「ねぇねぇ、今度連休があるでしょ。たまにはどっかに行こうよ」
美琴の作ってくれた料理を食しながら、来月の予定を立てる。(7月の連休のことをいっているらしいです)
お盆にはまとまった休みが取れるらしいが、混雑時はできたら避けたい。とはいえ、カレンダーの連休ともなればどこも混むのだろうが…。
ほぼ土日休みといっていい美琴だったが、週末前は雑用に追われていたし、週明けは朝からなにかと慌ただしい。
あまりのんびり過ごすということのない美琴なだけに、たまには気分転換もかねてどこかに連れ出したかった。
振り返れば、美琴と共に出掛けたのは、昔の想い人、渚と海の墓参りだけだ。
それも自分が無理矢理連れて行ったと言っていい。
あの時、ついてきてくれた美琴に、瑛佑は過去の全てから解き放たれようと決意した。
ずっと引きずってきた過去は、その言葉のとおり、過ぎ去った日々であり、この先を共に生きていく人間にとって辛い思いしか持たせない。
美琴の性格を思えば過去をほじくり返したりひがんだりする性格ではないのが分かる。
だからこそ、二人に会わせようと行動に出たし、理解してほしかった。
甘えと言えばそれまでだろうが、自分の全てを晒す代わりに、彼の全てを預けてほしいと願った。
渚と海も瑛佑の明るい未来を望んでいたはずだった。
自分たちのために”外を自由に歩けなかった”瑛佑をどこかで不憫に思っていたこと。
読んだ日記の中にそれらしいことが綴ってあったし、瑛佑がのびのびと生きていくことを願う文面があちこちにあった。
二人に背中を押されたのだろうか…。
人を想い、想われて、今辿り着いた『幸せ』を大事にしたかった。
何より自分を必要としてくれる美琴のために存在したかった。
「連休…ですか…」
クルリと脳裏を過っていく瑛佑の感情に気付いたかのように、美琴の口が重くなった。
さすがにもう、自分の過去に美琴を付き合わせるつもりはない。
あの時はただ、頑なな美琴の心をどうにか開かせたかっただけ…。
誰にも縋ろうとせず、我が道を突き進むだけの美琴をどうにも放っておけなかった。
もっと気を抜いて、もっと楽に、もっと人生を楽しんで…。
そう願った。
生きたくても生きられなかった人間がいたこと。
命があることが、この世で何にも代えられず一番の幸せなのだと思ってほしい…。
近付けば近付くほど、固められた虚像の中身がモロいことを知って支えてやりたいと思った。
身に纏う殻など剥ぎ捨てて、自分が今好きな道を生きているように、思いのまま時を過ごせたらいいのに…と、それは余計なおせっかいかもしれないが、窮屈な殻の中に閉じこもることはないと教えてやりたかった。
「温泉とかどう?まだ予約取れるでしょ。ちょっと寂れたくらいの温泉街をさ、浴衣着てそぞろ歩き…とか。並んで足湯に入ったり…とか。たまには何もしないでのんびりしようよ。あー、でも夜に、何もなしっていうのはナシで…」
「茹であがっているらしい頭に水でもかけましょうか」
…今、手にしているのは水じゃなくて熱いお茶だから…
明るい口調で返せば理解したような美琴の姿がある。
判断の素早さはさすがといっていい。
感情を素直に表してくれるようになったことを心から嬉しいと思うし、楽しい。
自分だけではなく、美琴も満たされた時を共に送ってくれたら、どれだけ幸せだろう。
ほんの些細な、ただ笑顔が見られる、それだけのことが、快楽であり、幸福なのだと感じる。
「考えておきますよ」
フッと力の抜けた笑顔に、嫌がっていないのははっきりと分かる。
きっと明日にでも候補先が幾つか上がってくるのだろう。
計画性の高さは完璧と言って良かった。
「うんっ、美琴さんに全部任せるから。…ねぇ、午後は少し休憩しようよ」
「はぁ?!何も片付いていないでしょ」
少しだけ甘えた声音を出してみたところで、その真意は見抜かれている。
だが、瑛佑にとって触りたいのは段ボール箱ではなかったし、夕刻まで待っていられるような理性も持ち合わせていない。
先週は引っ越しの準備だといって避けられたし、その前は出張でこちらにいなかった。
美琴だって”それ相応の時”を迎えているはずだ。
仕事に支障が出るからといって休日以外には絶対に身体を許しはしない。
詳しく聞いてはいないが、かつて失態を犯したことがあるらしく、美琴の中で燻っているらしい。
どうせ社長にはばれているのだ、開き直ればいいのに…と瑛佑は思っていたが、そこは美琴のプライドなのだろう。
「大丈夫。ベッドとローションとコンドームは用意してあるから」
「意味が分かりません…」
ぷいっと顔を反らす美琴の反応は、全てを許していることを物語っている。
「じゃあ分かって…」
近付けた唇を寸前のところで止まらせれば、待ち切れなくなった美琴から寄せられてくる。
僅かな吐息が肌に触れ、堰きとめていた理性は粉々に吹き飛んだ。
にほんブログ村
40000Hit間もなくですね。
何をどう答えられるか分かりませんが…。
ってか、お付き合いくださっている方々に心より感謝を申し上げる次第で…。
ありがたい数字です。
美琴の作ってくれた料理を食しながら、来月の予定を立てる。(7月の連休のことをいっているらしいです)
お盆にはまとまった休みが取れるらしいが、混雑時はできたら避けたい。とはいえ、カレンダーの連休ともなればどこも混むのだろうが…。
ほぼ土日休みといっていい美琴だったが、週末前は雑用に追われていたし、週明けは朝からなにかと慌ただしい。
あまりのんびり過ごすということのない美琴なだけに、たまには気分転換もかねてどこかに連れ出したかった。
振り返れば、美琴と共に出掛けたのは、昔の想い人、渚と海の墓参りだけだ。
それも自分が無理矢理連れて行ったと言っていい。
あの時、ついてきてくれた美琴に、瑛佑は過去の全てから解き放たれようと決意した。
ずっと引きずってきた過去は、その言葉のとおり、過ぎ去った日々であり、この先を共に生きていく人間にとって辛い思いしか持たせない。
美琴の性格を思えば過去をほじくり返したりひがんだりする性格ではないのが分かる。
だからこそ、二人に会わせようと行動に出たし、理解してほしかった。
甘えと言えばそれまでだろうが、自分の全てを晒す代わりに、彼の全てを預けてほしいと願った。
渚と海も瑛佑の明るい未来を望んでいたはずだった。
自分たちのために”外を自由に歩けなかった”瑛佑をどこかで不憫に思っていたこと。
読んだ日記の中にそれらしいことが綴ってあったし、瑛佑がのびのびと生きていくことを願う文面があちこちにあった。
二人に背中を押されたのだろうか…。
人を想い、想われて、今辿り着いた『幸せ』を大事にしたかった。
何より自分を必要としてくれる美琴のために存在したかった。
「連休…ですか…」
クルリと脳裏を過っていく瑛佑の感情に気付いたかのように、美琴の口が重くなった。
さすがにもう、自分の過去に美琴を付き合わせるつもりはない。
あの時はただ、頑なな美琴の心をどうにか開かせたかっただけ…。
誰にも縋ろうとせず、我が道を突き進むだけの美琴をどうにも放っておけなかった。
もっと気を抜いて、もっと楽に、もっと人生を楽しんで…。
そう願った。
生きたくても生きられなかった人間がいたこと。
命があることが、この世で何にも代えられず一番の幸せなのだと思ってほしい…。
近付けば近付くほど、固められた虚像の中身がモロいことを知って支えてやりたいと思った。
身に纏う殻など剥ぎ捨てて、自分が今好きな道を生きているように、思いのまま時を過ごせたらいいのに…と、それは余計なおせっかいかもしれないが、窮屈な殻の中に閉じこもることはないと教えてやりたかった。
「温泉とかどう?まだ予約取れるでしょ。ちょっと寂れたくらいの温泉街をさ、浴衣着てそぞろ歩き…とか。並んで足湯に入ったり…とか。たまには何もしないでのんびりしようよ。あー、でも夜に、何もなしっていうのはナシで…」
「茹であがっているらしい頭に水でもかけましょうか」
…今、手にしているのは水じゃなくて熱いお茶だから…
明るい口調で返せば理解したような美琴の姿がある。
判断の素早さはさすがといっていい。
感情を素直に表してくれるようになったことを心から嬉しいと思うし、楽しい。
自分だけではなく、美琴も満たされた時を共に送ってくれたら、どれだけ幸せだろう。
ほんの些細な、ただ笑顔が見られる、それだけのことが、快楽であり、幸福なのだと感じる。
「考えておきますよ」
フッと力の抜けた笑顔に、嫌がっていないのははっきりと分かる。
きっと明日にでも候補先が幾つか上がってくるのだろう。
計画性の高さは完璧と言って良かった。
「うんっ、美琴さんに全部任せるから。…ねぇ、午後は少し休憩しようよ」
「はぁ?!何も片付いていないでしょ」
少しだけ甘えた声音を出してみたところで、その真意は見抜かれている。
だが、瑛佑にとって触りたいのは段ボール箱ではなかったし、夕刻まで待っていられるような理性も持ち合わせていない。
先週は引っ越しの準備だといって避けられたし、その前は出張でこちらにいなかった。
美琴だって”それ相応の時”を迎えているはずだ。
仕事に支障が出るからといって休日以外には絶対に身体を許しはしない。
詳しく聞いてはいないが、かつて失態を犯したことがあるらしく、美琴の中で燻っているらしい。
どうせ社長にはばれているのだ、開き直ればいいのに…と瑛佑は思っていたが、そこは美琴のプライドなのだろう。
「大丈夫。ベッドとローションとコンドームは用意してあるから」
「意味が分かりません…」
ぷいっと顔を反らす美琴の反応は、全てを許していることを物語っている。
「じゃあ分かって…」
近付けた唇を寸前のところで止まらせれば、待ち切れなくなった美琴から寄せられてくる。
僅かな吐息が肌に触れ、堰きとめていた理性は粉々に吹き飛んだ。
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40000Hit間もなくですね。
何をどう答えられるか分かりませんが…。
ってか、お付き合いくださっている方々に心より感謝を申し上げる次第で…。
ありがたい数字です。
- 関連記事
プライドの塊みたいなみこっちゃんにしたら、水谷さんがらみで、仕事をすっぽかしてしまったことや、この前の事故など、どうしても燻ってしまうでしょうね。
彼の辞書に仕事に支障をきたすなど、ありえないことなんですから。
けど、そんな肩肘張らずに、もっと余裕を持って生きようよ・・・何てこと言ってしまったらそれこそ二度と触れさせてもらえないでしょうね。
みこっちゃんのことだから、『有給とってカレシと旅行(ハート)』って言う選択肢は考えられないけど、連休くらいのんびりしようよ~。(by瑛佑)
※ ワタシと同じようにここが大好きで通ってくる人がたくさんいるのね~と思うと嬉しくなります。
これからもたくさん萌えさせてくださいね。
彼の辞書に仕事に支障をきたすなど、ありえないことなんですから。
けど、そんな肩肘張らずに、もっと余裕を持って生きようよ・・・何てこと言ってしまったらそれこそ二度と触れさせてもらえないでしょうね。
みこっちゃんのことだから、『有給とってカレシと旅行(ハート)』って言う選択肢は考えられないけど、連休くらいのんびりしようよ~。(by瑛佑)
※ ワタシと同じようにここが大好きで通ってくる人がたくさんいるのね~と思うと嬉しくなります。
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甲斐様
おはようございます。
40000、びっくりです。
いつの間にこんなにお客様がいらしていたのかと思うと…。
8か月かかって3万に達したのに、わずが1カ月ちょっとで4万です。えらいこっちゃーっ。
そしていつも応援してくださいまして心から感謝いたしますm(__)m
>プライドの塊みたいなみこっちゃんにしたら、水谷さんがらみで、仕事をすっぽかしてしまったことや、この前の事故など、どうしても燻ってしまうでしょうね。
まだまだ仕事が何よりも優先のみこっちゃんですから、瑛佑もちょっと淋しいでしょうね。
かといって、水谷とどんなことがあったなんて、ばらすみこっちゃんでもありませんが。
想像の範囲で現実を理解している瑛佑だと思います。
> みこっちゃんのことだから、『有給とってカレシと旅行(ハート)』って言う選択肢は考えられないけど、連休くらいのんびりしようよ~。(by瑛佑)
有給なんて使ったことないんじゃないでしょうかね~ぇ。
ボスがお休みの時は自分もお休みっていう考えもなさそうだし。
自動的にやってくるカレンダーのお休みが瑛佑にとってのんびりできる時かなぁ。
(気の毒になってきた…。周りは好き勝手やってる連中ばっかりなのに…。ずる休みする人とか、気分でお店を開け閉めしている人とか…)
お付き合いくださる方がいること、本当に嬉しいです。
コメントありがとうございました。
おはようございます。
40000、びっくりです。
いつの間にこんなにお客様がいらしていたのかと思うと…。
8か月かかって3万に達したのに、わずが1カ月ちょっとで4万です。えらいこっちゃーっ。
そしていつも応援してくださいまして心から感謝いたしますm(__)m
>プライドの塊みたいなみこっちゃんにしたら、水谷さんがらみで、仕事をすっぽかしてしまったことや、この前の事故など、どうしても燻ってしまうでしょうね。
まだまだ仕事が何よりも優先のみこっちゃんですから、瑛佑もちょっと淋しいでしょうね。
かといって、水谷とどんなことがあったなんて、ばらすみこっちゃんでもありませんが。
想像の範囲で現実を理解している瑛佑だと思います。
> みこっちゃんのことだから、『有給とってカレシと旅行(ハート)』って言う選択肢は考えられないけど、連休くらいのんびりしようよ~。(by瑛佑)
有給なんて使ったことないんじゃないでしょうかね~ぇ。
ボスがお休みの時は自分もお休みっていう考えもなさそうだし。
自動的にやってくるカレンダーのお休みが瑛佑にとってのんびりできる時かなぁ。
(気の毒になってきた…。周りは好き勝手やってる連中ばっかりなのに…。ずる休みする人とか、気分でお店を開け閉めしている人とか…)
お付き合いくださる方がいること、本当に嬉しいです。
コメントありがとうございました。
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