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BLの丘
モンブランとクリームの甘い印。
2011-05-11-Wed  CATEGORY: コラボレーション
以前、あるチャットでお会いしたことのあるBL脳炸裂!!Ryu様より、擬人化のお話をお借りしてきました。
萌え萌えなイラストがいっぱいあります。
数字になぞらえた形ではあるのですが、みごとに人物像として成り立っております。
その中の一部をお借りいたしました。

素敵絵はもちろんのこと、Ryu様が抱かれる人物像にキュンキュンしながら、私なりの作品を書いてみました。


ご理解のある方だけお読みいただければと思います。

お借りしたキャラの相関図→相関図はこちらにございます。


二胡 双葉(にこ ふたば)は、今日も定時になると店先に立った。昼間の3時から夕方の6時。
双葉はケーキを作るパティシエである。
ふわふわの綿菓子のような髪と深い濃緑の瞳は、22歳という年齢を感じさせない幼さがある。
だが、あらゆるものを見ては、それを食べ物の世界へと変えていく洞察力は、幾人もの人を驚嘆させた。
小柄で華奢な小動物を思わせるくらいに、ちょこまかと動き、だけど作りだす繊細な世界に誰もが感嘆の息を漏らした。
味はもちろん、見た目の細かさも人目を惹きつける。




双葉が店先に立つには理由がある。

まだ、学生だった頃に、双葉はある強盗事件に巻き込まれた。
ちょうどコンビニに寄っていた時に、強盗に入った男に人質として押さえられたのだ。
小柄な体は抵抗することも敵わなく、そのまま人質として連れ去られ、何をされるのかと恐怖に脅えていた時に助けられた(正確には事件の解決)。

それから数年、無事学業を終えて、洋菓子店への就職もできて、自分なりの味も作れるようになった。
そんな双葉を見守るように、これまで何かと気を使ってくれている人、様子を伺いに来てくれる刑事がいる。
あの事件で、双葉を助けてくれた人だった。

五十嵐 柔蔵(いがらし じゅうぞう)。
もう40代になるという髪には白い色も混じっているが、短髪のせいか、表情は良く知れた。
鍛え上げられたがっちりとした体型は、クマのようでもある。しかし、動きに無駄はない。

この男が来る日、双葉は、決められた時間を店先で過ごすのだ。午前中は何かと製造に追われるものの、午後はそれほど作り上げるものもない。
特に約束したわけではないが、決まったように、訪れてくれる。
来るのはいつも水曜日の夕刻。
「元気だったか?」
五十嵐から放たれる決まり台詞に双葉は頷く。
一人暮らしの双葉にとって、心配してくれる父のようだった。
その一言に、かつて浴びてしまった苦痛を安らげたい気持ちが伝わってくる、
恐怖におびえなくていい、と言われているようだ…。「守ってやる」と言われている錯覚にも陥る。
「今日は何を…?」
双葉はさりげなく、五十嵐の注文を聞く。
ショーウィンドーの中には、双葉だけでなく、他のパティシエの作ったケーキもあったが、なぜか、五十嵐は双葉が作ったものを選んでくれた。
どれが?と特に聞かれることもない。自然と察してくれる自分の商品に高揚感が増す。
「お箱には?」
これも定番の言葉。五十嵐はいつも一つのケーキしか注文しない。
少しでも会話の数を増やしたくて漏れてくる台詞。
そして決まったように「そのままでいい」と五十嵐はいう。
トレーの上に出した、今日はモンブランケーキを前に、ゆっくりと会計にもちこんでいく。
こんな一時が双葉は好きだった。
気にかけてもらっているだけではない。包んでくれているような仕草が見えるから…。
五十嵐にとって自分は息子以下なのだと思う。でも、少しでも心の隅にあるなら嬉しいと思える。
長い間気遣ってくれる存在…。
その場で五十嵐がぱくりとモンブランケーキを頬張った。
一瞬ドキリとする。

「あー。相変わらずうまいなぁ」
その一言でぽっと頬に朱が走った。
五十嵐にとって、自分はただ心配されるだけの身。
過去のことがあるから、こうして気遣ってくれるだけの存在なのは百も承知している。
それでも、訪れてくれることが嬉しい。
何も言わなくても、双葉の作ったケーキを選んでくれて、『美味い』と言ってくれるその台詞に癒される。
彼が助けてくれたからある、今。
彼が褒めてくれるから明日も頑張れる。
五十嵐は、モンブランケーキを半分の形に変えて、店の外へと出て行った。
双葉は、また来てくれることを願って追いかけたくなる。
どうして自分のケーキが分かるのか聞いてみたくなる。
でもそれを聞いたら魔法の呪文がとけてしまうような気にもなった。
何の変化もない、今が嬉しい。
些細な繋がりかもしれないが、自分たちを繋いでくれるケーキの甘さに溺れてしまいたかった。
自分たちもこうして、甘い関係になれたらいいのに…。

双葉の見送る表情は、暮れていく夕日のように赤く染まっていた。



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コメント | | 2011-05-11-Wed 11:38 [編集]
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