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BLの丘
夢のような吐息 24
2010-05-04-Tue  CATEGORY: 吐息
自分が何をどうしたいのか、もう分かりはしない。
感情のままに動くことなど一度もなかったと過去を振り返った。
だけどそうなるように宮原に誘導されたようだ。
「出会うべき運命だったんだよ、俺たち」

初めて入った宮原のマンションは、かつての収入の高さを物語っていた。
「今はまだ貯金とか退職金とかあるからいいけど。早目に引っ越しを考えてる。今の収入じゃ住んでいられないや、ここ」
不動産関係の知り合いなど多数いるから彼の求める条件に見合う物件を探してやることなど雑作もない。
宮原から聞く幾つかの希望を耳にしながらすでに野崎の頭の中には数社が浮かんでいた。

リビングのソファに通され、角をつけて死角となったキッチンから缶ビールを2本片手に、もう片手に軽く食べられる食品を乗せたトレーを持って宮原が出てきた。
「グラス、使うでしょ?」
またキッチンに戻っていこうとする宮原を引きとめた。
「このままで結構ですよ」
「でもなんだか美琴さんが缶ビールそのまま飲んでいるイメージって湧かない」
「どんな状況にも慣れていますから」
軽く笑いあいながら会話が進む。
自然と笑みがこぼれる自分が別人になったような感覚が生まれた。
それでも居心地の良さは体に染みてくる。
「俺、ここでいいや」
宮原は野崎の足元に腰を下ろすと、ラグの上に座りソファに寄りかかるように背を預けて足を伸ばした。
「なんかさぁ、昔っからこうやって足伸ばしているほうが楽で。今は立ち仕事だから余計かな」
リビングテーブルの上に置いた缶ビールを手渡してくれながら宮原が呟いた。
野崎もとても良く理解できた。
家に帰ればソファに寝そべっている自分がいる。

なんと表現すればいいのだろうか、心の底に湧いたような『ゆとり』は…。

宮原が自分を偽ることなくありのままを見せるから、野崎の気も緩んだ。
同じだったのかと知ればたったそんなことでも自分を作り上げる必要はなさそうな気がして野崎もソファを降りた。
「では私もこちらで」

意外なものでも見るような宮原の視線がぱちくりと瞬いた。
「え?!こういうことするの?」
「家では寝転がっていますよ」
「そんなこと、誰が知っているの?」
「さぁ…」
熱の籠った目が細くなった。
「なんだか正直に話してくれるようになって嬉しいや」
ふふっと野崎も頬を緩めた。

すぐそばに感じる吐息は夢のようだ。
嫌悪も怯えもなかった。
あるのは、自分にはいらないとずっと思っていた安堵感。
「好きな仕事を好きなだけしてよ。疲れたら俺のところにくればいい。いつでも美琴さんの全部を理解してやるから」

どんな虚像を作り上げても、根底を崩されれば倒れる。
野崎は身に纏っていた殻が剥がれていくのを感じても恐怖心すら浮かばない自分に驚いていた。
この男とならたぶん分かりあえて行けるのだろう。
漠然と過った心情に心の中に巣食っていた躊躇いを振り切った。

今、生きている。
それが全ての証。


―完―

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終わったよ~っ!♪♪♪
よかった~。長続きしなくてっ!!(え?充分長かった?!)
SSとかいいながら"スピンオフ"に切り替えたいです。
(私が書くとSSもだらだらと長くなってそんなものでは済まないことになっています。)
こんなくっだらないものにお付き合いくださいました方々、本当に感謝いたします。
しばらく、『淋しい~』からも離れたいな~と思いながら、思い浮かぶのはこいつらばっかりでしてね…。
新企画をご希望の方もたくさんいらっしゃるようなので控えたいのですが…。

そういえばGW明けまでと言っていた「えちとうひょう」は15日までです。16日まで結果発表閲覧できます(本当か?!)って状況ですので。
機械状況をわかっていないので、まぁそんなところを目安にしてください。
いまのところちー&ひーです。
そーか、そっちも考えなきゃ…。
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コメント

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コメント | | 2010-05-04-Tue 00:42 [編集]
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Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-05-05-Wed 07:05 [編集]
A様
おはようございます。
お返事おそくなりました。
いつもいらしてくださいましてありがとうございます。

>もし機会があればまたこの2人のその後、というか甘々ラブラブなお話を書いていただけないものかなぁ、と。
> 初めてのコメントが続編リクエストなんて厚かましいとは思いますが、毎日楽しみにしていた『夢のような吐息』が終わって残念だという気持ちの表れ、と思ってお許しください

ぞ、続編ですか…。
そうですね、思い浮かばないこともないので、いつか書けたらいいかな。
いや~、でもこのお話にこんなにも想いをこめてくださった方がいたなんて、私の方が驚きました。
初めてコメント、でリクを頂くくらい?!
ちょっと感動、何より感謝です♪
コメントありがとうございました。
陽だまりでまあるくなってお昼寝できる場所
コメント甲斐 | URL | 2010-05-05-Wed 11:35 [編集]
『夢のような吐息』なんですね。
そうかぁ・・・。
そんなふうに始まる恋もいいですね。
――狂おしいほど恋しい、この人の傍にいたい、離されたら生きていけない!!
と燃え上がるような恋愛感情はもちろん大好きですけど、この二人のように、気がついたらそこにいる、知らず知らずに自分の場所がその傍らにあるみたいな穏やかな関係というのもすきです。

いつか機会があったら、宮原さん視点の彼の想いも語ってほしいなと思いました。
宮原さんの言ったことやみこっちゃんの受け取った印象からの想像だけでなくて。
みこっちゃんとの初対面の印象とか、お墓参りでそこに眠る人たちとどんな語らいがあったのかなとか、ナンパな男が『同情して救ってあげたい』と言っているのだと思われていた頃の想いとかいろいろ。

そうそう、魔法使いのおばあさんは、杖を一振りして、ハリネズミを気位の高いジャム猫に変身させてくれるのかとおもったら、なんだか日向ぼっこが大好きな人懐こい猫ちゃんになっちゃいそうですね(懐くのはある人限定らしいけど)

なんにしても、恋はいいものだとみこっちゃんも実感できるようですし、安らげる居場所も出来で安心しました。

これで、少しは英人君にも優しくできるのかなとか英人君応援団は思うのです。
Re: 陽だまりでまあるくなってお昼寝できる場所
コメントきえ | URL | 2010-05-05-Wed 16:01 [編集]
甲斐さま
こんにちは~。

> ――狂おしいほど恋しい、この人の傍にいたい、離されたら生きていけない!!
> と燃え上がるような恋愛感情はもちろん大好きですけど、この二人のように、気がついたらそこにいる、知らず知らずに自分の場所がその傍らにあるみたいな穏やかな関係というのもすきです。

身体から堕ちる関係は我が家の定番なんですけど、そこに絡む心情っていうのが、ちょっぴり今までは違ったかな。
誘われるままに、見つけちゃった心地よさ。
穏やかに流れる時間が癒してくれるのだと知る瞬間。


> いつか機会があったら、宮原さん視点の彼の想いも語ってほしいなと思いました。

宮原視点ですか…。
ちょっと前は、攻め視点を超苦手としていたんですけど、書くうちに慣れたというか、想像しやすくなったというか…。
きっと色々あったはずですよね~。宮原君も。
でもこんなのを書いたらまた長くなっちゃいそうな気がして、びびってます。
許してくださるんですか?!そんなことになっても…(冷汗)

> そうそう、魔法使いのおばあさんは、杖を一振りして、ハリネズミを気位の高いジャム猫に変身させてくれるのかとおもったら、なんだか日向ぼっこが大好きな人懐こい猫ちゃんになっちゃいそうですね(懐くのはある人限定らしいけど)

『たま』(○ザエさんちの縁側にいるあんなかんじ…。いや、もうちょっと…せめて近所のミィちゃんとか(←いるのか?こんな名前が?!))
気品の高い猫にならなかった…っぽい。
シャムよりもタマになってくれることを望んでいる人もたぶんいると思います…。

> これで、少しは英人君にも優しくできるのかなとか英人君応援団は思うのです。

最近、野崎と英人の絡みもないのでご想像いただいているしかないんですけどね。
上司の手前もあって、うまくいっていたのだと思います。
4人(6人…どんな?!)が絡んだらただのギャグだろうな…。(妄想が…\(◎o◎)/!!)
コメントありがとうございました。
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