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BLの丘
【観潮楼企画】 ~指先が触れた時~ 2
2010-08-08-Sun  CATEGORY: 観潮楼
この作品は、【観潮楼】「夏―心を焦がす恋―」参加作品です。



大学に入った年の夏、村で開かれる夏祭りに出掛けた。
遊び仲間だった陸をはじめとして数人で行くのが恒例だった。
その中に睦(むつみ)もいた。
小さい頃は人の後をちょこちょこと追い掛けてくるような子だったのに、気付けば安里の身長なんて越してしまっている。
みんなが年頃の、色恋ごとを話すようになっても、軽く流す程度で、どことなく大人びた雰囲気を纏うようになっていた。

夜の花火大会が終わって、さて帰ろうという時、睦が安里を呼びとめた。
「ちょっと相談したいことがあるんだけどさ…」
周りのざわめきもあったし、他の連中には聞こえていないくらいの小声だった。
勉強のことはもちろん、村の人間ではない安里だからなのか、内緒にしたいことを話されることは多かった。
だからこの時も安里は何の疑問も持たずに、「いいよ」と連れられるまま、神社の境内に向かった。
電柱につけられた電燈がポツンと付いているだけの暗い中、もちろん誰がいるわけでもなく、賑やかな祭り会場から突然静寂に包まれる世界にやってきたようで、安里は恐怖にも似た感情を抱いた。
「ね、ねぇ、何? 睦、話って…?」
まだ奥へと進んで行こうとする睦の腕を思わず掴んでしまった。
「いいから、こっち来て」
逆に安里の手を握られて、引っ張られるように建物の裏側に回った。
電燈の光も届かなく、暗闇といってよかった。
立ち止まった睦が振り返ると、安里が言葉を口に乗せる間を取らずに、腕の中に抱き締められた。
「ちょ、…っちょっと、睦?!」
いつの間にか力なんか敵わなくなっている。
「俺、あさちゃんのこと、好きなんだけど」
「はいぃぃっ?!」
突然の告白には驚くだけだ。
そんな素振りを見せることなんてなかった。
何がどう変化したら『好き』という感情に結びつくのか、憧れか何かで気持ちのやり場を間違えているのではないかと思ってしまう。
「安里が好き。ここに来てくれるの、嬉しいのに、いつも陸たちとばっかつるんでんじゃん。年が近いからっていうのは分かるけど、俺、まだガキだし。相手にならないとか思ってんだろ?」
「そ、そんなことは…ないけど…」
「俺のことも見てよ。ってか、俺の為の時間、作ってよ」
「む、睦、…なんか、勘違いしてない?!な、なんで僕…!?」
「理由、必要なの?安里だからいいってだけ」

人を好きになるのに、確かに理由なんか無いだろうが、それにしても突然の展開に安里は頭の中がぐちゃぐちゃだった。
向こうの生活でだって安里はまともな恋愛もしたことがない。
告白なんてもちろんされたことはないし、この後、どう言えばいいのかも分からない。
睦のことを嫌いとか思うところもないが、恋愛感情になるかと問われればそれも疑問だ。
動揺しまくる安里に、雰囲気だけで睦がクスリと笑うのが感じられた。
ふと、睦の安里を抱き締める腕の力が緩んだ。
ごつごつとした掌が輪郭を確かめるように安里の頬を辿る。
それからいきなり、生温かなものに唇を塞がれた。
「?!!!」
湿った舌先が唇の上をなぞっていく。
くちづけをされているのだと気付くまでに時間はかからなかったが、抵抗する気も起きなかった。
何故だろう…。
それが睦に対して持つ想いだったのか…。

自分は単純なのだろうか。
たったそれだけのことで、途端に睦の存在が気になり始めた。
思えば、子供だと思っていた睦の策に見事嵌められたような気がしなくもない。
閉塞感のある村の中だったから余計に気になったのか…。
子供の独占欲とも言えそうな感情を睦はふたりきりの時に激しく見せた。
それほどまで欲してくれる人間がいるのか…と、安里は堕ちていった。

夏恋

なら様より「夏―心を焦がす恋―」をお借りしてきました。
無断転写はご遠慮ください。

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コメント

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求めたれたら...
コメントけいったん | URL | 2010-08-08-Sun 19:06 [編集]
そうですよねー。誰だって 余程の人じゃ無い限り 求められたら 嬉しいですもんッ!
私には その記憶が...(0o0)。o 0...考え中...(ToT)...無いッ...

年下の男の ストレートな欲求、欲情、ソソルものが ありますねー♪
安里さ~ん、堕ちたのね~。気持ち 分かりますよ~(*^q^*)...ジュル...ズ...ズッズー...byebye☆
夏祭りの夜
コメント甲斐 | URL | 2010-08-08-Sun 20:54 [編集]
睦 一直線だよね
そんな風に求められたらさ・・・
Re: 求めたれたら...
コメントきえ | URL | 2010-08-08-Sun 22:31 [編集]
けいったん様
こんばんは~。

> そうですよねー。誰だって 余程の人じゃ無い限り 求められたら 嬉しいですもんッ!

そんな深層心理に見事はまってしまった安里でした。
狙ったのか、少年…。

> 私には その記憶が...(0o0)。o 0...考え中...(ToT)...無いッ...

いえいえ、それはないでしょー。
(内緒にしておいてあげます♪)

> 年下の男の ストレートな欲求、欲情、ソソルものが ありますねー♪
> 安里さ~ん、堕ちたのね~。気持ち 分かりますよ~(*^q^*)...ジュル...ズ...ズッズー...byebye☆

もっと、さくっと終わる予定だったのに長くなってしまいました。
若さと強気で直球勝負の年下です。
遊び仲間から飛びだしましたね。
コメントありがとうございました。
Re: 夏祭りの夜
コメントきえ | URL | 2010-08-08-Sun 22:35 [編集]
甲斐様
こんばんは。

> 睦 一直線だよね
> そんな風に求められたらさ・・・

これまで機会をうかがっていたんでしょうか。
毎年繰り返してきた『夏』じゃ我慢できなくなっちゃったんでしょう。
思春期というか、そういうお年頃になったのね。
コメントありがとうございました。
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