことがあるから協力を仰いでいるっていうところかな。親しくはさせてもらっているけど、それだけ」
日野が野崎の名前を出してしまったことで、神戸は日野の中に巣食うものを気付いてしまったのではないかと後悔した。
自分の感情をうまくコントロールができないなんて、まだまだガキなのだな…と日野は苦虫を潰した。

思いは当たったようで、暫く黙っていた日野に神戸がたたみ掛けた。
穏やかだった笑みが消えた。
「なんだかしなくてもいい妄想でも繰り広げられているみたいだね。君とのこれまでを思えば疑われても仕方ないかもしれないけど、そこまで節操のない人間じゃないんでね。目的無いのに人には近寄らないよ」
神戸にはこれまでの行動を振り返っているような雰囲気があった。
そこには悔いまであるような表情だった。

『目的』…?
…それって、どういう…意味…?

理解したいようなしたくないような葛藤するものが胸の上を走り抜ける。
ただの身体だけの関係だと思っていたものは、神戸にとっては違っていたということなのだろうか。

この場で濃密な会話をするのは気が引ける…と躊躇った時、またカウベルの鈴の音が聞こえてそちらに視線が向いた。
入ってきた客はカウンターに座った客の後姿を見ただけで誰なのかが分かったようだ。
「あれ?神戸さん?」

自分の名前を呼ばれたことで、神戸もすぐに後方を振り返り、新客を確認した。
英人と千城が意外なものでも見るかのように目をぱちくりさせながら、隣の席へと流れついてきた。

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(邪魔だーっ。このタイミングで登場するなんて…!!日野、ごめんね…。どこまでもこんな連中に付き合うはめになって…。大丈夫。これ、”救済編”だから。きっと。たぶん…(←自信なくなってきた…逃げ腰~~\(;一_一))
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コメント

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理解したいようなしたくないような葛藤
コメント甲斐 | URL | 2010-02-22-Mon 09:01 [編集]
「本気で口説いてる」ってどう考えてもそれはないでしょう、と思わせちゃうところが神戸さんの悲劇ですね。これまで相当遊んできたでしょうからそのツケというのか報いというのか・・・。
野崎さんの名前だしてしまうところがやっぱり初心者ね。
気になってしかたがないんだって白状してるようなもんじゃないの、ここは「誰にでもそんなことを・・・」って言わなきゃあ。(指導してどうする)かわいい。

いやいやゴメンね、神戸さん。勝手ながら『日々』開始以来、私の中の神戸さんはもうすっかり”雑食で喰い散らかしてきた歴戦の勇者”になってますので。
神戸さんの本気度見せてもらいましょう・・・・・とおもったらお邪魔がーーー。
Re: 理解したいようなしたくないような葛藤
コメントきえ | URL | 2010-02-22-Mon 10:05 [編集]
甲斐様
連コメありがとうございます。

> 「本気で口説いてる」ってどう考えてもそれはないでしょう、と思わせちゃうところが神戸さんの悲劇ですね。これまで相当遊んできたでしょうからそのツケというのか報いというのか・・・。

神戸のこれまでの過去は私も全く想像していない…というかできあがっていないので、なんでこんな小悪魔になったのか不思議です。
本気に受け取ってもらえないところはまさに悲劇ですね。

> 野崎さんの名前だしてしまうところがやっぱり初心者ね。
> 気になってしかたがないんだって白状してるようなもんじゃないの、ここは「誰にでもそんなことを・・・」って言わなきゃあ。(指導してどうする)かわいい。

今後の接客業のためにも指導してやってください。
日野もいっぱい喰い散らかしてきた人種のはずなんですけどね…。
優しさが秀でていてあまりそんなイメージがないかも。
(オトコは初めてっていうのが、やっぱり不思議な世界…)

> いやいやゴメンね、神戸さん。勝手ながら『日々』開始以来、私の中の神戸さんはもうすっかり”雑食で喰い散らかしてきた歴戦の勇者”になってますので。
> 神戸さんの本気度見せてもらいましょう・・・・・とおもったらお邪魔がーーー。

神戸は雑食でしょう。
もともとは清いイメージだったのに、『~日々』をかきはじめてすっかり変わりました。
男も女も上も下もOKな神戸サン…。
でも根は真面目なんだよ(って今更とってつけたように…)
どこまでも手を妬かせる2人が登場です。
ま、一役買ってくれるという存在と言うことで…
コメントありがとうございました。
コメントきえ | URL | 2010-02-22-Mon 17:07 [編集]
MO様
こんにちは、

>今まで 神戸の周りには、男女問わず、才能のある素敵な人達がいっぱいいたでしょうけど、日野を「恋人」にしたいと思ってたんですね。いくら人生経験が豊富で、大人の付き合いができる人間でも、身近な人に手を出す時は、本人同志の同意か、それなりの覚悟が欲しいですからね。日野も未知の世界に導かれて、置き去りにされたんでは、たまりませんよね。千城と英人の登場で、続きが待ち遠しいです♪

いつも読者様の深読みには関心と言うか絶句と言うか…。
いやー、素晴らしいです。
ご想像いただいたように、神戸は最初から日野を『狙っていた』と言っていいです。
まぁ、そのへんのやりとりはいずれ明らかにされると思いますが(書けるのか、私…)
いろいろ人生経験豊富な神戸と、思い込みな日野と…。
中途半端な性行為で放置されては困る日野を、優しい(?)神戸に包まれて…あぁどうなっちゃうのやら…。
置き去りにされたらあまりにも可哀想なので一応手は伸びます。

ちーとひー、この場面ではどうでもいいんですけど。
コメントありがとうございました。
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