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BLの丘
一番近いもの 54
2010-09-30-Thu  CATEGORY: 一番近いもの
R18 前半少しの性描写があります。閲覧にはご注意ください。

『傍にいる』といった言葉をただ信じたかった。
一人にされるのは辛いから、その為の努力をしそうである。
「健太…」
何度目かの囁きにも応えてくれる。
幾度も繰り返される貪るような口付け。

「はぁぁ…」
「海斗、力抜いて…」
宛がわれる塊の硬さに、言われても緊張感が高まってうまく身体をコントロールできない。
こんなことは初めてだった。
これまで教えられた数々の手腕がまったく意味を成さない。

「健太」
「大丈夫だから。全部を俺に任せてよ」
今更、初体験だとも思ってはいないのだろうに、鳥羽の扱いは、一つの体験もしたことのない子供を宥めるようだった。
ぎこちなく硬くなる海斗をそっとさすって気を反らそうとしてくる。
「つかまってて」
両手を取られて首筋をぎゅっと抱きしめた。
さらに広くひろげられた両足のたもとに熱い肉塊が当たるのを感じると「んっっ」と喉の奥が鳴った。

「海斗、…好きだ。これから先の全部を守ってやるから。俺のそばから離れるな…」
こくこくと頷く海斗に満足したかのように、グイっと熱棒が入り込んだ。
「あぁぁっ!」
「愛してるよ、海斗…」

待ち望んだ瞬間だった。

どれだけ願っても父からはもらえなかった言葉。
父からではなく、他の人間から囁いてほしかったのだと、父が願っていたような気がする。
寄り添ってはいけない存在。
今、本当に、第三者の手をとって、海斗は父から離れたのだ…。
「好き…、健太…、好き…」
改めて伝えた言葉を幾度も吐息から飲み込まれる。
これまでに感じたことのない、『失いたくない感情』。
父とは『親子』という関係でいつでも傍にいて近寄ることができる。
けど、鳥羽は、一度失ったらもう戻れない…。
分かるからこそ、余計に焦がれるのだろうか。

身体の中を圧迫してくる重さを、むしろ気持ちいいと感じる。
痛みすら心地よいものに変わった。
「愛してる…」
生まれて初めて口に乗せた言葉を、鳥羽は柔らかな微笑みで受け止めてくれた。
「あぁ…、大事にするって誓うよ…」



昼も過ぎた頃、玄関のチャイムが鳴る音で目覚めた。
隣では同じく物音で瞼を持ち上げた鳥羽が、うっとおしそうにベッド下に投げ捨てた衣類を手繰り寄せていた。
「海斗はまだ寝てていいよ」
乱れた髪をひと撫でされる。
自分の家に尋ねてきた人間を他人が出迎えるのもどんなものかと思ってしまうが、昨夜から続いた度重なる行為に、起き上がる気力も体力もないのが現実だった。
性には貪欲で、これまでもヤリ過ごしてきた過去はあったが、執拗に求められたのは久し振り…というか初めて…というか。
鳥羽の体力のあり過ぎにも、頭を抱えたくなる…。

部屋のドアは閉められていたが、玄関を開けた人間の会話は耳に入ってきた。
「海斗は?」
聞きたかったのか、聞きたくなかったのか、静かだが聞こえてきたのは父の声だった。
「今はまだ…」
「そうか…。海斗が好きな和菓子だ。皆で一緒に食べるといい」
カサカサとする物音は鳥羽に何かを手渡しているのだろう。
明らかに一夜を共に過ごしたという光景は父にどう映っていのだろうか。
そして、父は、昨夜、どこにいたのだろう…。
改めて浮かぶ疑惑。
母を思うからこそ、別れてなどほしくなかった。
だけど、好きな人と一緒になった自分がそれを口にしても良いものなのだろうか…。

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