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BLの丘
一番近いもの 53
2010-09-29-Wed  CATEGORY: 一番近いもの
R18 多少の男性同士の性描写があります。閲覧にはご注意ください。

包んでくれる腕の温かさはこれまで感じてきたものとは違っていた。
一時の性欲を満たすものとはもちろん違うし、海斗を守ろうと抱かれる為の術を教えた父ともあきらかに違う。
鳥羽の腕は、すべてのものを近付けず、己のものにしようとする独占欲が含まれていた。
うっとうしいほどなのに、人間としての温かさを感じて寄り添いたくなる。
狭くてもいい…。
海斗はその空間の中で生きたかった。
誰かに身捨てられる、別れる辛い過去を、また味わいたくはない。
一人になりたくない、そう思う根源に『父』がいる。
幾度も変わった父。
やっとそばにいてくれると分かった父も、また離れる時を迎えた。

一人になることが怖い…
わかっているからこそ、義父はきちんとした相手ができるまで見守ってくれたのだろうか…。

「健太…」
鎖骨から平らな胸へと流れていく仕草の中、そっと呼びかければ「何?」と鳥羽の顔が上がった。
行為を途中で中断されたようで、身体は疼くものを持っていたが、見つめてくる瞳の熱さに言葉が途切れる。
「海斗?」
呼びかけたのは自分だった。
だけど続く『好き』という言葉が音になることはない。
恥ずかしさ…、はもちろん、躊躇う海斗の心情には恋愛に初心な心が表れている。
幾人もの男に抱かれてきたはずなのに、鳥羽に対しては全く勝手がきかなかった。

余裕がないと分かるから、余計に恥ずかしくて仕方がない。
男の一人も相手にできないのか、と思われることが恐怖に近かった。
リードしてやるべきかと頭では考えても身体は全く動かない。

そんな海斗の悩める心など、全く無視して、鳥羽は自分の勝手に海斗の肌を攻めてきた。
白く艶やかなキメの細かさを確かめるように、また、熱を持ってくる肌の温度を計るかのように…。

「ぁぁあぁぁっ…っ」
「もっと啼いて。もっと悦んで。海斗の全部は俺のものだから」
何度も鳥羽の声が耳を撫でる。
片手は腰をつかみ、もう一方は股間を撫でまわした。
唇と舌、両の掌の動きに肌は戦慄き、小さな喘ぎ声が絶えずに零れる。
「け、んたぁ…」
「すっげー、クる。このまま突っ込みたいんだけど」
いつもどこでも余裕を振りまいていたはずの鳥羽から、切羽詰まった声が聞こえた。
添い寝をしてくれる時にも、確かに肌の温度を感じることはあったが、欲望までは見せられていなかった。
それだけ、我慢させてきたのだろうか…。

両足を持ち上げられ、天を向いた秘部に鳥羽の口先が落とされる。
熱い舌先が奥を撫でまわして、屹立をツツーッと舐め上げていった。
「あぁぁぁんっっ」
甲高い嬌声が漏れれば、一層膨らむ鳥羽自身を知った。

…忘れられる…。自分はこの瞬間にも、父のことを忘れられるのだろう…。

希望だったのか願いだったのか…。
ずっと待ち続けた鳥羽との時間。
遊びで身体を繋げてきた連中とは明らかに違った存在。

「健太ぁ…」
一人になるのは怖いから、ずっとそばにいてくれと、言いたい。
それが重荷になるのなら言葉にはしないが…。
海斗の全てを受け止めてくれた今、本音を晒してもいいのだろう…。
「健太…」
見上げた先に、「わかっている」という表情の鳥羽がいて…。
海斗はあまりの嬉しさと感動で目尻に涙を浮かべた。

――この手を離せる時など来ない――

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コメント

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コメント甲斐 | URL | 2010-09-29-Wed 09:30 [編集]
ここまで長かったです
淋しがりやで甘えたな海斗が
そんな感情を抑えながらも
縋る何かを求めていたのを鳥羽は感じていたのかな
ずっとそばにいて守るという言葉を
まだ心から信じられないくても
ずっとそばにいて言い続けて
それが本当になったらいいと思います

鳥羽、がまん強い
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-09-29-Wed 11:59 [編集]
甲斐様
こんにちは~。
長かったですね~、ふたり。

> ここまで長かったです
> 淋しがりやで甘えたな海斗が
> そんな感情を抑えながらも
> 縋る何かを求めていたのを鳥羽は感じていたのかな

鳥羽もいっぱい溜めこんでいたことはあると思います。
やっと海斗が心も体も許してくれたのか…とおもっているのでしょうか。

> ずっとそばにいて守るという言葉を
> まだ心から信じられないくても
> ずっとそばにいて言い続けて
> それが本当になったらいいと思います
>
> 鳥羽、がまん強い

鳥羽、がんばりましたね。
ようやく海斗が全部をさらけ出してくれる瞬間。
その言葉を海斗は信じたのだと思います。
コメントありがとうございました。
海斗。。。
コメントけいったん | URL | 2010-09-29-Wed 12:00 [編集]
もう 鳥羽には 素直になって 自分の想いを 言葉にしても いいのでは?
鳥羽も それを 望んでいるよ、きっと

甲斐さまの言う通り 鳥羽って 我慢強いですね。この忍耐レースに どこまで もつのか 心配・・・
(^o^:)ゞbyebye☆
Re: 海斗。。。
コメントきえ | URL | 2010-09-29-Wed 12:13 [編集]
けいったん様
ご一緒でしたね~。

> もう 鳥羽には 素直になって 自分の想いを 言葉にしても いいのでは?
> 鳥羽も それを 望んでいるよ、きっと

素直になるか、海斗?!
けと寄りそう温かさは知ったかと思います。

> 甲斐さまの言う通り 鳥羽って 我慢強いですね。この忍耐レースに どこまで もつのか 心配・・・

た、耐久レース??!
いや、、そこまでは…(どうなんだろう…)
とはいえ突っ走りはじめましたからね。

コメントありがとうございました。
コメントかや | URL | 2010-09-29-Wed 15:28 [編集]
やっとひとつになる時が・・・!
周囲がどんなにやきもきした事か。
心から愛し合う人と結ばれる幸せを知ってしまったら、もう、その手は離せませんね。
鳥羽なら、きっと、海斗を守ってくれますね!
Re: タイトルなし
コメントきえ | URL | 2010-09-29-Wed 17:23 [編集]
かや様
こんばんは。

> やっとひとつになる時が・・・!
> 周囲がどんなにやきもきした事か。

やきもきしましたねぇ。
やっと結ばれるらしいです。

> 心から愛し合う人と結ばれる幸せを知ってしまったら、もう、その手は離せませんね。
> 鳥羽なら、きっと、海斗を守ってくれますね!

心底守ろうという鳥羽の気持ちも伝わっているかと思います。
そんな手を知れば、離れられない海斗でしょう。
今後の鳥羽の活躍に期待します。
コメントありがとうございました。
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