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BLの丘
ちょうどいいサイズ 14
2010-04-09-Fri  CATEGORY: ちょうどいい
「誰かと一緒に食べる食事って楽しくていいよね」
食事の後片付けをしながら安住が楽しそうに笑った。
食事を終え、お茶を飲んで一息ついたところで中條はさっさと帰り支度をしている。
「享、後片付けまでしろとか言わないよね。僕、資料作成があるから悪いけどこれで帰るよ」
「あぁ、ありがとう。今日は助かったよ」
テキパキと動く中條に一葉も慌てた。
自分も帰る、と言いかけてからまだ散らかったままのテーブルに視線が落ちれば口も閉じる。
いくらなんでもこの状況で中條と同じ台詞は吐けなかった。
「じゃあね、一葉ちゃん。また今度、ご飯でも一緒に食べようね」
去り際まで明るく元気に一葉に声をかけ、中條はさっさと部屋を飛び出していった。
自分のためにこの家に拘束させたのかと思えば申し訳なさが募るだけだ。
「ありがとうございました」の一言すら、言うタイミングを逃した一葉はまたうなだれた。

安住がクスクスと笑いながらテーブルの上の食器をまとめ始めた。
「弾丸みたいな人でしょ。誠のペースに嵌められると調子崩されるからいないほうがいいくらいだよね」
「そ、そんな…」
この期に及んで邪魔もの扱いなんてできるはずがない。
そりゃぁ、確かに強引なところはあるかもしれないけど、苛めたおすような態度ではなくて、親しみを感じさせるようなものばかりだ。
「少し待っていてね。食洗機に入れたら送っていってあげるから」
さらに一葉を送ろうとまでしてくれる安住に、心臓が飛び上がりそうなほど恐縮した。
これ以上手を煩わせるわけにはいかない。
「だ、大丈夫ですっ!そんなっ!一人で帰れるしっ!!」
「だってもう外は暗いんだよ」
毎日、暗い中を帰っているって…っ!!…車だけど…。

最寄りの駅から自宅までは確かに距離もあったけど、まだ公共機関はいくらだってある。
車があるから、と家賃の安さで選んだだけあって、アクセスは良いとは言えなかったが、何もない場所じゃない。
「本当に大丈夫ですから…。…これ以上安住さんに迷惑、かけられない…」
消え入りそうな声で呟けば、心外だと言いたそうに安住が悲しそうな表情を浮かべた。
「一葉ちゃん、僕は迷惑だなんて、そんなこと、少しも思っていないからね。僕がそうしてあげたいっていう気持ちも持つのはダメなの?」

この安住の優しさは『毒』だと思う。
浸れば浸るほど侵される。
勘違いも甚だしいと後で責めたてられるのだろうに、縋りたくなる思いやりは一葉の心を虜にしていった。
ただでさえ、成績も良くなく、周りから罵られるばかりの自分に、情けをかけてくれる人間などそういない。
安住から与えられる親切心を愛情と間違えてしまいそうで怖かった。
一葉は何と答えて良いのか頭が回らずに首だけを振った。
「じゃあ、送らせてくれるよね?」
頷いていいのだろうか…、頷くべきなんだろうか…。
躊躇う一葉が返事をできないでいると、クスッと笑みを浮かべた安住の顔が飛び込んできた。
「もしね、もしも気にかけてくれているのなら、僕のお願いを聞いてくれないかな」

それは予想外な申し出と言って良かった。
内容すら分からずに、一葉は咄嗟に自分ができることなら…!!と首を縦に強く頷いた。
自分が安住に対してできることがあるというなら受けてやりたい。

「一葉ちゃんの都合がつく時、たまにこうしてうちに寄ってくれないかな?夕ご飯を一緒に食べられたら嬉しいんだけど」


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