父の瞳に躊躇いと憎悪に似たものが宿っていることを海斗は気付かなかった。
なんとなく涙が止まらなくて、また、次にくる時間のことに神経が向けられる。
海斗の体を包む心地よさに抜け出せないでいるのも正直なところだ。
『絶対に安心できる』腕の中にいたのだから…。
何に一番脅えたのだろう。
父が離れることか…。鳥羽に何となくでも気付かせてしまうことか…。
鳥羽や有馬の勘の良さは幾度となく共に過ごした仲で覚えがあった。
父と会えば…、間違いなく『現実』を知るだろう。
不安を隠しながら父と話したことは、鳥羽たちに関することはもちろんだったが、他愛のない話もした。
父は黙って聞いてくれていたし、時折アドバイスもくれる。
「海斗は優秀な成績で学校を卒業したのだからがんばりなさい」と、仕事のことを励まされたり。
「少しくらいは料理も覚えたほうがいいのかな」と父と比べられたり。
日常を追う会話は止まらなかった。
片隅で、願うなら、鳥羽には物音を立てずに出ていってほしかった。
日はすっかり落ちて室内灯を点けたそんな時、隣から物音が聞こえて鳥羽が起きたのだと分かった。
未だに父の腕に収まっていた海斗は咄嗟に離れようとしたが、父の一瞬の躊躇いに行動が遅れた。
鳥羽の動きは素早い。
「海斗っ?!」
自分を探し求める声が居室に響いた。
ほぼ同時にリビングとして使用する部屋のドアが開いた。
自分の腕を離れて、見知らぬ男の腕に包まれていたことをどう捉えるのだろう…?
鳥羽の硬直するような表情を見てから、父は海斗の体を引き離した。
「起してしまったかな?いつも海斗がお世話になっているようですまないね」
淡々とした言葉は海斗も聞いたことがない。
呆然と立ちすくむ鳥羽に、二人の前に座りなさいと嫌なくらいの威圧感を浴びせる。
顔も何もかもを似つかない、見た目はまだ若いと感じさせる父を見て何と思ったのだろうか。
そもそも『父』などと思っていない可能性のほうが高い。
海斗は居た堪れなくなって、無意識に「とうさん…」と口にした。
「海斗の眠気は治まったか?昼寝していたところを起こしてしまって悪かったな」
わざとらしい言い訳を口に乗せながら、いつものように髪を梳かれる。
海斗が体を離すことにそれ以上の抵抗も何も見せず、両手を離した。
立ちすくんだまま、二人の行動を呆然と見ていた鳥羽を父が「座るように」と促した。
「お、邪魔なら消えます…」
座れと言われた鳥羽から返った答えに、海斗は分かっていても悲しさを募らせた。
今だけでも充分なほど『誤解』を生んだのだ…。
そして『奪ってくれない』現実も知った…。
それは父も一緒だった。
目に映る光景は”通常”では考えられないとわかっているはずだった。
『ただの親切心』で終わる男になど、可愛い息子を預けたくも近付けたくもない…。
「君が訝しむことはないよ。海斗の父だ。息子がいろいろとお世話になったようで…。御礼に来ようと思いながら遅くなってしまって申し訳なかったね」
気に入らないと分かりながら、それでも続けた父の声を…、抑揚のない声を、海斗は聞いたこともなかった。
にほんブログ村
父~?!!!!って感じです。
婿入り前の息子を持つ心境ですかね~ぇ。(…それにしては………)
なんとなく涙が止まらなくて、また、次にくる時間のことに神経が向けられる。
海斗の体を包む心地よさに抜け出せないでいるのも正直なところだ。
『絶対に安心できる』腕の中にいたのだから…。
何に一番脅えたのだろう。
父が離れることか…。鳥羽に何となくでも気付かせてしまうことか…。
鳥羽や有馬の勘の良さは幾度となく共に過ごした仲で覚えがあった。
父と会えば…、間違いなく『現実』を知るだろう。
不安を隠しながら父と話したことは、鳥羽たちに関することはもちろんだったが、他愛のない話もした。
父は黙って聞いてくれていたし、時折アドバイスもくれる。
「海斗は優秀な成績で学校を卒業したのだからがんばりなさい」と、仕事のことを励まされたり。
「少しくらいは料理も覚えたほうがいいのかな」と父と比べられたり。
日常を追う会話は止まらなかった。
片隅で、願うなら、鳥羽には物音を立てずに出ていってほしかった。
日はすっかり落ちて室内灯を点けたそんな時、隣から物音が聞こえて鳥羽が起きたのだと分かった。
未だに父の腕に収まっていた海斗は咄嗟に離れようとしたが、父の一瞬の躊躇いに行動が遅れた。
鳥羽の動きは素早い。
「海斗っ?!」
自分を探し求める声が居室に響いた。
ほぼ同時にリビングとして使用する部屋のドアが開いた。
自分の腕を離れて、見知らぬ男の腕に包まれていたことをどう捉えるのだろう…?
鳥羽の硬直するような表情を見てから、父は海斗の体を引き離した。
「起してしまったかな?いつも海斗がお世話になっているようですまないね」
淡々とした言葉は海斗も聞いたことがない。
呆然と立ちすくむ鳥羽に、二人の前に座りなさいと嫌なくらいの威圧感を浴びせる。
顔も何もかもを似つかない、見た目はまだ若いと感じさせる父を見て何と思ったのだろうか。
そもそも『父』などと思っていない可能性のほうが高い。
海斗は居た堪れなくなって、無意識に「とうさん…」と口にした。
「海斗の眠気は治まったか?昼寝していたところを起こしてしまって悪かったな」
わざとらしい言い訳を口に乗せながら、いつものように髪を梳かれる。
海斗が体を離すことにそれ以上の抵抗も何も見せず、両手を離した。
立ちすくんだまま、二人の行動を呆然と見ていた鳥羽を父が「座るように」と促した。
「お、邪魔なら消えます…」
座れと言われた鳥羽から返った答えに、海斗は分かっていても悲しさを募らせた。
今だけでも充分なほど『誤解』を生んだのだ…。
そして『奪ってくれない』現実も知った…。
それは父も一緒だった。
目に映る光景は”通常”では考えられないとわかっているはずだった。
『ただの親切心』で終わる男になど、可愛い息子を預けたくも近付けたくもない…。
「君が訝しむことはないよ。海斗の父だ。息子がいろいろとお世話になったようで…。御礼に来ようと思いながら遅くなってしまって申し訳なかったね」
気に入らないと分かりながら、それでも続けた父の声を…、抑揚のない声を、海斗は聞いたこともなかった。
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父~?!!!!って感じです。
婿入り前の息子を持つ心境ですかね~ぇ。(…それにしては………)
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もう少し 歯向かって欲しいなぁ~ これが 有馬だったら <アリ>な行動だけど・・・
海斗を託すには 情熱が無い!!と パパは 思ってるよね。海斗も 分かっていたけど ショックだよねー
私も 鳥羽には 幻滅だわ(´3`:)...ふぅ 有馬にする?...byebye☆
海斗を託すには 情熱が無い!!と パパは 思ってるよね。海斗も 分かっていたけど ショックだよねー
私も 鳥羽には 幻滅だわ(´3`:)...ふぅ 有馬にする?...byebye☆
けいったん様
こんにちは~。
> もう少し 歯向かって欲しいなぁ~ これが 有馬だったら <アリ>な行動だけど・・・
飛ぶ鳥跡を濁さず…じゃ困っちゃうよねぇ。
有馬なら<アリ>、うん分かります。
> 海斗を託すには 情熱が無い!!と パパは 思ってるよね。海斗も 分かっていたけど ショックだよねー
>
> 私も 鳥羽には 幻滅だわ(´3`:)...ふぅ 有馬にする?...byebye☆
パパ、結構人を見る目は厳しそうで…。
奪い取っていくくらいの男でなきゃ認めない雰囲気バリバリです。
とはいえ、やっぱり息子には甘いんですよ、きっと。
コメントありがとうございました。
こんにちは~。
> もう少し 歯向かって欲しいなぁ~ これが 有馬だったら <アリ>な行動だけど・・・
飛ぶ鳥跡を濁さず…じゃ困っちゃうよねぇ。
有馬なら<アリ>、うん分かります。
> 海斗を託すには 情熱が無い!!と パパは 思ってるよね。海斗も 分かっていたけど ショックだよねー
>
> 私も 鳥羽には 幻滅だわ(´3`:)...ふぅ 有馬にする?...byebye☆
パパ、結構人を見る目は厳しそうで…。
奪い取っていくくらいの男でなきゃ認めない雰囲気バリバリです。
とはいえ、やっぱり息子には甘いんですよ、きっと。
コメントありがとうございました。
なるほど『婿入り前の息子』なわけですね
おとうさんの登場は、男としての嫉妬とか
自分のもの取られて独占欲に火がついたっていうのとは違うんですね
いろんな面で大事に育ててきた宝物を
生半可な覚悟の男なんかにくれてやれるか!!
みたいな感じ?
おとうさんの登場は、男としての嫉妬とか
自分のもの取られて独占欲に火がついたっていうのとは違うんですね
いろんな面で大事に育ててきた宝物を
生半可な覚悟の男なんかにくれてやれるか!!
みたいな感じ?
甲斐様
こんばんは。
> おとうさんの登場は、男としての嫉妬とか
> 自分のもの取られて独占欲に火がついたっていうのとは違うんですね
いや、根本的には変わらないかと…。
あと2、3話はぐちゃぐちゃが続きます。
書いている本人が大丈夫かな~ぁと心配しているくらいですし…。
> いろんな面で大事に育ててきた宝物を
> 生半可な覚悟の男なんかにくれてやれるか!!
> みたいな感じ?
はいっ!
やっはりパパ、土壇場にきて手放すのが惜しくなったのでしょうか?
それとも心底海斗の幸せを望んだのでしょうか。
(もうちっと腕(筆)あげないといかんな…)
コメントありがとうございしまた。
こんばんは。
> おとうさんの登場は、男としての嫉妬とか
> 自分のもの取られて独占欲に火がついたっていうのとは違うんですね
いや、根本的には変わらないかと…。
あと2、3話はぐちゃぐちゃが続きます。
書いている本人が大丈夫かな~ぁと心配しているくらいですし…。
> いろんな面で大事に育ててきた宝物を
> 生半可な覚悟の男なんかにくれてやれるか!!
> みたいな感じ?
はいっ!
やっはりパパ、土壇場にきて手放すのが惜しくなったのでしょうか?
それとも心底海斗の幸せを望んだのでしょうか。
(もうちっと腕(筆)あげないといかんな…)
コメントありがとうございしまた。
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