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BLの丘
一番近いもの 52-2 番外編
2010-09-28-Tue  CATEGORY: 一番近いもの
レストランに海斗と、預けたはずの隣人が顔を出した時、咄嗟に砺波陽平は追いかけようとしていた。
それを押し留めたのは目の前に座った花巻修だった。
「もう、離れたほうがいい…」
言葉の意味は良く分かる。
一度は突き放した『義理の息子』をまた追いかけては息子に負担がかかるだけだ。
そして、預けたはずの恋人にも…。

「言い訳なら、いくらだって思い浮かびます。郷里を共にした人間が都会の人の波の中で出会うことなど多々ある。『偶然』という言葉はどんなふうにだって使えるんです」
深い意味を持たずに海斗に『偶然』を説明する気なのだとは陽平も認めた。
動揺すればその分疑いをもたれるだけだった。

「あの子たちはうまくいっているのかなぁ」
長年、放ったらかしにした恋人を前に言う台詞ではないと思う。
それでも口にできるのは、それだけ心を許した相手だからだろうか。
花巻は陽平が素直に心情を吐露してくれることが単純に嬉しかった。
気高い彼は、早々人に心など許しはしない。

電話をしてくる、と席を立った陽平が、しばらくして、意気消沈の面持ちで戻ってきた時、話したい相手に繋がらないのだと悟った。
それは、彼ら同士で進むべき道を見つけたからだろうか。

「とうとう、本当に、私の手を離れたようだね…」
淋しいほどの声だった。
「それを願っていたのでしょう?」
突き放すようで心苦しさはあったが、現実を認めさせるには良かったのかもしれない。
花巻は心苦しさを抱えながら、戻ってくる人間の傷ついた身体を癒してやりたかった。
砺波陽平が結婚して、10年以上の時が経つ。
海斗の会社関係でアヤシイ動きがあるのを認めるなり、『離婚』の手続きを施したのは花巻だった。
今更妻も、文句も言わなかった。

唯一、反対したのは陽平だろうか…。

冷めきった家庭に戻る気はない。
むしろ、陽平の為に動けることが嬉しいほどだった。

「あなたたちは親子なんです。会える機会はいくらだってある。けど、捨てられたら、僕は……、二度と会えない」
悲痛な心の叫びを、10年も黙らせていたのだと陽平はようやく知った。

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短ーい番外をちょろっと書きました。
いつかはっきりとした関係を書けたらいいかなぁ・・・(←期待薄っ)

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