こちらは【観潮楼 秋の企画】の参加作品です。
9月とはいえ、晴天の昼過ぎはそれなりに気温も高い。
そんな中での作業はじゅうぶんなほど汗だくとなった。
一つの田んぼでの作業が一区切りついた頃、休憩だといって、それぞれが田んぼから上がってくる。
畦道に座りこんだ近所の人たちと離れて、トラックの荷台で睦と安里と陸は吹き抜けていく風に体を当てた。
「しんどーっ」
「だから安里には無理だって言ったんじゃん」
「いやー、初めての割りにはよくやってくれてるよ」
荷台にあがりこんで座る安里に向かって寝転がってくる睦を感じて、安里が咄嗟に道具入れの上へと座り直した。
一瞬ムッとした睦だったが、さりげなくかわされているのを見て、陸がクスクスと笑いを浮かべる。
「ったく、おまえらはよ~」
荷台には上がらず、端に腰かけた陸は半ばあきれているといった感じだった。
取り出した煙草に火をつけて、長い煙を吐く。
「で、おまえたち、いつからそんなんだったわけ?」
「ナイショ」
「睦~っ!!おまえなーっ。人が散々可愛がってやったのに」
「イジメの間違いだろ」
小さな掛け合いを安里は微笑ましく見守っている。
安里にしてみれば答えたくない内容なのだろうが、陸に突っ込まれて黙り切れるかは疑問だとも直感が働いているのだろう。
あとは睦に任せる、といった態度もそれとなく感じ取って、睦は心持を良くしていた。
「どーせ睦のことだから押し倒しでもしたんだろ」
「ぶっ」
「ひっでー、言い草」
「り、りく、…、そんな言い方…」
「あさのその態度、見てっと、あながち間違ってもいないみたいだな」
飲み掛けていたお茶を噴き出しそうになった安里に向かって、陸が口角を上げる。
黙っているつもりらしいが、その反応だけで、答えているようなものだ。
「あんま、余分なこと言うなよ」
「高校入った頃から、やたらませたガキだな、とは思っていたけどさ。どこでどんな学習してたんだか」
安里を気遣ったつもりが逆に墓穴を掘っているようでもあった。
陸の言葉には何気なく安里も振り返るところがあったらしい。
確かに強引にコトを進めてきたところはあったかもしれないけど、安里に嘘はついていない。
「うっせーよっ」
「それにしても、珍しく現れたあさには、おじさんたちも驚いていたぞ」
「もう説明したよ。年あけたら一緒に住むから、二人分の米と野菜を送ってくれって」
「むつみぃぃぃ?!!」
目を見開いた安里が突然のことに睦を凝視する。
陸に勝手にバラしたことも安里の中ではいまだに躊躇する部分もあったのだろうが、親にまで話されているとは想像もしていなかっただろう。
作業の合間に、すでに疑問の声を掛けられていた睦は、早々に真実を打ち明けていた。
とはいえ、同居の件だけだが…。
しっかり勘違いしている人間が2人いる。
「それで、おじさんたち、何て?」
「『近くにあさちゃんがいてくれるなら、それほど安心できることはネェな』だってさ」
「さすがの睦でもカムアウトはしなかったか」
「慣れない土地で一人で心細いから…って本当に思っているかどうかは知らないけど」
「睦の性格からは勘違いでも思わねぇよ」
談笑する二人を苦い顔で見つめている安里からも、睦の口先だけと知りホッとした溜め息が聞こえる。
「やっぱり今日来ておいて良かったかも。食料だけ持ち逃げされてるって思われなくて済んだ」
…そっちか…と睦と陸は思っていたが、口には出さなかった。
いずれ親も勘繰るだろうなんて、今の安里には微塵も考えられないことなのだろうし。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
まだ残った田んぼに揺れる黄金色の稲を見つめながら、ずっとこんな時間が持てればいいな、と睦は夢見た。
時々、海原のような稲の間にしゃがみこんだ安里の姿が見えなくなって不安に晒されるけど、必ず見つける。
それが今持てる、精一杯の愛情だった。
夏の日とは違って日が暮れるのも早くなっている。
爽やかな風が頬を撫で、それはすでに秋のものだった。
こんなに暑いと思う日々でも、確実に四季は移ろいで行く。
夏だけでなく、秋だけでなく、これからは過ぎる季節を共に歩いていこう。
見つめた先で、安里が静かに笑ってくれた。
―完―
にほんブログ村
カロリーハーフ様、素敵な絵をお借りいたしました。ありがとうございました。
ポチパチしていただくと嬉しいです。
9月とはいえ、晴天の昼過ぎはそれなりに気温も高い。
そんな中での作業はじゅうぶんなほど汗だくとなった。
一つの田んぼでの作業が一区切りついた頃、休憩だといって、それぞれが田んぼから上がってくる。
畦道に座りこんだ近所の人たちと離れて、トラックの荷台で睦と安里と陸は吹き抜けていく風に体を当てた。
「しんどーっ」
「だから安里には無理だって言ったんじゃん」
「いやー、初めての割りにはよくやってくれてるよ」
荷台にあがりこんで座る安里に向かって寝転がってくる睦を感じて、安里が咄嗟に道具入れの上へと座り直した。
一瞬ムッとした睦だったが、さりげなくかわされているのを見て、陸がクスクスと笑いを浮かべる。
「ったく、おまえらはよ~」
荷台には上がらず、端に腰かけた陸は半ばあきれているといった感じだった。
取り出した煙草に火をつけて、長い煙を吐く。
「で、おまえたち、いつからそんなんだったわけ?」
「ナイショ」
「睦~っ!!おまえなーっ。人が散々可愛がってやったのに」
「イジメの間違いだろ」
小さな掛け合いを安里は微笑ましく見守っている。
安里にしてみれば答えたくない内容なのだろうが、陸に突っ込まれて黙り切れるかは疑問だとも直感が働いているのだろう。
あとは睦に任せる、といった態度もそれとなく感じ取って、睦は心持を良くしていた。
「どーせ睦のことだから押し倒しでもしたんだろ」
「ぶっ」
「ひっでー、言い草」
「り、りく、…、そんな言い方…」
「あさのその態度、見てっと、あながち間違ってもいないみたいだな」
飲み掛けていたお茶を噴き出しそうになった安里に向かって、陸が口角を上げる。
黙っているつもりらしいが、その反応だけで、答えているようなものだ。
「あんま、余分なこと言うなよ」
「高校入った頃から、やたらませたガキだな、とは思っていたけどさ。どこでどんな学習してたんだか」
安里を気遣ったつもりが逆に墓穴を掘っているようでもあった。
陸の言葉には何気なく安里も振り返るところがあったらしい。
確かに強引にコトを進めてきたところはあったかもしれないけど、安里に嘘はついていない。
「うっせーよっ」
「それにしても、珍しく現れたあさには、おじさんたちも驚いていたぞ」
「もう説明したよ。年あけたら一緒に住むから、二人分の米と野菜を送ってくれって」
「むつみぃぃぃ?!!」
目を見開いた安里が突然のことに睦を凝視する。
陸に勝手にバラしたことも安里の中ではいまだに躊躇する部分もあったのだろうが、親にまで話されているとは想像もしていなかっただろう。
作業の合間に、すでに疑問の声を掛けられていた睦は、早々に真実を打ち明けていた。
とはいえ、同居の件だけだが…。
しっかり勘違いしている人間が2人いる。
「それで、おじさんたち、何て?」
「『近くにあさちゃんがいてくれるなら、それほど安心できることはネェな』だってさ」
「さすがの睦でもカムアウトはしなかったか」
「慣れない土地で一人で心細いから…って本当に思っているかどうかは知らないけど」
「睦の性格からは勘違いでも思わねぇよ」
談笑する二人を苦い顔で見つめている安里からも、睦の口先だけと知りホッとした溜め息が聞こえる。
「やっぱり今日来ておいて良かったかも。食料だけ持ち逃げされてるって思われなくて済んだ」
…そっちか…と睦と陸は思っていたが、口には出さなかった。
いずれ親も勘繰るだろうなんて、今の安里には微塵も考えられないことなのだろうし。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
まだ残った田んぼに揺れる黄金色の稲を見つめながら、ずっとこんな時間が持てればいいな、と睦は夢見た。
時々、海原のような稲の間にしゃがみこんだ安里の姿が見えなくなって不安に晒されるけど、必ず見つける。
それが今持てる、精一杯の愛情だった。
夏の日とは違って日が暮れるのも早くなっている。
爽やかな風が頬を撫で、それはすでに秋のものだった。
こんなに暑いと思う日々でも、確実に四季は移ろいで行く。
夏だけでなく、秋だけでなく、これからは過ぎる季節を共に歩いていこう。
見つめた先で、安里が静かに笑ってくれた。
―完―
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カロリーハーフ様、素敵な絵をお借りいたしました。ありがとうございました。
ポチパチしていただくと嬉しいです。
この猛暑の様に 暑くて べたつく 睦の嫉妬と 執着が また 一段と 激しかった作品でしたが、
最終話は、秋らしく 爽やかな THE END ですね。
これは おおらかな陸と おだやかな安里の おかげですよねー
るか様宅で 『きえちーん&るかちーん』の 「ちーんちーん」で 大笑いさせて頂きました♪
完結お疲れ様でしたm(_ _)m...byebye☆
最終話は、秋らしく 爽やかな THE END ですね。
これは おおらかな陸と おだやかな安里の おかげですよねー
るか様宅で 『きえちーん&るかちーん』の 「ちーんちーん」で 大笑いさせて頂きました♪
完結お疲れ様でしたm(_ _)m...byebye☆
けいったん様
こんにちは。
> この猛暑の様に 暑くて べたつく 睦の嫉妬と 執着が また 一段と 激しかった作品でしたが、
> 最終話は、秋らしく 爽やかな THE END ですね。
> これは おおらかな陸と おだやかな安里の おかげですよねー
流れができずに書いているのがバレバレですね。
秋企画なのに、秋らしくなくてどーしよーって感じでした。
しかも趣旨とあっているのか…????
> るか様宅で 『きえちーん&るかちーん』の 「ちーんちーん」で 大笑いさせて頂きました♪
> 完結お疲れ様でしたm(_ _)m...byebye☆
「ちーんちーん♪」ありましたね(笑)
なんでしょう、この親しみ感(迷惑でしょうが)。
最後までお付き合いありがとうございました♪
こんにちは。
> この猛暑の様に 暑くて べたつく 睦の嫉妬と 執着が また 一段と 激しかった作品でしたが、
> 最終話は、秋らしく 爽やかな THE END ですね。
> これは おおらかな陸と おだやかな安里の おかげですよねー
流れができずに書いているのがバレバレですね。
秋企画なのに、秋らしくなくてどーしよーって感じでした。
しかも趣旨とあっているのか…????
> るか様宅で 『きえちーん&るかちーん』の 「ちーんちーん」で 大笑いさせて頂きました♪
> 完結お疲れ様でしたm(_ _)m...byebye☆
「ちーんちーん♪」ありましたね(笑)
なんでしょう、この親しみ感(迷惑でしょうが)。
最後までお付き合いありがとうございました♪
きえさーん!やっと辿り着きましたよ!
いやー、遠かったわ(笑)
とりあえず、企画からかなー?と思ったら、夏からの続き物。ま、まだ短くて良かった(汗)
いえ、長いのも、登場人物クロスも、大好きなんです。ただ、読み始めが大変なだけで(;^_^A
安里くんも睦くんも、まだまだこれからな感じですね。爽やかカプ♪
さらりとした終わり方は、なかなか秋っぽいかと思います。湿気がない感じで。
さて、これから、読みに通わせて頂きます。
きっと、四六時中、きえさんちに居つくので、よろしく~(゜∀゜)
いやー、遠かったわ(笑)
とりあえず、企画からかなー?と思ったら、夏からの続き物。ま、まだ短くて良かった(汗)
いえ、長いのも、登場人物クロスも、大好きなんです。ただ、読み始めが大変なだけで(;^_^A
安里くんも睦くんも、まだまだこれからな感じですね。爽やかカプ♪
さらりとした終わり方は、なかなか秋っぽいかと思います。湿気がない感じで。
さて、これから、読みに通わせて頂きます。
きっと、四六時中、きえさんちに居つくので、よろしく~(゜∀゜)
かや様
OH!!いらっしゃいませーっ!!
> いやー、遠かったわ(笑)
遠距離ですから(笑)
> とりあえず、企画からかなー?と思ったら、夏からの続き物。ま、まだ短くて良かった(汗)
> いえ、長いのも、登場人物クロスも、大好きなんです。ただ、読み始めが大変なだけで(;^_^A
話を分けようと思いながらクロスしちゃうのは悪い癖ですね。
読者様も読みづらいと思っています。
> 安里くんも睦くんも、まだまだこれからな感じですね。爽やかカプ♪
> さらりとした終わり方は、なかなか秋っぽいかと思います。湿気がない感じで。
秋企画はもうちょっと練ればよかったなぁと思っておりますが…(後の祭り)
> さて、これから、読みに通わせて頂きます。
> きっと、四六時中、きえさんちに居つくので、よろしく~(゜∀゜)
よ、読むんですか~ぁ?!目を悪くしますよ。
プロットもなくその場繋ぎで書いているので意味が通じないところもあるかも知れませんが…。
コメントありがとうございました。
OH!!いらっしゃいませーっ!!
> いやー、遠かったわ(笑)
遠距離ですから(笑)
> とりあえず、企画からかなー?と思ったら、夏からの続き物。ま、まだ短くて良かった(汗)
> いえ、長いのも、登場人物クロスも、大好きなんです。ただ、読み始めが大変なだけで(;^_^A
話を分けようと思いながらクロスしちゃうのは悪い癖ですね。
読者様も読みづらいと思っています。
> 安里くんも睦くんも、まだまだこれからな感じですね。爽やかカプ♪
> さらりとした終わり方は、なかなか秋っぽいかと思います。湿気がない感じで。
秋企画はもうちょっと練ればよかったなぁと思っておりますが…(後の祭り)
> さて、これから、読みに通わせて頂きます。
> きっと、四六時中、きえさんちに居つくので、よろしく~(゜∀゜)
よ、読むんですか~ぁ?!目を悪くしますよ。
プロットもなくその場繋ぎで書いているので意味が通じないところもあるかも知れませんが…。
コメントありがとうございました。
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