こちらは【観潮楼 秋の企画】の参加作品です。
「陸に貸してもらったんだ、このつなぎ…」
荷台に座った安里がしれっと答える。
本来なら荷台に乗っての移動なんて許されるはずはなかったが、そこは信号もない田舎道。
幼い頃から繰り返されてきた”日常”に今更、何かを唱える気はなかったが…。
安里にぶつけた疑問は、『つなぎ』のことなんかじゃなくて、なんでここにいるのか?っていうことで…。
勘違いする安里に言ってやりたいことはあると、陸の手前、少々憚られる気持ちも飛んだ。
安里は、いまだもってこの村の人間に、自分たちの仲のことを話してはいなかった。
安里の心理状態も理解できるから黙ってはいたのだが…。
「この週末、こっちに戻ってくるとか聞いてねェし」
「睦ぃ、安里に向かって何て口のきき方だ?」
運転席に向かおうとする陸が、窘めるように睦を制した。
親分肌の陸からすれば、いくら親しくても礼儀くらいわきまえろと、『先生』を敬う。
学年なんか関係なく、兄弟のように遊びまくった連中が今更何だ、と言いたい。
稲刈りに駆り出される苛立ちだけではなかった。
ふつふつと沸き上がる感情。
ただの嫉妬だった。
「陸に服、借りるくらいなら俺の、貸したしっ!!先週安里んちに行った時、俺、ここ、戻ってくるって言ったのに、安里、何も言わなかったじゃん。なんでここ、いんの?!」
「むつ…」
「"先週、安里んち”?!…おまえら、なに?あっちでも会ってたりとかしてんの?」
当然のような疑問が陸の脳を突いた。
睦が実家を離れ一人暮らしをしていることは誰もが知っていたし、安里の住む世界とそれほど離れた距離でないこともなんとなく耳に入っている。
が、故意的に会っているとなればまた話は別で…。
「俺たち、つきあってんの」
「睦っ!!」
「……は?」
勢いで明かしてしまえば、荷台から飛び降りんばかりの姿勢になって口を塞ごうと安里が身を乗り出してきた。
鳩が豆鉄砲でもくらったような、疑問だらけの陸が交互に安里と睦を見比べ、真っ赤になる安里に答えを見つけたようだった。
「はいぃぃぃぃ?????」
「安里、降りて。俺の服、貸すから。陸、悪いけど、陸の服、着せてらんない」
普段だったら、これくらいのことで怒りはしないのだと思う。
ただ、安里が何も言わずにここにいたことが、睦にとってショックだったし、悔しさでもあった。
恋人なのに、なんで一言も言ってくれなかったのだろう…。
自分よりも先に陸に会った…。陸の服を着た…。
安里にとって大きかった陸のつなぎは、裾を幾度か折り返している。
このつなぎは陸が高校生の頃に着ていたものだ…。
安里に近付けなかった頃がふつふつと甦って来る。
腕の力だけで荷台から引きずり降ろし、「先、行ってて」と陸に言葉を投げかける。
「おい、ちょっと睦っ?!」
「むつみっ!!」
「うっせーよっ!!俺、マジでムカついてんだけどっ!!」
はらわたが煮えくりかえるようなこの感情をどこにぶつけたらいいんだろう。
嫌々ながらでも、二人の生活のために稲刈りくらいしてやろうと動き出した体があっというまにやる気を失う。
陸がたとえどこに行こうが、大人の足で移動できない場所に行くわけではない。
何も軽トラに乗って移動するような距離はないのだ。
端の田んぼから順番に稲刈りをしているのは昔から知っている。
次の現場は歩いていけば嫌でも見えてくる。
睦の普段にない剣幕に安里は黙ったし、陸も苛立つ感情に理解を示している部分があった。
“子供の独占欲”と言われているようで、余計に苛立ちが増す。
自分は安里のように物事を客観的に見ることはできないし、陸のように身守る力もない。
「くそっ!!」
「ごめ…」
舌打ちをする睦の隣で、小さく安里が謝った。
安里は遊び道具を与えられ、それを取り上げられた子供のように、くしゅりと顔を歪ませた。
恋人にこんな顔をさせる自分が情けなかった。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
にほんブログ村
ポチパチしていただくと嬉しいです。
今回は睦視点で動いていますので、また分かりづらいところとか出てくるかもしれません。(両方視点から書ければいいんですけどね…)
てか、名前しかない、登場人物も少ない…。(そのうち、何か考える(考えたい…願望))
「陸に貸してもらったんだ、このつなぎ…」
荷台に座った安里がしれっと答える。
本来なら荷台に乗っての移動なんて許されるはずはなかったが、そこは信号もない田舎道。
幼い頃から繰り返されてきた”日常”に今更、何かを唱える気はなかったが…。
安里にぶつけた疑問は、『つなぎ』のことなんかじゃなくて、なんでここにいるのか?っていうことで…。
勘違いする安里に言ってやりたいことはあると、陸の手前、少々憚られる気持ちも飛んだ。
安里は、いまだもってこの村の人間に、自分たちの仲のことを話してはいなかった。
安里の心理状態も理解できるから黙ってはいたのだが…。
「この週末、こっちに戻ってくるとか聞いてねェし」
「睦ぃ、安里に向かって何て口のきき方だ?」
運転席に向かおうとする陸が、窘めるように睦を制した。
親分肌の陸からすれば、いくら親しくても礼儀くらいわきまえろと、『先生』を敬う。
学年なんか関係なく、兄弟のように遊びまくった連中が今更何だ、と言いたい。
稲刈りに駆り出される苛立ちだけではなかった。
ふつふつと沸き上がる感情。
ただの嫉妬だった。
「陸に服、借りるくらいなら俺の、貸したしっ!!先週安里んちに行った時、俺、ここ、戻ってくるって言ったのに、安里、何も言わなかったじゃん。なんでここ、いんの?!」
「むつ…」
「"先週、安里んち”?!…おまえら、なに?あっちでも会ってたりとかしてんの?」
当然のような疑問が陸の脳を突いた。
睦が実家を離れ一人暮らしをしていることは誰もが知っていたし、安里の住む世界とそれほど離れた距離でないこともなんとなく耳に入っている。
が、故意的に会っているとなればまた話は別で…。
「俺たち、つきあってんの」
「睦っ!!」
「……は?」
勢いで明かしてしまえば、荷台から飛び降りんばかりの姿勢になって口を塞ごうと安里が身を乗り出してきた。
鳩が豆鉄砲でもくらったような、疑問だらけの陸が交互に安里と睦を見比べ、真っ赤になる安里に答えを見つけたようだった。
「はいぃぃぃぃ?????」
「安里、降りて。俺の服、貸すから。陸、悪いけど、陸の服、着せてらんない」
普段だったら、これくらいのことで怒りはしないのだと思う。
ただ、安里が何も言わずにここにいたことが、睦にとってショックだったし、悔しさでもあった。
恋人なのに、なんで一言も言ってくれなかったのだろう…。
自分よりも先に陸に会った…。陸の服を着た…。
安里にとって大きかった陸のつなぎは、裾を幾度か折り返している。
このつなぎは陸が高校生の頃に着ていたものだ…。
安里に近付けなかった頃がふつふつと甦って来る。
腕の力だけで荷台から引きずり降ろし、「先、行ってて」と陸に言葉を投げかける。
「おい、ちょっと睦っ?!」
「むつみっ!!」
「うっせーよっ!!俺、マジでムカついてんだけどっ!!」
はらわたが煮えくりかえるようなこの感情をどこにぶつけたらいいんだろう。
嫌々ながらでも、二人の生活のために稲刈りくらいしてやろうと動き出した体があっというまにやる気を失う。
陸がたとえどこに行こうが、大人の足で移動できない場所に行くわけではない。
何も軽トラに乗って移動するような距離はないのだ。
端の田んぼから順番に稲刈りをしているのは昔から知っている。
次の現場は歩いていけば嫌でも見えてくる。
睦の普段にない剣幕に安里は黙ったし、陸も苛立つ感情に理解を示している部分があった。
“子供の独占欲”と言われているようで、余計に苛立ちが増す。
自分は安里のように物事を客観的に見ることはできないし、陸のように身守る力もない。
「くそっ!!」
「ごめ…」
舌打ちをする睦の隣で、小さく安里が謝った。
安里は遊び道具を与えられ、それを取り上げられた子供のように、くしゅりと顔を歪ませた。
恋人にこんな顔をさせる自分が情けなかった。
絵は 「カロリーハーフ」様より お借りしているものです。無断転写はおやめください。
秋企画カロリーハーフ様
にほんブログ村
ポチパチしていただくと嬉しいです。
今回は睦視点で動いていますので、また分かりづらいところとか出てくるかもしれません。(両方視点から書ければいいんですけどね…)
てか、名前しかない、登場人物も少ない…。(そのうち、何か考える(考えたい…願望))
0
2
もう お子ちゃま卒業しようよー！
そうか 安里限定かぁ？ それなら 永遠に 卒業証書は 渡せないわッ(_ _；)
＜秋企画＞で 再び登場のCP、もう嬉し過ぎる復活！（*≧▽≦*）...幸せ～♪...byebye☆
そうか 安里限定かぁ？ それなら 永遠に 卒業証書は 渡せないわッ(_ _；)
＜秋企画＞で 再び登場のCP、もう嬉し過ぎる復活！（*≧▽≦*）...幸せ～♪...byebye☆
けいったん様
こんにちは。
相変わらずお子様で我が儘な坊やでした…。
> もう お子ちゃま卒業しようよー！
>
> そうか 安里限定かぁ？ それなら 永遠に 卒業証書は 渡せないわッ(_ _；)
>
> ＜秋企画＞で 再び登場のCP、もう嬉し過ぎる復活！（*≧▽≦*）...幸せ～♪...byebye☆
卒業証書もらえないってよっ!!睦っ!!
まぁったく、あんたが大人げない嫉妬心ばらまいているからっ!!
再登場CP…、つーか、単に人物を考えるのが面倒という話しなんですけどね…(いや、何も言ってない…)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
相変わらずお子様で我が儘な坊やでした…。
> もう お子ちゃま卒業しようよー！
>
> そうか 安里限定かぁ？ それなら 永遠に 卒業証書は 渡せないわッ(_ _；)
>
> ＜秋企画＞で 再び登場のCP、もう嬉し過ぎる復活！（*≧▽≦*）...幸せ～♪...byebye☆
卒業証書もらえないってよっ!!睦っ!!
まぁったく、あんたが大人げない嫉妬心ばらまいているからっ!!
再登場CP…、つーか、単に人物を考えるのが面倒という話しなんですけどね…(いや、何も言ってない…)
コメントありがとうございました。
| ホーム |
