《妄想スパイラル様》より結城さんと薫君が遊びに来てくださったホワイトデー企画です。
結城さんと薫君のお話が読みたい方はどうぞ上をクリック♪
ここのところ、みんなどたばたと忙しかったから、プライベートの内容など聞くタイミングが取れずにいた。
あの後、神戸たちと結城がどのような約束事を決めたのか英人は聞かされていなかった。
つまり、撮影をするのかどうか…である。
水曜日の夕方になってオフィスに顔を出した塚越が英人を奥の応接室に呼んだ。
あくまでも秘密の被写体に、人前で広げるのは躊躇われたようだ。
すでに中にいた神戸が幾枚かの写真を眺めていた。
「本当に撮っていたの?!」
「当然でしょ。こっちはバーを貸し切りにまでしたんだよ」
英人の質問に神戸は、今更何を…と切り返してくる。
神戸は数枚ある中からピックアップしたものを英人に見せてきた。
いまでこそA4版の小さなものだが、これを引き伸ばそうというのだろう。
全てセピア色に仕上げられている。
ちょうどバーの雰囲気を伺わせる色遣いのようだった。
さりげなくカクテルグラスを合わせているものや、囁くように結城が薫の耳元に唇を寄せているもの、甘えた薫が結城にむかって膨れている姿、お互いを愛しいと思って伸びる手、酔い口の薫の背中にそっと手を回す姿など、どれも英人は目にしたことがなかった。
「こ、これっ、一枚に決めろっていうの?!」
英人からこぼれたのは「できない」という発言だった。
「並べて見せちまっているからそう思うんだろう。俺はこれだな」
塚越が選んだのは視線を合わせようとしていない二人の姿だった。
合わせようとしていないというより、結城は愛おしげに薫を見ていたし、薫は照れたように少し俯き加減になりながら、でもカウンターに置かれた結城の手の甲に自分のを重ねている。
バーの雰囲気を背面に映し出しつつ、決して邪魔をしない遠近感で二人を包む。
日野がわざと仕組んだのかどうかは知らないが、二人の座る位置は肩がぶつかるほどの近さだった。
これこそ、普段の二人を見るようでもあった。
全体的に初々しさが残る。
人前では何かをするのをためらうような薫の可愛さと、何があっても守り抜くというような結城の雄大さ。
頼んだのが塚越で良かったと心の底から思った瞬間でもあった。
英人は土曜日に自宅かアトリエに寄れないかと薫に連絡をつけてみた。
この日は千城も休みで家にいるが、千城がいては薫も萎縮してしまうのではないかと思って「アトリエ」と聞いてみたのだが…。
帰ってきた答えは「結城さんが一緒でもいいですか?」というもので、まぁ困りはしない英人はすかさず返事をする。
そして、初めてマンションを訪れた結城と薫を出迎え、リビングに入るなり「ねっ?!」と声を上げた薫と、「あぁ…」と溜め息を零した結城に、英人も千城も一瞬黙ってしまった。
さすがの英人でも薫が何故ここに結城を連れて来たかったのか、理解できてしまった。
薫はパネルを見せたかったのだろう…。
尚更なんだか嬉しくなった英人は、L字型に備えられたソファに案内をして、「飲み物を持ってくるねっ」とリビングを去った。
千城となにかと世間話でも始めたようだ。
飲み物はまぁとりあえず…。
別室に隠しておいたポスターと同じ大きさの”例の写真”が入ったパネルをリビングまで持っていった。
この大きさであれば英人でも充分運べる。
飲み物とは明らかに違ったものを手にした英人が現れると、結城も薫も黙った。
「これはー。いつも二人にお世話になっている俺からのプレゼントっていうことで」
裏返していたパネルをクルッとひっくり返せば、目を見開いた二人がいた。
「な、な…なぁ、…なに…、なにぃ…?!」
薫の声はひっくり返っている。
「え、これ…って、…いつのまに…」
結城も全く予想していなかったことに瞠目していた。
「二人には悪いと思ったんですけど…」
英人はここで全てのネタばらしを行った。怒られるなら、その覚悟も出来ていた。
だけど、それ以上にきっと悦んでくれる二人がいると信じていた。
薫が立ち上がって英人に向かってくる。何事かと構えた英人に、薫が抱きついてきた。
「すっごい嬉しいっ!!俺、英人と友達になれて良かったっ…っ!!」
薫から嬉し涙がこぼれるのを見て、英人もとても心が温かくなった。
きっと、結城からチョコレートをもらった子供たちも同じように感動を受けるのだろう。
明日はホワイトデー。
今度こそ、二人きりの丸一日を楽しんで。
英人はそう願うと、パネルを二人に渡した。
―完―
にほんブログ村
いかがでしたでしょうか。
結城さんと薫君をご招待した割には全然出てこなくてすみませんでした…。
なんだかめちゃ詰め込んだような今回です。
英人一人が突っ走っていたような…。
いつもいつも私が想像するくだらないものにお付き合いくださいまして大変感謝いたします。(深謝)
そしてやっぱり戻ったテンプレ。
なんだーかんだーいいながらこれ好きみたい。
6←
結城さんと薫君のお話が読みたい方はどうぞ上をクリック♪
ここのところ、みんなどたばたと忙しかったから、プライベートの内容など聞くタイミングが取れずにいた。
あの後、神戸たちと結城がどのような約束事を決めたのか英人は聞かされていなかった。
つまり、撮影をするのかどうか…である。
水曜日の夕方になってオフィスに顔を出した塚越が英人を奥の応接室に呼んだ。
あくまでも秘密の被写体に、人前で広げるのは躊躇われたようだ。
すでに中にいた神戸が幾枚かの写真を眺めていた。
「本当に撮っていたの?!」
「当然でしょ。こっちはバーを貸し切りにまでしたんだよ」
英人の質問に神戸は、今更何を…と切り返してくる。
神戸は数枚ある中からピックアップしたものを英人に見せてきた。
いまでこそA4版の小さなものだが、これを引き伸ばそうというのだろう。
全てセピア色に仕上げられている。
ちょうどバーの雰囲気を伺わせる色遣いのようだった。
さりげなくカクテルグラスを合わせているものや、囁くように結城が薫の耳元に唇を寄せているもの、甘えた薫が結城にむかって膨れている姿、お互いを愛しいと思って伸びる手、酔い口の薫の背中にそっと手を回す姿など、どれも英人は目にしたことがなかった。
「こ、これっ、一枚に決めろっていうの?!」
英人からこぼれたのは「できない」という発言だった。
「並べて見せちまっているからそう思うんだろう。俺はこれだな」
塚越が選んだのは視線を合わせようとしていない二人の姿だった。
合わせようとしていないというより、結城は愛おしげに薫を見ていたし、薫は照れたように少し俯き加減になりながら、でもカウンターに置かれた結城の手の甲に自分のを重ねている。
バーの雰囲気を背面に映し出しつつ、決して邪魔をしない遠近感で二人を包む。
日野がわざと仕組んだのかどうかは知らないが、二人の座る位置は肩がぶつかるほどの近さだった。
これこそ、普段の二人を見るようでもあった。
全体的に初々しさが残る。
人前では何かをするのをためらうような薫の可愛さと、何があっても守り抜くというような結城の雄大さ。
頼んだのが塚越で良かったと心の底から思った瞬間でもあった。
英人は土曜日に自宅かアトリエに寄れないかと薫に連絡をつけてみた。
この日は千城も休みで家にいるが、千城がいては薫も萎縮してしまうのではないかと思って「アトリエ」と聞いてみたのだが…。
帰ってきた答えは「結城さんが一緒でもいいですか?」というもので、まぁ困りはしない英人はすかさず返事をする。
そして、初めてマンションを訪れた結城と薫を出迎え、リビングに入るなり「ねっ?!」と声を上げた薫と、「あぁ…」と溜め息を零した結城に、英人も千城も一瞬黙ってしまった。
さすがの英人でも薫が何故ここに結城を連れて来たかったのか、理解できてしまった。
薫はパネルを見せたかったのだろう…。
尚更なんだか嬉しくなった英人は、L字型に備えられたソファに案内をして、「飲み物を持ってくるねっ」とリビングを去った。
千城となにかと世間話でも始めたようだ。
飲み物はまぁとりあえず…。
別室に隠しておいたポスターと同じ大きさの”例の写真”が入ったパネルをリビングまで持っていった。
この大きさであれば英人でも充分運べる。
飲み物とは明らかに違ったものを手にした英人が現れると、結城も薫も黙った。
「これはー。いつも二人にお世話になっている俺からのプレゼントっていうことで」
裏返していたパネルをクルッとひっくり返せば、目を見開いた二人がいた。
「な、な…なぁ、…なに…、なにぃ…?!」
薫の声はひっくり返っている。
「え、これ…って、…いつのまに…」
結城も全く予想していなかったことに瞠目していた。
「二人には悪いと思ったんですけど…」
英人はここで全てのネタばらしを行った。怒られるなら、その覚悟も出来ていた。
だけど、それ以上にきっと悦んでくれる二人がいると信じていた。
薫が立ち上がって英人に向かってくる。何事かと構えた英人に、薫が抱きついてきた。
「すっごい嬉しいっ!!俺、英人と友達になれて良かったっ…っ!!」
薫から嬉し涙がこぼれるのを見て、英人もとても心が温かくなった。
きっと、結城からチョコレートをもらった子供たちも同じように感動を受けるのだろう。
明日はホワイトデー。
今度こそ、二人きりの丸一日を楽しんで。
英人はそう願うと、パネルを二人に渡した。
―完―
にほんブログ村
いかがでしたでしょうか。
結城さんと薫君をご招待した割には全然出てこなくてすみませんでした…。
なんだかめちゃ詰め込んだような今回です。
英人一人が突っ走っていたような…。
いつもいつも私が想像するくだらないものにお付き合いくださいまして大変感謝いたします。(深謝)
そしてやっぱり戻ったテンプレ。
なんだーかんだーいいながらこれ好きみたい。
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塚越さん、いい仕事しますねぇ。
さすがです。
選ばれた1枚はほんとに二人の性格や想いを現しているようで素敵なイメージです。でも他の写真もすっごくいい感じなので是非写真集にして贈って下さればと思いました。
かわいい薫くんの喜ぶ姿も見られたのでワタシも嬉しかったです。
さすがです。
選ばれた1枚はほんとに二人の性格や想いを現しているようで素敵なイメージです。でも他の写真もすっごくいい感じなので是非写真集にして贈って下さればと思いました。
かわいい薫くんの喜ぶ姿も見られたのでワタシも嬉しかったです。
キャラ好きで 台詞や 背景に 今後をと 又を期待しました。
勿論 勝手な要望です! 笑!
英人 千城 から 薫 結城さん ( 野崎さん 神戸さん 日野君)
「淋しい夜」編に 感謝です!
勿論 勝手な要望です! 笑!
英人 千城 から 薫 結城さん ( 野崎さん 神戸さん 日野君)
「淋しい夜」編に 感謝です!
甲斐様
こちらにもどうもです。
> 塚越さん、いい仕事しますねぇ。
いい仕事していますよ。さすがプロです。
> 選ばれた1枚はほんとに二人の性格や想いを現しているようで素敵なイメージです。でも他の写真もすっごくいい感じなので是非写真集にして贈って下さればと思いました。
> かわいい薫くんの喜ぶ姿も見られたのでワタシも嬉しかったです。
私も写真集って考えました。
でも飾れるものを…って思って一枚に選んだとこです。
薫君、かわいいですよね~。
明るくて元気で、うちにもこんなはつらつとした息子が欲しい。
私の妄想で繰り広げたホワイトデー企画、楽しんでいただけたようで嬉しいです。
いつも応援感謝いたします。
コメントありがとうございました。
こちらにもどうもです。
> 塚越さん、いい仕事しますねぇ。
いい仕事していますよ。さすがプロです。
> 選ばれた1枚はほんとに二人の性格や想いを現しているようで素敵なイメージです。でも他の写真もすっごくいい感じなので是非写真集にして贈って下さればと思いました。
> かわいい薫くんの喜ぶ姿も見られたのでワタシも嬉しかったです。
私も写真集って考えました。
でも飾れるものを…って思って一枚に選んだとこです。
薫君、かわいいですよね~。
明るくて元気で、うちにもこんなはつらつとした息子が欲しい。
私の妄想で繰り広げたホワイトデー企画、楽しんでいただけたようで嬉しいです。
いつも応援感謝いたします。
コメントありがとうございました。
kk様
いらっしゃいませ。
コメントを残してくださいましてありがとうございます。
> キャラ好きで 台詞や 背景に 今後をと 又を期待しました。
>
> 勿論 勝手な要望です! 笑!
>
> 英人 千城 から 薫 結城さん ( 野崎さん 神戸さん 日野君)
> 「淋しい夜」編に 感謝です!
キャラを気に入っていただけたようで嬉しいです。
『淋しい夜』シリーズ、気付けば半年も抱えていて、私がびっくりしています。
また何かの機会がありましたら、登場させたいです。
(っていうか、日野×神戸が終わるのでまた次のスピンオフが…)
英人千城はしばらく出す予定はないんですけど…。
こんな駄文にお付き合いくださいまして、本当にありがたいです。
ぜひまた遊びにいらしてください。
コメントありがとうございました。
いらっしゃいませ。
コメントを残してくださいましてありがとうございます。
> キャラ好きで 台詞や 背景に 今後をと 又を期待しました。
>
> 勿論 勝手な要望です! 笑!
>
> 英人 千城 から 薫 結城さん ( 野崎さん 神戸さん 日野君)
> 「淋しい夜」編に 感謝です!
キャラを気に入っていただけたようで嬉しいです。
『淋しい夜』シリーズ、気付けば半年も抱えていて、私がびっくりしています。
また何かの機会がありましたら、登場させたいです。
(っていうか、日野×神戸が終わるのでまた次のスピンオフが…)
英人千城はしばらく出す予定はないんですけど…。
こんな駄文にお付き合いくださいまして、本当にありがたいです。
ぜひまた遊びにいらしてください。
コメントありがとうございました。
きえ | URL | 2010-03-14-Sun 13:25 [編集]
MO様
こんにちは。
>千城に守られるだけだった英人が、自分が大切に思ってる人を思いやり、行動を起こせるまでに成長できたんですね。
成長しましたね、この子は。
いつも泣き虫だったのに。
いろいろな人からの刺激をもらいながら、益々人間を大きくしていくことと思います。
結城さんと薫君とのお付き合いは、今後も続きそうですから、これからも時々登場して、二人に刺激を与えて欲しいです。きえ様、素敵な企画をありがとうございました。
元気いっぱいな薫君のことは私も気に入っているんです。
今回は英人一人で爆走していたような仕上がりになってしまいましたが、また何かの機会がありましたら、もっと4人を絡ませてみたいです。
駄文にお付き合いくださいましてありがとうございました。
コメントもどうもありがとうございます。
こんにちは。
>千城に守られるだけだった英人が、自分が大切に思ってる人を思いやり、行動を起こせるまでに成長できたんですね。
成長しましたね、この子は。
いつも泣き虫だったのに。
いろいろな人からの刺激をもらいながら、益々人間を大きくしていくことと思います。
結城さんと薫君とのお付き合いは、今後も続きそうですから、これからも時々登場して、二人に刺激を与えて欲しいです。きえ様、素敵な企画をありがとうございました。
元気いっぱいな薫君のことは私も気に入っているんです。
今回は英人一人で爆走していたような仕上がりになってしまいましたが、また何かの機会がありましたら、もっと4人を絡ませてみたいです。
駄文にお付き合いくださいましてありがとうございました。
コメントもどうもありがとうございます。
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