休日であるはずなのに、きちんとスーツを着こなした父の姿は凛々しかった。
久しく目にすることのなかった格好に目を奪われる。
「連絡もせずに来てしまって悪かったな。海斗が急に帰ると言い出したからなんだか心配で…」
「大丈夫…。心配かけてごめん…」
ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出す海斗の髪を、いつものように撫でてくれる。
「休んでいたのか?寝ぐせがついている」
いつまでたっても成長しない子供のようだな…と心の中で苦笑した。
実際、そうなのかもしれない。
離れられずに甘え続けてきた…。
今出てきたばかりの玄関に戻るようにと、頭上にあった手が海斗の背中を押した。
海斗は部屋の中に鳥羽がいることを思い出した。
どう考えても、この昼間から人の部屋に上がって眠っている人間の存在は疑問に映るだろう。
数々の海斗の身の振り方を知っているとはいっても、現実に鉢合わせをしたことなどなく、まして鳥羽に父との関係を悟られそうでそちらの方に恐怖が湧いた。
『義父』とはいっても、仮にも親子である。
帰省から戻った途端に後を追ってくる父の存在は、明らかにおかしい関係に見られるはずだ。
わずかに、部屋に戻ることを拒絶した海斗の強張りに気付かない父ではない。
「海斗?」
「あ、あの…、隣んちの人と実家での話とかしてて…、その、…俺も移動で疲れていたのか、いつの間にか眠っちゃったんだよね…」
ヘタな言い訳しか咄嗟に思いつかなかった。
父の眉が、瞳が、スッと締まった気がした。
「一緒に?」
これもまた変な話だった。
隣の部屋の人間なら、何も海斗の部屋で一緒に寝ていなくても帰れば済むことだろう。
海斗の明らかな動揺も父には珍しい光景だった。
たとえ肉体関係に及んだとしても、海斗はその類の話は明け透けに話してきた。
それは父に全てを学んできたから、安心して語れたという部分もある。
これまでの海斗とははっきりと違った性格になろうとしていた。
実家に戻った時に、すでに隣近所の人間ともうまくやっている話はしてあった。
「いつも海斗がお世話になっているんだ。挨拶をするにはちょうどいいタイミングだな」
鍵なんてかけていなかった玄関扉を父は開いた。
中の部屋のドアも、閉めてなどいないから『近所の人間』がまだ寝ていることも一目瞭然だった。
海斗が何かをするよりも、父の方がテキパキと動く。
まず鳥羽が眠っている部屋のドアを閉め、リビングとして使っている方に海斗を連れた。
慣れたように冷蔵庫の中からペットボトルに入ったお茶とグラスを持って、父も戻ってくるとドアを閉めた。
海斗は渦巻く感情をどうしたらいいのか分からずにいた。
父との関係を清算するため、距離を置こう、と離れてきたはずなのに、こうして追いかけられてこられて、それは『嬉しい』という喜びに直結していた。
このまま、また舞い戻ってしまいたい感情が再燃したのだ。
あまりにも自分のことを良く知る人間だったから…。
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おまたせでーす。
久しく目にすることのなかった格好に目を奪われる。
「連絡もせずに来てしまって悪かったな。海斗が急に帰ると言い出したからなんだか心配で…」
「大丈夫…。心配かけてごめん…」
ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出す海斗の髪を、いつものように撫でてくれる。
「休んでいたのか?寝ぐせがついている」
いつまでたっても成長しない子供のようだな…と心の中で苦笑した。
実際、そうなのかもしれない。
離れられずに甘え続けてきた…。
今出てきたばかりの玄関に戻るようにと、頭上にあった手が海斗の背中を押した。
海斗は部屋の中に鳥羽がいることを思い出した。
どう考えても、この昼間から人の部屋に上がって眠っている人間の存在は疑問に映るだろう。
数々の海斗の身の振り方を知っているとはいっても、現実に鉢合わせをしたことなどなく、まして鳥羽に父との関係を悟られそうでそちらの方に恐怖が湧いた。
『義父』とはいっても、仮にも親子である。
帰省から戻った途端に後を追ってくる父の存在は、明らかにおかしい関係に見られるはずだ。
わずかに、部屋に戻ることを拒絶した海斗の強張りに気付かない父ではない。
「海斗?」
「あ、あの…、隣んちの人と実家での話とかしてて…、その、…俺も移動で疲れていたのか、いつの間にか眠っちゃったんだよね…」
ヘタな言い訳しか咄嗟に思いつかなかった。
父の眉が、瞳が、スッと締まった気がした。
「一緒に?」
これもまた変な話だった。
隣の部屋の人間なら、何も海斗の部屋で一緒に寝ていなくても帰れば済むことだろう。
海斗の明らかな動揺も父には珍しい光景だった。
たとえ肉体関係に及んだとしても、海斗はその類の話は明け透けに話してきた。
それは父に全てを学んできたから、安心して語れたという部分もある。
これまでの海斗とははっきりと違った性格になろうとしていた。
実家に戻った時に、すでに隣近所の人間ともうまくやっている話はしてあった。
「いつも海斗がお世話になっているんだ。挨拶をするにはちょうどいいタイミングだな」
鍵なんてかけていなかった玄関扉を父は開いた。
中の部屋のドアも、閉めてなどいないから『近所の人間』がまだ寝ていることも一目瞭然だった。
海斗が何かをするよりも、父の方がテキパキと動く。
まず鳥羽が眠っている部屋のドアを閉め、リビングとして使っている方に海斗を連れた。
慣れたように冷蔵庫の中からペットボトルに入ったお茶とグラスを持って、父も戻ってくるとドアを閉めた。
海斗は渦巻く感情をどうしたらいいのか分からずにいた。
父との関係を清算するため、距離を置こう、と離れてきたはずなのに、こうして追いかけられてこられて、それは『嬉しい』という喜びに直結していた。
このまま、また舞い戻ってしまいたい感情が再燃したのだ。
あまりにも自分のことを良く知る人間だったから…。
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おまたせでーす。
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やっぱり父に戻ってしまうの?
父はどうする気なんだろう?う~ん。
海斗ぉしっかり~!
っていうか、鳥羽っち寝てる場合じゃないよぉ~。
早く起きて~!
父はどうする気なんだろう?う~ん。
海斗ぉしっかり~!
っていうか、鳥羽っち寝てる場合じゃないよぉ~。
早く起きて~!
中々 そこからの 脱却は 難しいでしょうね。
一歩踏み出す勇気を !海斗!!
でも パパさんも 捨てがたいなぁ~ 魅力的すぎるんだもんな~
きえ様、チャット参加で パワーのチャージは 出来ましたか?噂によると 超ロングランだったそうで(笑)...
(^o^)/byebye☆
一歩踏み出す勇気を !海斗!!
でも パパさんも 捨てがたいなぁ~ 魅力的すぎるんだもんな~
きえ様、チャット参加で パワーのチャージは 出来ましたか?噂によると 超ロングランだったそうで(笑)...
(^o^)/byebye☆
さえちゃん
こんにちは。
> やっぱり父に戻ってしまうの?
> 父はどうする気なんだろう?う~ん。
> 海斗ぉしっかり~!
> っていうか、鳥羽っち寝てる場合じゃないよぉ~。
> 早く起きて~!
父、事実を知るんでしょうか。
でもカンの良い人だから海斗の態度を見ていれば何か気づくんでしょうね。
その時、どう動くんだろう。
鳥羽、のんきですね…。
まだ海斗の温もりがあるお布団の中で幸せな夢でも見ているんでしょう。
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> やっぱり父に戻ってしまうの?
> 父はどうする気なんだろう?う~ん。
> 海斗ぉしっかり~!
> っていうか、鳥羽っち寝てる場合じゃないよぉ~。
> 早く起きて~!
父、事実を知るんでしょうか。
でもカンの良い人だから海斗の態度を見ていれば何か気づくんでしょうね。
その時、どう動くんだろう。
鳥羽、のんきですね…。
まだ海斗の温もりがあるお布団の中で幸せな夢でも見ているんでしょう。
コメントありがとうございました。
けいったん様
こんにちは。
> 中々 そこからの 脱却は 難しいでしょうね。
実家に帰れば「パパ~♪」の状態でしたからね…。
> 一歩踏み出す勇気を !海斗!!
> でも パパさんも 捨てがたいなぁ~ 魅力的すぎるんだもんな~
海斗も捨てがたいんだと思います。
離婚繰り返した海斗ママもこれだけ入れ込んでいるくらいの人なんですから。
母に似たんだろうな、海斗。
> きえ様、チャット参加で パワーのチャージは 出来ましたか?噂によると 超ロングランだったそうで(笑)...
チャージしてきました♪
途中抜けたりしながらなんだかんだと続きましたね。
約28時間、耐久レースです(笑)
コメントありがとうございました。
こんにちは。
> 中々 そこからの 脱却は 難しいでしょうね。
実家に帰れば「パパ~♪」の状態でしたからね…。
> 一歩踏み出す勇気を !海斗!!
> でも パパさんも 捨てがたいなぁ~ 魅力的すぎるんだもんな~
海斗も捨てがたいんだと思います。
離婚繰り返した海斗ママもこれだけ入れ込んでいるくらいの人なんですから。
母に似たんだろうな、海斗。
> きえ様、チャット参加で パワーのチャージは 出来ましたか?噂によると 超ロングランだったそうで(笑)...
チャージしてきました♪
途中抜けたりしながらなんだかんだと続きましたね。
約28時間、耐久レースです(笑)
コメントありがとうございました。
せっかく決心して戻ってきたのに
なぜに追いかけてきたのさ
実家から帰ってきたらそのあとから父親が追いかけてくるって変ですよね
ご近所の方になんて挨拶するんでしょう
忘れものとか?
お父さんの気持ちはわかりませんが、
心配してというのじゃない気がする
なぜに追いかけてきたのさ
実家から帰ってきたらそのあとから父親が追いかけてくるって変ですよね
ご近所の方になんて挨拶するんでしょう
忘れものとか?
お父さんの気持ちはわかりませんが、
心配してというのじゃない気がする
甲斐様
こんばんは。
> せっかく決心して戻ってきたのに
> なぜに追いかけてきたのさ
> 実家から帰ってきたらそのあとから父親が追いかけてくるって変ですよね
変ですよね~。
でも来ちゃった。
泣いちゃった海斗のことは知らないはずですが、何かあったんだと鳥羽は気づくんでしょうか。
> お父さんの気持ちはわかりませんが、
> 心配してというのじゃない気がする
何かの思いはあっての行動でしょう。
まぁ全部ひっくるめての心配ってことで。
コメントありがとうございました。
こんばんは。
> せっかく決心して戻ってきたのに
> なぜに追いかけてきたのさ
> 実家から帰ってきたらそのあとから父親が追いかけてくるって変ですよね
変ですよね~。
でも来ちゃった。
泣いちゃった海斗のことは知らないはずですが、何かあったんだと鳥羽は気づくんでしょうか。
> お父さんの気持ちはわかりませんが、
> 心配してというのじゃない気がする
何かの思いはあっての行動でしょう。
まぁ全部ひっくるめての心配ってことで。
コメントありがとうございました。
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